行、列、斜めのどの3つの数を足しても同じ数になる数の並びを魔法陣といいます。
例えば、以下の魔法陣ではどこを足しても15になるようになっています。
8 | 3 | 4 |
1 | 5 | 9 |
6 | 7 | 2 |
行
8+3+4=15
1+5+9=15
6+7+2=15
列
8+1+6=15
3+5+7=15
4+9+2=15
斜め
8+5+2=15
4+5+6=15
ちなみに、1+...+9=45で、45÷3=15なので
全て足すと15になるわけです。
3×3魔法陣は実質1通りということが分かっています。
結論から言うと、
これですべて足して15になるように埋めれば完成です。
なぜか説明します。
3×3=9なので、9変数かと思いますが、変数は9個でなくてもよいです。
足して15という条件があるので、以下のようになります。
a | b | 15-a-b |
d | e | 2a+b+e-15 |
g | 15-b-e | 15-a-e |
a+b+(15-a-b)=15
b+e+(15-b-e)=15
a+e+(15-a-e)=15
(15-a-b)+(15-a-e)+(2a+b+e-15)=15
となり、条件を満たします。
ここで、gに注目すると、2つの式ができます。
$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} (15-a-b)+e+g=15 \\ (15-a-e)+(15-b-e)+g=15 \end{array} \right. \end{eqnarray} $$
整理して
$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} g=a+b-e-① \\ g=a+b+2e-15-② \end{array} \right. \end{eqnarray} $$
①、②から
a+b-e=a+b+2e-15
15=3e
e=5
つまり、真ん中は5が確定します。
e=5として整理すると
a | b | 15-a-b |
d | 5 | 2a+b-10 |
g | 10-b | 10-a |
さらにd,gも分かります。
足して15となるようにすると
a | b | 15-a-b |
20-2a-b | 5 | 2a+b-10 |
a+b-5 | 10-b | 10-a |
ここで多くのサイトを調べると
「1を使って15になるのは
1+5+9=15
1+6+8=15
の2通りしかないので1は斜めに入らない
また、3を使って15になるのは
3+4+8=15
3+5+7=15
の2通りしかないので3も斜めに入らない」
としているのですが、別のやり方でしようと思います。
同じことを書いてもつまらないので。
まず、a=1,2,3,4とします。
これは、4隅の中に1,2,3,4があれば、回転して左上に持ってくればよいという考えです。
5は真ん中に使われているので除外です。
ちなみに、真ん中の5をはさんだ両側は10とならなければならず、上下左右すべてに1,2,3,4が使われることはないので、4隅のいずれかに1,2,3,4が含まれることになります。
a+b、(10-a)+(10-b)は15を超えてはならないので
$$
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
\ a+b<15 \\
\ (10-a)+(10-b)<15
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
$$
整理すると
$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \ a+b<15 \\ \ 5< a+b \end{array} \right. \end{eqnarray} $$
よって
$5 < a+b < 15$
となります。
同様に、(15-a-b)+(10-a)は15を超えてはならないので
$(15-a-b)+(10-a)=25-2a-b<15$
$10 < 2a+b$
$10-a < a+b$
ここで、$a=1,2,3,4$なので、常に$5<10-a$となります。
$5< a+b<15$から
$10-a < a+b < 15$
よって
$a=1⇒b=9$
$a=2⇒b=7,8,9$
$a=3⇒b=5,6,7,8,9$
$a=4⇒b=3,4,5,6,7,8,9$
さらに以下の条件により候補を減らせます。
$b≠5$より$b=5$は除外
$a≠b$より$a=4,b=4$は除外
【途中経過】
$a=1⇒b=9$
$a=2⇒b=7,8,9$
$a=3⇒b=6,7,8,9$
$a=4⇒b=3,6,7,8,9$
$15-a-b≠5 ⇒ a+b≠10$より
$a=1,b=9は除外$
$a=2,b=8は除外$
$a=3,b=7は除外$
$a=4,b=6は除外$
【途中経過】
$a=2⇒b=7,9$
$a=3⇒b=6,8,9$
$a=4⇒b=3,7,8,9$
$a≠15-a-b ⇒ 2a≠15-b$より
$a=3,b=9$は除外
$a=4,b=7$は除外
【途中経過】
$a=2⇒b=7,9$
$a=3⇒b=6,8$
$a=4⇒b=3,8,9$
$b≠15-a-b ⇒ 2b≠15-a$より
$a=3,b=6$は除外
【途中経過】
$a=2⇒b=7,9$
$a=3⇒b=8$
$a=4⇒b=3,8,9$
$15-a-b≠2a+b-10 ⇒ 3a≠25-2b$より
$a=3,b=8$は除外
【途中経過】
$a=2⇒b=7,9$
$a=4⇒b=3,8,9$
$10-a≠2a+b-10 ⇒ 3a≠20-b$より
