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高校数学解説
文献あり

調和数列の積の冪の部分分数分解

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自ブログにて、1乗と2乗の場合を考察したので、一般化を試みる。

問題

調和数列の積の冪の部分分数分解

非負整数n、正の整数N、複素数zについて、k=0n1(z+k)N=i=1Nk=0nan,kN,i(z+k)iであるとき、an,kN,iとは。

複素関数の微分などカジュアルにやっているが、zを実数として見ても問題ないような記述になっているはず。

Heavisideの方法

1jNなる整数jおよび0mnなる整数mについて、1/(z+m)jの係数an,mN,jをHeavisideの方法により求める。すなわち、両辺に(z+m)Nを掛けたもののz=mにおけるNj階微分係数を求める。

右辺について、dNjdzNj(z+m)Ni=1Nk=0nan,kN,i(z+k)i=dNjdzNji=1N[kman,kN,i(z+m)N(z+k)i+an,mN,i(z+m)Ni]=i=1Nkman,kN,idNjdzNj(z+m)N(z+k)i+dNjdzNji=1Nan,mN,i(z+m)Ni=[i=1Nkman,kN,idNjdzNj(z+m)N(z+k)i+i<jan,mN,idNjdzNj(z+m)Ni]+an,mN,j(Nj)!であるが、この右辺の総和部は微分結果にz+mが因数として残るから、dNjdzNj(z+m)Ni=1Nk=0nan,kN,i(z+k)i|z=m=an,mN,j(Nj)!となる。

また、左辺について、dNjdzNj(z+m)Nk=0n1(z+k)N=dNjdzNj[(z+m)k=0n1z+k]Nと表せる。

以上より、両辺を比較すると、

係数の微分表示

an,mN,j=1(Nj)!dNjdzNj[(z+m)k=0n1z+k]N|z=mの右辺はどうなるか。

という問題に帰着するので、これを解く。

準備

各種、文字を定義してゆく。

まず、pn,m(z)(z+m)k=0n1z+k=km1z+kと定義する。すると、当該の問題は、

係数の微分表示 - 記号に置き換え

an,mN,j=1(Nj)!dNj(pn,m)NdzNj(m)の右辺はどうなるか。

と書き直すことができる。また、pn,m(m)=km1km=[k=0m11km][k=m+1n1km]=[k=m11(m+k)m][k=1nm1(m+k)m]=[k=m11k][k=1nm1k]=[k=1m1k][k=1nm1k]=(1)mm!(nm)!=(1)mn!(nm)であり、Cn,m(1)mn!(nm)と定義する。

さらに、sn,m(z)k=0n1z+k1z+m=km1z+kと定義すると、そのν階導関数は、sn,m(ν)(z)=(1)νν!km1(z+k)ν+1となる。

一般化調和数

nを非負整数、rを正の整数として、n番目のr次一般化調和数Hn,rを、
Hn,rk=1n1kr
で定める。

ここで、sn,m(ν)(m)=(1)νν!km1(km)ν+1=(1)νν![k=0m11(km)ν+1+k=m+1n1(km)ν+1]=(1)νν![k=m11((m+k)m)ν+1+k=1nm1((m+k)m)ν+1]=(1)νν![k=m11kν+1+k=1nm1kν+1]=(1)νν![k=1m(1)ν+1kν+1+k=1nm1kν+1]=ν![k=1m1kν+1+(1)νk=1nm1kν+1]=ν!(Hm,ν+1+(1)ν+1Hnm,ν+1)であり、rを正の整数として、H¯n,m,rHm,r+(1)rHnm,rと定義する。

したがって、{pn,m(m)=Cn,msn,m(j)(m)=j!H¯n,m,j+1と表される。

具体例

ひたすら手計算をがんばったよ。

導関数

順次、前の結果の1階微分を機械的に計算してゆけばよい。

ddz(pn,m)N=ddzkm1(z+k)N=km[(ddz1(z+k)N)ik,m1(z+i)N]=km[N(z+k)N+1ik,m1(z+i)N]=Nkm[1z+kim1(z+i)N]=N[km1(z+k)N]km1z+k=N(pn,m)Nsn,m
d2dz2(pn,m)N=(pn,m)N[N2(sn,m)2Nsn,m]
d3dz3(pn,m)N=(pn,m)N[N3(sn,m)3+3N2sn,msn,mNsn,m]
d4dz4(pn,m)N=(pn,m)N[N4(sn,m)46N3(sn,m)2sn,m+4N2sn,msn,m+3N2(sn,m)2Nsn,m(3)]
d5dz5(pn,m)N=(pn,m)N[N5(sn,m)5+10N4(sn,m)3sn,m10N3(sn,m)2sn,m15N3sn,m(sn,m)2+5N2sn,msn,m(3)+10N2sn,msn,mNsn,m(4)] d6dz6(pn,m)N=(pn,m)N[N6(sn,m)615N5(sn,m)4sn,m+20N4(sn,m)3sn,m+45N4(sn,m)2(sn,m)215N3(sn,m)2sn,m(3)60N3sn,msn,msn,m15N3(sn,m)3+6N2sn,msn,m(4)+15N2sn,msn,m(3)+10N2(sn,m)2sn,m(5)]

