初めに
今回は競技数学の幾何の重要な知識のSymmedianについてまとめていきたいと思います.Symmedianは幾何の知識をフル活用する最高の題材です!!Symmedianはなかなか知識がまとめられているサイトが少なかったので少しでも参考になれば良いなと思います.(あくまでもまとめノートです.正確性は保証できませんので間違いがあったら訂正していただけると助かります.)
注意の見出し
本記事に修正、加筆を加えた
最新版
もぜひご覧ください。
Symmedianとは
Symmedian
中線の等角共役線をSymmedianと呼ぶ.図において,はそれぞれ中線とSymmedianであり,である.
Symmedian-def
Symmedianの作図
定規とコンパスだけで等角共役線を作図する一般的な方法はありません.まずはSymmedianを作図する方法を考えてみましょう.
2022/08/08追記:嘘つきました.等角共役線は作図可能です.
Symmedianの作図
三角形の外接円のにおける接線の交点をとすればは三角形のSymmedianとなる.
Symmedian-作図1
まずは,これでSymmedianが作図できていることを確かめていきましょう.幾何の良い練習問題になると思うので知らない人は一度自分で考えてみてください!!
方針:三角形と三角形の相似を示す.
をの中点,をの中点とする.
まずはわかる共円を発見するところから始めていきましょう。より,4点は共円である.また,中心と弦への中点を結ぶ直線と弦は垂直に交わるからである.したがって,は共円である.これより,がしたがう.また,も得られる.一方で,円周角の定理より,である.以上より,である.このことから,が得られる.さらに,がの中点,がの中点であることを利用すると,が得られる.より,となる.したがって,はSymmedianである.
Symmedian-作図2
折角なので,もうひとつ代表的なSymmedianの作図方法を見ていきましょう.
Symmedianの作図2
三角形の外接円のにおける接線と直線との交点をとする.から三角形
の外接円へ引いた接線との接点をとすると,はSymmedianである.
Symmedian-作図3
こちらも同様にSymmedianが作図できていることを確認していきましょう.
方針:定理1と同様の手法を用いる.
定理1より,は三角形のSymmedianである.したがって,である.また,円周角の定理より,である.よってが従う.が得られる.また,が中点であることより,定理1の証明と同様にである.したがって,はSymmedianである.
Symmedian-作図4
ちなみに,定理1を用いない証明も存在します.
Symmedianの基本性質
上の証明の途中でいくつか面白い性質が出てきましたね.いったんそれらをまとめていきたいと思います.
Symmedianの性質1
図において,はSymmedianである.このとき,以下の性質が成り立つ.
・,の接線は共点である.
・である.(角の二等分線)
・の中点との5点は同一円周上にある.
・は三角形(三角形)のSymmedianである.
Symmedian-性質1
ここでは,がSymmedianの時にこれらの性質が成り立つことを改めて示してみましょう.
はSymmedianなので,である.また,円周角の定理より,である.したがって,である.よって,である.また,は中点であるからが得られる.このことから,従う.が得られる.よって,5点は共円である.(3つ目の性質)
また,5点が共円であるから簡単な角度計算より,である.(2つ目の性質)
さらに,三角形において,は角の二等分線であるから有名事実より,はのうちを含まないほうの中点を通るからはを通る.(1つ目の性質)
4つ目の性質は定理1と定理2を用いることで容易に得られる.
もう少し,Symmedianの性質を見ていきましょう.
はSymmedianである.このとき,上に点を取ると
はSymmedianであるから,である.よって,が得られる.は中点なので.したがって,である.
lemma-1
補題を示したのは下記の有名な定理のためです.
Symmedianの性質2/Steiner's Ratio Theorem
図において,をSymmedianとすると,が成り立つ.
.ここで,補題4より,である.したがって,.
Steiner's Ratio Theorem-2
Symmedianの性質3/antiparallel
逆平行とは簡単に言うと,となるような状況のことを言います.
とは逆平行なので,である.したがって,である.また,がSymmedianなのでであるからである.であるからはの中点である.
