2

回転軸を含む平面にない平面図形の回転体の体積を一瞬で求める方法

952
0

今回も,入試数学の立体の求積問題で役立つ知識を紹介します.

今回の記事では線分XYの長さを単にXYで表します.またX=Yのとき線分XYは点Xを表すものとしXY=0とします.

概要

今回紹介するのは,次の事実です.

空間内に直線lと平面αがあり,α上に有界な領域Aがある.
lを含む平面αで,次の条件を満たすようなものをとる.

  • αlが平行なとき,ααと平行
  • αlが平行でないとき,ααの交線がlと垂直

(↑もっと簡潔な表現があったらコメントしてください.これしか思いつかなかった)
このとき,Aαに正射影した領域をAとする.
Alまわりの回転体の体積は,Alまわりの回転体の体積と等しい.

意外な事実に見えますが,少し考えれば大したことはありません.ただし厳密な証明をするのはちょっと面倒なので,今回はlと垂直な平面でのAの切り口が,あれば常に1本の線分である場合に限定します.

lと垂直な平面βにおいて,αの切り口を直線mAの切り口を線分PQとする.定義よりmと直線PQは平行である.lβの交点をO,Oから直線PQに下ろした垂線の足をHとする.また,P,Qからmに下ろした垂線の足をそれぞれP,Qとする.すなわち線分PQは平面βでのAの切り口である.これらに対し,線分PQ,PQOまわりに回転したときにそれぞれの線分が描く図形F,Fの面積S,SS=Sを満たすことを示せば良い.

  1. Hが線分PQ上にある場合
    PHQHであるとして一般性を失わない.
    Fは半径OH,OPの同心円で囲まれた部分であり,Fは半径OPの円板だから,
    S=π(OP2OH2)=πHP2=πOP2=S

  2. Hが線分PQ上にない場合
    Hは半直線PQ上にあるとして一般性を失わない.
    Fは半径OP,OQの同心円で囲まれた部分であり,Fは半径OP,OQの同心円で囲まれた部分だから,
    S=π(OP2OQ2)=π((OH2+HP2)(OH2+HQ2))=π(HP2HQ2)=π(OP2OQ2)=S

以上より,S=Sが成り立つので,定理1は示された.

つまり,回転軸を含む平面にない図形の回転体という特殊な立体を,いつも扱っているであろう平面内での回転体に等積変形できるというわけです.円錐や円柱などに変形できれば積分はいらなくなるし,できなくてもパップス・ギュルダンの定理などの有名な検算道具を使いやすくなります.証明をなぞるのも簡単なので記述でも十分役に立つ内容です(特殊な図形であれば場合分けは起こりませんから)

使用例

xyz空間において,点A(1,0,0),B(0,1,0),C(0,0,1)を通る平面上にあり,正三角形ABCに内接する円板をDとする.Dz軸まわりに回転しでできる立体の体積を求めよ.

筑波大2013[3](改)

解答
ABの中点をM,三角形ABCの内心(=重心)をGとする.Dの半径はGM=13AM=66であり,
Dを平面x+y=0に正射影すると,長半径66,短半径13の楕円になる.定理1よりこれを短軸の周りに回転してできる回転楕円体の体積を求めれば良いので,
43π13(66)2=227π

一辺が1の正四面体OABC(内部を含まない)に対し,Oから底面ABCに下ろした垂線の足をHとする.OABCを直線OHの周りに回転させてできる立体の体積を求めよ.

解答
底面ABCは回転軸と垂直なので三角形ABCが回転してできる立体の体積は0.
よって他の3つの面を回転させた時にできる立体を考えればよいが,対称性よりこれらが通りうる範囲は同一なので,三角形OABが描く部分の体積を求めれば良い.
OHを通りABに平行な平面をαとし,三角形OABαに正射影してできる三角形をOABとする.定理1よりもとめる体積はOABOHまわりの回転体に等しい.これは底面の半径がHA=12,高さがOH=33の円錐なので,
1333π(12)2=336π
投稿日:2023227
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

dragoemon
dragoemon
144
31667
大学3年生です

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中