8
高校数学解説
文献あり

円以外の二次曲線に対する方べきの定理の拡張

1361
0

初めましてつくつくです.
方べきの定理の主張を少し弱めると, 全ての二次曲線に対して適用できるようになることを発見したので, それについて書いていきます.

方べきの定理を拡張する

方べきの定理とは次のような定理でした.

方べきの定理

平面上に円Cと点Aがあり, 点Aを通る直線lCと2点P,Qで, 点Aを通る直線mCと2点R,Sで交わっている時, APAQ=ARASが成り立つ.

この定理はAPAQARASの値が(分母が0でないとき)常に1になると言い換えることができます. 実はこの比の値が一定であるというのは二次曲線一般について言えて, 次の定理が成り立ちます.

一般化した方べきの定理

平面上に二次曲線CC上にない点Aがあり, 点Aを通る直線lCと2点P,Qで, 点Aを通る直線mCと2点R,Sで交わっている時, 直線lと直線mの傾きが一定ならAPAQARASの値はAの位置によらず一定である.

条件が1つ増えましたが, 円の場合と同じようなことが成り立つと分かります. lmの傾きはなんでもいいんですが, 今回は簡単のために2直線が直交する場合を考えます.

証明

ベクトルを用いて示します. 以下ではA(p,q), 直線lの傾きをkとします. このとき, 直線l,mtをパラメータとして次のように表せます.
l:(xy)=(pq)+t(1k)m:(xy)=(pq)+t(k1)

楕円の場合

C:x2a2+y2b2=1
とします. この式にlx,yを代入し整理すると,
(a2k2+b2)t2+2(a2qk+b2p)t+(a2q2+b2p2a2b2)=0
となります. この式の2解をt=α,βとすると,
AP=α(1k),AQ=β(1k)
とできるので, 解と係数の関係より,
APAQ=|αβ|(1+k2)=|a2q2+b2p2a2b2|(k2+1)a2k2+b2
となります.
直線mについても同様に計算すると,
ARAS=|αβ|(1+k2)=|a2q2+b2p2a2b2|(k2+1)b2k2+a2
となり,
APAQARAS=b2k2+a2a2k2+b2
が導かれます. この値はp,qの値,すなわちAの位置によらず, 直線の傾きと楕円の形状にのみ依存しますね.

ここでa=bとするとCは円になりますが, このとき
APAQARAS=a2k2+a2a2k2+a2=1
となって, ちゃんと元の方べきの定理の式になります.

双曲線の場合

C:x2a2y2b2=1
とします. 計算の方法は同じなので結果だけ示すと,
APAQARAS=|b2k2a2a2k2b2|
になります.
楕円の場合から符号が変わっただけですね. 双曲線の場合も同様に直線の傾きとCの形状にのみ依存します.

また, ここでもa=bとしてみると,
APAQARAS=|a2k2a2a2k2a2|=1
となり, 方べきの定理と全く同じ式が成立します.

放物線の場合

C:y=ax2
とすると, 結果は次のようになります.
APAQARAS=k2
すごく綺麗な形になりましたね. 今度は直線の傾きにのみ依存し放物線の形状にすらよらないという一見不思議なことが起こりました.
これには放物線の形状はそもそも一種類しかないという事実が背景にあります. 詳しくは以下の記事を参照してください.

全ての放物線が相似であることの証明
https://manabitimes.jp/math/702

おわりに

方べきの定理のような定理が全ての二次曲線に対して成り立つことを見てきました. この他にも円の定理として有名なもので二次曲線に拡張できる, もしくはそのまま適用できるものが様々あるみたいです. おもしろいですね.

ここまでお読みいただきありがとうございました. また別の記事でお会いしましょう.

参考文献

投稿日:20221226
更新日:415
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. 方べきの定理を拡張する
  2. 証明
  3. 楕円の場合
  4. 双曲線の場合
  5. 放物線の場合
  6. おわりに
  7. 参考文献