Antiparallel-1
ここまでいろいろな面白い性質を紹介してきましたがSymmedianの性質は数えきれないほど存在します.あくまでもこれらは"基本"性質です.
類似重心(ルモアーヌ点)
一つの三角形に対して三つのSymmedianが存在しますがそれらは一点で交わるのでしょうか?実際に図を描いてみると交わりそうですね.
類似重心
三角形の三本のSymmedianは一点で交わる.これを類似重心と呼ぶ.
方針:チェバの定理の逆よりを示す.
ここで,Steiner's Ratio Theoremよりである.他の項に対しても同様の変形をすると,となって,3本のSymmedianは一点で交わることが示された.
類似重心-1
この一点は類似重心やルモアーヌ点と呼ばれています.ルモアーヌ点の性質もたくさん存在しますが,今回は少しだけ面白い性質を紹介しておきます.
類似重心からへ下ろした垂線の長さをとすると,が成り立つ.
これは補題4が刺さりそうですね.
は3つのSymmedian上の点であるので、補題4より,,,である.よって,
三角形の内部の点からへ下ろした垂線の長さをとすると,が最小となるようなは類似重心である.
とする.コーシーシュワルツの不等式より,が成り立つ.
ここでの統合成立条件はでありそのような点は類似重心である.
Symmedianの作図(応用編)
Symmedianの作図をもう少し深掘りしてみましょう.
直角三角形におけるSymmedian
直角三角形におけるSymmedianは対辺への垂線であることを示せ.
2本の接線は必ずしも一点で交わるとは限りません.そのようなケースを考えてみましょう.
であり,である.であり,円周角の定理より,より,となる.従って,Symmedianは垂線である.
直角三角形におけるSymmedian
このことから,外接円の接線とSymmedianは一点で交わるか平行になるかの二択であるとわかりましたね.これは根心と似ていますね.
Symmedianの作図-応用編1
三角形において図のように,を一辺とする正方形を考える.この時,三角形の外心とを結んだ直線はSymmedianとなることを示せ.
Symmedian-作図応用編1-1
より,の角の二等分線との角の二等分線は一致する.一方で,三角形に注目すると,直線は外心を通る.外心と垂心は等角共役関係にあることから直線が垂心を通ることを示す.すなわち,直線がと直行することを示ば良い.を中心として三角形を回転した三角形を考える.中点連結定理より,である.従って,直線はと直行する.これより,はSymmedianである.
Symmedian-作図応用編1-2
Symmedian-作図応用編2
三角形において,辺上にとなるように点をとる.との交点をとする.三角形の外接円の交点のうちでないものをとすると,はSymmedianであることを示せ.
Symmedian-作図応用編2-1
とても自然な流れでSymmedianが登場しましたね...!
方針:補題4を使う
簡単なangle-chaseより,である.をからへと下ろした垂線の長さとする.ここで,補題4より,を示せば良い.
であるから題意は示された.
Symmedian-作図応用編2-2
Symmedian-作図応用編3
三角形において,辺上にとなるように点をとる.三角形の外接円の交点のうちでないものをとすると,はSymmedianであることを示せ.
Symmedian-作図応用編3-1
方針:問題3を用いる
,であるからよりが従う.よって,4点とはそれぞれ共円である.ここで,問題3よりはSymmedianである.
Symmedian-作図応用編3-2
三角形において辺上に点をとなるようにとる.を通りに逆平行な直線とを通りに逆平行な直線の交点をとしたとき,はSymmedianであることを示せ.
Symmedian-作図応用編4-1
残りの逆平行線を引いてそこの中点を通ることを示していきましょう.
とする.は逆平行線であるから,である.であるから,である.また,なのでである.従って,である.ここで,を通りと逆平行な補助線を引く.すると,であり,である.同様に,である.従って,はの中点である.従って,定理6よりはSymmedianである.
Symmedian-作図応用編4-2
@I_______nu
三角形ABCの外接円をΩとして,2点B,Cについてのアポロニウスの円であってAを通るようなものをωとする.この時,以下の性質が成り立つ.
