いきなり一般論から入っても、理解しにくいと思うので、簡単な例から入る。
以下の条件を満たす数列$a_{n}$の一般項を求めよ。
$$
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
a_{n+1} - a_{n} =3^n \\
a_{1}= 5/2
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
$$
従来法で解くと、以下のようになる。
階差数列の公式より
$$
a_{n}=a_{1}+\sum_{k=1}^{n-1}(a_{k+1}-a_{k})\quad (n \geqq 2)
$$
なので、代入して解くと
$$
\begin{eqnarray}
a_{n} &=& a_{1}+\sum_{k=1}^{n-1}3^k\quad (n \geqq 2) \\
&=& \frac{5}{2} +(初項 \ 3 \ 公比 \ 3 \ 項数 \ n-1 \ の等比数列の和)\quad (n \geqq 2) \\
&=& \frac{5}{2} + \frac{3(3^{n-1}-1)}{3-1} \quad (n \geqq 2) \\
&=& \frac{3^{n}}{2} + 1 \quad (n \geqq 2) \\
\end{eqnarray}
$$
ここで、$n=1$のときに成り立つか代入して確認すると
$$
a_{1}=\frac{3^{1}}{2} + 1=\frac{5}{2}
$$
以上より$a_{1}$のときも成立するので、
$$
a_{n}=\frac{3^{n}}{2} + 1 \quad\blacksquare
$$
今回のテーマは、赤字部分の「$n=1$のときだけ代入して具体的に確認する」を回避するというものである。
次のような解法を用いることで、回避することができる。
任意の自然数$n$に対して、以下が成り立つ。
$$3^{n}=\frac{3^{n+1}}{2}-\frac{3^{n}}{2}$$
これを$a_{n+1} - a_{n} =3^n$に代入すると、
$$
a_{n+1} - a_{n} =\frac{3^{n+1}}{2}-\frac{3^{n}}{2}\\
a_{n+1} - \frac{3^{n+1}}{2} =a_{n}-\frac{3^{n}}{2}
$$
よって
$$
a_{n}-\frac{3^{n}}{2}=a_{n-1}-\frac{3^{n-1}}{2}= \cdots=a_{1}-\frac{3^{1}}{2}\\
a_{n}-\frac{3^{n}}{2}=a_{1}-\frac{3}{2}
$$
これに$a_{1}=5/2$を代入して整理すると、
$$
a_{n}=\frac{3^{n}}{2}+1\quad\blacksquare
$$
記述の量としては、大きな差があるわけではないが、$n=1$を仲間外れせずに解くことができる。
このような方法で解くためには、以下の2つ条件が要求される。
1)階差数列$a_{n+1}-a_{n}=f(n)$を構成すること
2)$f(n)=g(n+1)-g(n)$となる$g(n)$を求めること
種々の条件を階差数列に落としこむ方法や、$g(n)$を求める方法については、引き続き考察の対象となる。
最後に、一般論を示して終わりとする。
全ての自然数$n$において、以下が成り立つとき
$$
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
a_{n+1} - a_{n} =f(n) \\
f(n)=g(n+1)-g(n)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
$$
数列の和を以下のように求めることができる。
$a_{n+1} - a_{n}=g(n+1)-g(n)$
$$
\begin{eqnarray}
\ a_{n+1}-g(n+1) &=& a_{n}-g(n) \\
&=& a_{n-1}-g(n-1) \\
&=& \cdots \\
&=& a_{1}-g(1)
\end{eqnarray}
$$
$a_{n}=a_{1}+g(n)-g(1)\quad\blacksquare$
修正履歴
2023/07/17 01:23 書式の乱れを修正