この記事では「
(2022.10.24 記事を大幅に加筆修正しました。)
(2022.10.29 「おわりに
まずはコチラをご覧ください。@panlepan さんのツイートの「4個の立方体にも1個の立方体にもなる展開図」
From 2 cubes to 1 (bigger) cube.🤩 idea & animation by Rinus Roelofs !
— Vincent Pantal🍩ni (@panlepan) October 17, 2022
Source on fb :https://t.co/n7sSInsdtG pic.twitter.com/q5wFb6kL1I
4
続いて同じく@panlepan さんのツイートから「5個の立方体にも1個の立方体にもなる展開図」
If you enjoyed this, wait till you see the version with 5 cubes !https://t.co/zlG4bFkP2m pic.twitter.com/BNiRDDrnNB
— Vincent Pantal🍩ni (@panlepan) October 17, 2022
5
これらのツイートに触発されて私も考えてみました。「2個の立方体にも1個の立方体にもなる展開図」
印刷してみたの図
— apu (@apu_yokai) October 19, 2022
想定どおりに組むことができたよ!
🎉☺️🎉 pic.twitter.com/77iTXTOizg
2
このように、
それ自体が立方体を折れて,かつそれぞれが立方体を折れる
「ポリオミノ」というのは「複数の正方形を辺でつなげた多角形」のことです。よく見る立方体の展開図やテトリスのブロックの形などがポリオミノの例になります。
次に「正則」について説明します。
特に
「なぜ『正則』を考えるの?」と疑問に思われる方もいると思います。実は、レプ・キューブの中には、異なる面積に分割できるようなものが存在するので、議論を明確にするためにこのような定義をしています。
次数50の正則なレプ・キューブの例(「計算折り紙入門」から引用)
あらためて冒頭のツイートを見ると、いずれも正則なレプ・キューブであることがわかりますね。
なお、この記事では「正則なレプ・キューブ」についてのみ考察します。(非正則なレプ・キューブについて考えるのも楽しそうですが)
ここで一つ注意点を上げたいと思います。「レプ・キューブ」のポリオミノを分割するとき、必ずしも正方形
正直にいうと、私も最初勘違いしていました。
特に、ここまでの例ではどれも正方形6個のポリオミノに分割していましたのでそんな風に思ってしまいそうですが、もっと複雑な形のポリオミノに分割するケースもあり得るということです。
さて、正則なレプ・キューブとなりうるような分割方法について、どのような性質がなりたつでしょうか。
遊んでいるうちに、次の予想を思いつきました。
(予想)
— apu (@apu_yokai) October 20, 2022
「n個の立方体にも1個の立方体にもなる展開図」は
n=2,4,5,8,9,10,13のときは可能
n=3,6,7,11,12のときは不可能 https://t.co/6iwknfUJbV
先にこの数列についてタネ明かしすると、「可能」の方は「
こんな感じです。
このツイートをしたところ、 @alytile さんに、「計算折り紙入門」という本にこの問題について書かれていることを教えていただきました。
(なお、ここから下の記事で単に「本」と書いている場合は、この本のことだと思ってください。)
そして、この「不可能」の方の数列について、その本で未解決問題として紹介されていることがわかりました。
この本の8章にrepcubeの話がまとまっています。https://t.co/EYlLH79pSw
— 荒木義明 (@alytile) October 20, 2022
全く同じことが書いてあった😁 https://t.co/qlWTlrYKuM pic.twitter.com/0c12uBFGte
— apu (@apu_yokai) October 22, 2022
「計算折り紙入門p.177」
ここで、私が考えていた数列と全く同じものがでてきたので、この部分を読んだとき私は「自分の予想が未解決問題として掲載されている!」と無邪気に考えてしまいましたが、実はそれは勘違いでした。
私はこのとき、「
よく似た問題設定なので同じ数列が出てきたわけですが、実は異なる問題設定だったというわけです。
この記事では、当初私が考えていた問題ではなく、本に記載されている方の未解決問題についての私の考えを書いています。(その後で、私が考えていた問題の解答についても簡単に触れています。)
本に記載されている未解決問題は、こういうものでした。
与えられた自然数
前提として、この本では
注意点として、ここで「未解決」としているのは、分割したポリオミノが必ずしも正方形
この記事では、「
さらに進んで、「二平方和となる数を次数とする正則なレプ・キューブが存在する」ことまで証明できれば未解決問題を完全解決することができるというわけですが、「可能」であることを証明するためには具体的な構成方法を考えないといけないと思いますので、とてもめんどくさそう……なので、今回は挑戦しません(すいません)。
とはいえ、「存在しないことを証明するほう」は、本にも書いてあるとおり、存在することを証明するよりは簡単にできそうです。
というわけで、この部分についての証明に挑戦します!
