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sin1, sin2, sin3, sin4の大小比較

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問題

有名問題

$ \sin{1}, \sin{2}, \sin{3}, \sin{4} $の大小を比較せよ。

1 2の …… ポカン!

Nayutaさんは 三角関数の つかいかたを きれいに わすれた!
「で、$ \sin $って何だ?」

解答の方針


$ \sin $を知らないと何もできないので、これだけ吹き込んでおきます。あとはNayutaさんが全てを再構築してくれるはずです。

オイラーの公式

任意の実数$ \theta $に対し、
$ e^{i\theta} = \cos{\theta} + i \sin{\theta} $
が成り立つ。

「なんか思い出したけど・・・これ定義じゃなくて公式だよな・・・まあできる範囲でやってみるか」
「とりあえず$ \theta $$ 1 $から$ 4 $まで代入すれば問題の値を含む式は出てきそうだ」
$ e^{i} = \cos{1} + i \sin{1} $
$ e^{2i} = \cos{2} + i \sin{2} $
$ e^{3i} = \cos{3} + i \sin{3} $
$ e^{4i} = \cos{4} + i \sin{4} $
「これらの関係性を見たいが・・・ん、左辺に指数法則が使えそうだ」
\begin{align*} \cos{2} + i \sin{2} &= ( \cos{1} + i \sin{1} )^2 \\ &= (\cos{1})^2 + 2i\cos{1}\sin{1} + i^2(\sin{1})^2 \\ &= ((\cos{1})^2 - (\sin{1})^2) + (2\cos{1}\sin{1}) i \end{align*}
$ \therefore \sin{2} = 2\cos{1}\sin{1} $
「ということは$ 2\cos{1} $$ 1 $の大小関係、つまり$ \cos{1} $$ \frac{1}{2} $との関係がわかればいいのか」
「こうなったらマクローリン展開や!マクローリン展開はかわいい!かわいいは正義!よってマクローリン展開は正義!」
$ e^{ix} = \cos{x} + i\sin{x} $
の両辺を$ x $で微分すると
$ ie^{ix} = (\cos{x})' + i(\sin{x})' $であるが、この左辺は$ -\sin{x} + i\cos{x} $に等しいので実部を虚部を比較して
$ (\cos{x})' = -\sin{x}, (\sin{x})' = \cos{x} $
を得る。
$ 4 $回微分したら元に戻るのか、これは面白い」
$ e^0 = 1 $つまり$ \cos{0} = 1, \sin{0} = 1 $だから級数展開はこうなりそうだが、誤差項をどう評価しよう」
$ \cos{x} = \frac{x^0}{0!} - \frac{x^2}{2!} + \frac{x^4}{4!} - \cdots $
$ \sin{x} = \frac{x^1}{1!} - \frac{x^3}{3!} + \frac{x^5}{5!} - \cdots $
$ \cos{x} \leq 1 $がいえればよさそうだが、どうやって示そう」
$ \cos{x} $$ e^{ix} $の虚部だから、$ |e^{ix}| \leq 1 $を示せばよさそうだが・・・どうやって?」
$ e^{ix} $$ x = a $での微分係数は$ ie^{ia} $だから・・・値が微分係数と直交してるの何かに使えないかな」

$ (\cos{x})^2 + (\sin{x})^2 = 1 $を示す

実数$ x $に関する関数$ e^{ix} $について、その絶対値は常に$ 1 $である。

証明: $ f(x) = e^{ix} $とおき、$ x = \alpha $での微分係数を考える。$ z = e^{i\alpha} $とする。
また、$ g(x) = |e^{ix}| $とする。
$ x = \alpha $での微分係数は$ iz $であるから、任意の正の実数$ \epsilon $に対しある正の実数$ \delta $が存在して
$ \left| \frac{f(\alpha + \delta) - f(\alpha)}{\delta} - iz \right| < \epsilon $
すなわち
$ \left| f(\alpha + \delta) - z - iz\delta \right| < \delta\epsilon $
が成り立つ。また、$ \delta $は十分小さく取れるので、$ 0 < \delta < \epsilon^3 $と仮定してよい。

