5

n=1を確認する必要はない(その1)

191
0
$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathrm{div}} \newcommand{division}[0]{÷} \newcommand{grad}[0]{\mathrm{grad}\ } \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{rot}[0]{\mathrm{rot}\ } \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

いきなり一般論から入っても、理解しにくいと思うので、簡単な例から入る。

階差数列の一般項

以下の条件を満たす数列$a_{n}$の一般項を求めよ。
$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} a_{n+1} - a_{n} =3^n \\ a_{1}= 5/2 \end{array} \right. \end{eqnarray} $$

従来法で解くと、以下のようになる。

階差数列の公式より
$$ a_{n}=a_{1}+\sum_{k=1}^{n-1}(a_{k+1}-a_{k})\quad (n \geqq 2) $$
なので、代入して解くと
$$ \begin{eqnarray} a_{n} &=& a_{1}+\sum_{k=1}^{n-1}3^k\quad (n \geqq 2) \\ &=& \frac{5}{2} +(初項 \ 3 \ 公比 \ 3 \ 項数 \ n-1 \ の等比数列の和)\quad (n \geqq 2) \\ &=& \frac{5}{2} + \frac{3(3^{n-1}-1)}{3-1} \quad (n \geqq 2) \\ &=& \frac{3^{n}}{2} + 1 \quad (n \geqq 2) \\ \end{eqnarray} $$
ここで、$n=1$のときに成り立つか代入して確認すると
$$ a_{1}=\frac{3^{1}}{2} + 1=\frac{5}{2} $$
以上より$a_{1}$のときも成立するので、
$$ a_{n}=\frac{3^{n}}{2} + 1 \quad\blacksquare $$

今回のテーマは、赤字部分の$n=1$のときだけ代入して具体的に確認する」を回避するというものである。
次のような解法を用いることで、回避することができる。

任意の自然数$n$に対して、以下が成り立つ。
$$3^{n}=\frac{3^{n+1}}{2}-\frac{3^{n}}{2}$$
これを$a_{n+1} - a_{n} =3^n$に代入すると、
$$ a_{n+1} - a_{n} =\frac{3^{n+1}}{2}-\frac{3^{n}}{2}\\ a_{n+1} - \frac{3^{n+1}}{2} =a_{n}-\frac{3^{n}}{2} $$
よって
$$ a_{n}-\frac{3^{n}}{2}=a_{n-1}-\frac{3^{n-1}}{2}= \cdots=a_{1}-\frac{3^{1}}{2}\\ a_{n}-\frac{3^{n}}{2}=a_{1}-\frac{3}{2} $$
これに$a_{1}=5/2$を代入して整理すると、
$$ a_{n}=\frac{3^{n}}{2}+1\quad\blacksquare $$

記述の量としては、大きな差があるわけではないが、$n=1$を仲間外れせずに解くことができる。
このような方法で解くためには、以下の2つ条件が要求される。
1)階差数列$a_{n+1}-a_{n}=f(n)$を構成すること
2)$f(n)=g(n+1)-g(n)$となる$g(n)$を求めること
種々の条件を階差数列に落としこむ方法や、$g(n)$を求める方法については、引き続き考察の対象となる。
最後に、一般論を示して終わりとする。

数列の和

全ての自然数$n$において、以下が成り立つとき
$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} a_{n+1} - a_{n} =f(n) \\ f(n)=g(n+1)-g(n) \end{array} \right. \end{eqnarray} $$
数列の和を以下のように求めることができる。
$a_{n+1} - a_{n}=g(n+1)-g(n)$
$$ \begin{eqnarray} \ a_{n+1}-g(n+1) &=& a_{n}-g(n) \\ &=& a_{n-1}-g(n-1) \\ &=& \cdots \\ &=& a_{1}-g(1) \end{eqnarray} $$
$a_{n}=a_{1}+g(n)-g(1)\quad\blacksquare$

修正履歴
2023/07/17 01:23 書式の乱れを修正

投稿日:2023211

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中