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n変数のsinの積和公式

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目次

1.積和公式とは
2.加法定理(3変数)
3.補題
4.n変数のsinの積和公式
5.証明
6.終わりに

1. 積和公式とは

積和公式とは三角関数の積を和に変換する公式のことです。今記事では、sinの積和公式に焦点を当てていきます。
高校数学の教科書にはsinの積和公式は次のように書かれています。
sinαsinβ=12{cos(α+β)cos(αβ)}
これは、コサインの加法定理
cos(α+β)=cosαcosβsinαsinβ
cos(αβ)=cosαcosβ+sinαsinβ
から導かれます。

上記の場合では、変数はαβの二種類ですが、変数がn個の場合のsinの積和公式はどのように表されるのでしょうか?

2.加法定理(3変数)

2変数の加法定理を繰り返し用いることで、次の3変数の加法定理を得ることができます。

3変数の加法定理

sin(α+β+γ)=sinαcosβcosγ+cosαsinβcosγ+cosαcosβsinγsinαsinβsinγ
sin(α+βγ)=sinαcosβcosγ+cosαsinβcosγcosαcosβsinγ+sinαsinβsinγ
sin(αβ+γ)=sinαcosβcosγcosαsinβcosγ+cosαcosβsinγ+sinαsinβsinγ
sin(αβγ)=sinαcosβcosγcosαsinβcosγcosαcosβsinγsinαsinβsinγ

cos(α+β+γ)=cosαcosβcosγsinαsinβcosγsinαcosβsinγcosαsinβsinγ
cos(α+βγ)=cosαcosβcosγsinαsinβcosγ+sinαcosβsinγ+cosαsinβsinγ
cos(αβ+γ)=cosαcosβcosγ+sinαsinβcosγsinαcosβsinγ+cosαsinβsinγ
cos(αβγ)=cosαcosβcosγ+sinαsinβcosγ+sinαcosβsinγcosαsinβsinγ

これらを用いて次の補題を示していきます。

3.補題

sinαsinβsinγを和に変換する

(3変数のsinの積和公式)
公式1において
(+)×(14)
を計算することにより
sinαsinβsinγ=14{sin(α+β+γ)sin(α+βγ)sin(αβ+γ)+sin(αβγ)}

cosαsinβsinγを和に変換する

公式1において
(+)×(14)
を計算することにより
cosαsinβsinγ=14{cos(α+β+γ)cos(α+βγ)cos(αβ+γ)+cos(αβγ)}

4.n変数のsinの積和公式

の表記法について

k1knを適当な数として
f(k1±k2±±kn)
で表される2n1個の数の総和を
f(k1±k2±±kn)と書くこととします。

(例)
f(A±B±C)=f(A+B+C)+f(A+BC)+f(AB+C)+f(ABC)

nが奇数の時と、偶数の時とで積和公式の形は異なります。

nが奇数のとき

i=1nsin(ai)=(1)n122n1sin(a1±a2±a3±±an)(1)Nn
ただしNn±の部分で を選んだ回数

nが偶数のとき

i=1nsin(ai)=(1)n22n1cos(a1±a2±a3±±an)(1)Nn
ただしNn±の部分で を選んだ回数

((1)Nn±の部分でを奇数回選んだ時に、全体の符号がマイナスになるというイメージです。)

実際に、公式2にn=3を代入してみると
sina1sina2sina3=14{sin(a1+a2+a3)sin(a1+a2a3)sin(a1a2+a3)+sin(a1a2a3)}
となり、補題1の結果と一致します。

また、公式3にn=2を代入してみても
sina1sina2=12{cos(a1+a2)cos(a1a2)}
となり、これは2変数の積和公式に一致していることが分かります。

5.証明

数学的帰納法で証明します。

公式2 (nが奇数の時)

.n=1のときは自明であり、n=3のときは(補題1)で示した。
.n=kのとき、(kは奇数)
i=1ksin(ai)=(1)k122k1sin(a1±a2±a3±±ak)(1)Nk
が成立すると仮定して、n=k+2のとき
i=1k+2sin(ai)=(1)k+122k+1sin(a1±a2±a3±±ak+2)(1)Nk+2
となることを示す。


i=1k+2sin(ai)
={i=1ksin(ai)}sinak+1sinak+2
となるから、仮定より
=(1)k122k1sin(a1±a2±a3±±ak)(1)Nksinak+1sinak+2
ここで、見通しを良くするために
sin(a1±a2±a3±±ak)(1)Nk=sinAkとおくと
=(1)k122k1(sinAksinak+1sinak+2)
補題1より
=(1)k+122k+1{sin(Ak+ak+1+ak+2)sin(Ak+ak+1sinak+2)sin(Aksinak+1+sinak+2)+sin(Aksinak+1sinak+2)}
()内のの数と、 sinの符号に注意すると
=(1)k+122k+1sin(a1±a2±a3±±ak+2)(1)Nk+2
よって、n=k+2のときも成立

()()から(公式2)は成立する

nが偶数のときも、同じ手法で示すことができます。

公式3(nが偶数のとき)

.n=2のとき、先ほど述べた通り成立する。
.n=kのとき、(kは偶数)
i=1ksin(ai)=(1)k22k1cos(a1±a2±a3±±ak)(1)Nkが成立すると仮定して、n=k+2のとき
i=1k+2sin(ai)=(1)k+222k+1cos(a1±a2±a3±±ak+2)(1)Nk+2となることを示す。


i=1k+2sin(ai)
={i=1ksin(ai)}sinak+1sinak+2
仮定より
=(1)k22k1cos(a1±a2±a3±±ak)(1)Nksinak+1sinak+2
(公式2)の証明と同様に
cos(a1±a2±a3±±ak)(1)Nk=cosAkとおくと
=(1)k22k1(cosAksinak+1sinak+2)
補題2より
=(1)k+222k+1{cos(Ak+ak+1+ak+2)cos(Ak+ak+1ak+2)cos(Akak+1+ak+2)+cos(Akak+1ak+2)}
()内のの数と、 cosの符号に注意すると
=(1)k+222k+1cos(a1±a2±a3±±ak+2)(1)Nk+2
よって、n=k+2のときも成立

()()から(公式3)は成立する

6.終わりに

一般に、n個のsinの積は、2n1個のsinやcosの加・減法に展開できることが分かりました。また、今回示した積和公式は加法定理から導かれるものだったので、実数範囲だけでなく複素数範囲で成り立ちそうですね。

ここまで読んでいただきありがとうございましたθωθ

投稿日:2022729
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