この記事では、最近話題になっている
「
という疑問について掘り下げて考えたいと思います。
といっても、厳密な議論で証明することが目標ではなく、「直感的に理解したい」というモチベーションで記事を作っています。
そのため、厳密な証明を期待している方や、既に「自明じゃん」と感じている人にはこの記事はオススメできないことをはじめにお断りします。
一方で、この疑問を感じている人は少なくないようです。
Wikipediaの「
(Wikipediaより引用)
等式
ときには、この疑問を表に出すことによって誰かに笑われることがあるかもしれません。しかし、これは人によってはそんなに簡単に受け入れられる概念ではないと私は思います。本当は納得していないのにわかったフリをする方がよほど恥ずかしいことだと思います。
まず、考える対象となる「
両辺を3倍して
したがって
↑↑↑本当に正しいの?
まずは、この疑問に対してしばしば提示される、よくある説明をいくつか見てみましょう。
これらの説明のいずれかで十分納得できる方は、その後の記事は読まなくても大丈夫だと思いますが、騙されたような気がする、モヤモヤすると思う方は、後半の記事までお付き合いください。
上記の問題1の分数を使った式変形には何もおかしなところはない。
したがって結論の
は正しい。
となりずっと
したがって
例えば九進法で表記すれば
となり、何もおかしなところはない。
三進法でも同じようにできます。
無限小数を表すとき、「
数列が「ある数」に限りなく近づくとき、その「ある数」のことを極限値といい、この場合その「ある数」は
したがって、定義より明らかに
右辺を等比級数で表現するパターンもありますが、意味はほぼ同じですね。
大学レベルの数学になりますが、デデキント切断やコーシー列を使って実数を構成することにより、
この方法は厳密な方法ではありますが、必要以上に難解であり、この記事の趣旨に合わないので証明は省略します。
気になる方は
Wikipediaの「
上記の証明で納得できる方も多いと思います。
一方で、それでもなお「なにか騙されている気がする」とモヤモヤしている人も少なくないと思います。
私自身も学生の間はずっとモヤモヤしていました。
書籍「数学ガール~ゲーデルの不完全性定理~」には上記の「定義(極限値)による証明」と同様の証明方法が紹介されているのですが、社会人になってから初めてそれを読んだときも、「確かにそう定義すれば同値にはなるけど、そもそもそのように定義すること自体が結論ありきでズルいような気がする」とモヤモヤ、言い方を変えると違和感を覚えていました。
今ではその違和感はなくなりましたが、では、その違和感の正体は一体何だったのでしょうか。
私の考えでは、違和感の原因は主に次の
① 「数」と「数字」の混同
② 「数」と「数字」が一対一対応しているという誤解
③
どういう意味かはこれから説明します。
私たちは日常生活で数と数字の違いはほとんど意識していないと思います。しかし、この問題を考える場合には、数と数字を異なるモノであると認識することが重要になります。
「数」というのは、記号化される前の抽象化された概念(イデア)です。
そして、「数字」というのは、「数」の象徴(シンボル)として記号化されたものです。
「数」は普遍的なものですが、「数字」にはいろいろな表記方法があります。
たとえば、「●●●●」の中に「●」がいくつあるかを「数字」で表す場合、一般的には「
このように、同じ数を表すのに、複数の方法があることがあり得る、ということをまず受け入れる必要があります。
「数と数字は違う」ことを強く意識しましょう。
ローマ数字の場合、
実は、
まず、それが先入観にすぎず、表記方法が複数あってもよいのだ、ということを受け入れましょう。
なんなら、「
ここで、もう一度問題の式変形を見てみましょう。
両辺を3倍して
したがって
「数と数字は違う」と念じながら見てみると、途中の式変形は形式的に行っているだけにすぎず、
よくわからないのなら、いい感じになるように対応させてみればいいのです。
では、どんな「数」を対応させると、いい感じにできるでしょうか。
まず、
なる
ここで、
の不等式が成り立つようにすることができます。
ところが、
ですから、
となり、
これはまずいですね。
一方、
こうして、
「式変形により形式的にあらわれた「数字」の
という結論に至りました。
途中、数式が思ったより多めになってしまいましたが、「直感的に理解したい」という目標は一応達成できたと思っています。
数学が得意な方であれば、数と数字の違いなど自明で、この記事は非常に冗長にみえたことだろうと思います。
しかし、誰もがそのように考えることができるわけではないと思います。
「一旦わかってしまうと、わからなかったときの気持ちがわからなくなる」ということはあると思いますが、わからない人の気持ちを汲み取ることも大事にしたいですね。
ところで、数学は自由です。標準的な数体系である実数体に対して、通常と異なる方法で数を構成し、
はたして、「