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高校数学解説
文献あり

多角形の"中心"から見る平面幾何(五心の基本性質まとめ)

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はじめに

こんにちは.この記事では僕の幾何力向上を兼ねて五心の性質と五心関連の話を整理していきたいと思います.その性質上とても記事が長くなってしまっています.何かミス等ありましたらご指摘いただけると嬉しいです.出来るだけ色々な解法で解くとともに,なぜそのように考えるのか?等もメモしていきたいと思います.では,よろしくお願いします!
(ちなみに,4.利用例には軽く五心の性質を使う問題たちを載せておきました.おまけです.)

この記事をほぼ理解するための前提知識は,中学数学と数学Aのチェバの定理,メネラウスの定理までです.(終盤の難しめの定理に関しては一部複素を使って証明しています.)

<今回紹介するもの>
今回紹介するものは目次の通りです.前半の方はとても簡単で一つ一つが軽いです.後半はかなり重めの定理なども含まれています.また,五心が関わるものなら割と広く紹介していますので九点円なども含まれています.

注意の見出し

本記事に修正、加筆を加えた 最新版 もぜひご覧ください。

五心の定義と存在

重心の存在

重心/centroid

三角形の各頂点から対辺への中線の交点を重心という.

重心の存在

三角形の各頂点から対辺への中線は必ず一点で交わる.(重心は必ず存在する.)

三角形ABCの各辺の中点をD,E,Fとすれば,チェバの定理の逆より|AF||FB||BD||DC||CE||EA|=111111=1であるから一点で交わる.

重心-1 重心-1

内心の存在

内心/incenter

三角形の各頂点の角の二等分線の交点を内心という.

内心の存在

三角形の各頂点の角の二等分線は一点で交わる.(内心は必ず存在する.)

チェバの定理の逆を用いた方法

三角形ABCにおいて,角Aの二等分線と対辺の交点をD,角Bの二等分線と対辺の交点をE,角Cの二等分線と対辺の交点をFとすれば,チェバの定理の逆より,|AF||FB||BD||DC||CE||EA|=|CA||BC||AB||CA||BC||AB|=1であるから一点で交わる. 

内心-1 内心-1

合同を用いた方法

方針:まず二つの角の二等分線の交点を考えその交点と残りの頂点を結ぶ線が角の二等分線であることを示す.

三角形ABCにおいて,角Bの二等分線と角Cの二等分線の交点をIとする.Iから各辺へ下ろした垂線の足をそれぞれP,Q,Rとする.(図を参照)
ここで,RBI=PBI,BPI=BRI=90°であり,BIが共通であるためRBIPBIが成り立つ.よって,|RI|=|PI|である.同様に,|QI|=|PI|が得られる.このことから|RI|=|QI|である.
ARI=ARI=90°,|RI|=|QI|であって,AIが共通なのでARIAQIとなる.よって,IAR=IAQが従う.このことより,線分AIは角Aの二等分線であることが示された.

内心-02 内心-02

角の二等分線がIを通ることを示すのは難しいですが,Iを通る線分が角の二等分線であることを示すのは簡単ですからね.チェバの定理は便利ですが,合同の考え方も大事なので両方使えるようにしておきましょう.難しい問題でよく使う考え方は後半の合同の方です.

外心の存在

外心/circumcenter

三角形の各辺の垂直二等分線の交点を外心という.

外心の存在

三角形の各辺の垂直二等分線は一点で交わる.(外心は必ず存在する.)

方針:まず二つの辺の垂直二等分線の交点を考えその交点から残りの辺への垂線を下ろす.その点が中点であることを示す.

ABの垂直二等分線とCAの垂直二等分線の交点をOとする.OからBCへ下ろした垂線の足をDとする.また,AB,CAの中点をF,Eとする.
ここで,FABの中点であるから,|AF|=|FB|である.また,AFO=BFO=90°OFが共通なので,AFOBFOである.同様に,AEOCEOである.このことから,|OB|=|OC|が従う.よって,三角形OBCは二等辺三角形である.二等辺三角形の頂角から下ろした垂線は底辺の中点と交わるのでDBCの中点である.よって,ODは垂直二等分線であるから題意は示された.

