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現代数学解説
文献あり

【院試解説】数学教室2027 代トポ(専門科目 問4)

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2027年度の京大数学教室の代トポの問題を解きます.当日の再現答案のつもりで記述まで書きました.

2022年度あたりから典型っぽくない問題が出題される年が増えていて,全体として難化傾向が続いていますが,それを踏まえても驚く程度に著しい難化が起きたように思います.

数学教室'27 専門科目 問4

$S^2 = \{x \in \mathbb{R}^3 \mid \|x\| = 1\}$を単位球面とし、$S^2 \times S^2$の部分空間$E$を
$$ E = \{(x, y) \in S^2 \times S^2 \mid x \cdot y = 0\} $$
とする.

  1. $E$の整数係数ホモロジー群を求めよ.
  2. $\pi : E \to S^2$を$\pi(x, y) = x$で定め、$E \times E$の部分空間$F$を
    $$ F = \{(e_1, e_2) \in E \times E \mid \pi(e_1) = \pi(e_2)\} $$
    で定める.$F$の整数係数ホモロジー群を求めよ.

$E$のホモロジー

考えたこと

個人的には (1) は考えるというより知識を振り回す側面が強い問題だと感じました.

初手で$E \simeq SO(3)$が見えていないとかなり厳しいと思います.内積で束縛された空間が概ね回転の自由度しか持っていないというのはよく見る話なので,この難易度帯の問題を解こうと思うならば知っておくのが好ましいと思います(例えば東大数理'20 B8などでも似たような空間が出題されています).

さらに$SO(3) \simeq \mathbb{R} P^3$を知っていればホモロジーはすぐに求まります.逆にこれを知らないとかなり厳しいと思います.Hatcherに載っているくらいの有名な同相は一通り知っておくべきだと思いました.

この辺りの知識が欠けていた場合にどう解くべきなのかは謎です.例えば$E$が$S^2$上の$S^1$-ファイバー束であることを考えると,$S^2$を二つに分けて Mayer-Vietoris をすれば解けそうにも見えますが,出てくる写像をちゃんと追い切るのは結構大変だと思います.

解答

まず$E \simeq SO(3)$を示す.

写像$f : E \to SO(3)$を
$$ f(x, y) = (x\ \ y\ \ x \times y) \in SO(3) $$
で,写像$g : SO(3) \to E$を標準基底$\{e_i\}$に対して
$$ g(A) = (A e_1, A e_2) $$
(すなわち行列$A$の第1列と第2列を取り出す写像)で定めると、$f, g$はともに連続であって互いに逆なので、$E \simeq SO(3)$である.

つぎに$SO(3) \simeq \mathbb{R} P^3$を示す(以下は Hatcher による証明である.).

$\mathbb{R}^3$の任意の回転は,単位ベクトル$u \in S^2$を回転軸とする角度$\theta \in [0, \pi]$の回転として表せる.そこで,半径$\pi$の閉球体$D^3 = \{v \in \mathbb{R}^3 \mid \|v\| \le \pi\}$から$SO(3)$への写像$\Phi : D^3 \to SO(3)$を,

  • $v = 0$のときは単位行列$I$
  • $v \neq 0$のときは,軸$v / \|v\|$のまわりの角度$\|v\|$の回転

として定める.

このとき$\Phi$はコンパクト→Hausdorff の連続全射なので,$u \sim v$を$\Phi(u) = \Phi(v)$によって定めると$(D^3 / {\sim}) \simeq SO(3)$である.

ここで,$\Phi(u) = \Phi(v)$が成り立つのは$\|u\|=\pi$かつ$u = \pm v$の場合のみである.したがって、$D^3 / {\sim}$は$D^3$の境界上の対蹠点を同一視した空間,つまり$\mathbb{R} P^3$と同相となるから$SO(3) \simeq \mathbb{R} P^3$を得る.

以上より,求めるホモロジー群は
$$ H_k (E; \mathbb{Z}) \simeq H_k (\mathbb{R} P^3; \mathbb{Z}) \simeq \begin{cases} \mathbb{Z} & (k=0, 3) \\ \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} & (k=1) \\ 0 & (\text{otherwise}) \end{cases} $$
である.

補足

$SO(3) \simeq \mathbb{R} P^3$の証明は直感的であまり厳密でない書き方をしていますが,ここで大きく減点されることはないと思ったので本番も同じような丁寧さで書きました.厳密性を意識したいのであれば四元数体$\mathbb{H}$の単位球面として$S^3$をとって,上手い方法でリー群準同型$S^3 \to SO(3)$を構成すると核が$\{\pm 1\}$の全射になるので準同型定理から従うという方針が厳密に書きやすい気がしますが,ちゃんと構成を書こうと思うと大変だと思いました.準同型の構成は quotanion などを見るとわかると思います.

