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円錐・円柱・平面のみで囲まれた立体の体積を一瞬で求める方法

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受験が一段落ついたので,今回からは入試数学の立体の求積問題で役に立つ知識をいくつか紹介していきます.

概要

円錐面,円柱面,平面のみで囲まれた立体の体積は,ある条件をみたす「良い点」がとれれば,錐体の体積を求めるのと同じ要領で簡単に計算できる.

順を追って説明していきます.まずは錐体についてです.

空間上に点P,平面αα上の面積Sの領域Fをとる.線分PQが動く領域を,Pを頂点,Sを底面とする錐体といい,その体積VPαの距離をhとして
V=13Sh
で与えられる.

角錐や円錐の体積公式を一般化したものです.証明は省略します.
実は,円柱面や円錐面に対しても,点Pがそれらの軸上にあれば同じ式が成立します

空間上に円柱面をとり,その円柱面上の面積Sの領域Fを点Qが動くとき,円柱軸上の点Pに対し,線分PQが動く立体の体積Vは,円柱の半径をhとして,
V=13Sh
で与えられる.

同様に,円錐面上の面積Sの領域Fに対しても,円錐軸上の点PPと母線の距離をhとして,
V=13Sh
が成立する.

面積Sを微小に分割する.微小面積dSの部分を点Qが動くとき,線分PQが通る立体の体積dVは,底面積dS,高さhの錐体の体積に近似できるので
dV=13hdS
よって,
V=13Sh

この事実を踏まえて,次のことが言えます.

円錐面,円柱面,平面のみで囲まれた立体Kがあるとする,点PKをつくる円柱面,円錐面のすべての軸上にあるとき,Pを「良い点」であると呼ぶことにする.

Kに対し良い点Pが取れるとき,Kの体積Vは,Kの表面を構成するすべての面Fに対して,Fを底面,点Pを頂点とする「錐体」の体積の和や差の形で表すことができる.すなわち,それぞれの面の面積をSkPからの距離をhk(k=1,2,,n)として,
V=k=1n±13Skhk

の形で表すことができる.(ただし,各項の符号は点Pの位置に応じて適当に選ぶものとする)

つまりこれらを使うとKの体積Vを求める問題が,Kを構成している面の面積Skを求める問題に変わるわけです.これを試験でうまく利用するには,ある程度空間内での面積の計算量を見積もれる必要があります.
次の事実を踏まえてことをお勧めします.

  • 円柱の平面での切り口は楕円 → 面積計算は楽
  • 円柱面の平面での切り口を展開すると正弦曲線 → 面積計算は楽
  • 円錐の平面での切り口は二次曲線 → 楕円・放物線なら楽.双曲線は面倒.
  • 円錐面上の領域の面積は,それを軸に垂直な平面に正射影することで求められる.

使用例

これを使って入試問題を爆速で回答していきます.まずは1998年の東大の問題です

xyz空間に5点A(1,1,0),B(1,1,0),C(1,1,0),D(1,1,0),P(0,0,3)をとる.四角錐PABCDx2+y21をみたす部分の体積を求めよ.

東大1998[6]

正四角錐から円柱を除いた部分の体積を求める問題です.言うまでもなく,これは5枚の平面と,1つの円柱面で囲まれた立体であり,z軸上の任意の点が良い点になります.このように複数の良い点が取れる場合,Kの表面を構成する多くの面上にあるものを選ぶと計算が楽になります.ここでは,四角錐の頂点Pを良い点として選びます.

