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Erdös–Surányi問題の一般化をしていたら,2022JMO予選P11の一般化がでてきた!!

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はじめに

任意のm,nZ0に対して,NZ0,ε:{0,,N}{1,1}が存在して,以下をみたす.
m=i=0Nε(i)in

本当は,N,εがいっぱいあるという主張ですが,あんまり変わらないので,存在性だけにフォーカスします.証明の途中で興味深い事実があり,少し深掘りします.

証明パート

i,jZ0,j<2iとして,ε(i,j){1,1}を以下のように定義する.

ε(i,j)={1(i=j=0)ε(i1,j)(0j<2i1)ε(i1,j2i1)(2i1j<2i)

参考にしました

n,kZ0,n<k
i=02k1ε(k,i)(x+i)n=0

(左辺はxに関する多項式)
(追記)iε(n>0,i)=0なので明らかでした

k=n+1のときだけ見れば十分.なぜなら,
i=02k1ε(k,i)(x+i)n=0i=02k+11ε(k+1,i)(x+i)n=0
が成り立つからである.

n=0のときは明らかである.任意のlZ0に対して,nl以下なら主張が成り立つという仮定の下でn=l+1のとき成り立つことを示せばいい.
i=02l1ε(l,i)(x+i)l=i=02l1j=0lε(l,i)(lj)xljij=j=0l(lj)xlji=02l1ε(l,i)ij=i=02l1ε(l,i)il
つまり,
0=i=02l1ε(l,i)(x+i)l+i=02l1ε(l,i)(x+2l+i)l=i=02l1ε(l+1,i)(x+i)l+i=2l2l+11ε(l+1,i)(x+i)l=i=02l+11ε(l+1,i)(x+i)l

補題2

i=02n1ε(n,i)(x+i)n=212n(n1)n!

補題2の証明の途中にもあったように,x=0のときだけ考えればいい.
an=i=02n1ε(n,i)in=i=02n1ε(n,i)(x+i)n
とおく.a0=1で,
an+1=i=02n+11ε(n+1,i)in+1=i=02n1ε(n,i)((i+2n)n+1in+1)=i=02n1j=0nε(n,i)(n+1j)ij2n(n+1j)=j=0n(n+1j)2n(n+1j)i=02n1ε(n,i)ij=(n+1)2ni=02n1ε(n,i)in=(n+1)2nan   (n0)
が成り立つので,an=212n(n1)n!a0=212n(n1)n!.

弱い主張

n,LZ0,L>1.任意のlZに対して,NZ0,ε:{0,,N}{1,1}が存在して,以下をみたす.
li=0Nε(i)in(modL)

kZ>0に対して,以下が明らか.
2kj=02k1((jL+1)n+(1)ji=2L(jL+i)n)2k+1j=02k1((jL+1)n+(1)ji=2L(jL+i)n)+(2kL+1)n(modL)

もう明らかだが,せっかくなので具体的に書き表してみる.

sgn:RR
sgn(x)={0(x=0)1(x>0)1(x<0)

補題3にL=212n(n1)n!(n=0は考えない)を適用すれば,任意のmZ0に対して,AZ,NZ0,ε:{0,,N}{1,1}が存在して,以下をみたす.
m+212n(n1)n!A=i=0Nε(i)in
A=0なら目的は達成されるので,A0のときだけ考える.補題2より,
212n(n1)n!A=i=0A1j=02n1sgn(A)ε(n,j)(x+i212n(n1)n!+j)n
が成り立つので,
m=i=0Nε(i)in+i=0A1j=02n1sgn(A)ε(n,j)(N+1+i212n(n1)n!+j)n
と書ける.

気になったこと

2022JMO予選

P11改

kを正の整数とする.正の整数nに対して,f(n)
f(n)={nd(n),nd(n)
と定める.S=f(1)+f(2)++f(10d1)5mが割り切るような最大の非負整数mを求めよ.(十進法で表すものとする)

S=1012d(d1)(5)dd!と書ける.これ系とすごく似ています.εも,符号の調整で分かりにくくなっていますが,値は二進法で表した時の各桁の和の偶奇に依存しています.逆に,二進法のときでうまくいくなら,n進法でも同じようにできそうです.
少し頑張ると以下のようなことが分かりました.

nZ0,kZ>0,kは偶数.
i,jZ0,j<kiに対して,ε(i,j){1,1}を次のように定める.
ε(i,j)={1(i=j=0)ε(i1,jki1jki1)(jl=0k21[2lki1,(2l+1)ki1))ε(i1,jki1jki1)(jl=1k2[(2l1)ki1,2lki1))
このとき,以下が成り立つ.
an=i=0kn1ε(n,i)(x+i)n=k12n(n+1)2nn!

同じような流れで,
i=0kn1ε(n,i)(x+i)n=i=0kn1ε(n,i)in
が分かり,n<lに対して,
i=0kl1ε(l,i)(x+i)n=0
が分かる.これを合わせると,
an=i=0kn1ε(n,i)(x+i)n=i=0kn1ε(n,i)in=i=0kn11j=0k1(1)j+1ε(n1,i)(jkn1+i)n=i=0kn11j=0k1l=0n(1)j+1ε(n1,i)(nl)iljnlk(n1)(nl)=l=0n(nl)k(n1)(nl)j=0k1(1)j+1jnli=0kn11ε(n1,i)il=j=0k1(1)j+1i=0kn11ε(n1,i)in+nkn1an1j=0k1(1)j+1j=nkn21an1    (n>0)
が分かるので,a0=1に注意すると,an=k12n(n+1)2nn! (n0)を得る.

おしまい

kが奇数のときは別のアプローチで進めないとダメなんですかね.
ありがとうございました.

投稿日:20221223
OptHub AI Competition

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kk2
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2006年に生まれました

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