$a=4,b=8$は除外
【途中経過】
$a=2⇒b=7,9$
$a=4⇒b=3,9$
よって、魔法陣は以下のようになります。
① | ||
---|---|---|
2 | 7 | 6 |
9 | 5 | 1 |
4 | 3 | 8 |
② | ||
---|---|---|
2 | 9 | 4 |
7 | 5 | 3 |
6 | 1 | 8 |
③ | ||
---|---|---|
4 | 3 | 8 |
9 | 5 | 1 |
2 | 7 | 6 |
④ | ||
---|---|---|
4 | 9 | 2 |
3 | 5 | 7 |
8 | 1 | 6 |
ここで
②は①の線対称(258が回転軸)
③は①の線対称(951が回転軸)
④は②の線対称(951が回転軸)
となります。
よって、実質
① | ||
---|---|---|
2 | 7 | 6 |
9 | 5 | 1 |
4 | 3 | 8 |
の1通りになります。
これに線対称の操作を何度行っても魔法陣の性質は保てます。
$a= \begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{cc}
2 & 7 & 6 \\
9 & 5 & 1 \\
4 & 3 & 8
\end{array}
\right)
\end{eqnarray} $
とします。
これに対して、
とします。
例えば
$τ(a)= \begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{cc}
6 & 7 & 2 \\
1 & 5 & 9 \\
8 & 3 & 4
\end{array}
\right)
\end{eqnarray}$,$
σ(a)= \begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{cc}
4 & 9 & 2 \\
3 & 5 & 7 \\
8 & 1 & 6
\end{array}
\right)
\end{eqnarray} $
, $e(a)= \begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{cc}
2 & 7 & 6 \\
9 & 5 & 1 \\
4 & 3 & 8
\end{array}
\right)
\end{eqnarray} $
です。
この性質を使うと、2回連続で反転させると元に戻るので
$τ^2(a) = e(a)$
4回連続で右に90°回転させると元に戻るので
$σ^4(a) = e(a)$
つまり
$τ^2=e$
$σ^4=e$
となります。
左に90°回転は右に270°回転するのと同じなので
$σ^3$となり、$σ$で表せます。
$σ^3(a) = \begin{eqnarray} \left( \begin{array}{cc} 6 & 1 & 8 \\ 7 & 5 & 3 \\ 2 & 9 & 4 \end{array} \right) \end{eqnarray} $
180°回転は右に90°回転を2連続で行えばよいので
$σ^2 = \begin{eqnarray} \left( \begin{array}{cc} 8 & 3 & 4 \\ 1 & 5 & 9 \\ 6 & 7 & 2 \end{array} \right) \end{eqnarray} $
では、これを左右反転させてみると
$τσ^2(a) = \begin{eqnarray} \left( \begin{array}{cc} 4 & 3 & 8 \\ 9 & 5 & 1 \\ 2 & 7 & 6 \end{array} \right) \end{eqnarray} $
となり、これはaを上下反転させたものと同じものになります。
ちなみに、上下反転を2回連続で行うと元に戻るので
$τσ^2τσ^2=e$
$τσ^2τ=σ^2$
最後に、斜めを回転軸にした線対称はどうなるかを考えます。
左上から右下への直線に対する線対称は、右に90°回転した後に左右反転すればよいので
$τσ(a)=\begin{eqnarray} \left( \begin{array}{cc} 2 & 9 & 4 \\ 7 & 5 & 3 \\ 6 & 1 & 8 \end{array} \right) \end{eqnarray}$
これも2回連続で行うと元に戻るので
$τστσ=e$
$τστ=σ^{-1}=σ^3$
右上から左下への直線に対する線対称は、左右反転した後に右に90°回転すればよいので
$στ(a)=\begin{eqnarray} \left( \begin{array}{cc} 8 & 1 & 6 \\ 3 & 5 & 7 \\ 4 & 9 & 2 \end{array} \right) \end{eqnarray}$
やはり2回連続で行うと元に戻るので
$στστ=e$
$τστ=σ^{-1}=σ^3$
ちなみに、先ほどの上下反転を
$τσ^2τ=σ^2$
で表しましたが、
$τσ^2τ=(τστ)(τστ)$
と表せたり
$τσ^3τ=(τστ)(τστ)(τστ)=σ^3σ^3σ^3=σ$
ということもわかるので
$τστ=σ^3$の条件さえあれば$τσ^2τ$は不要です。
よって、魔法陣は
$D=\lbrace e,τ,σ,σ^2,σ^3,τσ,τσ^2,τσ^3|τστ=σ^3,τ^2=σ^4=e \rbrace$
の8通りで表すことができ、1つのパターンの反転と回転の組み合わせで表現できる、ということが分かります。
この$D$を二面体群と言います。