解答
この立体は4つの合同な立体からなり,そのうちx0,y0にある部分をK,その体積を14Vとする.Kを構成するxy平面上の面の面積をS1,この面上を点Qが動くとき,線分PQが動く立体をK1,Kを構成する円柱面x2+y2=1上の面の面積をS2,この面上を点Qが動くとき,線分PQが動く立体をK2とする.
KK1からK2を除いた部分の体積なので,Kの体積14Vは,定理1より,
14V=133S1131S2
ここで
S1=14{(ABCD)()}=1π4
また,平面PADを表す式はz=33xであり,Q0(1,0,0),Q(cosθ,sinθ,0),R(cosθ,sinθ,33cosθ)(0θπ4)
とおくと,y=xについての対称性に注意して,
S2=2θ=0θ=π4QRd(Q0Q)=20π4(33cosθ)dθ=32π32
以上より,
14V=(1π4)13(32π32)=1+234π
であるから,求める体積は,
V=4+423πである.
(記述量が多いので少し煩雑に見えるかもしれませんが,計算量はかなり少ないです)

次に,円錐に関する問題です.

xyz空間において,xy平面上の円板x2+y21を底面,P(0,0,1)を頂点とする円錐のうち,xzを満たす部分の体積を求めよ.

名古屋市立大2004(改)

座標軸に垂直に切って断面積を積分しようとすると地獄をみる問題です.(双曲線と直線で囲まれた部分の面積を求め,さらにそれを積分する必要がある).入試では誘導付きで出題されています.z=xと平行な平面で切るのが正攻法です.しかし,これは2枚の平面と1つの円錐面で囲まれた立体なので,瞬時に体積を計算できます.z軸上の任意の点が良い点としてとれるのですが,特に今回の場合は円錐の頂点Pを良い点として選べば,定理1の事実を認めなくても答えを出すことができます.これなら記述用解答としても十分通用するのではないでしょうか.

解答
F1,F2
F1:z=0,x2+y21,x0
F2:z=x,x0,x2+y2(z1)2
とする.F1の面積をS1F2の面積をS2とする.
問題の立体Kは,F1を底面としPを頂点とする錐体から,F2を底面としPを頂点とする錐体を除いた部分なので,Kの体積V
V=131S11312S2
ここでF1は半径1の半円なので,
S1=π2
である.また,F2xy平面への正射影は
x0,x2+y2(x1)2
すなわち,
0x12(1y)(1+y)
であり,この面積の1cos(π4)倍がS2である.1/6公式が使えるので,S2=1cos(π4){1612(1(1))3}=223
よって,
V=131π21312223=π629
[補足]S2をまじめに計算しましたが,一般に放物線とその軸に垂直な直線があるとき,これらで囲まれた面積はそれをちょうど囲むような長方形の面積の23倍になるので,F2xy平面への正射影の式を調べなくとも12S2=231はわかります.

最後に,円柱が複数ある例を見ていきます.

xyz空間において,x2+y21,y2+z21,z2+x21で表される立体Kの体積Vを求めよ.

3つの円柱面で囲まれた立体です.運良く3本の円柱軸が原点Oを通るので,原点Oが良い点となります.

解答
円柱面x2+y2=1のうち,y2+z21,z2+x21を満たす部分をFとし,その面積をSとする.Oを原点とし,F上を点Pが動くとき,線分OPが動く部分をK1とする.Kは,K1と合同な3つの立体からなるので,K1の体積は13Vである.また,定理1より13V=131SV=S
が成り立つ.Sを求める.円柱面x2+y2=1上の点PP(cosθ,sinθ,z)とパラメーター表示する.(0θ2π)
PF上にある条件は,
sin2θ+z21,z2+cos2θ1
すなわち,
|z|min(|sinθ|,|cosθ|)
である.よって,
S=02π2min(|sinθ|,|cosθ|)dθ
三角関数の周期性,対称性,sinθ=cos(π2θ)などから,
S=80π42sinθdθ=1682
以上より,求める体積は
V=1682

いかかでしたでしょうか.立体の体積の求積問題は機械的に計算すれば解けるものが多い反面,計算量が多く検算もしにくい特徴があります.しかし今回のような検算道具をいくつか持っていれば確実に数値を合わせられる問題も多いのではないでしょうか.

次回は,回転軸を含む平面に含まれない平面図形を回転してできる回転体の体積について調べていきます.

投稿日:2023227
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dragoemon
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