外心-1 外心-1

垂心の存在

垂心/orthocenter

三角形の各頂点から対辺へ下ろした垂線の交点を垂心という.

垂心の存在

三角形の各頂点から対辺へ下ろした垂線は一点で交わる.(垂心は必ず存在する.)

角度計算で示す方法

方針:共円の存在を利用して角度計算をして示す.

BからCAへと下ろした垂線の足をEとする.同様にCからABへと下ろした垂線の足をFとする.AHを通る直線とBCとの交点をDとする.
AFH=AEH=90°であるので,AFHEは共円である.このことから円周角の定理より,FAH=FEH=FCBが従う.ADB=180°BEDABD=180°FCBABD=180°FCB(180°90°BAD)=90°よって,ADは垂線であるから題意は示された.

垂心-1 垂心-1

外心の存在を利用した方法

方針:外心の存在を利用する.

各頂点を通り,対辺に並行な直線をそれぞれ引く.それらの交点を図のようにP,Q,Rとする.すると,中点連結定理より,AQRの中点になる.同様に,B,CはそれぞれRP,PQの中点になる.また,QR//BCより,ADQRであるからADQRの垂直二等分線である.同様に,BE,CFはそれぞれRP,PQの垂直二等分線である.このことから,Hは三角形PQRの外心である.定理3(外心の存在)より,題意は示された.

垂心-2 垂心-2

傍心の存在

傍心/excenter

三角形の頂点一つの角の二等分線と二つの外角の二等分線の交点を傍心という.

傍心の存在

三角形の頂点一つの角の二等分線と二つの外角の二等分線の交点は一点で交わる.(傍心は必ず存在する.)

一つの三角形に対して,傍心は3つ存在します.

方針:外角の二等分線の交点とAを結んだ線分が角Aの内角の二等分線であることを示す.(傍心は内心とほぼ一緒です.)

IAからAB,BC,ACへと垂線を下ろす.その足をそれぞれD,E,Fとする. DBIA=EBIAであり,BDIA=BEIA=90°BIAが共通であるから,DBIAEBIAである.同様に,FCIAECIAである.よって,|DIA|=|EIA|=|FIA|が従う.ADIA=AFIA=90°であり,|DIA|=|FIA|AIAが共通であるからADIAAFIAである.従って,AIAは角Aの内角の二等分線である.題意は示された.

傍心-1 傍心-1

五心の性質

内接円の半径

内接円の半径

三辺の長さをa,b,cとする三角形の内接円の半径r
r=2Sa+b+c=12(a+b+c)(ab+c)(a+bc)a+b+c

三角形ABCの面積をSとすると,S=r(a+b+c)2である.これをrについて解くとr=2Sa+b+cが得られる.また,Sをヘロンの公式を用いてa,b,cで表すと,
r=2(a+b+c2)(a+b+c2)(ab+c2)(a+bc2)a+b+c=4(a+b+c)(a+b+c)(ab+c)(a+bc)16(a+b+c)2=12(a+b+c)(ab+c)(a+bc)a+b+c

となって,最右辺が得られる.

内接円-1 内接円-1

外接円の半径

正弦定理/外接円の半径

三辺の長さをa,b,cとする三角形の外接円の半径R
R=a2sinA=abc4S=abc(a+b+c)(a+b+c)(ab+c)(a+bc)

図のようにAをとる.
円周角の定理より,BAC=BACである.また,2RsinBAC=2RsinBAC=aであるからこれをRについて解くことでR=a2sinAが得られる.同様に,R=a2sinA=b2sinB=c2sinCが得られる.

S=12bcsinAであるので,sinA=2Sbcが得られる.これをR=a2sinAに代入すると,a22Sbc=abc4Sが得られ,題意は示された.

最右辺に関しては内接円の半径と同じように,Sをヘロンの公式を用いてa,b,cのみで表すことで得られる.

