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現代数学解説
文献あり

Liuによる展開公式

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q微分を
Dq,xf(x):=f(x)f(xq)x
とする.

q-Leibniz則

[nk]:=(q;q)n(q;q)k(q;q)nkとする.
Dq,xn(f(x)g(x))=k=0nqk(kn)[nk]Dq,xk(f(x))Dq,xnk(g(xqk))

nに関する帰納法によって示される.

Liu(2002)

f(x)x=0の近傍で正則関数であるとするとき,
f(a)=0n(1aq2n)(aq/b;q)nbn(q,b;q)nDq,xn(f(x)(x;q)n1))x=aq
が成り立つ.

bに関するべき級数は
bn(b;q)n=bn+O(bn+1)
によって係数がbによらない無限和として一意的に表すことができる. また,
bn(b;q)n

(aq/b;q)nbn(b;q)n=k=0n1(baqk)(b;q)n
からなる関数列の係数がbによらない線形和として一意に表すことができる. よって, 関数f(b)
f(b)=0nAn(aq/b;q)nbn(b;q)n
と展開したときの係数Anは一意的である. 両辺に(b;q)n1を掛けて,
f(b)(b;q)n1=k=0n1Ak(aq/b;q)kbk(1bqk)(1bqn2)+An(aq/b;q)nbn1bq+n<kAk(aq/b;q)kbk(1bqn1)(1bqk1)
両辺にDq,bnを作用させて, b=aqとすると
Dq,bn(f(b)(b;q)n1)b=aq=k=0n1AkDq,bn((aq/b;q)kbk(1bqk)(1bqn2))b=aq+AnDq,bn((aq/b;q)nbn1bq)b=aq+n<kAkDq,bn((aq/b;q)kbk(1bqn1)(1bqk1))b=aq
1つ目の項はbに関するn1次の多項式のnq微分だから0になる. nに関する帰納法によって,
Dq,bn(aq/b;q)kqk=(q;q)k(q;q)kn(aq/b;q)knbkn
が分かるので,
Dq,bn((aq/b;q)kbk)b=aq={0kn(q;q)nk=n
が成り立つ. よってq-Leibniz則によって3つ目の項0になり, 2つ目の項は
AnDq,bn((aq/b;q)nbn1bq)b=aq=(q;q)n1aq2nAn
となる. これより,
An=1aq2n(q;q)nDq,bn(f(b)(b;q)n1)b=aq
であるからこれを代入して定理を得る.

nに関する帰納法によって
Dq,xn(tx;q)(sx;q)=sn(t/s;q)n(t;q)n(tx;q)(sx;q)
を示すことができる. その特別な場合として,
Dq,xn(x;q)n1(x;q)n+m=qn(n1)(x;q)n1(q;q)n+m(q;q)m(x;q)2n+m
を得る. 定理を
f(b)=0n(a/z;q)nzn(b;q)n
に適用することを考える. Heineの和公式を用いると,
Dq,xn((x;q)n1f(x))x=aq=nk(a/z;q)kzkDq,xn((x;q)n1(x;q)k)x=aq=(q,a/z,a;q)nqn(n1)zn(a;q)2n+12ϕ1[aqn/z,qn+1aq2n+1;z]=(q,a/z,a;q)nqn(n1)zn(a;q)2n+1(zqn+1,aqn;q)(aq2n+1,z;q)=(a/z,q;q)nqn(n1)zn(z;q)n+1
であるから, aazとして以下を得る.

Rogers-Fineの恒等式

0n(a;q)n(b;q)nzn=0n(1azq2n)(azq/b,a;q)nqn(n1)(bz)n(b;q)n(z;q)n+1

定理2からは他にもRogersの6ϕ5和公式やWatsonの8ϕ7変換公式, Hecke-Rogers型の公式などの様々な公式を導出することができる.

参考文献

[1]
Zhi-Guo Liu, An Expansion Formula for q-Series and Applications, Ramanujan J, 2002, 429-447
投稿日:9日前
更新日:9日前
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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