こんにちは。今日は、$\pi$が無理数であることを証明していきたいと思います。
世の中には積分を用いた証明があるようですが、ここではランベルトが証明した方法を紹介します。
使うのは、三角関数の級数展開と、連分数展開です。
まず
$\displaystyle{ \tan x=\frac{\sin x}{\cos x}}$
です。そして、次の級数展開
$\displaystyle{\sin x=x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}- \cdots}$
$\displaystyle{\cos x=1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}- \cdots}$
を先の式に代入すれば
$\displaystyle{\tan x=\frac{x-\frac{x^3}{6}+\frac{x^5}{120}- \cdots}{1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}- \cdots}}$
$\displaystyle{=\frac{x}{\frac{1-\frac{x^2}{2}+\frac{x^4}{24}-\cdots}{1-\frac{x^2}{6}+\frac{x^4}{120}-\cdots}}}$
ここで$x$$\rightarrow $$0$とすると、分母は1に近づくので
$\displaystyle{\tan x=\frac{x}{1-\frac{\frac{x^3}{3}-\frac{x^4}{30}+\cdots}{1-\frac{x^2}{6}+\frac{x^4}{120}-\cdots}}}$
$\displaystyle{=\frac{x}{1-\frac{x^2}{\frac{1-\frac{x^2}{6}+\frac{x^4}{120}-\cdots}{\frac{1}{3}-\frac{x^2}{30}+\cdots}}}}$
となります。ここで$x$$\rightarrow $$0$とすると分母は3に近づくのでこの操作を繰り返せば
$\displaystyle{\tan x=\frac{x}{1-\frac{x^2}{3-\frac{x^2}{5-\frac{x^2}{7-\cdots}}}}}$
と連分数展開できます。
次に、証明に必要な定理を紹介します。
ある数が
$\displaystyle{q_0+\frac{p_1}{q_1+\frac{p_2}{q_2+\frac{p_3}{q_3+\cdots}}}}$
と連分数展開できるとき、$p_j,q_j\in \mathbb{Z}$についてある$j_o$から先の$j \geq j_o$に対して
$2\left| p_j \right| \leq q_j-1$
が成り立つならば、その数は無理数である。
証明は残念ながら見つかりませんでした。
では、$\pi$の無理性を証明していきます。$\displaystyle{x=\frac{m}{n}}$とすれば、
$\displaystyle{\tan x=\frac{\frac{m}{n}}{1-\frac{\frac{m^2}{n^2}}{3-\frac{\frac{m^2}{n^2}}{5-\frac{\frac{m^2}{n^2}}{7-\cdots}}}}}$
$\displaystyle{=\frac{m}{n-\frac{m}{3n-\frac{m}{5n-\frac{m}{7n-\cdots}}}}}$
と、整数係数の連分数展開が得られます。すると先程の定理に当てはめれば
$\displaystyle{p_1=m,p_j=m^2\quad(j \geq 2)}$
$\displaystyle{q_j=(2j-1)n\quad(j \geq 1)}$
となります。$\displaystyle{p_j}$は一定なので、ある$j_o$以降で必ず定理1が成り立ちます。従って、$\displaystyle{\tan\frac{m}{n}}$は無理数です。
実数$x$に対して
$x\in\mathbb{Q} \Longrightarrow \tan x\notin\mathbb{Q}$
が成り立つ。
ここから、次の系が得られます。
有理数$y$に対して$\arctan y=x$は無理数である。
これは背理法を用いれば定理2との矛盾が生じることで示せます。
そして、この系によって$\arctan1=\frac{\pi}{4}$は無理数であることが言えました。
今日はここまでです。最後まで読んでくださってありがとうございました。