可換環$R$が次数付き環であるとは、$R$がアーベル群としての直和分解
$$
R=\bigoplus_{d=0}^\infty R_d
$$
をもち、積に関しては$R_d\cdot R_e\subset R_{d+e}$を満たすことをいう。$f\in R_d$のとき、$f$を$R$の$d$次斉次元という。
$R=\bigoplus_{d\ge0}R_d$を次数環とし、$I\subset R$をそのイデアルとする。この$I$が斉次イデアルであるとは、任意の$f\in I$の斉次分解$f=\sum_{d=0}^mf_d$に対して、$f_d\in I(d=0,1,\cdots,m)$が成り立つことである。
次数環$R$のイデアル$I$について、$I$が斉次イデアルであることと、$I=\bigoplus_{d\ge 0}(I\cap R_d)$が成り立つことが同値であることを示せ。
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次数環$R$のイデアル$I$が斉次イデアルとなることは、$I$が斉次元の集合で生成されうることと同値である。
永井[1]の98ページの命題9.3.9参照。
斉次イデアルの和、積、共通部分、根基は再び斉次イデアルになる.
(和)$x+y\in I+J$($x\in I,y\in J$)とする。$x+y=\sum_{d=0}^n(x_d+y_d)$と分解する($x_d\in I\cap R_d$、$y_d\in J\cap R_d$)。よって$x_d+y_d\in (I+J)\cap R_d$である。よって示された。
(積)$x^{(1)}y^{(1)}+\cdots +x^{(n)}y^{(n)}\in IJ$とする($x^{(i)}\in I$、$y^{(i)}\in J $)。例えば、$x^{(1)}y^{(1)}=(\sum_{d=0}^nx^{(1)}_d)(\sum_{e=0}^my^{(1)}_e)=\sum_{l=0}^{m+n}\sum_{d+e=l}(x_d^{(1)}y_e^{(1)})$。ここで、$\sum_{d+e=l}(x_d^{(1)}y_e^{(1)})\in IJ\cap R_l $なので、OK!
(共通部分)$(\bigoplus_{d\ge0}(I\cap R_d))\cap(\bigoplus_{d\ge0}(J\cap R_d))=\bigoplus_{d\ge0}((I\cap J)\cap R_d)$が意味を考えたら成り立つので、OK!
(根基)$x\in \sqrt{I}$とする。$x=\sum_{d=0}^nx_d$と分解する。$x^r=(\sum_{d=0}^nx_d)^r\in I$である。$x^r$の$0$次斉次部分は$x_0^r$であり、$I$が斉次イデアルであることから、$x_0\in\sqrt{I}$である。よって$\sum_{d=1}^nx_d=x-x_0\in\sqrt{I}$である。よって$(x-x_0)^s=(\sum_{d=1}^nx_d)^s\in I$。$(x-x_0)^s$の$s$次斉次部分は$x_1^s$であり、$I$が斉次イデアルであることから、$x_1\in\sqrt{I}$。以下同様にして、$x_d\in I$。よって示された。
$R$を次数付き環とする。斉次イデアル$I$が素イデアルであることの必要十分条件は、任意の斉次元$f,g$について$fg\in I\Rightarrow f\in I$ or $g\in I$が成り立つことは同値である。
必要性は明らか。十分性を示す。
$f,g\in R$について、$f=\sum_{d=0}^nf_d$、$g=\sum_{e=0}^mg_e$と分解する。$fg=(\sum_{d=0}^nf_d)(\sum_{e=0}^mg_e)=\sum_{l=0}^{n+m}\sum_{d+e=l}f_dg_e\in I$。すると、$I$が斉次イデアルであることから、$\sum_{d+e=l}f_dg_e\in I $。ここで、$f,g\notin I$と仮定する(背理法)。この時、$f_i\notin I$、$g_j\notin I$を満たす最小の$i,j$が存在する。すると、$\sum_{d+e=i+j}f_dg_e\in I$において、$(d,e)=(i,j)$以外の項はすべて$I$に入っていることがわかる。よって、$f_ig_j\in I$。これは矛盾。よって示された。
$R^h=\bigcup_{d\ge 0}R_d$とおく.
$\mathfrak{p}$が$R$の斉次素イデアルのとき,$S=\{f\in R^h|f\notin\mathfrak{p}\}$は積閉集合になる.
各々のChatGPTに任せます.
$S$を命題4における$R$の積閉集合としたとき,$S^{-1}R$には自然に$\mathbb{Z}$による次数付けが入る;$\text{deg}(f/g)=\text{deg}(f)-\deg(g)$($f\in R$,$g\in S$).
$R_{(\mathfrak{p})}\coloneqq(S^{-1}R)_0$は極大イデアルが$(\mathfrak{p}\cdot S^{-1}R)\cap R_{(\mathfrak{p})}$で与えられる局所環である.
$\dfrac as\in R_{(\mathfrak{p})}$について$a\in\mathfrak{p}$かどうかは$\dfrac as$の取り方に依らないことがわかる.実際,$\dfrac as=\dfrac{a'}{s'}$ならば,$t\in S$が存在して,$t(as'-a's)=0$となるとき,$a\in\mathfrak{p}$ならば,$ta's\in\mathfrak
p$で,$ts\notin \mathfrak{p}$より$a'\in\mathfrak{p}$.
さて,$a\notin\mathfrak{p}$のとき,$a\in S$.よって$\dfrac as$は可逆.
逆に,$a\in \mathfrak{p}$の時は$\dfrac as$は可逆でない.
以上より,非可逆元全体の集合は$\left\{\dfrac as\in R_{(\mathfrak{p})}\middle|a\in \mathfrak{p}\right\}$とかける.またこれは$\mathfrak{p}$がイデアルなので,明らかにイデアルを成す.これが極大イデアルになっており,$R_{(\mathfrak{p})}$は局所環である.その極大イデアルは命題で与えたとおりになる.
同様に$R$を斉次元$f$で局所化したものの$0$次の所を取ったものを$R_{(f)}$と書く.