このとき、$ |f(\alpha + \delta) - z| $は底辺が$ |z| $で高さが$ |z|\delta $の直角三角形の斜辺の長さであるため、
$ -\delta \epsilon < |f(\alpha + \delta)| - |z|\sqrt{1+\delta^2} < \delta \epsilon $
である。
$ \delta < 1 $の場合を考える。
このとき、
\begin{align*} \frac{|z|(\sqrt{1+\delta^2} - 1) + \delta \epsilon}{\delta} &< \frac{|z|(\sqrt{1+(\delta/\epsilon)^2} - 1) + \delta \epsilon}{\delta} \\ &< \frac{|z|((1+(\delta/\epsilon)^2) - 1) + \delta \epsilon}{\delta} \\ &= \frac{|z|\delta^2/\epsilon^2 + \delta \epsilon}{\delta} \\ &= |z|\delta/\epsilon^2 + \epsilon \\ &< |z|\epsilon + \epsilon \end{align*}
よって、任意の$ 0 < \epsilon < 1 $に対して、$ g'(x) < |z|\epsilon + \epsilon $が成り立つ。
すなわち、$ g'(x) = 0 $が成り立つ。
$ g(0) = |f(0)| = |1| = 1 $なので、$ g(x) $は恒等的に$ 1 $である。(Q.E.D.)
「よし、あとは勝ったも同然だ」

$ \cos $$ \sin $を多項式近似する

任意の$ 0 $以上の整数$ n $と実数$ x \geq 0 $に対して、
$ \displaystyle \sum_{k=0}^{2n+1} \frac{(-1)^{k} x^{2k}}{(2k)!} \leq \cos{x} \leq \sum_{k=0}^{2n} \frac{(-1)^{k} x^{2k}}{(2k)!} $
が成り立つ。

証明:
$ 2n $または$ 2n+1 $$ m $とおくことで、これらの不等式は
$ \displaystyle (-1)^m \cos{x} \leq (-1)^m \sum_{k=0}^{m} \frac{(-1)^{k} x^{2k}}{(2k)!} $
とまとめられる。右辺の$ (-1)^m $より右の部分を$ f_m(x) $とすると、任意の自然数$ m \geq 1 $に対して
\begin{align*} \frac{d^2}{dx^2} f_m(x) &= \frac{d^2}{dx^2} \sum_{k=0}^{m} \frac{(-1)^{k} x^{2k}}{(2k)!} \\ &= \frac{d^2}{dx^2} \left( 1 + \sum_{k=1}^{m} \frac{(-1)^{k} x^{2k}}{(2k)!} \right) \\ &= \frac{d^2}{dx^2} \sum_{k=1}^{m} \frac{(-1)^{k} x^{2k}}{(2k)!} \\ &= \sum_{k=1}^{m} \frac{d^2}{dx^2} \frac{(-1)^{k} x^{2k}}{(2k)!} \\ &= \sum_{k=1}^{m} \frac{(-1)^{k} (2k)(2k-1)x^{2k-2}}{(2k)!} \\ &= \sum_{k=1}^{m} \frac{(-1)^{k} x^{2k-2}}{(2k-2)!} \\ &= -\sum_{k=0}^{m-1} \frac{(-1)^{k} x^{2k}}{(2k)!} \\ &= -f_{m-1}(x) \end{align*}
が成り立つ。
これを利用し、数学的帰納法で$ (-1)^m \cos{x} \leq (-1)^m f_m(x) $を示す。
(i) $ m = 0 $のとき
$ \text{(左辺)} = \cos{x}, \text{(右辺)} = 1 $であるが、これは$ |e^{ix}| = 1 $から即座に従う。
(ii) $ m = k $で成り立つと仮定して$ m = k + 1 $のとき
$ g_m(x) = (-1)^m f_m(x) - (-1)^m \cos{x} $とおく。このとき、
$ \frac{d^2}{dx^2} g_m(x) = (-1)^{m+1} f_{m-1}(x) - (-1)^{m+1} \cos{x} = g_{m-1}(x) $
であるから、帰納法の仮定より$ x \geq 0 $$ \frac{d^2}{dx^2} g_m(x) \geq 0 $である。また、$ f_m(x) $が偶関数であることと$ \frac{d}{dx}\cos{x}=-\sin{x} $から、$ \left. \frac{d}{dx}g_m(x)\right|_{x=0} = 0 $であり、したがって$ x \geq 0 $$ \frac{d}{dx}g_m(x) \geq 0 $である。さらに、$ g_m(0) = 0 $なので$ g_m(0) $$ x \geq 0 $で単調増加なので$ g_m(x) \geq 0 $がわかる。
よって$ m = k + 1 $でも成り立つことが示されたので、数学的帰納法により定理3が示された。(Q.E.D.)