正弦定理-1 正弦定理-1

傍接円の半径

傍接円の半径

三辺の長さをa,b,cとする三角形のAに関する傍接円の半径rA
rA=2Sa+b+c=12(a+b+c)(ab+c)(a+bc)(a+b+c)

方針:内接円の半径と同様に面積についての式を立てる.

|AB|=c,|BC|=a,|CA|=b,|IAE|=rAとすると,面積Sについて,以下の式が成り立つ.
S=ABIA+ACIABCIA=crA2+brA2arA2=12rA(a+b+c)が得られる.これをrAについて解くとrA=2Sa+b+cが得られる.

最右辺に関しては内接円と同じように,Sをヘロンの公式を用いてa,b,cのみで表すことで得られる.

傍接円-1 傍接円-1

リュイリエの定理

リュイリエの定理

三角形ABCにおいて,内接円の半径をr,傍接円の半径をrA,rB,rCとすると,以下の式が成り立つ.
1r=1rA+1rB+1rC

定理6より1r=a+b+c2S,定理8より1rA=a+b+c2S,1rB=ab+c2S,1rC=a+bc2Sである.

1rA+1rB+1rC=(a+b+c)+(ab+c)+(a+bc)2S=a+b+c2S=1r
よって,題意は示された.

内接円,傍接円の半径と面積の関係

三角形ABCにおいて,内接円の半径をr,傍接円の半径をrA,rB,rCとすると,以下の式が成り立つ.
S=rrArBrc

定理6よりr=2Sa+b+c,定理8よりrA=2Sa+b+c, rB=2Sab+c, rC=2Sa+bcである.

rrArBrc=2Sa+b+c2Sa+b+c2Sab+c2Sa+bc=16S416S2 =S

九点円の存在

九点円/nine-point circle

三角形の三辺の中点,三頂点から対辺に下ろした垂線の足,垂心と各頂点の中点を通る円を九点円(フォイエルバッハ円)という.

九点円の存在

三角形の三辺の中点,三頂点から対辺に下ろした垂線の足,垂心と各頂点の中点は同一円周上に存在する.(九点円は必ず存在する.)

方針:中点が複数存在することから中点連結定理を考える.

三角形ABCに注目すると,中点連結定理より,MCMB//BC, |MCMB|=12|BC|がわかる.また,三角形DBCに注目すると,中点連結定理より,QR//BC, |QR|=12|BC|がわかる.このことから,四角形MCQRMBは長方形である.故に四点MCQRMBMCR,MBQを直径とする共円である.また,円周角の定理の逆よりHC,HBも共円である.さらに,この円は三角形HBMBQの外接円である.

四角形MCQRMBと同様に,四角形MBPQMAは長方形である.さらに,円周角の定理の逆よりHA,HBも共円である.この円は三角形HBMBQの外接円であるから,先ほどの円と等しい円である.よって,九点は共円である.

九点円-1 九点円-1

九点円-2 九点円-2

九点円の半径

九点円の半径

九点円の半径は外接円の半径の半分である.

定理12を示す前に補題を示しておきます.

中点三角形

三角形の各辺の中点を結んでできた三角形(中点三角形)は元の三角形と相似であり,その相似比は1:2である.

補題13

中点連結定理より,|DE|:|BA|=|EF|:|CB|=|FD|:|CA|=1:2である.よって,三角形DEFは三角形ABCと相似であり,その相似比は1:2である.

中点三角形-1 中点三角形-1

定理12

補題13より,三角形MAMBMCは三角形ABCと相似でありその比は1:2であるから外接円の半径も1:2である.九点円は三角形MAMBMCの外接円であるから題意は示された.

九点円-3 九点円-3

九点円の中心と外心と垂心

九点円とオイラー線

九点円の中心は外心と垂心の中点である.

三角形PQRは垂心Dを中心として0°回転させて12の相似比で拡大させたものである.また,PQRの外接円は九点円である.三角形MAMBMCは外心Oを中心として180°回転させて12の相似比で拡大させたものである.また,三角形MAMBMCの外接円は九点円である.後述する定理16より,中点三角形の垂心は元の三角形の外心であるからO1Dは共に垂心である.さらに,これらの二つの三角形は九点円を共有して180°回転した合同であるからO1DO2を中心とする対称な点である.よって,九点円の中心は外心と垂心の中心である.

