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高校数学解説
文献あり

第二種スターリング数による累乗和の公式

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今回紹介するのは1からnまでの自然数の累乗の和
k=1nks
の一般項についてです.
一番有名な表示は,ベルヌーイ数を使った次の公式ですね

Faulhaberの公式

k=1nks=1s+1i=0ss+1CiBink+1i

この公式については他の方がたくさん解説しているので特にここでは扱いません.

下降階乗冪の総和

今回扱うのは,以下に示す,下降階乗冪ni=n(n1)(n2)(ni+1)
の総和公式を用いた方法です.連続する整数の積の総和が連続する整数の積として表現できることは有名なので知っている方も多いと思います.それを定式化したのが以下の公式です.

下降階乗冪の総和

ns=n(n1)(n2)(ns+1)とする.
nNに対して,次の等式が成立する.
k=1nks=1s+1(n+1)s+1

この公式は数列における階差や総和を,関数の微積分に関連づけて扱うという「和差分法」の考え方が背景にあるのですが,和差分については本記事では割愛します.気になる方は調べてみてください.

ks=1s+1(s+1)ks=1s+1{(k+1)ks(ks)ks}=1s+1{(k+1)s+1ks+1}
であるから,
k=1nks=1s+1k=1s{(k+1)s+1ks+1}=1s+1{(n+1)s+11s+1}=1s+1(n+1)s+1

実はこれを使えば,その場で特定の次数の累乗和の公式を作ることは簡単にできます.
ksk1,k2,,ksの一次結合で表してしまえばいいのです!
例を見ていきましょう.

k=1nk1=k=1nk1=12(n+1)2=12n(n+1)
k2=k+k(k1)だから
k=1nk2=k=1n(k1+k2)=12(n+1)2+13(n+1)3=16n(n+1)(2n+1)
k3=k+3k(k1)+k(k1)(k2)だから
k=1nk3=k=1n(k1+3k2+k3)=12(n+1)2+33(n+1)3+14(n+1)4=14n2(n+1)2

k4=k+7k(k1)+6k(k1)(k2)+k(k1)(k2)(k3)だから
k=1nk4=k=1n(k1+7k2+6k3+k4)=12(n+1)2+73(n+1)3+64(n+1)4+15(n+1)5=130n(n+1)(2n+1)(3n2+3n1)

だんだん下降階乗冪の和で表すのが辛くなってきますが,そういうときは,
k5=Ak+Bk(k1)+Ck(k1)(k2)+Dk(k1)(k2)(k3)+Ek(k1)(k2)(k3)(k4)
のようにおいて方程式を解きましょう.なんと驚くことにk=1,2,3,4を順番に代入していけば係数が順番に求まっていくという仕掛けです.

下降階乗冪の和で表すこの方法,教科書に載っている「(k+1)sksの総和を考えて〜」という方法よりよっぽど簡単な気がしませんか?

第二種スターリング数

特定の次数の累乗和の公式を作ることができるようになりましたが,やはり人は一般化したくなるものです.そこで,べき乗を下降階乗冪の和で表す時,その係数がどのような値になるかを見ていきましょう.
結論から言うとこれは以下に述べる「第二種スターリング数」というものになります.

第二種スターリング数

区別できるs個のものを空なしのi個の区別できないグループに分割する方法の総数を,第2種スターリング数といい,sSiで表す.

第二種スターリング数は,べき乗を下降階乗冪の和として表したときの展開係数として現れる.
ks=i=1ssSiki

一見驚きですが,下降階乗冪を順列の総数sPiだと思って見れば至極当たり前の等式です.

ksとする.区別できるs個のものを区別できるk個のグループに,(空を許して)分ける方法の総数はks通りである.
一方,このk個のグループのうち,i個にものが入っている分割の総数を考えると,
(区別できるs個を(空なしで)i個の区別できないグループに分割する方法の総数)
×(k個のグループからi個を順序を区別して選ぶ方法の総数)
であるから,sSikPiに等しい
すなわち,次の等式が成り立つ
ks=i=1ssSikPi

kPi=kiであるから,ksの時,次の等式が成り立つことが分かる
ks=i=1ssSiki
ksにおいて等式が成り立つから,この等式の両辺は多項式として等しい.
よってk<sにおいても等式が成り立つ事がわかる.

展開係数が第二種スターリング数になることが分かったので,あとは第二種スターリング数を与える計算式を用意すればOKです.

第二種スターリング数には,次の漸化式が成立する.
sS1=sSs=1sSi=s1Si1+is1Si

特定の1つが単独で1つのグループに入るか否かで場合分けすれば導くことができます.

sS1=sSs=1の成立は定義より明らかであるから,sSi=s1Si1+is1Siを示す
区別できるs個のもののうち,特定の一つをeとする.

  1. eが単独で一つのグループに入る場合
    e以外のs1個を区別できないi1個に分ける方法の総数なので,
    ${{s-1}}S{i-1}$通り
  2. それ以外の場合
    e以外のs1個を区別できないi個に分ける方法の総数は${{s-1}}S_i$通り
    eを入れるグループの選び方がi通りだから
    $i{
    {s-1}}S_i$通り

以上より,
sSi=s1Si1+is1Si

こんな感じで表を書いていけばわかりやすいですね.

i=1i=2i=3i=4i=5i=6
s=11
s=211
s=3131
s=41761
s=511525101
s=61319065501

結論

これらを踏まえると,第二種スターリング数を用いた次の累乗和の公式が得られます.

1からnまでの自然数の累乗の和は,次のように表せる
k=1nks=(n+1)i=1ssSii+1ni 
ただしsN, nN,sSiは第二種スターリング数.
ni=n(n1)(n2)(ni+1)

k=1nks=k=1n(i=1ssSiki)=i=1s(sSi k=1nki)
公式2(下降階乗冪の総和)より,
i=1s(sSi k=1nki)=i=1ssSii+1(n+1)i+1=(n+1)i=1ssSii+1ni
よって
k=1nks=(n+1)i=1ssSii+1ni

参考文献

投稿日:2022323
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dragoemon
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