任意の$ 0 $以上の整数$ n $と実数$ x \geq 0 $に対して、
$ \displaystyle \sum_{k=0}^{2n+1} \frac{(-1)^{k} x^{2k+1}}{(2k+1)!} \leq \sin{x} \leq \sum_{k=0}^{2n} \frac{(-1)^{k} x^{2k+1}}{(2k+1)!} $
が成り立つ。

証明: 定理3の$ x $$ t $と置き、両辺を$ 0 $から$ x $まで$ t $で積分することで得られる。

さあ、あとは計算だ!


「このまま$ \sin{4} $を計算してもいいが、$ 7 $次の項ですら分子の$ 4^7 = 16384 $に対し分母が$ 5040 $なのは小さすぎる。指数法則を使って工夫しよう」
$ \sin{2} = 2\cos{1}\sin{1} $はもう示したから、$ \sin{3} $$ \sin{4} $も同じように$ \cos{1} $$ \sin{1} $で表せば精度が出るはず」
\begin{align*} \cos{3} + i \sin{3} &= ( \cos{3} + i \sin{3} )^3 \\ &= (\cos{1})^3 + 3i(\cos{1})^2\sin{1} + 3i^2\cos{1}(\sin{1})^2 + i^3(\sin{1})^3 \\ &= ((\cos{1})^3 - 3\cos{1}(\sin{1})^2) + (3(\cos{1})^2\sin{1} -(\sin{1})^3) i \\ &= (4(\cos{1})^3 - 3\cos{1}) + (3\sin{1} - 4(\sin{1})^3) i \end{align*}
$ \therefore \sin{3} = 3\sin{1} - 4(\sin{1})^3 $
\begin{align*} \cos{4} + i \sin{4} &= ( \cos{4} + i \sin{4} )^4 \\ &= (\cos{1})^4 + 4i(\cos{1})^3\sin{1} + 6i^2(\cos{1})^2(\sin{1})^2 + 4i^3\cos{1}(\sin{1})^3 + i^4(\sin{1})^4 \\ &= ((\cos{1})^4 - 6(\cos{1})^2(\sin{1})^2 + (\sin{1})^4) + (4(\cos{1})^3\sin{1} - 4\cos{1}(\sin{1})^3) i \\ &= (8(\cos{1})^4 - 8\cos{1}^2 + 1) + (4\cos{1}\sin{1} - 8\cos{1}(\sin{1})^3) i \end{align*}
$ \therefore \sin{4} = 4\cos{1}\sin{1} - 8\cos{1}(\sin{1})^3 $
「さあ、あとは計算だ!」
定理3系1に$ n = 1, x = 1 $を代入することで
$ \frac{5}{6} = 1 - \frac{1}{6} < \sin{1} < 1 - \frac{1}{6} + \frac{1}{120} = \frac{5}{6} + \frac{1}{120} $
がわかる。また、定理3に$ n = 2, x = 1 $を代入することで
$ \frac{13}{24} - \frac{1}{720} = 1 - \frac{1}{2} + \frac{1}{24} - \frac{1}{720} < \cos{1} < 1 - \frac{1}{2} + \frac{1}{24} = \frac{13}{24} $
がわかる。
無駄な大小比較を避けるために、近似による簡単な比較を行う。
$ \sin{1} \fallingdotseq \frac{5}{6}, \cos{1} \fallingdotseq \frac{13}{24} $
なので
$ \sin{2} \fallingdotseq 2 \cdot \frac{5}{6} \cdot \frac{13}{24} = \frac{65}{72} $
$ \sin{3} \fallingdotseq 3 \cdot \frac{5}{6} - 4 \cdot \left( \frac{5}{6} \right)^3 = \frac{40}{216} $
