筑波大学附属駒場高等学校二年の古屋楽です. 本記事は学校の課題研究で扱った内容をまとめたものです. 主に初等幾何の話題です. かなり作図しやすい部類の話だと思うので, Geogebraで確認しながら読んでみても面白いかもしれません(需要があればこちらで作ります.)
今回の研究の主結果を先に紹介します.
重心Gに対する等角共役点Kを, 共円および共線条件のみで定めることができる
また, 重心にあたる点を動かしても大方の性質を保つ
以下の文章において, 「〇〇も同様に」という表現が多数出てきます. これは主にA, B, C, A,...など対応する点や事象を順に入れ替えて得られる命題/証明を指すことが多いです.
Miquelの定理にはMiquelの三角形定理とMiquelの四辺形定理という二種類があり, この記事では両方が登場します. そのため, それぞれで得られる点をMiquel点(III), Miquel点(IV)などと区別します.
以下に挙げる性質はすべて重心座標あるいは簡単な角度計算で証明できることが分かっていますが, すべて省略しています.
次の定理から出発しよう.
三角形ABCの重心Gに対し, 三点B, G, Cを通る円のB, Cでの接線の交点をA'とし, 同様に円CGA, 円AGBに対してB', C'を定める.
このとき三直線AA', BB', CC'は平行となる.
また, 重心Gの等角共役点Kについて直線GKもこれらに平行.
この定理は重心座標を用いて証明できることが確かめられたが, より初等的な方法での証明を与えることはできなかった.
たぶん存在するので(?)できたらぜひ教えてほしい.
この定理を拡張することを考える. しかし, 実はこの主張のまま点Gを動かしても主張は成り立たない (点Kの扱い以前に, 主張の前半が成立しない. )
そこで, 次の事実に着目する.
定理1において, 線分BC, CA, ABの中点をそれぞれ$\mathrm{M_A}, \mathrm{M_B}, \mathrm{M_C}$とする. また, 直線BC'と直線B'C, 直線CA'と直線C'A, 直線AB'と直線A'Bの交点をそれぞれ$\mathrm{K_A}, \mathrm{K_B}, \mathrm{K_C}$とする. このとき, $\mathrm{K_A}$は四直線$\mathrm{AB, AC, M_BB, M_CC}$で定まるMiquel点(IV)に一致する.
また, 三線$\mathrm{AK_A, BK_B, CK_C}$は一点Kで交わる.
定理2を用いて定理1の主張を書き換えると, これを一般化することができるようになる.
その前に, 一旦以下で用いる点の記号を確定しておく.
三線$\mathrm{AK_A, BK_B, CK_C}$は一点で交わり, この点を$\mathrm{K}$とする.
このとき四直線$\mathrm{AA', BB', CC', GK}$は平行.
定理3においてこのような点Kは類似重心の一般化になっている.
実際, G$(x, y, z)$ とおくと点Kの座標は$\left(\frac{2a^2}{y+z}, \frac{2b^2}{z+x}, \frac{2c^2}{x+y}\right)$と表される.
上で見たように, 重心(のような点)から類似重心(のような点)を共線・共円条件のみで定義することができた. このようにして他の点も定義していこう.
Hはオイラー線とキーペルト双曲線の交点として定義している.
準備は整ったので, これらの性質を挙げる.
共線の性質
共円の性質
上の共線の性質だけはGが重心の場合を考えれば明らかだが, 共円の性質はGが重心の場合であっても明らかでない.
以上のように, 今回採用した一般化は多くの共円・共二次曲線の性質を保つ. これはすなわち, 三角形の五心を中心に成り立つ性質を射影変換して得られるものとみなすことができる.
チェバ線に定まるMiquel点には良い性質が多くあり, これを用いることで三角形の心の一般化を行うことができた. しかしこれは射影変換によって得られる帰結そのものであるから, どの程度の意味を持つのかを判断することはできなかった. もしこのような定義づけに意味があるとすれば, 内心や傍心の記述を試みることも視野に入れている.