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自作幾何FEの解説

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$$\newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

お久しぶりです. 今回は今年の三月くらいに出した幾何FEの解説を書きます.

問題

座標平面上の格子点から格子点への単射であって, 共円を共円に移すものを全て求めてください.
ただし, 格子点とは$x$座標も$y$座標も整数であるような点であり, 共円とは, 同一円周上にある相異なる$4$点のことです.

投稿ツイートにはIMOの1番級程度と書いたのですが, 後で考えてみると$1$番級よりは難しい気がします. すみません.

早速解説に入っていきます.
--ネタバレ防止用--
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解説

解はさすがに相似変換だけです.
条件をみたす単射を$F$とおく.

任意の$n,m\in\Z$に対し, $2$直線$F(n,m)F(n+1,m),F(n,m+1)F(n+1,m+1)$は平行である.

$n=m=0$の場合に示せばよい.
無限個の点
$$\cdots F(0,-2),F(0,-1),F(0,0),F(0,1),F(0,2)\cdots$$
$$\cdots F(1,-2),F(1,-1),F(1,0),F(1,1),F(1,2)\cdots$$
について, 任意の相異なる$n,m\in\Z$に対し, 条件より$4$$F(0,n),F(0,m),F(1,n),F(1,m)$は共円. 従って, 任意の$n\in\Z$に対しこのように構成される3円の根心を考えれば直線$F(0,n)F(1,n)$, 直線$F(0,n+1)F(1,n+1)$, 直線$F(0,n+2)F(1,n+2)$は一点で交わるかすべて平行になる. この議論を全ての$n$に対して行えば, 無限本の直線の集合$\{直線F(0,n)F(1,n)\}_{n\in\Z}$はすべてある一点で交わるか平行である.

ここで, すべてがある一点$X$で交わったとして矛盾を導く.
上の議論で定まる方べきの値を$R$とおくと, 単射性より上で定まるすべての円が一点で交わることはないため, $R>0$である. このとき, 任意の$n\in\Z$に対し, $|XF(0,n)|\cdot|XF(1,n)|=R$であるので, $0<|XF(0,n)|\le\sqrt{R}$または$0<|XF(1,n)|\le\sqrt{R}$である. 今, $X$との距離が$\sqrt{R}$以下である格子点は高々有限個であり, 単射性よりそのそれぞれに対して根軸が$2$本以上通るということは起こりえないため, 引かれえる根軸の本数も高々有限になる. これは矛盾.

従って, $\{直線F(0,n)F(1,n)\}_{n\in\Z}$はすべて平行になり, 特に補題は示された.

これの$x$座標と$y$座標を逆にした議論を行うことで, 任意の$n,m\in\Z$に対し, $4$$F(n,m),F(n+1,m),F(n,m+1),F(n+1,m+1)$は平行四辺形をなすことが分かり, 特に円に内接することから長方形と分かる.

上の議論より, 任意の$n\in\Z$に対して$\{F(n, m)\}_{m\in\Z}$, $\{F(m, n)\}_{m\in\Z}$はすべて同一直線上にあるので, それぞれ$x_n, y_n$とおく. 全ての$x_n$は相異なり, さらに平行である. $y_n$も同様である. また, $x_n$$y_m$は直交する.

$\{x_n\}_{n\in\Z}$, $\{y_n\}_{n\in\Z}$は添え字が小さいものから順に並ぶ.

$x_1, x_3, x_2$がこの順で並んだとして矛盾が言えればよい. ただし, 間にほかの直線が入ってもよいものとする. (こうなる箇所がなければ, どの添え字が連続する$3$直線も添え字の順で並ぶことがわかる).
$\{y_n\}$の中で, 添え字が連続する$3$直線であって, 添え字の順に並ぶものが存在することが背理法によって容易にわかるので, $y_1, y_2, y_3$はこの順としても一般性を失わない.
このとき, 同一円周上にある$4$$(1,2),(3,2),(2,1),(2,3)$$F$で送った先の$4$$F(1,2),F(3,2),F(2,1),F(2,3)$は明らかに同一円周上にないため(図を描いてみよ), 矛盾.

位置関係がわかったので, 長さを求めていく.

$\{x_n\}_{n\in\Z}$, $\{y_n\}_{n\in\Z}$は等間隔に並び, さらにそれらふたつの間隔は等しい.

$x_1, x_2, x_3$, $y_1, y_2, y_3$について, $x_1$$x_2$の距離, $x_2$$x_3$の距離, $y_1$$y_2$の距離, $y_2$$y_3$の距離をそれぞれ$p, q, r, s$とおくと, 以下が成立する.

  • $F(1,2),F(3,2),F(2,1),F(2,3)$$F(2,2)$の方べきで$pq=rs$
  • $F(1,2),F(1,3),F(2,1),F(3,1)$$F(1,1)$の方べきで$p(p+q)=r(r+s)$
  • $F(1,1),F(1,2),F(2,3),F(3,3)$$F(1,3)$の方べきで$p(p+q)=s(s+r)$
    これを解くことで$p=q=r=s$を得る.

よって, 解は相似変換のみである.

感想

お疲れ様でした. APMOのとき, 幾何FE面白くないかみたいな話が出て作ってみた問題です. 幾何っぽい議論と代数っぽい議論と組み合わせっぽい議論が全部入っていてかなり好きな問題です. これを超える問題は多分もう生えません. 解いてみてくださった方, 記事を読んでくださった方, ありがとうございました!. また次回.

投稿日:2022104

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りぼーす
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