整数k>1に対し,Riemannゼータ値を
\begin{eqnarray}
\zeta(k) &=& \sum_{i=1}^{\infty}n^{-k}
\\
&=& 1^{-k}+2^{-k}+ \cdots +n^{-k}+ \cdots
\end{eqnarray}
と定義する
ここで右辺の級数が収束するか議論しなければならない。
より一般に複素数sがRe(s)>1なる時に収束することがいえる。
Re(s)>1なる複素数sに対し,
$\sum_{i=1}^{\infty}n^{-s}$
は収束する
略([ER]などを参照)
\begin{eqnarray}
\zeta(3) &=& \sum_{m}{\frac{1}{m^3}}
\\
&=&\frac{1}{1^3}+\frac{1}{2^3}+\frac{1}{3^3}+\cdots
\\
&\fallingdotseq&1.202\cdots
\end{eqnarray}
これはアペリー定数といわれ、無理数であることが分かっている。
整数k≥1に対して,
$\zeta(2k)=(有理数)\times \pi^{2k}$
と表せる。
しかし,$\zeta(2k-1)$に関してはこのような表示があるか分かっていない。
次にRiemannゼータ値の拡張として多重ゼータ値を定義する
1以上の整数nを固定する。
1以上の整数$k_1,k_2, \cdots k_n$, ただし$k_1$>1に対して,多重ゼータ値
\begin{equation}
\zeta(k_1, k_2, \dots, k_n)
\\
=\sum_{m_1>m_2>\cdots>m_n>0}m_1^{-k_1}m_2^{-k_2}\cdots m_n^{-k_n}
\end{equation}
と定義する。
また$k=k_1+k_2+ \cdots k_n$を重さ, nを深さという。
Riemannゼータ値は多重ゼータ値の深さ1の場合に相当する。
\begin{eqnarray}
\zeta(2,1) &=& \sum_{m_1>m_2>0}m_1^{-2}m_2^{-1}
\\
&=& \frac{1}{2^2·1^1}
\\
&+& \frac{1}{3^2·1^1}+\frac{1}{3^2·2^1}
\\
&+& \frac{1}{4^2·1^1}+\frac{1}{4^2·2^1}+\frac{1}{4^2·3^1}
\\
&+& \cdots
\end{eqnarray}
と計算できる。
また$\zeta(2,1)$の重さは2,深さも2となる。
多重ゼータ値$\zeta(k_1, k_2, \dots, k_n)$は収束する
$\zeta(k_1, k_2, \dots, k_n) ≤\zeta(2, k_2, \dots, k_n) ≤\zeta(2)<\infty $
$\zeta(\underbrace{2,2, \dots, 2} _{k}) =: \zeta({\text{{2}}}^k)=\frac{\pi^{2k}}{(2k+1)!}$
$\text{{a}}^k$はaがk個並んだものを意味する。
$\zeta(\underbrace{2k,2k, \dots, 2k} _{n}) =: \zeta(\text{{2k}}^n)=(有理数) \times \pi^{2kn}$
Eulerにより次の式が与えられた。
整数k≥1に対して,
$\sum_{i=2}^{k-1}{\zeta(i,k-i)}=\zeta(k)$
証明の概略は後ほど。
k=3のとき,
$\zeta(2,1)=\zeta(3)$
k=4のとき,
$\zeta(2,2)+\zeta(3,1)=\zeta(4)$
このように重さを固定しその重さの多重ゼータ値を全て足すとリーマンゼータ値になる。綺麗。
さらに次のような驚くべき拡張がある。
重さk, 深さn(1≤n≤k)を固定すると以下が成り立つ:
$\sum_{k_1+k_2+\cdots+k_n=k\\ k_1≥2, k_2,\dots,k_n≥1}\zeta(k_1,k_2,\dots, k_n)=\zeta(k)$
この定理の証明は続編(いつになるか分からないが)でするが深さ2の場合の和公式について証明の概略を述べる。
\begin{eqnarray}
\zeta(2,1)+\zeta(3)
&=&\sum_{m>n>0}\frac{1}{m^2n^1}+\sum_{m>n>0}\frac{1}{m^2n^1}
\\
&=&\sum_{m≥n}\frac{1}{m^2n^1}
\\
&=&\sum_{m=1}^{\infty}\frac{1}{m^2}(\sum_{n=1}^{m}\frac{1}{n})
\end{eqnarray}
ここで$\sum_{n=1}^{m}\frac{1}{n}=\sum_{n=1}^{\infty}(\frac{1}{n}-\frac{1}{n+m})$となるので
\begin{eqnarray}
\zeta(2,1)+\zeta(3)
&=&\sum_{m=1}^{\infty}\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{m^2}(\frac{1}{n}-\frac{1}{n+m})
\\
&=&\sum_{m=1}^{\infty}\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{mn(m+n)}
\\
&=&\sum_{m=1}^{\infty}\sum_{n=1}^{\infty}\frac{m+n}{mn(m+n)^2}
\\
&=&\sum_{m=1}^{\infty}\sum_{n=1}^{\infty}(\frac{1}{(m+n)^2m}+\frac{1}{(m+n)^2n})
\\
&=&2\zeta(2,1)
\\
\therefore \zeta(2,1)=\zeta(3)
\end{eqnarray}
$\zeta(k-1,1)+\zeta(k)$を同様に計算すると深さ2の和公式が導出できる。
しかしこのような方法で一般の深さの和公式を導出できるか分からない。
後述する証明には多重ゼータ値の積分表示を用いる。