九点円とオイラー線-1 九点円とオイラー線-1

中点三角形の重心

中点三角形の重心

中点三角形の重心は元の三角形の重心と等しい.

中点連結定理より,HEFの中点である.また,ADHを通る.同様に,BEIを,CFJを通る.よって,Gは元の三角形の重心である.

中点三角形の重心-1 中点三角形の重心-1

中点三角形の垂心

中点三角形の垂心

中点三角形の垂心は元の三角形の外心と等しい.

中点連結定理より,EF//BCであるからDHBCである.DHBCに垂直であり,中点を通るから垂直二等分線である.同様に,EI,FJも垂直二等分線である.故に,Gは元の三角形の外心である.

中点三角形の垂心-1 中点三角形の垂心-1

傍心三角形の垂心

傍心三角形の垂心

傍心三角形の垂心は元の三角形の内心と等しい.

方針:三角形ABCの内心が三角形IAIBICの垂心であることを示す.

三角形ABCの内心をIとする.傍心の存在性より,直線CI上にICは存在する.ここで,BCIA=ACIBであり,Iを内心と仮定していることから,ICCIAIBである.同様に,IAAIBIC,IBBICIAであるからIは三角形IAIBICの垂心である.よって,題意は示された.

傍心三角形の垂心-1 傍心三角形の垂心-1

垂足三角形の内心

垂足三角形の内心

垂足三角形の内心は元の三角形の垂心である.

方針:元の三角形の垂心が垂足三角形の内心であることを示す.共円を利用して,簡単な角度計算で示す.

ABC=xとする.四角形AFHEは共円であるから,FEH=xである.また,四角形FBCEも共円であるから,FCB=xである.さらに,四角形CEHDも共円であるのでDEH=xである.故に,EBFEDの角の二等分線である.同様に,FC,DAも角の二等分線であるからHは垂足三角形の内心である.故に題意は示された.

垂足三角形の内心-1 垂足三角形の内心-1

垂足三角形の傍心

垂足三角形の傍心

垂足三角形の傍心は元の三角形の各頂点である.

定理18の証明と同様に,EFH=DFGである.また,AFE=90°EFH,BFD=90°DFHであるから,AFE=BFDである.また,対頂角よりPFE=DFBであるから,PFA=EFAである.点Eに関しても同様.従って,Aは点Dに関する三角形DEFの傍心である.

垂足三角形の傍心-1 垂足三角形の傍心-1

ジュルゴンヌ三角形とジュルゴンヌ点の存在

ジュルゴンヌ点とジュルゴンヌ三角形

三角形の各頂点と,内接円と対辺の接点を結んだ線分の交点をジュルゴンヌ点という.内接円のと各辺の接点を結んでできた三角形をジュルゴンヌ三角形という.

ジュルゴンヌ点の存在

三角形の各頂点と,内接円と対辺の接点を結んだ線分は一点で交わる.(ジュルゴンヌ点は必ず存在する.)

方針:円外の一点と接点との関係を使う.

|AE|=|AF|,|BF|=|BD|,|CD|=|CE|である.チェバの定理の逆より,|AF||FB||BD||DC||CE||EA|=1であるから一点で交わる.

ジュルゴンヌ点-1 ジュルゴンヌ点-1

垂心と外心の等角共役性

垂心と外心は等角共役関係にある.

三角形OMBと三角形OMCは合同であるのでBOM=COMである.また,円周角の定理より2BAC=BOCである.故に,BOM=COM=BACである.これをαとする.OCB=90°αである.FCA=90°αである.故にACF=BCOである.残りの頂点も同様のことが言えるから垂心は外心の等角共役点である.

