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高校数学解説
文献あり

数オリっぽい三角関数の不等式

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目次

  1. はじめに
  2. 事前準備・tanの関係式
  3. 本題
  4. おわりに

1.はじめに

この記事では普段なかなか目にすることのない三角関数を含んだ不等式を解説していきます.イェンゼンの不等式,AM-GM,基本的な三角関数の知識があれば解くことができます.今回は以下の式を示していきます.

A+B+C=πの時,以下が成立する.
sinAcosBcosC+sinBcosCcosA+sinCcosAcosB338

2.事前準備・tanの関係式

この公式は,a+b+c=abcという条件を与えられた時にtanに置換するということにも利用できます.

tanの関係式

A+B+C=πとする.このとき以下の等式を示せ.
tanA+tanB+tanC=tanAtanBtanC

tanA=tan(πA)=tan(B+C)=tanB+tanC1tanBtanC
両辺に1tanBtanCをかけることで,
       tanA(1tanBtanC)=(tanB+tanC)tanA+tanB+tanC=tanAtanBtanC
したがって,題意は示された.

事前準備は以上です.本題に移りましょう.

3.本題

三角関数を含む不等式

正実数A,B,CA+B+C=πを満たす.この時,以下の不等式を示せ.
sinAcosBcosC+sinBcosCcosA+sinCcosAcosB338

解説

まずは,評価しやすい形に落とし込んでいきましょう.

cycsinAcosBcosC=sinAcosBcosC+sinBcosCcosA+sinCcosAcosB=(sinAcosBcosC+sinBcosCcosA+sinCcosAcosB)cosAcosBcosCcosAcosBcosC=cosAcosBcosC(tanA+tanB+tanC)=cosAcosBcosCtanAtanBtanC=sinAsinBsinC

ここでのポイントはtanA+tanB+tanC=tanAtanBtanCの関係式を利用したことです.これで,簡単なsinAsinBsinCという形の最大値を考える問題に帰着させることができました.実はこの式の最大値は微分を使わずに求めることができます.見ていきましょう.

まず,三つのsinのみの対称な不等式ということでできればイェンゼンの不等式を使いたいという発想が浮かびます.さらに三つの積ということで相加相乗平均も使えそうだなと考えるわけです.イェンゼンを使うには和の形で表す必要があります.したがって,まずは相加相乗平均を考えましょう.

sinA+sinB+sinC3sinAsinBsinC3

両辺を三乗すると,

(sinA+sinB+sinC3)3sinAsinBsinC

等号成立は,A=B=C=π3の時ですね.では,左辺をイェンゼンの不等式を用いて左辺を評価していきましょう.sinX0<X<πで上に凸だから

(3sinA+B+C33)3(sinA+sinB+sinC3)3

が成立する.これを整理すると,

338(sinA+sinB+sinC3)3sinAsinBsinC=cycsinAcosBcosC

この時,全ての不等号について等号成立条件はA=B=C=π3で一致しているため題意は示されましたね.必ず,等号成立条件が一致していることを確認しましょう.

4.おわりに

これはあくまで私の経験ですが,三角関数の不等式というのは良くも悪くもワンパターンです.結局は対称なsin,cosの式に帰着されると思います.ですから,あとは如何に変形するかという問題に帰着されるのです.三角関数の式は隠れた条件が潜んでいるものです.与えられた条件をフルに活用して問題を解きましょう!!

見ていただきありがとうございました!

参考文献

投稿日:202263
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  3. 2.事前準備・tanの関係式
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