みなさんお久しぶりです.この度学コンで問題を採用されたため,一年越しに Mathlog を書いてみようかなと思います.
学コンに自作問題が採用されたのは二度目です.一度目は 2020 年 6 月号で採用されたので,二年ぶりの採用になります.前回の問題のリンクを貼っておくので,もしよければこちらの方にも挑戦してみてください.
学コンに自作問題を送ったのが上の問題と今回の問題だけなので,採用率 100% です!うれしいね!!最近は作問あんまりできてないので,多分もう学コンには問題投稿しないかなぁ...
この問題を作ったのは,実は私が高校生の時なので,もう二年以上前です.たしか 2020 年の 5 月くらいに送ったので,採用されるまでに二年近くかかりました.東京出版の方からずっと連絡が無かったので,この問題は不採用になったのだと思ってそのまま放ってました.そのまま問題の存在すら忘れてお蔵入りになりそうだったところ,今年の 2 月頃に採用の連絡をいただきました.作問から二年以上もたっていたけど,採用される喜びというのは薄れないものですね.葬られかけた問題が人々の目に留められることができてうれしいです.
そろそろ問題を見ていきましょう.私が大数に送った問題です.
$p^{st}+q^s=r^s$ を満たす素数の組 $(p,q,r,s,t)$ の組を全て求めよ.
ただし,フェルマーの最終定理を用いてはいけない.
本当にこれを送りました...今見るとなんか恥ずかしいですね...「フェルマーの最終定理を用いてはいけない.」なんて書く機会一生ないだろうから書いてみたくて書いたんだろうと思いますが,なんかキモい.
でも実際,この問題はフェルマーの最終定理を認めると自明に $s=2$ が分かってしまうんですよね...それだと面白くないので,なんとか解き手側には使ってほしくないという願いも込めながら但し書きを書いた気もします.ここがこの問題のワケありポイントで,私はこのせいもあって問題が不採用になったのだと思い込んでました.
最終的には,但し書きが削除され,さらに小問に分かれた形での出題となりました.
難易度は,大学入試の問題としては難しめだと思いますが,競技数学をやってる人からしたらそこまで難しくはないのかなと思います.フェルマーの最終定理を使った解答がどう採点されるのか気になりますね.
素数 $p,q,r,s,t$ が $p^{st}+q^s=r^s$ を満たす.
$(1)$ $p,q$ の少なくとも一方は $2$ であることを示せ.
$(2)$ $p,q,r,s,t$ を求めよ.
$(1)$ 与式から $q\lt r$ より $r$ は奇素数.両辺の偶奇を考えることにより,$p,q$ のうち一方は $2$ でもう一方は奇素数である.
$(2)$ フェルマーの最終定理より s=2 である. まず,$s=2$ を示す.$p^t,q$ のうち偶数であるものを $a$,奇数であるものを $b$ とおくと
$$a^s=r^s-b^s=(r-b)(r^{s-1}+r^{s-2}b+\ldots+rb^{s-2}+b^{s-1})$$
ここで,$s$ が奇素数であるとする.$r,b$ は奇数であるから $r^{s-1-i}b^i$ は奇数であり,$r^{s-1}+r^{s-2}b+\ldots+rb^{s-2}+b^{s-1}(\geq 3)$ は奇数個の奇数の和であるから奇数であり,奇素数を素因数に持つ.ところが $a^s$ は $2$ べきであるから,左辺は素因数に奇素数を持たず,右辺は素因数に奇素数を持つことになり矛盾.したがって $s=2$ である.
与式に $s=2$ を代入すると $p^{2t}+q^2=r^2, q^2=(r+p^t)(r-p^t)$.$r+p^t\gt r-p^t\geq 1$ より $(r+p^t,r-p^t)=(q^2,1)$. 辺々加えて $2r=q^2+1$ より $q$ は奇素数であるから $(1)$ より $p=2$ である.また,辺々引いて $2p^t=2^{t+1}=q^2-1=(q+1)(q-1)$.$q+1$ と $q-1$ の差は $2$ でともに $2$ べきであるから $(q+1,q-1)=(4,2)$ より $q=3$ (素数).このとき $2^{t+1}=8$ より $t=2$ (素数) ,$r=\sqrt{2^4+3^2}=5$ (素数) ですべて素数となり条件を満たす.
以上より,求める解は $(p,q,r,s,t)=(2,3,5,2,2)$ のみである.