$$I_n:=\int_1^e\ln^nxdx$$
\begin{align}
I_n&=\int_1^e\ln^nxdx \\
&=\left[x\ln^nx\right]_1^e-n\int_1^e\ln^{n-1}xdx \\
&=e-nI_{n-1}
\end{align}
両辺を$n!$で割ると、
\begin{align}
\frac{I_n}{n!}&=\frac{e}{n!}-\frac{I_{n-1}}{(n-1)!}
\end{align}
$\ds\frac{I_n}{n!}$を新しく$a_n$とおくと、$a_n$は漸化式$\ds a_n=\frac{e}{n!}-a_{n-1}$を満たす。よって$a_n$は
\begin{align}
a_n&=\frac{e}{n!}-\frac{e}{(n-1)!}+\cdots+\frac{(-1)^{n-1}e}{1!}+(-1)^na_0 \\
&=(-1)^n\left(a_0+e\sum_{k=1}^n\frac{(-1)^k}{k!}\right) \\
&=(-1)^n\left(-1+e\sum_{k=0}^n\frac{(-1)^k}{k!}\right) \\
&=(-1)^n\left(-1+e\sum_{k=0}^n\frac{(-1)^{(n-k)}}{(n-k)!}\right)
\end{align}
と計算できる。これに$n!$をかけることで
$$I_n=(-1)^{n+1}n!+e\sum_{k=0}^n(-1)^k{}_n{\rm P}_k$$
である。
$$\lim_{n\to\infty}I_n=0$$
すべての正の整数$n$について、$x\in[1,e]$ならば$|\ln x|\leq1$である。定数関数$1$は$[1,e]$上可積分なので優収束定理より積分と極限は交換できて、
\begin{align}
\lim_{n\to\infty}I_n&=\lim_{n\to\infty}\int_1^e\ln^nxdx \\
&=\int_1^e\lim_{n\to\infty}\ln^nxdx \\
&=0
\end{align}
である。
明らかに$I_n$は単調減少で、$I_n$は$e$の整数係数の一次式で書けるから、$e$の値を有理数で評価できる。
$I_6=265e-720>0$より$\ds e>\frac{720}{265}=\frac{144}{53}>2.7169$である。
$I_7=5040-1854e>0$より$\ds e<\frac{5040}{1854}=\frac{280}{103}<2.7185$である。
手計算でそれなりの精度が得られる。
次の定理にこの$I_n$を使った証明を与える。
$e$は無理数である。
$e\in\mathbb{Q}$と仮定する。$e>0$なので、互いに素な正の整数$p,q$が存在して$\ds e=\frac{p}{q}$を満たす。$I_n$は$e$の整数係数一次多項式なので、$\ds I_n\in\frac1q\mathbb{Z}$であり、$I_n$は単調減少なので、十分大きい$N$で$\ds0< I_N<\frac1q$を満たす。しかし、これは$\ds I_n\in\frac1q\mathbb{Z}$に反する。よって$e\not\in\mathbb{Q}$である。