今回も,入試数学の立体の求積問題で役立つ知識を紹介します.
今回の記事では線分$XY$の長さを単に$XY$で表します.また$X=Y$のとき線分$XY$は点$X$を表すものとし$XY=0$とします.
今回紹介するのは,次の事実です.
空間内に直線$l$と平面$\alpha$があり,$\alpha$上に有界な領域$A$がある.
$l$を含む平面$\alpha'$で,次の条件を満たすようなものをとる.
(↑もっと簡潔な表現があったらコメントしてください.これしか思いつかなかった)
このとき,$A$を$\alpha'$に正射影した領域を$A'$とする.
$A$の$l$まわりの回転体の体積は,$A'$の$l$まわりの回転体の体積と等しい.
意外な事実に見えますが,少し考えれば大したことはありません.ただし厳密な証明をするのはちょっと面倒なので,今回は$l$と垂直な平面での$A$の切り口が,あれば常に1本の線分である場合に限定します.
$l$と垂直な平面$\beta$において,$\alpha'$の切り口を直線$m$,$A$の切り口を線分$PQ$とする.定義より$m$と直線$PQ$は平行である.$l$と$\beta$の交点を$O$,$O$から直線$PQ$に下ろした垂線の足を$H$とする.また,$P,Q$から$m$に下ろした垂線の足をそれぞれ$P',Q'$とする.すなわち線分$P'Q'$は平面$\beta$での$A'$の切り口である.これらに対し,線分$PQ,P'Q'$を$O$まわりに回転したときにそれぞれの線分が描く図形$F,F'$の面積$S,S'$が$S=S'$を満たすことを示せば良い.
点$H$が線分$PQ$上にある場合
$PH\geq QH$であるとして一般性を失わない.
$F$は半径$OH,OP$の同心円で囲まれた部分であり,$F'$は半径$OP'$の円板だから,
$$S=\pi(OP^2-OH^2)=\pi HP^2=\pi OP'^2 = S'$$
点$H$が線分$PQ$上にない場合
$H$は半直線$PQ$上にあるとして一般性を失わない.
$F$は半径$OP,OQ$の同心円で囲まれた部分であり,$F'$は半径$OP',OQ'$の同心円で囲まれた部分だから,
$$S=\pi(OP^2-OQ^2)=\pi((OH^2+HP^2)-(OH^2+HQ^2))=
\\\pi(HP^2-HQ^2) = \pi(OP'^2-OQ'^2) = S'$$
以上より,$S=S'$が成り立つので,定理1は示された.
つまり,回転軸を含む平面にない図形の回転体という特殊な立体を,いつも扱っているであろう平面内での回転体に等積変形できるというわけです.円錐や円柱などに変形できれば積分はいらなくなるし,できなくてもパップス・ギュルダンの定理などの有名な検算道具を使いやすくなります.証明をなぞるのも簡単なので記述でも十分役に立つ内容です(特殊な図形であれば場合分けは起こりませんから)
xyz空間において,点$A(1,0,0),B(0,1,0),C(0,0,1)$を通る平面上にあり,正三角形$ABC$に内接する円板を$D$とする.$D$を$z$軸まわりに回転しでできる立体の体積を求めよ.
一辺が$1$の正四面体$OABC$(内部を含まない)に対し,$O$から底面$ABC$に下ろした垂線の足を$H$とする.$OABC$を直線$OH$の周りに回転させてできる立体の体積を求めよ.