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高校数学解説
文献あり

1の冪根をたくさん求めてみた(解説付き)

1908
0

はじめに

 タイトルの通りです。ζn=exp(2πi/n)の値をいっぱい求めます。
 ここでは|arg(xn)|<π/nとなるようにnを定めます。

素因数が2,3,5のシリーズ(n360)

ζ1=1ζ2=1ζ3=1+3i2ζ4=iζ5=1+54+10+254iζ6=1+3i2ζ8=2+2i2ζ9=1+3i23ζ10=1+54+10254iζ12=3+i2ζ15=1+5+30658+3+1510258iζ16=2+2+22i2ζ18=1+3i23ζ20=10+254+514iζ24=6+24+624iζ25=514+10+254i5ζ27=1+3i29ζ30=1+5+30+658+3+15+10258iζ32=2+2+2+22+2i2ζ36=3+i23ζ40=2+10+2558+2+102558iζ45=1+5+30658+3+1510258i3ζ48=22+6+324+2+26324iζ50=5+14+10+254i5ζ54=1+3i29ζ60=3+15+10258+15+30658iζ64=2+2+2+2+22+2+2i2ζ72=6+24+624i3ζ75=1+5+30658+3+1510258i5ζ80=22+1052+20+102+25+(108+2+210+52+20102+452(108iζ81=1+3i227ζ90=1+5+30+658+3+15+10258i3ζ96=222+6+3224+2+22+63224iζ100=10+254+514i5ζ108=3+i29ζ120=2610+30+25+5+215+3516+26+10+3025+5+215+3516iζ125=514+10+254i25ζ128=2+2+2+2+2+22+2+2+2i2ζ135=1+5+30658+3+1510258i9ζ144=22+6+324+2+26324i3ζ150=1+5+30+658+3+15+10258i5ζ160=2+22+10+52+2+20451022+210528+2+2210+52+2+2045+1022210528iζ162=1+3i227ζ180=3+(15+10258+15+30658i3ζ192=ζ48ζ641=ζ200=2+10+2558+2+102558i5ζ216=6+24+624i9ζ225=1+5+30658+3+1510258i15ζ240=2+2+632+10+52+301522010245+210+60+30212561016+22+6+321052+30+15220+1024521060302125+61016iζ243=1+3i281ζ250=5+14+10+254i25ζ256=2+2+2+2+2+2+22+2+2+2+2i2ζ270=1+5+30+658+3+15+10258i9ζ288=222+6+3224+2+22+63224i3ζ300=3+15+10258+15+30658i5ζ320=ζ64ζ801=ζ324=3+i227ζ360=2610+30+25+5+215+3516+26+10+3025+5+215+3516i3

n=p7シリーズ

cos(2π7)=16(1+7+213i23+7213i23)cos(2π11)=110(1+(α+,+5+(α,+5+(α,5+(α+,5)(α±,±=114(89±255±54101785i))cos(2π13)=α+124α3α24(α=13(1+ζ31132(5+33i)3+ζ3132(533i)3))cos(2π17)=116(1+17+34217+217+31734217234+217)cos(2π19)=16(α+β+23+β23)(β±=113+3α20α2±375+6α+9α2α=13(1+ζ31192(7+33i)3+ζ3192(733i)3))cos(2π23)=勘弁してください

解説

nが合成数のとき

 nの任意の真の約数mに対してζmが求められているものとする。
 適当にn=klm(gcd(l,m)=1)と因数分解し、不定方程式
lx+my=1
の解を一つ求める。その解x,yに対して
1n=lx+myklm=xkm+ykl
が成り立つので
ζn=ζklyζkmx
が得られる。

n=2k,2kのとき

12k=k+12k12
なので
ζ2k=ζkk+12
が得られる。

n=km(m+1)のとき

1n=1km1k(m+1)
なので
ζn=ζkmζk(m+1)1
が得られる。
 特にこの記事を書く際には以下の部分分数分解をよく用いた。
112=1314120=1415130=15161240=115116

