※この記事は,
仮の人さん
主催の
AMC 2022
の 19 日目の記事です.
こんにちは,pomodor_ap と申します. 競技数学をしている 15 歳 (もうすぐ 16 歳になる) で,特に初等幾何がとても好きです.
本日は,これまでの自作問題たちを用いて,主に五心周りの構図について少し解説していきたいと思います. よろしくお願いします.
OMC128 - B
三角形 について,その内心を とし,内接円と辺 の接点を とすると,
が成立しました. このとき,三角形 の 内の傍接円の半径を求めてください.
傍心に関する基本的な問題です. 作問を本格的に始めたその日に作りました. 以下,解説が続きます.
内接円と の接点を ,傍接円と の接点を としてみましょう. さらに,三角形 の 内の傍心を とします.
三角形 と の相似から,(内接円の半径):(傍接円の半径)= がわかっていて,内接円の半径と の長さは与えられているので, の長さを求めたいですね. は与えられているので, を出してみましょう. 問題設定に が与えられているので,これが使えそうです. 少し長さを移動させてみると,以下の式が導けます.
さらに, なので,連立して解くことで, がわかります. ここから なので,傍接円の半径は となります.
もう つ傍心の性質を紹介しますね. 今度の問題は少し難しめかもしれません.
PGC002 - B
三角形 について,内心を とすると,以下が成立しました.
このとき, の長さを求めてください.
一見何をすればいいのか分かりづらいですが, 内の傍心 をとるといい感じの構図になります. 解説していきますね.
トリリウムの定理
外接円 をもつ三角形 について,内心を , 内の傍心を , と の交点を とすると, は を中心とする同一円周上にあり,また はこの円の直径である.
この定理を使います. 大事な定理なので憶えておきましょう. 点の名前はそのままにしますね.
円周角の定理から であり,これと から三角形 と は相似となります. よって であり,したがって円 の半径は となります.ここで, が同一円周上にあるので,Ptolemy の定理が適用できますね.
これに,ここまでに出してきた長さを代入してやることで, となります.
今回この問題を取り上げたのはトリリウムの定理とこの相似を説明するためでしたが,傍心を取る考え方は難易度の高い問題では大事になってきます. 高いレベルを目指したい方は使いこなせるようになっておきましょう. また,Ptolemy の定理も大事なので使いこなせるようになっておきましょう.
ところで,気づいた方もいるかもしれませんが,傍心を取らなくても とも表せますね. この性質は先日私が
初等幾何 bot
さんに提供したもので,「pomodor の補題」というあだ名(?)があります. これには,傍心をとる以外にもさまざまな証明方法があり,それを考えるのも勉強になると思うので,ぜひ考えてみてください. 気が向いたら,今度その証明方法についても記事を書いてみるかもしれません.
傍心の基本的な性質はこの 問である程度説明できたと思います. 次回の記事で,高い難易度の問題においてよく出る手法を説明しますので,そちらもぜひ読んでみてください.
次は垂心・外心やオイラー線周りの構図について少し話します. オイラー線とは,垂心 ・重心 ・外心 を結ぶ直線のことで, が成立します. の中点を としたときの もよく使います. 証明は意外と簡単なので,皆さんぜひやってみてください.
三角形 について,垂心・外心をそれぞれ とし, と の交点を とすると,以下が成立しました.
このとき, の長さを求めてください.
の長さが与えられています. これは (有名構図) が使いたいですね.
の中点を とし, を通る直線と の交点を とします. 三角形 と が相似であり,かつ なので . これと から, より であり,これと から,あとは三平方の定理から計算すれば, が導けます.
もう 問紹介しますね.
SMathF 2022 本選 3・改
三角形 について,垂心・重心をそれぞれ とすると,以下が成立しました.
このとき, の長さを求めてください.
解説していきます. と の交点を , と の交点を とし, と の交点を , と の交点 (つまり の中点) を としてみましょう. に注目して,以下のように方べきの式で表せます.
話はそれますが, から三角形 と は相似です. この相似はよく使うので覚えておきましょう.
ここから, と はそれぞれ同一円周上に存在します. から,円周角の定理を使って以下のように角度計算ができますね.
から がわかり, から が導けます. とすると,中線定理から となるので, となります.
ただ,この解法, を求めるところから, の部分まで,かなり気づきづらいのではないでしょうか. ですが,オイラー線を使うとかなり楽に導くことができます.
外心 をとってみると, は同一直線上にある (オイラー線) ので, となります. 外心をとったので外接円 をとりたくなりますね. と の交点を とすると, から となります. 方べきの定理から, が簡単に導けてしまいますね.
ところで,この問題のように,五心が絡む問題では外接円をとることが大事になってくることが多いです.三角形を見たら外接円を書く,くらいに考えていてもよいかもしれません. 少なくとも,書かないよりは書く方が絶対いいでしょう.
最後に,ひとつ構図を紹介して終わりにしたいと思います.
初等幾何 bot
さんでも紹介されていますが, の中点を , と三角形 の外接円の交点を とすると, は同一直線上に存在します. かつ と は平行なので,中点連結定理から証明できますが,これも使えるようになっておくと便利です. 次回の記事で,これを使う問題と,これを少し発展させた構図について解説したいと思います.
今回の記事は以上です. ありがとうございました. この記事で少しでも勉強になったり,幾何が好きになれた人がいたら嬉しいです.
さて,先程も言いましたが,次回の記事では,これより少し難易度の高めの問題・構図をまたいくつか紹介しようと思うので,よければ読んでみてください. なんとか今年中に出せるように頑張ります.