$m,n$を$2 \leqq n \lt m$を満たす互いに素な正の整数とする.
$\frac{n}{m}$は$0 \lt \frac{n}{m} \lt 1$を満たす有理数である.
逆数$\frac{m}{n}$は整数でないので,整数部分をとりだす記号$\left [ \frac{m}{n} \right ]$を使って,$k = \left [ \frac{m}{n} \right ]$とおく.
$$k = \left [ \frac{m}{n} \right ]$$
とおく.
$$\frac{n}{m} - \frac{1}{k+1}=\frac{nk+n-m}{mk}=\frac{n'}{m'}$$
とおく.($\frac{n'}{m'}$は既約分数とする.)
$n'$が$1$でなければ,
$$k' = \left [ \frac{m'}{n'} \right ]$$
とおいて同様の計算を繰り返す.
この操作は分数の分子が$2$以上である限り続き,分子が$1$となって終わる.
結果として$\frac{n}{m}$を単位分数(分子が1の分数)の和で表すことができる.これを「単位分数展開」とよぶ.また,単位分数展開における単位分数の個数を「項数」とよぶ.
$k$の選び方から,
$$\frac{m}{n} \lt k+1 \lt \frac{m}{n} +1$$
したがって,
$$n' \leqq n-(m-nk) \lt n$$
となって分子は単調に減少するので,必ず有限の操作で終わる.
$$\frac{4}{13}$$
$$\left [ \frac{13}{4} \right ]=3$$
$$\frac{4}{13}-\frac{1}{4}=\frac{3}{52}$$
$$\left [ \frac{52}{3} \right ]= 17$$
$$\frac{3}{52}-\frac{1}{18}=\frac{1}{468}$$
$$\frac{4}{13}=\frac{1}{4}+\frac{1}{18}+\frac{1}{468}$$
項数3の単位分数展開が得られる.
$m \equiv r \mod n!$とする.ただし,$r \gt 0$
$$\frac{n}{m},\frac{n}{r}$$
について,強欲算法によって得られる単位分数展開の項数は等しい.
$m=n!\times q+r$ とおく.
$$k:=\left [ \frac{m}{n} \right ]=\left [ (n-1)!\times q +\frac{r}{n} \right ]=(n-1)!\times q + \left [ \frac{r}{n} \right ]$$
$$l:=\left [ \frac{r}{n} \right]$$
とおくと,
$$\frac{n}{m}-\frac{1}{k+1}=\frac{n!\times q +nl+n-m}{m(k+1)}=\frac{n(l+1)-r}{m(k+1)}$$
$$\frac{n}{r}-\frac{1}{l+1}=\frac{n(l+1)-r}{r(l+1)}$$
分数を約分しなければ,分子は等しくなる.
そこで,$n'=n(l+1)-r,m'=m(k+1),r'=r(l+1)$とおく.
$n' \lt n$だから,$n'!$は$(n-1)!$の約数である.
$m=n!\times q+r$だから,$m(k+1)$を$\mod n'!$で考えると,
$m(k+1)\equiv r(l+1) \mod n'!$
すなわち,
$m'\equiv r' \mod n'!$
この条件の下で,
$$\frac{n'}{m'},\frac{n'}{r'}$$
について,強欲算法によって単位分数展開することになる.
したがって$n$についての数学的帰納法により証明できる.
[1]$n=2$のとき,強欲算法によって必ず項数2の単位分数展開ができるので$n=2$の場合には項数が等しい.
[2]$2\leqq n \leqq N$を満たす任意の整数$n$について定理2の主張が正しいと仮定する.
$n=N+1$について,上記の議論により,$n'\leqq n-1=N$の場合に還元できるので,$2\leqq n \leqq N+1$を満たす任意の整数$n$についても定理2の主張は正しい.
[1][2]より,$n \geqq 2$を満たす全ての整数$n$について定理2の主張は正しい.
$$\frac{5}{151}$$
について,
$151 \equiv 31 \mod 5!$
なので,
$$\frac{5}{151},\frac{5}{31}$$
を強欲算法で単位分数展開したときの項数は等しい.実際に実行してみると,
$$\left [ \frac{151}{5} \right ]=31,\frac{5}{151}-\frac{1}{31}=\frac{4}{151*31},\left[ \frac{151*31}{4} \right ]=1170,\frac{4}{151*31}-\frac{1}{1171}=\frac{3}{151*31*1171},\left [ \frac{151*31*1171}{3} \right ]=1827150,\frac{3}{151*31*1171}-\frac{1}{1827151}=\frac{2}{151*31*1171*1827151}$$
$$\left [ \frac{31}{5} \right ]=6,\frac{5}{31}-\frac{1}{7}=\frac{4}{31*7},\left [ \frac{31*7}{4} \right ]=54,\frac{4}{31*7}-\frac{1}{55}=\frac{3}{31*7*55},\left [ \frac{31*7*55}{3} \right ]=3978,\frac{3}{31*7*55}-\frac{1}{3979}=\frac{2}{31*7*55*3979}$$
引用
第14回マスフェスタ<全国数学生徒研究発表会>2022年8月27日
愛知県立明和高等学校「単位分数分解と周期」