初投稿です.今回は,投稿テストも兼ねて,次の級数の値を求めようと思います.
級数の値を求める作業に入る前に,二重数列について少し準備をします.二重数列とは,2つの添え字を持つ数列
二重数列
が成り立つということは,任意の正の実数
要は
のように順番に各添字の極限を取ることとは異なることに注意して下さい.例えば二重数列
を考えると,その違いが見えます.
とはいえ,解析学ではよくあるように,ある条件下では順番に各添字の極限を取って得られる値と二重数列の収束値との間に関連があります.それが次の2つの定理です.どちらも証明は簡単なので省略します.また,これらは高木貞治先生の解析概論から引用させて頂いたので,そちらを参照されても良いと思います.
二重数列
が成り立つと仮定する.また,任意の
が成り立つとする.このとき,
が成り立つ.即ち,
二重数列
が成り立つとする.更に,この収束は
上の2つの定理は
大雑把に言うと,定理1は,二重数列が収束するなら逐次的に極限を取っても同じ値に収束するということを,定理2は,片方の添え字に関して一様収束するなら二重数列の極限値を逐次的に極限を取って求められるいうことを言っています.因みに,今回は定理2のみしか用いません.定理1も用いる例はまた別の機会に紹介したいと思います.
以上で準備を終了し,本題に入ります.
さて,級数(1)の値を計算しましょう.ここで級数(1)を再掲しておきます.
極限とシグマが見えるので区分求積を思いつきます.そこで極限の中身を次のように変形します.
普通の区分求積だったら,ここで
が成り立つと予想されます.これからこの直感を正当化していきましょう.
まず,
という値を考えることにします.もしこの極限値が存在すれば,それが求めるべき値に等しくなります.まず
が成り立ちます.
と書けます.さて,上で掲げた定理2を用いたいので,この収束が
が成り立つことが分かります.即ち,和
と上から抑えることができます(
が成り立ちます.最右辺の
の収束が
さて,定理2を用いるためには極限
の存在を言わなければなりません.
となります.そして,簡単な計算から
が成り立つので,この収束は区間
と計算できます.よって定理2から,
となることが分かります.以上より,最終的な解答は次の通りです.
今回は,最後の
今回の記事は以上です.
お読み頂きありがとうございました.
投稿した後に気づいたのですが,二重数列を持ち出さずとも上の極限の値は求められますね.具体的な方法は次の通りです.
であり,
が成り立ちます.これより,
となるので,
が成り立ちます.ところで,区分求積法から
が成り立つので,
が分かりました.