垂心と外心の等角共役性 垂心と外心の等角共役性

内心と外心の距離(オイラーの公式)

オイラーの公式

内心と外心の距離をd,内接円の半径をr,外接円の半径をRとすると以下の式が成り立つ.
d2=R22Rr

方針:方べきの定理を使用する.

d2=R22Rr(R+d)(Rd)=2Rrである.R+dIEを表していて,RdIFを表している.方べきの定理より,(R+d)(Rd)=|FI||IE|=|AI||ID|である.

BCD=αとおくと,円周角の定理より,BAD=αとなり,角の二等分線より,CAD=αも従う.ACI=βとすると,角の二等分線よりBCI=βである.ここで,ICD=α+βであり,CID=α+βであるから三角形DICは二等辺三角形である.これより,|AI||ID|=|AI||CD|である.

三角形CDHと三角形GIAはそれぞれ直角三角形であり,DHC=IAG=αであるから相似である.ここで三角形AGIと三角形HCDの相似比を1:kとすると,|AI||CD|=|AI||GI|kとなる.また,|AI||GI|k=|HD||GI|である.|HD|=R,|GI|=rであるから,d2=R22Rr である.

オイラーの公式-1 オイラーの公式-1
オイラーの公式-2 オイラーの公式-2
オイラーの公式-3 オイラーの公式-3

オイラー線

オイラー線

正三角形でない任意の三角形に対して外心,重心,垂心はこの順で一直線に並びその距離の比は1:2である.この線のことをオイラー線と呼ぶ.

直線COと円との交点をPとする.この時,CPは円の直径である.また,BCの中点をMとすると,中点連結定理より,OM//PBであり,2|OM|=|PB|である.ADBC,PBBCであるから,AD//PBである.また,垂心の性質と円周角の定理より,BEAC,PAACであるから,BE//PAである.よって,四角形PBHAは平行四辺形である.よって,|AH|=|PB|=2|OM|

図2において,三角形AGHと三角形MGOMGO=AGH,GAH=GMO(AD//OM)であるから,相似である.さらに,|AH|=2|OM|より,その相似比は2:1である.また,GAM2:1に内分する点でMが中点であるからGは重心である.これより,三点O,G,Hは一直線条に並び,|OG|:|GH|=1:2である.

オイラー線-1 オイラー線-1

オイラー線-2 オイラー線-2

トリリウムの定理

トリリウムの定理

三角形ABCの内心をI,Aに関する傍心をIA,直線IIAと三角形ABCの外接円との交点のうちAでないものをDとすれば四点IBIACDを中心とする同一円周上に存在する.

方針:|ID|=|BD|=|IAD|=|CD|となることを示す.

円周角の定理より,DBC=DCBであるから|DB|=|DC|である.また,CID=CAI+ICA=BAD+ICB=BCD+ICB=ICDであるので|DI|=|DC|である.このことから,三点B,I,CDを中心とする共円である.よって,ここではICIA=90°であることを示せば十分である.DCIA=xとすれば,傍心の性質よりIACE=x+BCDとなる.ここで,ACE=2ICB+2(BCIA)=180°であることから,ICIA=ICB+(BCIA)=90°が得られる.よって,円周角の定理の逆より,IIAは直径であり,Dが中心であるので,|ID|=|BD|=|IAD|=|CD|である.

トリリウムの定理-1 トリリウムの定理-1
トリリウムの定理-2 トリリウムの定理-2

コスニタの定理

三角形ABCの外心をOとして,三角形OAB,OBC,OCAの外心をOC,OA,OBとすると,AOA,BOB,COCは一点で交わる.また,その点は九点円の中心の等角共役点である.

方針:初等的に示すのは難しそうなので複素を利用する.(初等的な証明が思いつきませんでした...)

A(a),B(b),C(c),O(0)として,三角形ABCの外接円を|Z|=1とする.OAOBの垂直二等分線とOCの垂直二等分線の交点であることを利用してOAを求めていく.OA,OB,OCの垂直二等分線の式はそれぞれ以下のようになる.
OA:z+a2Z¯=aOB:z+b2Z¯=bOC:z+c2Z¯=c

OAが再び円と交わるのはP(ab+acbcabc)である.同様に,OBではQ(ab+bcaca+bc),OCR(ac+bcabab+c)である.ここで,後述する補題26より(Pb)(Qc)(Ra)+(cP)(aQ)(bR)=0であることを示ばよい.

