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高校数学解説
文献あり

新・多重ゼータ値入門1(定義と和公式)

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Riemannゼータ値

整数k>1に対し,Riemannゼータ値を
\begin{eqnarray} \zeta(k) &=& \sum_{i=1}^{\infty}n^{-k} \\ &=& 1^{-k}+2^{-k}+ \cdots +n^{-k}+ \cdots \end{eqnarray}
と定義する

ここで右辺の級数が収束するか議論しなければならない。
より一般に複素数sがRe(s)>1なる時に収束することがいえる。

Riemannゼータ関数の収束性

Re(s)>1なる複素数sに対し,
$\sum_{i=1}^{\infty}n^{-s}$
は収束する

略([ER]などを参照)

Riemannゼータ値の具体例

\begin{eqnarray} \zeta(3) &=& \sum_{m}{\frac{1}{m^3}} \\ &=&\frac{1}{1^3}+\frac{1}{2^3}+\frac{1}{3^3}+\cdots \\ &\fallingdotseq&1.202\cdots \end{eqnarray}
これはアペリー定数といわれ、無理数であることが分かっている。

整数k≥1に対して,
$\zeta(2k)=(有理数)\times \pi^{2k}$
と表せる。

しかし,$\zeta(2k-1)$に関してはこのような表示があるか分かっていない。

次にRiemannゼータ値の拡張として多重ゼータ値を定義する

多重ゼータ値(MZV)

1以上の整数nを固定する。
1以上の整数$k_1,k_2, \cdots k_n$, ただし$k_1$>1に対して,多重ゼータ値
\begin{equation} \zeta(k_1, k_2, \dots, k_n) \\ =\sum_{m_1>m_2>\cdots>m_n>0}m_1^{-k_1}m_2^{-k_2}\cdots m_n^{-k_n} \end{equation}
と定義する。
また$k=k_1+k_2+ \cdots k_n$を重さ, nを深さという。

Riemannゼータ値は多重ゼータ値の深さ1の場合に相当する。

多重ゼータ値の具体例

\begin{eqnarray} \zeta(2,1) &=& \sum_{m_1>m_2>0}m_1^{-2}m_2^{-1} \\ &=& \frac{1}{2^2·1^1} \\ &+& \frac{1}{3^2·1^1}+\frac{1}{3^2·2^1} \\ &+& \frac{1}{4^2·1^1}+\frac{1}{4^2·2^1}+\frac{1}{4^2·3^1} \\ &+& \cdots \end{eqnarray}
と計算できる。
また$\zeta(2,1)$の重さは2,深さも2となる。

多重ゼータ値の収束性

多重ゼータ値$\zeta(k_1, k_2, \dots, k_n)$は収束する

$\zeta(k_1, k_2, \dots, k_n) ≤\zeta(2, k_2, \dots, k_n) ≤\zeta(2)<\infty $

多重ゼータ値の具体例

$\zeta(\underbrace{2,2, \dots, 2} _{k}) =: \zeta({\text{{2}}}^k)=\frac{\pi^{2k}}{(2k+1)!}$
$\text{{a}}^k$はaがk個並んだものを意味する。

$\zeta(\underbrace{2k,2k, \dots, 2k} _{n}) =: \zeta(\text{{2k}}^n)=(有理数) \times \pi^{2kn}$

Eulerにより次の式が与えられた。

和公式(深さ2)

整数k≥1に対して,
$\sum_{i=2}^{k-1}{\zeta(i,k-i)}=\zeta(k)$

証明の概略は後ほど。

和公式(深さ2)の具体例

k=3のとき,
$\zeta(2,1)=\zeta(3)$
k=4のとき,
$\zeta(2,2)+\zeta(3,1)=\zeta(4)$
このように重さを固定しその重さの多重ゼータ値を全て足すとリーマンゼータ値になる。綺麗。

さらに次のような驚くべき拡張がある。

和公式

重さk, 深さn(1≤n≤k)を固定すると以下が成り立つ:
$\sum_{k_1+k_2+\cdots+k_n=k\\ k_1≥2, k_2,\dots,k_n≥1}\zeta(k_1,k_2,\dots, k_n)=\zeta(k)$

この定理の証明は続編(いつになるか分からないが)でするが深さ2の場合の和公式について証明の概略を述べる。

和公式(深さ2)の証明の概略

\begin{eqnarray} \zeta(2,1)+\zeta(3) &=&\sum_{m>n>0}\frac{1}{m^2n^1}+\sum_{m>n>0}\frac{1}{m^2n^1} \\ &=&\sum_{m≥n}\frac{1}{m^2n^1} \\ &=&\sum_{m=1}^{\infty}\frac{1}{m^2}(\sum_{n=1}^{m}\frac{1}{n}) \end{eqnarray}
ここで$\sum_{n=1}^{m}\frac{1}{n}=\sum_{n=1}^{\infty}(\frac{1}{n}-\frac{1}{n+m})$となるので
\begin{eqnarray} \zeta(2,1)+\zeta(3) &=&\sum_{m=1}^{\infty}\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{m^2}(\frac{1}{n}-\frac{1}{n+m}) \\ &=&\sum_{m=1}^{\infty}\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{mn(m+n)} \\ &=&\sum_{m=1}^{\infty}\sum_{n=1}^{\infty}\frac{m+n}{mn(m+n)^2} \\ &=&\sum_{m=1}^{\infty}\sum_{n=1}^{\infty}(\frac{1}{(m+n)^2m}+\frac{1}{(m+n)^2n}) \\ &=&2\zeta(2,1) \\ \therefore \zeta(2,1)=\zeta(3) \end{eqnarray}

$\zeta(k-1,1)+\zeta(k)$を同様に計算すると深さ2の和公式が導出できる。

しかしこのような方法で一般の深さの和公式を導出できるか分からない。
後述する証明には多重ゼータ値の積分表示を用いる。

参考文献

[1]
[AK]荒川恒男, 金子昌信, 多重ゼータ値入門, pp.1-5
[2]
[ES]Ehias M, Stein and Rami Shakarchi, 複素解析, プリンストン解析講義Ⅱ, 日本評論社, 2009, pp.169-175
[3]
[AIK]荒川恒男,伊吹山知義,金子昌信, ベルヌーイ数とゼータ関数, 牧野書店, 2001, pp.1-11
投稿日:2022116
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Aki
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