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お気に入りの極限

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 この記事では, 以下の式の解説をしようと思います.


k=0n(nk)kk!eΩn1+Ω

ただし, Ω=0.5671ΩeΩ=1を満たす実数です.

 これは実は母関数をとると簡単になります.
n=0znk=0n(nk)kk!
として, nn+kとすることで, 足す範囲は0n, 0kとなって,

n=0znk=0n(nk)kk!=n=0k=0nkk!zn+k=n=0znenz=11zez

この冪級数の収束半径は|z|<Ωとなります. ここで嬉しいことに右辺はCでの有理型関数になっていて, 全て1位の極になっています.

 ここで右辺の関数のz=Ωでの留数は
limzΩzΩ1zez=1(1+Ω)eΩ=Ω1+Ω

なので,

11zez11+Ω11z/Ω

z=Ωで正則であり, さらに言えば次に絶対値の小さい極(zez=1の複素数解のうち2番目に絶対値の小さいもの)をz=Ω2とすれば

n=0(k=0n(nk)kk!Ωn1+Ω)zn=11zez11+Ω11z/Ω

|z|<|Ω2|で成り立ちます. ここでΩ2=1.533+i4.375より|Ω|<|Ω2|に注意すれば,

R<Ω1, C,|k=0n(nk)kk!Ωn1+Ω|<CRn

 これとΩn=eΩnより

k=0n(nk)kk!eΩn1+Ω

が導けました.

 このようにして極を除く操作を続けると, 任意のR>0に対して

k=0n(nk)kk!zez=1|z|<Rezn1+z+o(Rn)

が成り立ちます.

 他にも, 母関数をとる際にxkをつけてあげると

k=0n(nk)kk!xkeW0(x)n1+W0(x)

となります. ただしW0(x)はランベルトのW関数で, xexの逆関数です.

 この式でx=eとすれば, W0(e)=1なので

limnk=0n(nk)kk!enk=12

という面白い極限も得られます.

 ところでこの式,

limnk=0nnkk!en=12

という少し有名な(?)式ととても似ていますよね. なにか理由はあるのでしょうか?

 この記事は以上となります. 読んでくださった方, ありがとうございました.

投稿日:202224
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投稿者

東大数理M1

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