$F$のホモロジー群

考えたこと

まず,空間に直感が生えていないと考えようがないので,少し$F$とにらめっこをします.これはすなわち$S^2$上の点$x$と,$x$に直交する二点$y_1, y_2$の組からなる空間です.$y$の自由度が$S^1$の分だけあることに注意すると,要するに$S^2$の各点にトーラスが乗ったような束に思えます.

はじめはここから考えようと思いましたが,しかし$S^1$-ファイバーの$E$ですら$E \simeq SO(3)$を使わずにファイバー構造から調べようと思うとかなり大変なのにトーラスファイバーを調べ切れる気がしません.もう少し考察が必要そうです.

ここからはいくつか方針が考えられますが,ここでは(本質的には等価な)二つの方針を挙げておきます.結局のところは$S^2$上の束ではなく$E$上の束と考えると自明束になっているから簡単に計算できるというのが本質パートになっています.

  1. せっかく$E$が群になっているので,群構造を使いましょう(過去問でもときどきリー群で殴れる問題を見かけていたので,困ったときのアイデアとして持っていました).
    まず$\pi: E \to S^2$を$SO(3)$の言葉に翻訳する必要がありますが,これは標準基底$\{e_i\}$を用いて$\pi(A) = A e_1$と表せます.すると$\pi(A) = \pi(B)$という条件は$A^{-1} B e_1 = e_1$となりますが,これは適当な意味で$A^{-1} B \in SO(2)$を意味するので,結局$(A, B)$と$(A, A^{-1} B)$を対応させることで$F \simeq E \times SO(2)$を得ます.これは Künneth の公式で計算できます.

  2. はじめから束$F \to E$を考えましょう.これは主$S^1$-束なので,もし大域切断があれば自明束とわかりますが,これは$e \in E \mapsto (e, e) \in F$とすれば得られます.要するに$(e, f) \in F$に対して$e^{-1} f \in S^1$を与える座標が大域的な自明化になっているということを言っていて,これは 1. における$A^{-1} B$と同じことを考えています.
    言われてみればそれはそうですが,いきなりこの方針に走れる人はとても直感が良い人だけなんじゃないかと思います.

当日は 1. で書いたので,以下の解答も 1. で書きましたが,2. の方がシンプルに書ける気がします.

解答

1.で用いた同相$g: SO(3) \to E, \ g(A) = (A e_1, A e_2)$によって$SO(3)$と$E$を同一視すれば,$\pi' = \pi \circ g: SO(3) \to S^2, \ \pi'(A) = A e_1$を用いて
$$ F' = \{(A, B) \in SO(3) \times SO(3) \mid \pi'(A) = \pi'(B)\} $$
と表される空間のホモロジーを計算する問題に帰着できる.

$$ \begin{aligned} \pi'(A) = \pi'(B) &\iff A e_1 = B e_1 \\ &\iff A^{-1} B e_1 = e_1 \end{aligned} $$
であるが,最後の式は$A^{-1} B$の第1列が$e_1$である,すなわちある$S \in SO(2)$を用いたブロック表示によって
$$ A^{-1} B = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & S \end{pmatrix} $$
と書けることを意味する.これによって$A^{-1} B$を$S$と同一視して$SO(2)$の元と考えることで連続写像$\phi: F' \to SO(3) \times SO(2)$を$\phi(A, B) = (A, A^{-1} B)$と定めよう.これは$(X, Y) \mapsto (X, X Y)$なる連続な逆写像を持つので同相であるから,$F' \simeq SO(3) \times SO(2) \simeq \mathbb{R} P^3 \times S^1$である.

結局求めるものは$\mathbb{R} P^3 \times S^1$のホモロジーであるが,$H_*(S^1; \mathbb{Z})$はトーションを持たないことから Künneth の公式より
$$ \begin{aligned} H_k (\mathbb{R} P^3 \times S^1; \mathbb{Z}) &\simeq \bigoplus_{n+m=k} \left( H_n (\mathbb{R} P^3; \mathbb{Z}) \otimes H_m (S^1; \mathbb{Z}) \right) \\ &\simeq \begin{cases} \mathbb{Z} & (k=0, 3, 4) \\ \mathbb{Z} \oplus (\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}) & (k=1) \\ \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} & (k=2) \\ 0 & (\text{otherwise}) \end{cases} \end{aligned} $$

参考文献

投稿日:8日前
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るさ
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