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高校数学解説
文献あり

n-1EV :(

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この記事は,正確性を保証できません.ご注意ください.

はじめに

こんにちは.今回も不等式ですが,今回は使えるテクニックです.
紹介するのは,「n-1EV」または「n-1 Equal Value Principle」と呼ばれているものです.
軽く説明すると,ある多変数の式の最小値や最大値を考える時にある一変数の式を考えるだけで良くなります.もちろん我々は多変数より一変数のほうが扱いやすいですよね.なのでかなり嬉しい主張です!!
しかし注意が必要です.微分などの計算量が普通より多くなります.

前提知識

  • 凸関数や凹関数の基礎
  • 変曲点
  • 微分の基礎

ちょっとした準備

優数列

a=(a1,a2,,an)Rn,b=(b1,b2,,bn)Rnは非増加な数列であるとする.abであるとは,以下の2つをみたすことを言う.

  • 全ての1k<n ,i=1kaii=1kbi.
  • i=1nai=i=1nbi.

abであることを,「abの優数列である」といい

Karamataの不等式

f:RRは区間IRで凸であるとし,非増加な2つの数列,a=(a1,a2,,an),b=(b1,b2,,bn)は,ai,biI(i=1,2,,n)abをみたす.このとき,
f(a1)+f(a2)++f(an)f(b1)+f(b2)++f(bn)
が成り立つ.

fが凹なら,fは凸であるから,不等号はひっくり返る.

この不等式は証明を省きます.
証明を知りたい方は, こちら を参考にするとよいでしょう.
※追記 この先は狭義凸,凹のみ考えます.また,その時の等号成立条件はa=b(全ての項がそれぞれ等しい)です.

n1EV

では本題に行きましょう.

n1EV

a1,a2,,anは実数で,a1+a2++an=Sは一定であるものとし,f:RRは一つだけ変曲点を有しているものとする.このとき,
f(a1)+f(a2)++f(an)
が最大値または最小値をとるとき,n1個のaiは等しい.

n1EVは変数がR全体を動くときのみ成り立つが,そうでないときにも成り立つことがあります.
詳しくは この動画 を見てください.

※追記 上限,下限でも成り立ちます

証明


f(x)の変曲点をkとおく.xkのとき,f(x)が凸となるときの最大値の場合について考える.
まずは,全てがk以下にならないとき,a1a2alkal+1an として一般性を失わない.
まず,Karamataの不等式より以下の二つの不等式が成り立つ.
i=1lf(ai)(l1)f(k)+f(a1++al(l1)k)(l1)f(k)+i=l+1nf(ai)(n1)f((l1)k+al+1++ann1)
これらより,
i=1nf(ai)f(a1++al(l1))+(n1)f((l1)k+al+1++ann1)
が成り立つ.ここで,X=(l1)k+al+1++ann1とおけば,a1++al(l1)k=S(n1)Xであり,
{i=1nf(ai)|aiR,a1+a2++an=S}{f(S(n1)X)+(n1)f(X)|Xk}={f(a1++al(l1)k)+(n1)f((l1)k+al+1++ann1)|aiR,a1+a2++an=S}
をみたす.
よって, i=1nf(ai)が最大値をとる時、
i=1nf(ai)=f(S(n1)X)+(n1)f(X)
が成り立ち,これはn1個のaiが等しいことを意味する.

ka1a2anであるとき,Karamataの不等式より,
i=1nf(ai)nf(Sn)
が成り立ち,n1個のaiが等しいことを意味する.
以上より,xkのとき,f(x)が凸となるときの最大値をとる場合は示された.
その他の場合は,同様に示される.

これだけではよくわからないと思いますので,例題を解いて慣れていきましょう.

IMO 2001

a,b,cは正数である.
aa2+8bc+bb2+8ca+cc2+8ab1
を示せ.

出典は こちら .

解答


ex=bca2,ey=cab2,ez=abc2とおけば,x+y+z=0の下で,
11+8ex+11+8ey+11+8ez1
を示せばよい.
f(x)=11+8exとおけば,
f(x)+f(y)+f(z)1
となる.ここで,
f(x)=4ex(4ex1)(1+8ex)52
であるからfは1つだけ変曲点を有する.よって,n1EVより,0<tに対して,
21+8t+tt+81
を示せばよい.後は単純な計算なので省く

Vietnam 1998

正数x1,x2,,xni=1n11998+xi=11998をみたす.
x1x2xnnn11998
を示せ.

出典は こちら .

解答


yi=19981998+xiとおけば,i=1nyi=1の条件の下で,
i=1n(1yi1)(n1)n
を示せばよい.
両辺logをとって,f(x)=log(1x1)とおくと,
f(y1)+f(y2)++f(yn)nf(1n)
となる.ここで,
f(x)=12x(x2x)2
であるからfは1つだけ変曲点を有する.よってn1EVより,0<t<1に対して,
(n1)log(1t1)+log(11(n1)t1)nlog(n1)
を示せばよい.あとは単純な計算なので省く.


ネタバレありの感想


f(y1)+f(y2)++f(yn)nf(1n)
を示すときにもし,考える範囲で常に凸なら,Karamataの不等式により一発で解けます.
変曲点が12でなんとなくで成り立ちそうだなともあまり感じれません.そう考えるとn1EVは最小値が与えられていなくても解ける万能なテクニックなようにも感じられますね.

おわりに

最後まで見ていただきありがとうございました.
実はこの主張は,凸(resp. 凹)なら端点で最大値(resp. 最小値)をとるなどのことをふまえれば,ほんのちょっとだけ当たり前な意味にみえます.(Rでしかなかなか使えないことも)

できるだけ丁寧に取り扱ったつもりですがわかりにくいところが多いかもしれません.
この記事を書く上で参考にした文献が母国語ではないためかなり理解がしずらかったと感じています.
この記事は,正確性を保証できませんのでご参考までに.
怖いので,いっぱい保険をかけておきます.
それでは,ありがとうございました.

参考文献

投稿日:2022418
OptHub AI Competition

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kk2
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2006年に生まれました

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