(Pb)(Qc)(Ra)+(cP)(aQ)(bR)=b2+caabcc2+aba+bca2+bcab+c+c2ababca2bca+bcb2+caab+c=(b2+ca)(c2+ab)(a2+bc)+(a2+bc)(b2+ca)(c2+ab)(abc)(a+bc)(ab+C)=0
よって題意は示された.

コスニタの定理-1 コスニタの定理-1
コスニタの定理-2 コスニタの定理-2

円と共線

単位円上の六点a,b,c,d,e,fにおいて,ad,be,cfが共点であるまたは平行であるための必要十分条件は以下のようになる.
(ab)(cd)(ef)+(fa)(bc)(de)=0

の証明
(i) 三本が平行である場合
直線ad,be,cfはそれぞれ以下のように表される.
z+adz=a+dz+bez=b+ez+cfz=c+f
この時,全て平行であるから,ad=be=cfである.ad=be=cf=xとすれば,

(ab)(cd)(ef)+(fa)(bc)(de)=abd+abe+acdacfade+adfbce+bcf+bdebefcdf+cef=bx+ax+cxaxex+fxcx+bx+dxfxdx+ex=0
となって,成立する.

(ii) 三本が一点で交わる場合
z+adz=a+dz+bez=b+ez+cfz=c+f
であり,これは全て同じ点Wを通るので
a+dadw=b+ebew=c+fcfw
となる.一方で,(ab)(cd)(ef)+(fa)(bc)(de)=ad(c+fbe)+(a+d)(becf)be(c+f)+cf(b+e)であるから,頑張って計算すると,
(ab)(cd)(ef)+(fa)(bc)(de)=0
である.よって,成立する.

の証明.
(i) 平行であることの証明
be,efが平行であるときにadも平行であることを示す.be//cfだからad=beである.このことを利用して(ab)(cd)(ef)+(fa)(bc)(de)を整理すると,(adbe)(c+fbe)であるから,(ab)(cd)(ef)+(fa)(bc)(de)=0より,ad=be,c+f=b+eである.ad=beの場合はad//beである.また,c+f=b+eの時は二つの直線は一致する.よって成立する.

(ii) 一点で交わることの証明
be,cfが混じっている時に,adも共点であることを示す.wで交わっているとすれば
(ab)(ad)(ef)+(fa)(bc)(de)=ad(c+fbe)+(a+d)(becf)be(c+f)+cf(b+e)=ad(p+cfw¯wbew¯)+(a+d)(becf)be(w+cfw¯)+cf(w+bew¯)=(becf)(adw¯ad+w)
ここで,(becf)(adwad+w)=0であって,becfは平行ではないので,adw¯ad+w=0である.故にw+adw¯=a+dである.よって成立する.

よって,題意は示された.

丸山良寛の定理

円に内接する四角形ABCDにおいて,三角形ABC,BCD,CDA,DABの内接円の半径をr1,r2,r3,r4とすると,r1+r3=r2+r4が成り立つ.

方針:内心と外接円がたくさん登場していることからトリリウムの定理を利用する.

AB,BC,CD,DAの中点をN,K,L,Mとする.円周角の定理より,NMK+MNL=90°であるからMKNLである.ここで,トリリウムの定理より|MIABD|=|MIACD|である.また円周角の定理より,BMK=CMKであるから,MKIABDIACDである.よって,IABDIACD//NLである.同様に内心をIABC,IBCDと定めればIABDIABC//MK,IABCIBCD//NL,IBCDIACD//MKであるから四角形IABDIABCIBCDIACDは長方形である.ここで,IABDIBCDIABCIACDの交点をXとすると,|IABDX|=|IABCX|=|IBCDX|=|IACDX|となる.またこの長さをxとする.三角形OIABDIBCDで中線定理を用いると,|OIABD|2+|OIBCD|2=2(|OX|2+x2)となる.同様に,三角形OIABCICDAについても中線定理を適用すると,|OIABC|2+|OICDA|2=2(|OX|2+x2)となる.このことから,|OIABD|2+|OIBCD|2=|OIABC|2+|OICDA|2が得られる.ここで,オイラーの定理を用いて,d2=R22Rrをそれぞれ代入する.全て同様の円に内接するので外接円の半径Rは等しい.従ってR22Rr1+R22Rr3=R22Rr2+R22Rr4が得られる.よって,r1+r3=r2+r4である. (2022/08/07一部追記)

