11

裏・栗まんじゅう問題

635
0

序章

栗まんじゅうが5分に1回分裂することはよく知られていますね。しかし、私はある疑問を抱きました。

「本当に分裂の間隔は5分なのだろうか?栗まんじゅうはどうやって5分を計っているのだろうか?」

自然界において、似たような現象に放射性物質の崩壊があります。こちらは物質ごとに半分になるまでの時間である半減期が存在しますが、半減期を迎えるごとに一斉に半分になるのではなく、各原子が確率的に崩壊することで、全体でみると半減期の時間がたった時に物質の量が半分になります。

もしそうなら、栗まんじゅうも確率的に分裂し、その「倍増期」が5分であると考えるのが妥当ではないでしょうか。

この記事では、確率的に増殖する栗まんじゅうを考えます。

問題

栗まんじゅうは微小時間ごとにその時間に比例する確率で分裂を行うものとします。また、そのときの比例定数は、十分に多い数の栗まんじゅうを集めた場合に平均して5分ごとに2倍になるように設定するとします。このとき、以下の問題が考えられます。

裏・栗まんじゅう問題

栗まんじゅうが有限の時間に無限個に増殖する確率は0であるか?

栗まんじゅうの個数が発散すると数学的にいろいろと不都合が生じるので、これはまさしく問題ですね。

離散栗まんじゅう

いきなり連続的な時間を考えるのは大変なので、離散的なケースを考えましょう。

すなわち、各栗まんじゅうが、1tickごとに確率pで分裂するものとします。
また、1個の栗まんじゅうがttick後にn個に分裂する確率をP(t,n)で表すことにします。

1個の栗まんじゅうがttick後にn個に分裂するとき、次のシナリオが考えられます。

  • 最初のtickで分裂せず、残りt1tickでn個に分裂する。
  • 最初のtickで分裂する。片方はi個に分裂し、もう片方はni個に分裂する。(0<i<n)

よって、P(t,n)は次のような漸化式で表されます。

  • P(0,1)=1,P(0,n)=0(n1)
  • P(t,n)=(1p)P(t1,n)+pi=1n1(P(t1,i)P(t1,ni))(t>0)

実験してみましょう。p=12として、t=4まで計算してみます。n=1,2,,2nに対するP(t,n)を横に並べて示しました。

t=0:1
t=1:121,121
t=2:223,323,223,123
t=3:1627,2827,2827,2527,1627,1027,427,127
t=4:2048215,3840215,4480215,4880215,4416215,3976215,3128215,2337215,1616215,1036215,576215,278215,112215,36215,8215,1215

(ところでt=3の分子の数列ってOEISに載ってないんですよね。もしかしてこれって新規性だったりしますか?)

数値を並べてもわかりにくいので、平均と分散を求めてみましょう。mが平均で、σ2が分散です。

t=0:m=1,σ2=0
t=1:m=32,σ2=14
t=2:m=94,σ2=1516
t=3:m=278,σ2=17164
t=4:m=8116,σ2=1755256

期待値が1tickごとに32倍になっていますね。
一般に、分裂する確率がpのときは1+p倍になることが容易に示せます。
ということは、分裂する確率を1Nとすると、Ntick後には(1+1N)N倍、すなわちNe倍になりますね。

連続栗まんじゅう

ここまでの話を連続関数に移動させましょう。簡単のため、時間1e倍になるように時間の単位を調整しておきます。このとき、1個の栗まんじゅうが微小時間dtのうちに分裂する確率はdtであり、時間tまで1個のままである確率はet、時間tからdt以内に初めて分裂する確率はetdtとなります。

時間aが経過した後の個数の確率分布を考えましょう。

1個の場合

明らかにeaです。

2個の場合

「時刻tで分裂し、分裂した2個は残りのatの時間は分裂しない」というシナリオが起こった場合に2個になります。

正確に時刻tで分裂する確率は0なので、時刻tからt+dtまでの間に分裂するシナリオを考えましょう。

最初の栗まんじゅうが時刻tからt+dtまでの間に分裂する確率はetdtです。

分裂した栗まんじゅうが残りの時間分裂しない確率は、「atよりも後に分裂する確率」と考えてatexdx=e(at)です。

よって、全体での確率は

0aet(e(at))2dt=0aet2adt=e2a(ea1)

となります。全体としてO(ea)なのが面白いですね。分裂した2個の両方が分裂しないよりは、最初の1個が分裂しないほうが可能性が高いということを表しているといえます。

また、この確率はa=ln2で最大値を取ります。単位時間でe倍になるように時間の単位を定めたので、ln2は栗まんじゅうの個数が2倍になる時間ですね。たしかに一致しています。

3個の場合

「最初の栗まんじゅうが分裂し、さらに分裂したうちの片方だけが分裂する」というシナリオが考えられます。

最初の栗まんじゅうが時刻tからt+dtまでの間に分裂する確率はetdtです。

分裂した栗まんじゅうについて、

  • 分裂した栗まんじゅうが残りの時間分裂しない確率は、e(at)です。
  • 分裂した栗まんじゅうが残りの時間でもう1回だけ分裂する確率は、e2(at)(eat1)です。

これらを全てかけ合わせて、求める確率は

0aete(at)e2(at)(eat1)dt

ですね。

.

.

.

ごめんなさい、騙しました。

どちらの栗まんじゅうが分裂するかを考慮する必要があります。確率の計算間違いあるあるですね。

では気を取り直して、積分を計算していきましょう。

20aete(at)e2(at)(eat1)dt=20a(et2ae2t3a)dt=2e2a(ea1)2e3a(12e2a12)=2e2a(ea1)e2a(eaea)=ea2e2a+e3a=e3a(ea1)2

4個以上の場合

シナリオが複数出てきて計算がしんどいです。誰か解いてください

でも、なんとなくaeaになりそうな気がする

裏・栗まんじゅう問題が解決する日は来るのだろうか・・・

あとがき

そのうち少しずつ計算を足すかもしれません。

この連続栗まんじゅうの確率分布に何か名前付いてますか
もしなければ今後これに関する別の記事を書くときのために栗まんじゅうの分裂に関するなゆ分布と呼ぶことにします
また1個の栗まんじゅうが分裂するまでの時間を一般の確率分布にしたものを栗まんじゅうの分裂に関する一般なゆ分布と呼ぶことにします
だって、上位互換の名前を他の人に取られたら嫌じゃないですか

投稿日:2022213
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

nayuta_ito
114
35535

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. 序章
  2. 問題
  3. 離散栗まんじゅう
  4. 連続栗まんじゅう
  5. 1個の場合
  6. 2個の場合
  7. 3個の場合
  8. 4個以上の場合
  9. あとがき