n=2kのとき

 半角の公式
ζ2m=1+cos(2π/m)2+1cos(2π/m)2i
を使うことでk3において
ζ2k=12(2+2+2++22+2+i)
が得られる。

n=kp2(p3)のとき

 こればっかりはどうしようもありません。
ζn=ζkpp
以上の表現はないと思います。

n=3,5,7のとき

n=3のとき

 x=ζ3は二次方程式
x2+x+1=0
を満たすので、これを解くと
ζ3=1+3i2
が得られる。

n=5のとき

 x=ζ5は四次方程式
x4+x3+x2+x+1=0
を満たし、y=x+x1とおくと
x2+x2=y22
なのでyは二次方程式
0=x2(x4+x3+x2+x+1)=(x2+x2)+(x+x1)+1=y2+y1
を満たす。よって
ζ5+ζ51=2cos(2π5)=1+52
が得られる。

n=7のとき

 x=ζ7は四次方程式
x6+x5+x4+x3+x2+x+1=0
を満たし、y=x+x1とおくと
x3+x3=y33yx2+x2=y22
と表せるのでyは二次方程式
0=x3(x6+x5+x4+x3+x2+x+1)=(x3+x3)+(x2+x2)+(x+x1)+1=y3+y22y1
を満たす。これを解いていくと
(3y+1)321(3y+1)7=0z27z+73=0z=u3,v3=7(1±33i)2ζ7+ζ71=2cos(2π7)=13(1+u+v)=13(1+7+213i23+7213i23)
が得られる。

n=11のとき

求め方

 2は法11の原始根であることに注意してζ=ζ7,η=ζ5に対して
α0=ζ+ζ1α1=ζ2+ζ2α2=ζ4+ζ4α3=ζ8+ζ8=ζ3+ζ3α4=ζ16+ζ16=ζ5+ζ5β0=α0+α1+α2+α3+α4=1β1=α0+α1η+α2η2+α3η3+α4η4β2=α0+α1η2+α2η4+α3η6+α4η8=α0+α1η2+α2η4+α3η+α4η3β3=α0+α1η3+α2η6+α3η9+α4η12=α0+α1η3+α2η+α3η4+α4η2β4=α0+α1η4+α2η8+α3η12+α4η16=α0+α1η4+α2η3+α3η2+α4η
とおけばβ15,β25,β35,β45Q(ζ5)となることが知られており、
α0=2cos(2π11)=β0+β1+β2+β3+β45
と計算できる。

実際の計算

 ここで
β12=γ0+γ1η+γ2η2+γ3η3+γ4η4(γkQ(ζ))
とおくと
γ0=α02+2α1α4+2α2α3=(α1+2)+2(α2+α3)+2(α0+α2)=2α0+α1+4α2+2α3+0α4+2
と計算でき、Gal(Q(ζ,η)/Q(η))の生成元σ:ζζ2に対して
σ(β12β2)=(η1β1)2η2β2=β12β2Q(η)
および
α0=σ4(α1)=σ3(α2)=σ2(α3)=σ(α4)β12=γ0+σ3(γ0)η+σ(γ0)η2+σ4(γ0)η3+σ2(γ0)η4(σ(β12)=η2β1)
となることに注意してβ12におけるα0の係数を考えると
β12=(2+η3+4η+2η4+0η2)β2=(2η2η2η3)β2
と計算できる。
 同様にして
β1β2=(2+η+4η2+2η3)β3β1β3=(2η2η2η3)β4β1β4=10+(α0+α1+α2+α3+α4)(1+η+η2+η3+η4)=10+(1)(1)=11
と計算できるので
β15=11(2η2η2η3)(2+η+4η2+2η3)(2η2η2η3)=11(26+20η15η2+10η3)=11(26+204(51+10+25i)154(51+1025i)+104(511025i))=114(89+255+(2010+25251025)i)
が成り立つ。また
(410+2551025)2=16(10+25)+25(1025)4045=4101785
なので結局
β1=114(89+255+54101785i)
となる。また、これの共役を考えることで
β2=114(89255+5410+1785i)β3=114(892555410+1785i)β4=114(89+25554101785i)
もわかるので
cos(2π11)=β0+β1+β2+β3+β410=110(1+(α+,+5+(α,+5+(α,5+(α+,5)(α±,±=114(89±255±54101785i))
が得られる。

n=13のとき

求め方

 2は法13の原始根であることに注意してζ=ζ13に対して
α1=ζ+ζ1+ζ8+ζ8=ζ+ζ1+ζ5+ζ5α2=ζ2+ζ2+ζ16+ζ16=ζ2+ζ2+ζ3+ζ3α3=ζ4+ζ4+ζ32+ζ32=ζ4+ζ4+ζ6+ζ6
とおくとα1,α2,α3は何らかの三次方程式を満たし、
β1=ζ+ζ1,β2=ζ5+ζ5
とおくと
β1+β2=α1,β1β2=ζ4+ζ4+ζ6+ζ6=α3
つまりβ1,β2は二次方程式
x2α1x+α3=0
の解となるので
β1=2cos(2π13)=α1+α124α32
と計算できる。