丸山良寛の定理-1 丸山良寛の定理-1
丸山良寛の定理-2 丸山良寛の定理-2

利用例

利用例は挙げたらキリがないですが,ここでは特に五心の基本的な性質と深く関わっている問題をいくつか集めてみました.是非考えてみてください.

JMO2010-本選1

ABACなる鋭角三角形ABCがあり,AからBCに降ろした垂線の足をHとおく.点P,Qを三点A,B,Pと三点A,C,Qがともにこの順に一直線状になるように並ぶようにとると,HP=HQが成り立った.このとき,Hは三角形APQの外心であることを示せ.

自作

B=60°を満たす三角形ABCの垂心をH,内心をIとする.三角形AHCの外心をOとする.この時,以下の命題を示せ.

  1. 三点B,I,Oは同一直線上に存在する.
  2. Oは三角形ABCの外接円上に存在する.

簡単ではありますが,自作問題なので一応解説をおいておきます.

解答
  1. 円周角の定理より,AOC=120°.また,AIC=60°+180°60°2=120°である.AからBCへ降ろした垂線の足とCからBAに降ろした垂線の足とA,Hは共円であるから,AHC=120°である.よって,五点AHIOCは共円である.よって,OOHの垂直二等分線上に存在する.
    一方で,垂心と外心の等角共役性より,OBA=HBCである.また,Iは内心なのでIBA=IBCとなる.このことから,IBH=IBOが従う.また,HからABへと降ろした垂線の足をPとして,線分BCの中点をMとすると,三角形PBC|PB|:|CB|=1:2,特に|PB|=|MB|を満たすような直角三角形となる.|PB|=|MB|,OBM=HBP,OMB=HPB=90°より,HPBOMBとなる.よって,|BO|=|BH|となる.①,②より,B,Iは線分OHの垂直二等分線上に存在する.以上より,三点B,I,Oは線分OHの垂直二等分線上に存在する事が示された.
  1. 示すことは三角形OOCが正三角形であることと同値である.OOC=60°であり,OOCAの外心であるから|OC|=|OO|である.よって,三角形OOCは正三角形であるから題意は示された.

問題文の状況を書き起こしただけの図 問題文の状況を書き起こしただけの図

(1)の図 (1)の図

(2)の図 (2)の図

終わりに

とても長い記事となってしまいましたが五心の基本性質を全て網羅できた気がします.作問するときに見たりと活用していただけると嬉しいです!!

参考文献

投稿日:2022713
更新日:202477
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  1. はじめに
  2. 五心の定義と存在
  3. 重心の存在
  4. 内心の存在
  5. 外心の存在
  6. 垂心の存在
  7. 傍心の存在
  8. 五心の性質
  9. 内接円の半径
  10. 外接円の半径
  11. 傍接円の半径
  12. リュイリエの定理
  13. 内接円,傍接円の半径と面積の関係
  14. 九点円の存在
  15. 九点円の半径
  16. 九点円の中心と外心と垂心
  17. 中点三角形の重心
  18. 中点三角形の垂心
  19. 傍心三角形の垂心
  20. 垂足三角形の内心
  21. 垂足三角形の傍心
  22. ジュルゴンヌ三角形とジュルゴンヌ点の存在
  23. 垂心と外心の等角共役性
  24. 内心と外心の距離(オイラーの公式)
  25. オイラー線
  26. トリリウムの定理
  27. コスニタの定理
  28. 丸山良寛の定理
  29. 利用例
  30. 終わりに
  31. 参考文献