証明すべき命題を整理すると、次のようになります。
まず補題をいくつか考えます。
証明の準備を始めましょう。
まず、「フェルマーの二平方和定理」をご紹介します。
フェルマーの二平方和定理を使うと「
実際、
立方体
※ 本の定理
ポリオミノ
ポリオミノ
ポリオミノの単位正方形の大きさの正方格子を描く。正方格子の格子点に
先ほどの図
それでは証明パートに入ります。
まず、次のような操作を考えます。
正方格子の格子点上に、
しつこいようですが、
複雑な形のポリオミノの場合もあるということです。
正方形6個ではない例
そのうえで、ここで考えている正方格子は、
ここからは、説明をわかりやすくするため、
「スタンプ」で「印刷」するイメージ
正方格子は単位正方形と同じ大きさ
正方格子を「
三平方の定理より、
となります。
フェルマーの二平方和定理より、
次に、分割前の
ポリオミノの性質からこれは明らかですね。
参考として先ほどの例を再掲します。
(再掲)次数50の正則なレプ・キューブの例(「計算折り紙入門」から引用)
さあ、証明完了まであと少しです!
立方体
先ほどと同様の議論から、
レプ・キューブの次数が
となります。
したがって、フェルマーの二平方和定理より、
以上より、正則なレプ・キューブの次数
は真であることがわかりました!
実は、「
(実のところ、当初私が考えていた問題はこちらの方でした。)
ここではおおまかな方針だけを示します。
・小展開図のパターンは
・小展開図を
・大展開図の頂点でない位置に凸部又は凹部がある場合は、隣接する小展開図で同じグリッドにのるものが必ずあるから、これを次々に連結してカタマリを大きくしていく。この時、カタマリの頂点はすべてグリッドにのる。
・最終的にはすべてが
ベルト状の配置
・カタマリの上に大立方体の展開図を重ねるとき、大立方体の展開図の角はグリッドにのっていなければならない
・したがって 大立方体の表面積=小立方体の表面積*((整数)²+(整数)²)
以上、未解決問題を部分的に解決できました・・・
・・・
・・・
・・・と思います。多分。
正直なところ、「未解決問題がそんなに簡単に解決できるわけないから、何か致命的な見落としがあるのでは?」という気持ちがかなりあります。
上記証明の問題点など、お気づきの点がありましたらコメント等で教えていただければと思います。
よろしくお願いします。
・・・という締めの言葉を(2022.10.23に)書いてから約1日。
@minimalminami さんから嬉しいお知らせをいただきました!
@apu_yokai 上原先生にapuさんが昨日書いたレプ・キューブの不可能性のブログ記事を紹介したら、ちゃんと証明できてるって感心してました。コメントを残したかったけどやり方が分からなかったって言ってましたが。実はこの問題は一昨年くらいに上原先生も証明付けてたので興味深かったんだと思います。
— distinct slopes (@minimalminami) October 24, 2022
なんとなんと、本の著者である上原教授がこの記事を見ていただいた上、証明できているとおっしゃっていたとのこと!
これは嬉しいです~
そして、既に証明されていたとのこと。やはり「未解決問題を初めて解く」というのはなかなか経験できないものですね。
とはいえ、これほど感動的な体験はなかなかできないことだと思います。
みなさんも是非未解決問題にチャレンジしてみよう!
「おわりに
それでわかったのですが、今年
IEICE:Research on Dissections of a Net of a Cube into Nets of Cubes
(論文の閲覧は有料です)
それから、「
その他、「計算折り紙入門」で未解決問題として掲載されているもののうちいくつかは上記論文で解決されています。
最後の最後に、「存在しそうな数」について現在解決済みの主なものをご紹介します。
正則なレプ・キューブは無限に存在する
任意の正整数
なお、合同なポリオミノのみで構成されたレプ・キューブを「一様なレプ・キューブ」と呼びますので、
一様で正則なレプ・キューブは無限に存在する
ということも言えます。一方、
一様でない正則なレプ・キューブは無限に存在する
ということもわかっています。
「
だいぶ長くなってしまいました。
いまのところ、未解決問題の中で一番手を出しやすそうなのは「次数
より一般に「二平方和となる数を次数とするような正則なレプ・キューブが必ず存在する」ということまで証明できれば完全解決ですが、さて・・・
皆さんも是非挑戦してみてください!