・をで反転させても不変である.
・の中心,,の中点を通る円をで反転させるとSymmedianとなる.
僕は反転を初等的に扱った経験があまりないので紹介だけです.申し訳ありません.
調和四角形
Vietnam TST
三角形の外接円をとして,をの中点とする.円をを通り,と接する円とする.円をを通り,と接する円とする.この時,円が一点で交わることを示せ.
との交点がの外接円上に存在することを示す.接弦定理より,である.より四点は共円である.
調和四角形-1
さて,問題自体はこれで終わっても良いですがせっかくなのでSymmedianとの関係性も見ていきましょう.これはイメージ的には問題4の特殊な場合と考えれば良いですね.
Symmedianの確認
簡単なangle-chaseよりであるからは三角形のに関するSymmedianである.ここでからはと下ろした垂線の長さをとすると,補題4より以下が成り立つ.である.ここで,について注目すると,補題4よりは三角形に関してのSymmedianである.
調和四角形-2
ちなみに,このような四角形は調和四角形と呼びます.ここで,調和四角形に関しての性質をいくつか見ていきましょう.
調和四角形
調和四角形
四角形が円に内接して,を満たすとき調和四角形と呼ぶ.
調和四角形には以下の同値な言い換えが存在します.
調和四角形においては三角形のにおけるSymmedianである.
まぁ,補題4より明らかですね.これはもちろん三角形などにも成り立ちます.
複比と調和点列
実践問題は難しい問題も含まれています.一旦ここでは事前準備として複比と調和点列について扱っていきます.あくまでもSymmedianについての記事なのでここでは軽くしか扱いませんので各自で調べることを推奨します.知っている人は飛ばしてもらって構いません.
複比
イメージとしては「比と比の掛け算」です.
一点を通る4つの直線と二つの直線がなす複比は等しい.
簡単なので証明は省略します.
調和点列
調和点列には同値な言い換えがいくつか存在しますが代表的なものを紹介しておきます.
四点が調和点列ならばである.ただし,はの中点である.
こちらも簡単なので証明は省略します.
実践問題
ここからは実践的な問題を通じてSymmedianの性質をさらに深掘りして行きたいと思います.Symmedianは何が嬉しい?という疑問も解決できるのではないかと思います.とりあえず簡単な問題から考えていきましょう.
Brilliant
三角形はを中心とする円に内接している.の中点をとする. に関するにおいての接線の交点をとする.との交点のうちでないものをとする.であったとき,を求めよ.
四角形は調和四角形である.従って,は三角形におけるのSymmedianである.従ってである.さらに円周角の定理より,従って,である.
OMC087-A
円に内接する四角形はを満たします.線分の中点をとします.であるとき,の長さを求めてください.
これは4eの水diffでした.
四角形は調和四角形である.従って,はSymmedianである.直線と三角形の外接円との交点のうちでない方をとする.とは等角共役線なのでである.円周角の定理より,.また,である.であり,円周角の定理より,である.従って,である.このことから,が得られる.方べきの定理より,である.さらに,中線定理よりである.これらを併せて,以下の連立方程式を得る.
これを整理すると,という二次方程式が出てきます.の素因数分解に関してですが,これはとみることでソフィージェルマン恒等式より,とわかります.従って,です.Symmediaに気づくことで簡単に解ける問題でした.
実践問題2-1
@I_______nu
三角形の垂心から中線へと下ろした垂線の足をとする.をに関して対称移動させた点をとすると,はSymmedianとなることを示せ.
Symmedianの対称性に着目してみましょう.
より,は共円.の交点をとすると方べきの定理より,である.ここで,は調和点列なのでである.従って,方べきの定理の逆より,は共円である.一方で有名事実として,をに関して対称移動させた点はは三角形の外接円上にくる.三点で定まる円とで定まる円は対称だからは三角形の外接円上にくる.と三角形の外接円の交点をとすると,はに関してと点対称なのでである.また,はに関して対称であるから,である.従って,はSymmedianである.(この長さに着目した角度の比較はIMOクラスの問題だとよく見かけます.難しいです.)