機械ではないので、ここで力尽きる。

z=mにおける微分係数

上記の結果を機械的に置き換えることで求められる。

an,mN,N=10!Cn,mN
an,mN,N1=11!NCn,mNH¯n,m,1
an,mN,N2=12!NCn,mN(NH¯n,m,12+H¯n,m,2)
an,mN,N3=13!NCn,mN(N2H¯n,m,13+3NH¯n,m,1H¯n,m,2+2H¯n,m,3)
an,mN,N4=14!NCn,mN(N3H¯n,m,14+6N2H¯n,m,12H¯n,m,2+8NH¯n,m,1H¯n,m,3+3NH¯n,m,22+6H¯n,m,4)
an,mN,N5=15!NCn,mN(N4H¯n,m,15+10N3H¯n,m,13H¯n,m,2+20N2H¯n,m,12H¯n,m,3+15N2H¯n,m,1H¯n,m,22+30NH¯n,m,1H¯n,m,4+20NH¯n,m,2H¯n,m,3+24H¯n,m,5) an,mN,N6=16!NCn,mN(N5H¯n,m,16+15N4H¯n,m,14H¯n,m,2+40N3H¯n,m,13H¯n,m,3+45N3H¯n,m,12H¯n,m,22+90N2H¯n,m,12H¯n,m,4+120N2H¯n,m,1H¯n,m,2H¯n,m,3+15N2H¯n,m,23+144NH¯n,m,1H¯n,m,5+90NH¯n,m,2H¯n,m,4+40NH¯n,m,32+120H¯n,m,6)

一般化

準備

Bell多項式

非負整数n,k(n)について、Bell多項式Bn,kを、Bn,k(x1,x2,,xnk+1)n!i=1nk+1ji!i=1nk+1(xii!)jiと定義する。ただし、{i=1nk+1ji=ki=1nk+1iji=nの非負整数の解(j1,j2,,jnk+1)全体にわたって和をとる。

Bell多項式

(n,k)=(0,0)のとき、
{i=11ji=0i=11iji=0の非負整数解はj1=0のみだから、B0,0(x1)=0!0!(x11!)0=1である。

(n,k)=(3,0)のとき、
{i=14ji=0i=14iji=3の非負整数解はないから、B3,0(x1,x2,x3,x4)=0である。

(n,k)=(3,1)のとき、
{i=13ji=1i=13iji=3の非負整数解は(j1,j2,j3)=(0,0,1)のみだから、B3,1(x1,x2,x3)=3!0!0!1!(x11!)0(x22!)0(x33!)1=x3である。

(n,k)=(3,2)のとき、
{i=12ji=2i=12iji=3の非負整数解は(j1,j2)=(1,1)のみだから、B3,2(x1,x2)=3!1!1!(x11!)1(x22!)1=3x1x2である。

(n,k)=(3,3)のとき、
{i=11ji=3i=11iji=3の非負整数解はj1=3のみだから、B3,3(x1)=3!3!(x11!)3=x13である。

完全Bell多項式

非負整数nについて、n次完全Bell多項式Bnを、Bn(x1,,xn)k=0nBn,k(x1,x2,,xnk+1)と定義する。

完全Bell多項式

B0=B0,0(x1)=1
B3(x1,x2,x3)=B3,0(x1,x2,x3,x4)+B3,1(x1,x2)+B3,2(x1,x2)+B3,3(x1)=x13+3x1x2+x3

Faà di Brunoの公式 - Bell多項式による表示

適当な複数回微分可能な関数f(z),g(z)について、dndznf(g(z))=k=0nf(k)(g(z))Bn,k(g(z),g(z),,g(nk+1)(z))が成り立つ。ただし、nは非負整数。

Faà di Brunoの公式 - 完全Bell多項式による表示

Faà di Brunoの公式について、f(z)=ezとすると、dndzneg(z)=k=0neg(z)Bn,k(g(z),g(z),,g(nk+1)(z))=eg(z)Bn(g(z),g(z),,g(n)(z))が成り立つ。

証明

さて、上記の導関数の具体例たちをよく見ると、Bell多項式で表すことができそうであり、実際に次の補題が成立する。

非負整数jについて、djdzj(pn,m)N=(pn,m)NBj(Nsn,m,Nsn,m,,Nsn,m(j1))が成り立つ。

まず、g(z)Nlogpn,m(z)と定義する。このとき、eg(z)=eNlogpn,m(z)=(pn,m(z))Nである。また、sn,m(z)=km1z+k=kmddzlog(z+k)=ddzlogkm(z+k)=ddzlogpn,m(z)と表すことができ、すなわち、g(z)=Nddzlogpn,m(z)=Nsn,m(z)となるから、非負整数jについて、g(j+1)(z)=Nsn,m(j)(z)が成り立つことがわかる。

ここで、Faà di Brunoの公式の例より、djdzj(pn,m)N=(pn,m)NBj(Nsn,m,Nsn,m,,Nsn,m(j1))となり、示された。

結論

以上の議論から、次の公式が証明された。

調和数列の積の冪の部分分数分解

非負整数n、正の整数N、複素数zについて、k=0n1(z+k)N=i=1Nk=0nan,kN,i(z+k)iが成り立つ。ただし、an,kN,i=[(1)kn!(nk)]N1(Ni)!BNi(0!N(Hk,1Hnk,1),1!N(Hk,2+Hnk,2),,(Ni1)!N(Hk,Ni+(1)NiHnk,Ni))である。

参考文献

投稿日:2022330
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