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三角関数の難問積分を脳死解法で解いてみた

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デプシロンイルタ@高校積分 さんが Twitterで出題していた積分の問題 を解きます。

次の積分の値を求めよ。
0π4sin2xsin3x+cos3xdx

私「分母が奇数乗だから見当がつかないな・・・」
私「うーん、これはtanx2=t!(脳死)」
私「で、そのあとどうするんだ」

導出

というわけでsinx,cosx,dxtで表すところから始めます。

sin2x2+cos2x2=1

なので、

1tan2x2+1=1sin2x2

1+tan2x2=1cos2x2

よって

sin2x2=11+1t2=t21+t2

cos2x2=11+t2

であるから

sinx=2sinx2cosx2=2t2(1+t2)2=2t1+t2(0xπ4sinx0,t0)

cosx=cos2x2sin2x2=1t21+t2

12cos2x2dx=dtdx=21+t2dt

と求まりました。

計算

tanx2=tとし、a=tanπ8とする。

0π4sin2xsin3x+cos3xdx=0a(2t1+t2)2(2t1+t2)3+(1t21+t2)321+t2dt=0a(2t)2(1+t2)(2t)3+(1t2)321+t2dt=0a2(2t)2(2t)3+(1t2)3dt=0a8t2t6+3t4+8t33t2+1dt

部分分数分解

最後に出てきた分数を部分分数分解するために、分母を因数分解します。そのために、(分母)=0の解を複素数の範囲で求めます。

t6+3t4+8t33t2+1=0t3(t3+3t+83t+1t3)=0t3+3t+83t+1t3=0(t=0)t3+3t3t+1t3=8t33t+3t1t3=8(t1t)3=8t1t=2,2eτ3,2e2τ3(τ=2π)t1t=2,1+3i,13i

t1t=2のときt22t1=0よりt=1±2

t1t=1±13iのとき(ここから同じ添え字は複号同順、異なる添え字は複号任意)

t1t=1±13it2+(113i)t1=0(t+113i2)2113i21=0(t+113i2)2=113i2+1(t+113i2)2=113i2t+113i2=±231i2t=113i2±231i2t=1±232±1(3±212)i

(ここまで同じ添え字は複号同順、異なる添え字は複号任意)

よって、

t6+3t4+8t33t2+1=(t(1+2))(t(12))(t(1+32+(3+12)i))(t(1+32(3+12)i))(t(132+(312)i))(t(132(312)i))=(t(1+2))(t(12))(t2+(1+3)t+(2+3))(t2+(13)t+(23))

と実数の範囲で因数分解できます。そこで、

8t2t6+3t4+8t33t2+1=8t2(t6+3t4+8t33t2+1)=At(1+2)+Bt(12)+Ct+Dt2+(1+3)t+(2+3)+Et+Ft2+(13)t+(23)

となる実数AFを求めます。

(t(12))(t2+(1+3)t+(2+3))(t2+(13)t+(23))=t5+(1+2)t4+22t3+(4+22)t2+(322)t+(1+2)

(t(1+2))(t2+(1+3)t+(2+3))(t2+(13)t+(23))=t5+(12)t422t3+(422)t2+(3+22)t+(12)

(t(1+2))(t(12))(t2+(13)t+(23))=t4+(13)t3+(1+3)t2+(5+33)t+(2+3)

(t(1+2))(t(12))(t2+(1+3)t+(2+3))=t4+(1+3)t3+(13)t2+(533)t+(23)

なので、

At(1+2)+Bt(12)+Ct+Dt2+(1+3)t+(2+3)+Et+Ft2+(13)t+(23)

の分子は

(A+B+C+E)t5+((1+2)A+(12)B+(13)C+D+(1+3)E+F)t4+(22A22B+(1+3)C+(13)D+(13)E+(1+3)F)t3+((4+22)A+(422)B+(5+33)C+(1+3)D+(533)E+(13)F)t2+((322)A+(3+22)B+(2+3)C+(5+33)D+(23)E+(533)F)t1+((1+2)A+(12)B+(2+3)D+(23)Ft0

となります。

あとは、これがt2の係数だけ8になって、残りは0になればよいですね。これはこのエグい連立方程式を何らかの方法で解くことで求まります。ここでは結果だけ示します。

A=26,B=26,C=33,D=323,E=33,F=323

よって、

8t2t6+3t4+8t33t2+1=261t(1+2)+261t(12)+(33t+323)1t2+(1+3)t+(2+3)+(33t+323)1t2+(13)t+(23)

と表せます。

tan(π/8)を求める

積分のためにtanπ8を求めます。と言ってもこれは簡単で、

2x1x2=12x=1x2x2+2x1=0x=1±2

tanπ8>0から、tanπ8=21がわかります。

積分の続き

あとはウイニングランです。

第1項

0a261t(1+2)dt=260a1t(1+2)dt=26[log|t(1+2)|]0a=26log21+2

第2項

0a261t(12)dt=260a1t(12)dt=26[log|t(12)|]0a=26log2(21)21=26log2

第3項

1(x+p)2+q2dx=1qarctan(x+pq)+(),21+3=31
に注意して積分を行います。

(33t+323)1t2+(1+3)t+(2+3)=36(2t+(1+3))+136t2+(1+3)t+(2+3)=36(2t+(1+3))t2+(1+3)t+(2+3)+136(t+1+32)2+2+32=36(2t+(1+3))t2+(1+3)t+(2+3)+136(t+1+32)2+(1+32)2

であるから

0a(33t+323)1t2+(1+3)t+(2+3)dt=0a(36(2t+(1+3))t2+(1+3)t+(2+3)+136(t+1+32)2+(1+32)2)dt=36[log(t2+(1+3)t+(2+3))]0a+13621+3[arctan(t(31)+1)]0a=36(log(42+6)log(2+3))13(arctan(a(31)+1)π4)

第4項

1(x+p)2+q2dx=1qarctan(x+pq)+(),213=31
に注意して積分を行います。

(33t+323)1t2+(13)t+(23)=36(2t+(13))+1+36t2+(13)t+(23)=36(2t+(13))t2+(13)t+(23)+136(t132)2+232=36(2t+(13))t2+(13)t+(23)+1+36(t132)2+(132)2

であるから

0a(33t+323)1t2+(13)t+(23)dt=0a(36(2t+(13))t2+(13)t+(23)+1+36(t132)2+(132)2)dt=36[log(t2+(13)t+(23))]0a+1+36213[arctan(t(31)+1)]0a=36(log(426)log(23))13(arctan(a(31)+1)π4)

3に関して第3項と「共役」の関係になっています。

足し合わせる

上で求めた4つの値を全部足せば積分が求まります。第1項と第2項の和は

26log21+2+26log2=26log(1+2)

で与えられます。

第3項と第4項を結果の項別に足すと、

36log(42+6)+36log(426)=36log(526)(23)

36log(2+3)36log(23)=36log2+323

よって最初の2項の合計は36log(2+3)(526)

S=a(31)+1,T=a(31)+1

とすると

S+T=2a+2=422,ST=2a22a+1=223

であるから

13arctanS13arctanT=13arctanS+T1ST=13arctan422422=13arctan1=π12

また

13(π4+π4)=π6

よって、求める積分値は

26log(1+2)+36log(2+3)(526)π12+π6=26log(1+2)+36log(2+3)(526)+π12

となります!!!

教訓

積分に王道なし。

投稿日:2022611
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