実践問題3-1
@I_______nu
不等辺三角形において,その外接円をとし,を通ってに垂直な直線との交点のうちでない方をとする.から対辺に下ろした垂線の足をそれぞれとし,三角形の外接円との交点のうちでない方をとする.も同様に定めるときには一点で交わることを示せ.
引用元は
こちら
ヒント:上の問題9と関連しています.
根心の存在性より,は一点で交わる.との交点をとする.ならば問題9より,はSymmedianである.Symmedianは一点で交わるからであることを示せば良い.
ここで,が直径となるようにをとる.すると,,であるからである.同様にであるから,四角形は平行四辺形である.従って,その中心とは一直線上に並ぶ.ここで,直線との交点のうちでないものをとすると,より,は共円である.特にこの円はを直径とする円である.この円と,の外接円の根心を考えればは共線である.ここで,より,は三角形の垂心である.従って,であるから題意は示された.
実践問題4-1
実践問題4-2 (これエグいって...)
@I_______nu
三角形において, から対辺に下ろした垂線の足を, 垂心をとし, を直径とする円と三角形の外接円との交点をとする.ととの交点をとすると,はsymmedianであることを示せ.
同様の構図に関する問題です.を直径とする円は問題10におけるの載る円である.問題10におけるととからへと下ろした垂線の足(これをとする.)が共線であることを示せば良い.さらに,示すべきことはと同値である.であるから題意は示された.
問題5-1
この構図における点のことを"Humpty-point"というそうです.
有名構図
三角形においてを へと移す相似拡大の中心をとする.このとき,はSymmedianとなることを示せ.
まずは図を描いて答えを予想してみましょう.は回転相似の中心ですからとなります.従って,となります.このような点に見覚えはないですか...?そうです,Symmedianの基本性質で扱いましたね.
こちら
ですね.つまり,はの中点かなと予想がつくわけです.というわけで,の中点が回転相似の中心となることを示していきます.
実践問題6-1
の中点をとする.が回転相似の中心であることを示せば良い.は共円である.Symmedianの性質より,である.また,四角形は調和四角形であるから,は三角形のSymmedianである.従って,である.また,円周角の定理より,である.従って,である.より,は回転相似の中心である.
実践問題6-2
ちなみにこのような点を"Dumpty-point"と言うそうです."Humpty-point"と同様に有名な点です.では,この構図を使う問題を見ていきましょう.
USA-TST 2008 Problem7
三角形の重心をとする.辺上に点をとり,をとなるようにとる.このとき,三角形の外接円は常にSymmedian上の一点を通ることを示せ.
AoPS
となるような回転相似変換を考える.問題12より,その中心はSymmedian上の点となる.ここで,であるから,が従う.すなわち,はを等しい比で内分する点であるから変換によって,はに移る.従って,が得られる.このことから,が従う.よって,4点は共円である.従って,題意は示された.
実践問題7-1
さて,ここまできた皆さんならば次の問題は簡単に解けるのではないでしょうか.
IMO2003-shortlist G2
一直線上に点がこの順で並んでいる.を通る円のうち,中心が線分上にないものをとする.点におけるの接線の交点をとし,はとで交わる.このとき,三角形の角の二等分線との交点はの選び方に依らないことを示せ.
直線との交点のうち,でないものをとすると,四角形は調和四角形となる.従って,は三角形のSymmedianである.このことから,Steiner's Ratio Theoremより,である.また,四角形は調和四角形なのでである.これを変形すると,となる.これは三角形の角の二等分線との交点が円に依らないことを意味している.従って,題意は示された.
実践問題8-1
終わりに
長く拙い記事でしたが,ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!少しでも皆さんがSymmedianと仲良くなってくれたらなと思います.行間が広すぎてわからない所やミス等の指摘があればtwitterのDMからいつでも質問してください.あと,高評価を押してくれるととっても嬉しいです!!本当にお願いします!!!
この記事の作成にあたって,
翁さん
には大変お世話になりました.ありがとうございました!