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高校数学解説
文献あり

さいころを複数回振った出目の和が等しい確率の求め方

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s面のさいころをn回振った出目の和がmである確率を求めます。

同じ出目でも順序が違っていれば別の場合と考えて、s面のさいころをn回振った出目の和がmである場合の数を求めればよいです。その場合の数が分子で分母がsnである分数が求める確率になります。
そして、s面のさいころをn回振った出目の和がmである場合の数を、和がmになるn個のs以下の正整数の組の個数と言い換えます。こうすることで、便宜上考えるs+1以上の数が現れる場合に対しても違和感が少なくなるでしょう。
AU={ω:ωは和がmになるn個の正整数の組}, A={ω:ωは和がmになるn個のs以下の正整数の組}, A1={ω:ωは和がmになるn個の正整数の組で、その第1成分はs+1以上}, ..., Ak={ω:ωは和がmになるn個の正整数の組で、その第k成分はs+1以上}, ..., An={ω:ωは和がmになるn個の正整数の組で、その第n成分はs+1以上}と、事象を定義します。
すると、求めたい場合の数は|A|になります。
また、定義した集合には次の関係が成立します。
AU=A(A1A2An), A(A1A2An)=
そして、包除原理より定義した集合の元の個数には次の関係が成立します。
|AU|=|A|+|A1A2An||A(A1A2An)|
 |A|=|AU||A1A2An|
|A1A2An|=|A1|++|An||A1A2||An1An|++(1)n1|A1A2An|
 |A|=|AU||A1||An|+|A1A2|++|An1An|+(1)n|A1A2An|
この式の右辺に現れる数を順に求めればよいです。右辺が複雑に見える人のために補足をしておくと、A1,A2,,Anからk個取るときのすべての組み合わせを考え、それぞれの共通部分の元の個数を足し引きしています。順序を除いてA1,A2,,Anは同じような事象となるため、組み合わせの場合の数を用いて簡略化できます。
まず|AU|を求めます。|AU|は和がmになるn個の正整数の組の個数です。
m<nならば|AU|=0です。
mnならば次のように考えられます。
和がmになるn個の正整数の組の個数は式のすべての項から1を引くことで、和がmnになるn個の非負整数の組の個数と同じであることがわかります。そして和がmnになるn個の非負整数の組の個数は、n種類からmn個選ぶ重複組み合わせの場合の数と同じです。そして、これは(mn)個のものと(n1)個の仕切りを並べる順列の場合の数と同じなので|AU|=m1Cn1です。
次に|A1|,|A2|,,|An|を求めます。|Ak|は和がmになるn個の正整数の組で、その第k成分がs+1以上であるものの個数です。
m<n+sならば|A1|=|A2|==|An|=0です。
mn+sならば次のように考えられます。
和がmsになるn個の正整数の組を考え、その第k成分にsを足すと第k成分はs+1以上で和はmになります。つまり、|Ak|は和がmsになるn個の正整数の組の個数と同じだということです。そして、Akの個数はnC1ですから|A1|++|An|=nC1ms1Cn1となります。
同様に|A1A2|,,|An1An|を求めます。|Ak1Ak2|(k1k2)は和がmになるn個の正整数の組で、その第k1成分と第k2成分がs+1以上であるものの個数です。
m<n+2sならば|A1A2|==|An1An|=0です。
mn+2sならば次のように考えられます。
和がm2sになるn個の正整数の組を考え、その第k1成分と第k2成分にそれぞれsを足します。すると、第k1成分と第k2成分はs+1以上で和はmになります。つまり、|Ak1Ak2|(k1k2)は和がm2sになるn個の正整数の組の個数と同じだということです。そして、Ak1Ak2の組の個数はnC2ですから|A1A2|++|An1An|=nC2m2s1Cn1となります。
同様のことが一般の場合で言えます。mn+rsが成立するrについて、少なくともr個の成分が7以上になるが和はmである組が存在することに注意して、総和の形で表したのが以下です。
|A|=r=0mns(1)rnCrmrs1Cn1
よって、s面のさいころをn回振った出目の和がmである確率は
1snr=0mns(1)rnCrmrs1Cn1
であることがわかりました。

しかし、これではmが大きいほど計算が面倒になります。
そこで、s面のさいころをn回振った出目の和がmである確率はs面のさいころをn回振った出目の和がn(s+1)mである確率と等しいことを証明します。
さいころで1以上s以下の整数aが出るという事象は同様に確からしいですから、as+1aが出る確率は等しいです。したがって、n回さいころを振ったそれぞれの出目をas+1aで置き換えます。n回さいころを振ったときの出目が(a1,a2,,an)でその和がmであるとします。a1+a2++anを置き換えた(s+1a1)+(s+1a2)++(s+1an)を計算するとn(s+1)mとなります。よって、s面のさいころをn回振った出目の和がmである確率はs面のさいころをn回振った出目の和がn(s+1)mである確率と等しいです。

例として、6面のさいころを3回振った出目の和が9である確率を求めます。
163r=0936(1)r3Cr96r1C31=163r=01(1)r3Cr86rC2=3C08C23C12C263=1283163=25216
そして3(6+1)9=12より、6面のさいころを3回振った出目の和が12である確率も25216であることがわかります。

参考文献

投稿日:2022421
OptHub AI Competition

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