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OMC (OnlineMathContest) で単独writerしてみた

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 初めてOMCでwriterを務めさせていただきました。「わるえふ」と申します。

初めてwriterをさせていただいて、作問の難しさを痛感しました。
 ・ 問題のネタ選び
 ・ ネタを隠して、問題へと落とし込むこと
 ・ 難易度が丁度良くなるような数値調整
 ・ セットを構成する上でバランスの良い難易度調整
と、すぐに出てくるだけでも、作問にはいくつもの難しさがありました。

 また、問題の裏取りをしていると、類題がいくつか見つかるので、「これは僕が知らないだけで、めちゃくちゃ典型なんじゃないか」と、ガクガク震えていました。

 しかし、運営さんやtesterさんの手も借りながら、なんとかコンテスト問題の作成や改善に着手することができ、とても安堵しています。

 他のwriterの方々には、作問技術の面や難易度調整の面でも全く敵いませんでしたが、自分の問題をこのような形で皆さんに届けることができたのは、私としてもこの上ない喜びです。出場してくださった皆さん、ありがとうございます。

さて、今回のOMCについて、writerである私なりに振り返ってみたいと思います。

概観

 幾何の問題が、最低難易度に1つしかないという、幾何erには厳しいセットだったかもしれません。これは申し訳ないという気持ちです。

 難易度は、

  • 最速では 65分 で全完
  • 全完は 4人
  • 最速正解者は、A: 2分/B: 4分/C: 4分/D: 26分/E: 35分/F: 7分

でした。なかなか難易度調整も難しいものですね。

OMC120(A)

 【幾何の問題を錬成したい!】という発想から生まれた問題です。

 この問題は、特に捻りがあるとかではありません。よく見る形ですが、この出題形式はあまり見ないと思ったので、出題しました。図を描けばかなり解きやすいと思うので100点問題にしました。中学入試などでよく見る形だと思います。
 ちゃんと調べてみると、aizu online judgeで似たような出題例がありました。
https://judge.u-aizu.ac.jp/onlinejudge/description.jsp?id=0023&lang=ja

類題

 類題として、自作問題を載せておきたいと思います。めちゃくちゃ複素数平面の問題で、OMCに一度提出したのですが、不採用になってしまったので。(何か欠陥があったらご一報ください。)

問題
 $z$$0$でも$-1$でもない複素数とします.このとき,
$$\dfrac{\pi}{3}\leq \arg\left(1+\dfrac{1}{z}\right)\leq\dfrac23\pi$$
を満たすような複素数$z$の存在範囲を複素数平面上に図示したとき,その面積$S$を求めてください.ただし,$S$は互いに素な正整数$a,b$と,互いに素な正整数$c,d$を用いて,$\sqrt{\dfrac{a}{b}}+\dfrac{c}{d}\pi$と表せるので,$abcd$を解答してください.

なお,$\arg{w}$で複素数$w$の偏角を表し,$0\leq\arg{w}\lt2\pi$を満たします.
解答例
$$\theta=\arg\left(1+\dfrac{1}{z}\right)=\arg\left(\dfrac{-1-z}{0-z}\right)$$
であるから,点$(0)$,点$(-1)$,点$(z)$をそれぞれ$A,B,P$とおけば,$\theta=\angle{APB}$である.$\angle{APB}$が有向角であることに注意すると,
$$\dfrac{\pi}{3}\leq \angle{APB}\leq\dfrac23\pi$$
を満たすような点$P(z)$の存在範囲は,常に$\angle{APB}=\dfrac{\pi}{3}$となるような円弧,つまり
$$\left|z-\left(-\dfrac12-\dfrac{i}{2\sqrt{3}}\right)\right|=\dfrac{1}{\sqrt{3}}かつ\mathrm{Im}(z)<0$$
と,常に$\angle{APB}=\dfrac23\pi$となるような円弧,つまり
$$\left|z-\left(-\dfrac12+\dfrac{i}{2\sqrt{3}}\right)\right|=\dfrac{1}{\sqrt{3}}かつ\mathrm{Im}(z)<0$$
が囲む図形が求めるべき図形であり,以下の図の水色の部分である.

図

したがって,求めるべき面積は,
$$\begin{aligned} (赤の円)-(紫の領域)\times 2&=(赤の円)-\left\{(紫または緑の領域)-(緑の領域)\right\}\\\\ &=\left(\dfrac{1}{\sqrt{3}}\right)^2\pi-\left(\dfrac{1}{\sqrt{3}}\right)^2\pi\cdot\dfrac13\cdot2+\dfrac12\cdot1\cdot\dfrac{1}{2\sqrt{3}}\cdot2\\\\ &=\sqrt{\dfrac{1}{12}}+\dfrac19\pi \end{aligned}$$
よって,解答すべき値は,$\bf108$

OMC120(B)