実際の計算

α12=4+α2+2α3=22α1α2α1α2=α1+2α2+α1=α21=12α1α12α13=2α12α12(12α1α12)=α12+4α11
と変形できるのでα1は三次方程式
x3+x24x+1=0
を満たすことがわかる。これを解いていくと
(3x+1)339(3x+1)+65=0y2+65y+133=0y=u3,v3=13(5±33i)2α1=13(1+u+v)=13(1+ζ31132(5+33i)3+ζ3132(533i)3)
と計算できる。また
α12=4+α2+2α3=3α1+α3
より
α3=α12+α13
がわかるので
cos(2π13)=α1+α124α34=α1+α124(α12+α13)4=α1+124α13α124
が得られる。

三乗根の取り方について

 三乗根の偏角の取り方については
γk=ζ3k132(5+33i)3+ζ3k132(533i)3(k=0,1,2)
とおいたとき
γ1<γ2<γ0
となることが(図を描くなどして)簡単にわかり、また
α3<α1<α2
もそれとなくわかる(と思う)ので
α1=13(1+γ2)α2=13(1+γ1)α3=13(1+γ0)
のように対応するとわかる。

n=17のとき

n012345678
3n(mod17)138745261

 3は法17の原始根となることに注意してζ=ζ17に対して
α1=ζ+ζ1+ζ8+ζ8+ζ4+ζ4+ζ2+ζ2α2=ζ3+ζ3+ζ7+ζ7+ζ5+ζ5+ζ6+ζ6β1=ζ+ζ1+ζ4+ζ4β2=ζ3+ζ3+ζ5+ζ5γ=ζ+ζ1
とおくと、これらは二次方程式
x=α1,α2x2+x4=0x=β1x2α1x1=0x=β2x2α2x1=0x=γx2β1x+β2=0
を満たす。これを解くと
α1=1+172α2=1172β1=α1+α12+42=1+174+342174β2=1174+34+2174γ=2cos(2π17)=β1+β124β22=1+178+342178+17+31734217234+2174
が得られる。

β144β2の計算について

34+21734217=34+217342417=34+217817=1+174
に注意すると
4(β124β2)=4(α1β1+1+4β2)=(91734217+1+17234217)+44(117+34+217)=17+31734217234+217
と計算できる。

n=19のとき

求め方

 2は法19の原始根となることに注意してζ=ζ19に対して
α1=ζ+ζ1+ζ8+ζ8+ζ7+ζ7α2=ζ2+ζ2+ζ3+ζ3+ζ5+ζ5α3=ζ4+ζ4+ζ6+ζ6+ζ9+ζ9β1=ζ+ζ1β2=ζ8+ζ8β3=ζ7+ζ7
とおくとα1,α2,α3は何らかの三次方程式を満たし、またβ1,β2,β3も何らかのQ(α1,α2,α3)係数の三次方程式を満たすので頑張れば
β1=2cos(2π19)
が計算できる。

実際の計算

α12=6+2α1+α2+2α3=4α2α1α2=α1+2α2+3α2=32α1α2α13=4α1+(3+2α1+(4α12))=α12+6α1+7
と変形できるのでα1は三次方程式
x3+x26x7=0
を満たすことがわかる。これを解いていくと
(3x+1)357(3x+1)133=0y2133y+193=0y=u3,v3=19(7±33i)2α1=13(1+u+v)=13(1+ζ31192(7+33i)3+ζ3192(733i)3)
と計算できる。また
β1+β2+β3=α1β1β2+β2β3+β3β1=α1+α3=1α2β1β2β3=2+α2
と変形できるのでβ1は三次方程式
x3α1x2(1+α2)x(2+α2)=0
を満たすことがわかる。これをα1,α2についての関係式を使いながら解いていくと
0=(3xα1)33(7+2α2)(3xα1)(33+3α1+20α2)0=y2(33+3α1+20α2)y+(7+2α2)3y=u3,v3=33+3α1+20α2±(33+3α1+20α2)24(7+2α2)32=113+3α120α12±375+6α1+9α122β1=2cos(2π19)=13(α1+u+v)=13(α+β+23+β23)(β±=113+3α20α2±375+6α+9α2α=13(1+ζ31192(7+33i)3+ζ3192(733i)3))
が得られる。

