初めまして。Arsnicと申します。今回は、とある積分に関して語り尽くしたいと思っております。
それ程高度な内容ではないので(簡単な微分方程式です)、ぜひ読んでいってください!
さて、その積分は、
$$I=\int_{0}^{2} x\sqrt{x^{\log x}\cdot \sqrt[3]{x^{(\log x)^2}\cdot \sqrt[4]{x^{(\log x)^3}\cdot \sqrt[5]{x^{(\log x)^4}\cdots}}}} dx$$
です。
この積分は、バークレーIntegration beeの決勝で出題された問題だという情報を友人よりいただきました。
この積分の解き方等を解説していきます。
Integration beeは有名なので、この問題をご存じの方も多いと思われますが、ぜひ一度チャレンジしてみては?
もう少し下の行から解説をはじめます。
飛ばし飛ばしで読んでいる方に、ネタバレを防ぐため、少しだけ行間を開けさせていただきます。
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では。
まず、被積分関数を$f(x)$と置きます。
そして、被積分関数の、自然対数をとります。
ひとまず$\log f(x)$ですね。
その結果、$$ \log f(x)=\log x+\dfrac{(\log x)^2}{2!}+\dfrac{(\log x)^3}{3!}\cdots$$になりますから、総和記号を用いて、$$\sum_{n=1}^{\infty} \dfrac{(\log x)^n}{n!}$$になります。
この後 式変形するときに上の無限級数を使うので、$g(x)$とでもおいておきましょう。
ここまでくると、勘のいい人は、「おっ」となりますよね。
先に一般的な解法を解説していきます。
一般的な解法を解説します。
先ほどの$g(x)$を微分すると、$$g'(x)=\dfrac{1}{x} \sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{(\log x)^{n-1}}{(n-1)!}$$となり、
上の無限級数$(g'(x))$は、初項が$1$ということ以外、$g(x)$と同じですから、$$g'(x)=\dfrac{1}{x} (g(x)+1)$$という微分方程式が完成します。
この微分方程式を解くと、$|x|=|y+1|$が出てきます。絶対値は$\log$の名残です。
ここで、取り扱っている関数は、常に$x>0$ですから、$x=|y+1|$としてよく、場合分けすると、$$y=-x-1$$$$y=x-1$$二つが出てきます。
ここで、先ほど取り扱っていた無限級数は、$\log$が入っており、符号は正であり、単調増加であることがいえるので、
$g(x)=x-1$となり、$f(x)=e^{x-1}$が導出できます。
したがって、$$\int_{0}^{2} e^{x-1} dx=e-\dfrac{1}{e}$$となります。
$e$は、自然対数の底です。
いかがでしょう。この解法でも非常にスマートですが、もう少し楽な方法がありそうですね。
では、この記事の目玉である、「マクローリン展開」に入っていこうと思います。
マクローリン展開を用いて、先ほどの無限級数$g(x)$を変形していきたいと思っております。
$\cdots$の前に、軽くマクローリン展開に関する説明を入れます。
マクローリン展開は、端的に言うと、「様々な関数を多項式で近似する展開」です。
有名な関数のマクローリン展開は、$$\sin x=x-\dfrac{x^3}{3!}+\dfrac{x^5}{5!}\cdots$$$$\cos x=1-\dfrac{x^2}{2!}+\dfrac{x^4}{4!}\cdots$$です。
また、マクローリン展開の一般形は、
「無限回微分可能な関数$f(x)$について、以下の等式が成立する。」
$$f(x)=\sum_{k=0}^{\infty} f^{(k)} (0) \dfrac{x^k}{k!}$$
これが一般形です。
さて、ここから本題に入ります。
今回用いるのは、関数$e^x$のマクローリン展開です。
$$e^x=1+x+\dfrac{x^2}{2!}+\dfrac{x^3}{3!}+\cdots$$で定義されます。
$e^x$のマクローリン展開の式と、無限級数$g(x)$を見比べると......
$e^x$のマクローリン展開の式に、$x=\log x$を代入した形といえます!
これがわかれば、あとは野となれ山となれ計算で、式変形していきます。
$$g(x)=\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{(\log x)^n}{n!}-1$$$$=e^{\log x}-1$$$$=x-1$$が一瞬で導出でき、$$\int_{0}^{2} e^{x-1} dx=e-\dfrac{1}{e}$$が一瞬で出ます。
いかがでしたでしょうか。まだまだほかの解法もたくさんあると思いますが、一応オーソドックスな微分方程式を用いる方法と、ショートカットでマクローリン展開を用いる方法を書きました。
大学入試でも、意外とマクローリン展開などを知っていると、筋道が見えることもあるので、おすすめです。
はじめての投稿なので、不慣れな部分もありますので、誤植などがあるかもしれません。(発見したら教えてくださるとありがたいです...)
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また、微分方程式による解法は、知り合いの方から教えていただきました。ありがとうございました。