 合同式の性質でした。200点問題です。実験などを少しすれば、条件に気づける人が多い問題だと思います。ただ、状況が結構複雑なので、状況整理が少し大変だったかもしれません。(文章自体も、審査時、運営さんに結構いじっていただきました。)

類題

OMC020(B)
https://onlinemathcontest.com/contests/omc020/tasks/125

OMC120(C)

 【OMC061(B)の類題を作りたい!】という発想から生まれた問題です。

 単純な組み合わせの問題ですが、あまり見ない問題だと思います。“e”が“circle”の最後の文字と“yen”の後ろから2番目の文字に共通していることから、“e”の位置で場合分けをすると解けます。なお、この類の問題では、「2つ以上ある文字」が効いてくることが多いですが、解答例では、“c”が2つあることはあまり関係ありません。ちなみにwriterである私は、エスパーするのに5分、証明するのに20分かかりました。結構沼問題だと思います...

 OMC115(C)と見た目が似ていますが、解法は結構違うのも面白ポイントです。(もしかしたらOMC115(C)と似たような解法で解けるかもしれませんが...)

 ちなみに、提出した問題文と出題された問題文は結構違います。提出した問題文は以下の通りです。

もとの問題文
 $c, i, r, c, l, e, y, e, n$を並び替えた順列であって,以下の条件を満たす順列はいくつありますか.
$c, i, r, c, l, e$がこの順番で並んでいる
$y, e, n$がこの順番で並んでいる

 ただし,$c, i, r, c, l, e$を構成する文字と$y, e, n$を構成する文字に同一のものがあってもよいとします.

 例えば,順列$e, c, i, r, c, l, y, e, n$は,2つ目の$e$が,$c, i, r, c, l, e$$y, e, n$の両方を構成していますが,条件を満たします.

 Pythonで全探索してみると、以下の98通りであることがわかりました。
(体育会系でいけるくらいの数ですね。)

全探索の結果
'ciyercnle', 'ceirclyen', 'cyircenle', 'cirycleen', 'ecirclyen', 'cireyclen', 'ecyirclen', 'yecircnle', 'ciercylen', 'eciyrclen', 'ycenircle', 'yecirclen', 'cireclyen', 'ciyerncle', 'cyircelne', 'ycireclen', 'ycienrcle', 'ciryeclne', 'ciyrclene', 'cyircleen', 'cirycelen', 'cyierncle', 'cirycelne', 'ceiryclen', 'cyeinrcle', 'yecnircle', 'yceircnle', 'yencircle', 'ciyrencle', 'circyenle', 'cyiercnle', 'cyirecnle', 'yecirncle', 'ycierclne', 'ciyrcelen', 'cyienrcle', 'ciyerclne', 'circelyen', 'ycireclne', 'ciyrcelne', 'ciyenrcle', 'ceyirclen', 'ciyrcleen', 'circeylen', 'ceircylen', 'ecircylen', 'cieryclen', 'cyircelen', 'ciryeclen', 'circylene', 'cyirencle', 'circlyene', 'cyeirclne', 'ciyreclne', 'eycirclen', 'yceirclne', 'cyeirncle', 'circlyeen', 'ycirclene', 'cyenircle', 'yceirncle', 'cirycenle', 'ciyerclen', 'ceiyrclen', 'circleyen', 'ciryclene', 'cyireclen', 'ciyreclen', 'circyelen', 'ycierclen', 'cyirclene', 'eciryclen', 'ycircelen', 'cirecylen', 'yecinrcle', 'ciyrecnle', 'ycircleen', 'ycircelne', 'ycircenle', 'cyireclne', 'ciryecnle', 'cierclyen', 'cyeircnle', 'ciryencle', 'cyierclne', 'yecirclne', 'circyelne', 'circyleen', 'yciercnle', 'cieyrclen', 'ciyrcenle', 'cyeirclen', 'ycirecnle', 'yceirclen', 'ycirencle', 'ycierncle', 'yceinrcle', 'cyierclen'

類題

OMC061(B)
https://onlinemathcontest.com/contests/omc061/tasks/1610
OMC065(A)
https://onlinemathcontest.com/contests/omc065/tasks/1834
OMC115(C)
https://onlinemathcontest.com/contests/omc115/tasks/5528

OMC120(D)

 【「論理積(かつ)」が「積」とみなせる】ということを用いて何か問題を作りたいという思いから生まれた問題です。構図としては、割とあるあるだと思っていたので、$500$点問題になって少し驚いています。

 この問題は、$N^2$を書き下した後に、$S_{i,j}$を書き下すという二段構えの構造になっています。(主客転倒っぽい問題です。)
$$(a_i​>a_{i+1​}を満たすiの個数)×(a_j​>a_{j+1}を満たすjの個数)=(a_i​>a_{i+1}​かつa_j​>a_{j+1}​を満たすi,jの個数)​$$
という式は、「論理積(かつ)」が「積」になるんだということを実感できていいですね。(まぁ、これが成り立つには、いくつか条件がありますが。))(この式は、場合の数をbool関数の和とみなして総和を取るか、表の形をした図形を書くかをすると、導けます。)