省いた計算について

α2=4α12α3=1a1α2=5α1+α12α1α2=32α1α2=72α1+α12α22=4α3=9+α1α12α13=7+6α1(4α2)=3+6α1+α2α23=7+6(4α12)(9+α1α12)=22α15α12
に注意すると
0=x3α1x2(1+α2)x(2+α2)=(3x)33α1(3x)29(1+α2)(3x)27(2+α2)=(3xα1)33(3+3α2+α12)x(54+27α2α13)=(3xα1)33(7+2α2)(3xα1)(516α1+26α2+3α1(7+2α2))=(3xα1)33(7+2α2)(3xα1)(33+3α1+20α2)

(33+3α1+20α2)2=1089+198α1+9α12+400α22+120α1α2+1320α2=1089+198α1+9α12+3600+400α1400α12840240α1+120α12+52801320α12=9129+358α11591α12(7+2α2)3=343+294α2+84α22+8α23=343+1176294α12+756+84α184α12+1768α140α12=2451+76α1418α12(33+3α1+20α2)24(7+2α2)3=9129+358α11591α129804304α1+1672α12=675+54α1+81α12=9(75+6α1+9α12)
と計算できる。

原理的なところ

 以下に述べる方法は筆者がぼんやりと「こうやったら統一的に計算できるんだなー」と考えた方法であり、もっと賢い方法があるかもしれないが悪しからず。
 1の原始p乗根を考える。

求め方

 法pの原始根r
p1=k=0mpk
なる素数の列pk(基本的にp0=2とするとよい)に対し
ak=j=0k1pj,bk=p1ak,zk=j=0ak1exp(2πiprbkj)
とおくと次のようなガロア拡大の列が取れる。

{1}{1,rb1,r2b1,,r(ak1)b1}{1,rbm,r2bm,,r(am1)bm}Gal(Q(ζp)/Q)(Z/pZ)×Q(ζp)Q(z1)Q(zm)Q

ただし(Z/pZ)×の元a(σ:ζpζpa)Gal(Q(ζp)/Q)と同一視しており
Gal(Q(zk)/Q(zk+1))={1,rbk+1,r2bk+1,,r(pk1)bk+1}
が成り立つ。このときl=0,1,2,,pk1に対し
zk(l)=j=0ak1exp(2πiprbkj+bk+1l)θk(l)=j=0pk1zk(j)exp(2πipklj)
とおくと(θk(l))pkQ(zk+1,ζpk)が成り立つ、つまりあるΘk(l)Q(zk+1,ζpk)が存在して
θk(l)=Θk(l)pk
と表せ、このとき
zk=zk(0)=1pkl=0pk1θk(l)=1pkl=0pk1Θk(l)pk
と計算できる。

計算の工夫

 また
θk(1)θk(l)=γk(l)θk(l+1)(γk(l)Q(zk+1,ζpk))
という関係式を作れることから
(θk(l))pk=γk(1)γk(2)γk(pk1)θk(0)
と計算でき、その他の(θk(l))pkについてはこれにGal(Q(ζp,ζpk)/Q(ζp))の元を作用させることで求められる。
 pk=2,3のときはzkの満たすQ(zk+1)係数のpk次方程式を直接考えた方が速い。

おわりに

 元々 高校生の頃に見た記事 sin1の冪根表示を求めているのを見て興味を持っていて、ガロア理論や p=11,13乗根を求めているテキスト を見て「じゃあ手始めにp=19乗根でも求めてみようかな」と思ったら手計算では想像以上に地獄でした。もう二度とやりません。あと普通に素因数が2,3,5シリーズを一つ一つ計算するのも大変でした。
 なにはともあれ何の役に立つかはわかりませんが1の原始n乗根の冪根表示について書けるだけのことは書けたと思うので満足です。では。  

参考文献

投稿日:2022425
更新日:2024513
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子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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  1. はじめに
  2. 解説
  3. $n$が合成数のとき
  4. $n=3,5,7$のとき
  5. $n=11$のとき
  6. $n=13$のとき
  7. $n=17$のとき
  8. $n=19$のとき
  9. 原理的なところ
  10. おわりに
  11. 参考文献