$ \sin{4} \fallingdotseq 4 \cdot \frac{13}{24} \cdot \frac{5}{6} - 8 \cdot \frac{13}{24} \cdot \left( \frac{5}{6} \right)^3 = \frac{260 \cdot 36 - 104 \cdot 125}{24 \cdot 6^3} = \frac{-3640}{24 \cdot 6^3} $
そのため$ \sin{4} < \sin{3} < \sin{1} < \sin{2} $と予想できるので、これを証明する。
\begin{align*} \sin{1} &< \frac{5}{6} + \frac{1}{120} \\ &< \frac{5}{6} + \frac{1}{42} \\ &= \frac{6}{7} \end{align*}
\begin{align*} \sin{2} &= 2 \cos{2}\sin{2} \\ &> 2 \cdot \frac{5}{6} \left( \frac{13}{24} - \frac{1}{720} \right)\ \\ &= \frac{65}{72} - \frac{1}{432} \\ &> \frac{64}{72} \\ &= \frac{8}{9} \end{align*}
\begin{align*} \sin{3} &= 3\sin{1} - 4(\sin{1})^3 \\ &< 3 \cdot \left(\frac{5}{6} + \frac{1}{120} \right) - 4 \cdot \left(\frac{5}{6} \right)^3 \\ &= \frac{15}{6} + \frac{1}{40} - \frac{125}{54} \\ &= \frac{10}{54} + \frac{1}{40} \\ &< \frac{18}{54} \\ &= \frac{2}{9} \end{align*}
\begin{align*} \sin{3} &= 3\sin{1} - 4(\sin{1})^3 \\ &> 3 \cdot \frac{5}{6} - 4 \cdot \left(\frac{5}{6} + \frac{1}{120} \right)^3 \\ &= \frac{15}{6} - 4\left(\frac{125}{216} + 3 \cdot \frac{25}{36} \cdot \frac{1}{120} + 3 \cdot \frac{5}{6} \cdot \frac{1}{{120}^2} + \frac{1}{{120}^3} \right) \\ &= \frac{15}{6} - 4\left(\frac{125}{216} + \frac{75}{36} \cdot \frac{1}{120} + \frac{15}{6} \cdot \frac{1}{6 \cdot 20 \cdot 120} + \frac{1}{{(6 \cdot 20)}^3} \right) \\ &> \frac{15}{6} - 4\left(\frac{21}{36} + \frac{1}{36} + \frac{1/120}{36} + \frac{1/(6 \cdot 20^3)}{36} \right) \\ &> \frac{90}{36} - \frac{84}{36} - \frac{4}{36} - \frac{1}{36} - \frac{1}{36} \\ &= 0 \end{align*}
\begin{align*} \sin{4} &= 4\cos{1}\sin{1} - 8\cos{1}(\sin{1})^3 \\ &= 4\cos{1}\sin{1}(1 - 2\sin{1}) \\ &< 4\cos{1}\sin{1}\left(1 - 2 \cdot \frac{5}{6} \right) \\ &< 0 \end{align*}
よって
$ \sin{4} < 0 < \sin{3} < \frac{2}{9} < \frac{5}{6} < \sin{1} < \frac{6}{7} < \frac{8}{9} < \sin{2} $
すなわち
$ \sin{4} < \sin{3} < \sin{1} < \sin{2} $
がわかる。

エピローグ


「オイラーの公式しか知らないけどなんか解けた。さぁ~て、ここからどんな発展をしようかな~」
Nayutaさんは今日も平和です。

投稿日:41
更新日:41

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