 あと、大体答えが$500^2$になるのも、直感にあっていて気持ちいいですね。

類題

OMC079(D)
https://onlinemathcontest.com/contests/omc079/tasks/2671
OMC092(C)
https://onlinemathcontest.com/contests/omc092/tasks/3484
JMO2017予選-9
https://www.imojp.org/domestic/jmo_overview.html#Problems

(他にもOMCに類題があった気がするが、見つかりませんでした。)

OMC120(E)

 【OMC013(E)に似た問題を作りたい!】という発想と、【「Fibonacci数を$n$で割った余りの周期」を考えよう!】という発想から生まれた問題です。

 少しだけ主客転倒チックな問題です。(私が元々提出した問題では、主客転倒の要素はあまりなかったのですが、問題文が書き換えられて、主客転倒っぽくなりました。)個人的には、終盤にかけて「整数(N)」の雰囲気も割と強い「ACN融合問題」と感じています。

 また、些細なことですが、フィボナッチ数列は、第$n$項と第$n+1$項のみに依存して、第$n+2$項が決定されるので、フィボナッチ数列の(最小)周期$p$は、第$N$項と第$N+1$項が初めて$0,1$となるような$N$です。お気をつけください。詳しくは、「高校数学の美しい物語」さんを参照してください。(以下のリンク)
https://manabitimes.jp/math/1434

 公式解説の解法の他にも、前半部分は、$2505$$1,2,3,...$に、$7515$$3,6,9,...$に置き換えることで帰納的にエスパーしたり、ややエスパーチックですが、漸化式を作ったりして解くこともできます。また、場合の数をうまく計上する方法を考えると、二項係数の和に落ち着き、二項係数の和とFibonacci数の有名な関係式を用いても導くことができます。( https://mathlog.info/articles/210 を参照のこと。)

 また、最後の余りの周期性を求める場面でも、$2,3,11,29$で割った余りをそれぞれ求めて、中国剰余定理で答えを1つに確定させる方法もあります。(公式解説では「AN融合問題」的な解法を使っていますが、エスパーや漸化式を用いると、組合せ(C)の要素も含まれてくる気がします。)

 ちなみに、他の問題にも、3.14などの円周率を想起させる数値が使われていますが、実はこの問題にも$\pi$が隠れています。Pisano period $\pi(n)$です。この問題を作った後、裏取りをしていたら見つけました。Pisano period $\pi(n)$は、「Fibonacci数を$n$で割った余りの周期」として定義され、様々な非自明な性質を持っています。

 問題を解く上では、フィボナッチ数列は$F_{14}$まで計算すれば十分です。計算が多少ハードだったと思いますが、奮発して出しちゃいました。実は、この問題と以下の問題のどちらを出題するか、少し悩みました。

問題
 以下の $2$ 式を満たすような,$m$個の$0$でない整数の組$(m, x_1, x_2, \cdots, x_{m})$の総数を,すべての正整数$m$について合計し,それを$1914=2\times3\times11\times29$で割った余りを求めてください.
$$\begin{cases} x_1+x_2+x_3+\cdots+x_m=2499\\ x_1^2+x_2^2+x_3^2+\cdots+x_m^2+2m=7499 \end{cases}$$

 OMC無印で出すには面倒くさい問題だと思います。(おそらく点数をつけるなら、700点くらいになるんじゃないでしょうか。)母関数を用いるか、5項間漸化式を使うか、フィボナッチ数列の一般項代入ゴリ押しをすると導けるのですが、OMCで出して良いのか怪しかったので、こちらの問題を出題するのはやめました。正答は「355」です。

類題

OMC013(E)
https://onlinemathcontest.com/contests/omc013/tasks/86

OMC120(F)

 変則版「解と係数の関係」です。「なんか4次方程式の解と係数の関係に似てね?」となれば、こっちのもんです。草稿版では、問題の値が違ったのですが、草稿版の方では計算が厳しく、「微分」と「値の代入」がメインテーマになってしまう危惧があり、OMCっぽくないので、比較的計算しやすい問題に改訂しました。
 別解として、方程式$(x-a)(x-b)(x^2-cx+d)=0$の解と係数の関係とも取れます。

類題

OMC035(C)
https://onlinemathcontest.com/contests/omc035/tasks/1406
OMC037(A)
https://onlinemathcontest.com/contests/omc037/tasks/1599
OMC046(E)
https://onlinemathcontest.com/contests/omc046/tasks/1819
OMC070(E)
https://onlinemathcontest.com/contests/omc070/tasks/2296


 また、コンテストのwriterになる際は、作問者として少し成長した姿をお見せできると嬉しいです。では。


【追記】
1-2-3-4-4-5のつもりだったんですが、1-2-3-5-5-5になってしまいました...
TLをどよめかせてしまいました...
笑って許していただけるとありがたいです...

投稿日:2022922

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数学好きな大学生です。

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