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自作問題あなぐら6(定積分で表された数列の極限)

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$$\newcommand{bm}[1]{\boldsymbol{#1}} \newcommand{Lvec}[1]{\overrightarrow{\mathrm{#1}}} $$

問題

 $n$を自然数とし,$x \geq 0$で定義された関数$f_n(x)$
$$ f_n(x) = \frac{n^{\frac{3}{2}}}{x (x + \sqrt{n})} \left\{\log{\left(1 + \frac{x}{\sqrt{n}}\right)}\right\} \sin{\left(\frac{x^2}{n^2}\right)} $$
で定める.ただし,$\log$は自然対数とする.

  1. $x > 0$ において不等式
    $$ x - \dfrac{x^3}{3} \leqq \sin{x} \leqq x $$
    が成り立つことを示せ.

  2. 定積分$I_n$
    $$ I_n = \int_{\sqrt{n}}^{2 \sqrt{n}} f_n(x)\, dx $$
    で定める.不等式
    $$ I_n \leqq \int_1^2 \frac{x}{x + 1} \log{(x + 1)}\, dx $$
    が成り立つことを示せ.

  3. 数列$\{I_n\}$が収束することを示し,その極限値$\displaystyle \lim_{n \to \infty} I_n$を求めよ.

余話

 かなり人工的な問題です(それゆえ美しくない問題だとも思っています).確か,大阪大学2015の問題の類題を作ろうと思い,式を弄ってたら出来た問題だったはず.

解答

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(1) $g(x) = x - \sin{x} \ (x > 0)$$h(x) = \frac{x^3}{3} - g(x) \ (x > 0)$とおく.$g' = 1 - \cos{x} \geq 0$ゆえ$g$は単調増加で,$\displaystyle \lim_{x \to +0} g(x) = 0$と合わせて$g(x) > 0$を得る.よって$x > 0$において$x > \sin{x}$が成立.同様に,$h' = x^2 - g'$および$h'' = 2 x - \sin{x} > x - \sin{x} > 0$ゆえ$h'$は単調増加で,$\displaystyle \lim_{x \to +0} h'(x) = 0$と合わせて$h'(x) > 0$を得る.したがって$h$は単調増加で,$\displaystyle \lim_{x \to +0} h(x) = 0$と合わせて$h(x) > 0$を得る.よって$x > 0$において$x - \frac{x^3}{3} < \sin{x}$が成立.以上より,示すべき命題は示された.
(2) 前問で示した不等式から$\sin(\frac{x^2}{n^2}) \leqq \frac{x^2}{n^2}$が成立するので
$$ I_n \leqq \int_{\sqrt{n}}^{2 \sqrt{n}} \frac{x}{\sqrt{n} (x + \sqrt{n})} \left\{\log{\left(1 + \frac{x}{\sqrt{n}}\right)}\right\} \, dx. $$
ここで$t = \frac{x}{\sqrt{n}}$と置換すると
\begin{align} I_n &\leqq \int_{1}^{2} \frac{\sqrt{n} t}{\sqrt{n} (\sqrt{n} t + \sqrt{n})} \left\{\log{\left(1 + \frac{\sqrt{n} t}{\sqrt{n}}\right)}\right\} \, \sqrt{n} dt \\ &= \int_1^2 \frac{t}{t + 1} \log{(t + 1)}\, dt \\ &= \int_1^2 \frac{x}{x + 1} \log{(x + 1)}\, dx \end{align}
となって示された.
(3) $\displaystyle J = \int_1^2 \frac{x}{x + 1} \log{(x + 1)}\, dx$とおくと前問の結果より$I_n \leqq J$$I_n$に対して,前問と同様に不等式$x - \frac{x^3}{3} \leqq \sin{x}$を用い,$t = \frac{x}{\sqrt{n}}$なる置換をして整理すると
\begin{align} I_n &\geqq J - \frac{1}{3} \int_{\sqrt{n}}^{2 \sqrt{n}} \frac{x^5}{n^{\frac{9}{2}} (x + \sqrt{n})} \left\{\log{\left(1 + \frac{x}{\sqrt{n}}\right)}\right\} \, dx \\ &= J - \frac{1}{3 n^2} \int_1^2 \frac{t^5}{t + 1} \log{(1 + t)}\, dt. \end{align}
$n \to \infty$のとき,第2項は0に収束する.よって,はさみうちの原理から$\displaystyle \lim_{n \to \infty} I_n = J$となる.つまり$I_n$$J$に収束し,$\{I_n\}$が収束することが示される.そして
\begin{align} J &= \int_1^2 \left\{\log{(x + 1)} - \frac{1}{x + 1} \log{(x + 1)}\right\}\, dx \\ &= \left[(x+1)\log{(x+1)} - x - \frac{1}{2}\{\log{(x+1)}\}^2\right]_1^2 \\ &= 3 \log{3} - 2 \log{2} - 1 - \frac{(\log{3})^2 - (\log{2})^2}{2}. \end{align}
以上より
$$ \lim_{n \to \infty} I_n = \log{\frac{27}{4}} - 1 - \frac{(\log{3})^2 - (\log{2})^2}{2}. $$

投稿日:58
更新日:59

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