序文
この記事では、次の問題を考察します。
ならばであり、またとが解になりえないことに注意すると、の範囲に唯一解が存在し、これを求めれば他の解も自動的に求まることが分かります。
そのため、以下ではこの範囲の解を「最小解」と呼び、これについて考察することにします。
さて、これを解くためにはどのような方法が使えるでしょうか。ここでは、最小解がの範囲にあることを用いて、こんな方法を考えてみましょう。
すなわち、におけるの乗法的逆元を求めればよいことが分かります。都合の良いことに、このような逆元はにかかわらず存在し、これが最小解を与えるとなります。
さて、ということは
を求めればよいですね。ですが、このままではが無限にあって面倒ですね。できることなら、を全て包括したいわばのようなものがあってくれるとよいのですが。
そんな数体系・・・ありますね。そう、進数です。
進数
実数の進法による表記とは異なることに注意してください。
実数の小数表記は小数点の右に数字が続きますが、逆に小数点の左に以上未満の数字が続くものが進数です。わかりやすいように、としていくつか例をあげます。
1番目の例は左にが無限に続いているケースで、この場合は正の整数と一致します。想像通り、この数は整数のを表します。
2番目の例では全ての桁がです。普通の整数の筆算と同じような方法でこれにを足すと、無限に繰り上がって全ての桁がになるので、この数はを表します。
3番目の例では2桁が循環しています。少し計算すると、この数が有理数のに等しいことが分かります。
4番目の例では左に不規則な数字が無限に続きます。実数には対応するものが存在しない、進数特有の数です。
5番目の例では小数点以下にも桁があります。進数は一般に、小数点以下に有限個の数字を並べることが許されています。一方、実数とは異なり、小数点以下に無限個の数字を並べることはできません。
が素数のとき
が素数のときは、進数の振る舞いが良くなり、小数点以下に数のない進数(進整数と呼ぶことにします)だけで加減乗除が閉じるという性質を持ちます。
を内包する
例えば、のときの次の式を考えましょう。
この末尾から同じ数の桁を取り出すことで、の等式が得られます。
元の問題に使えそうですね。
方針
進数でをで割っていけば、最小解のが求められます。また同様に、進数でをで割っていけば、最小解のが求められます。
せっかくなので、まで求めましょう。
一覧
は進数、は進数を表します。
試験問題
2022年大学入学共通テストでは、のときにが桁であるような解のうち最小のものを求める問題が出題されました。
注: ②はのときの式である。
注: (2)ではが示唆されている。
注: []で囲った部分は実際には四角囲みである。
(数学Ⅰ・数学A第4問問題文より引用 ここから)
を②の整数解とする。はの倍数であり,で割ったときの余りはとなる。よって,(2)により,はでもでも割り切れる。とは互いに素なので,はの倍数である。
このことから,②の整数解のうちが桁の整数で最小になるのは
であることがわかる。
(数学Ⅰ・数学A第4問問題文より引用 ここまで)
最初にこの問題を見たとき、「このことから」が非常に非自明であると感じました。しかし、進数によるアプローチがある今、行間を埋めることができます。
を進数におけるの逆数とする。このとき、の末尾桁はである。はに唯一解を持つので、それはの最後の桁を整数の進表記とみたものと等しい。
ここで、であるから、
が成り立つ。よって、であるから、②の整数解のうちが桁の整数で最小になるのはである。
次の問題
この後の問題では、の整数解について考察しています。これに関しても、進法での逆数を考えることで解くことができます。
まとめ
大学入学共通テストには進数が出題されたのである!!!
な、なんだってー!?