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定数係数線形漸化式の演算子的解法

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読めばわかると思いますがこの記事は微分演算子を参考にして自分なりにまとめたものです。参考程度にお読みください。

演算子Sの導入

San=an+1Skan=an+k(k=0,1,2,)となるように、演算子Sを次のように定義します。

任意の数列{an}0,1,2,に対して、(C0Sk+C1Sk1++Ck1S+Ck)an=C0an+k+C1an+k1++Ck1an+1+Ckanとする。ただしCi(i=0,1,,k)は定数とする。

an+12an=(S2)an
an+2+2an+1+3an=(S2+2S+3)an
an+2+an+1=(S2+S)an=(S+1)an+1
an+kan=(Sk1)an

Sの多項式に対して次の性質が成り立ちます。

基本性質

f(S),g(S)Sの複素係数多項式とする。
𝟙.f(S)(can)=cf(S)an,f(S)(an+bn)=f(S)an+f(S)bn
𝟚.f(S)+g(S)=g(S)+f(S),f(S)g(S)=g(S)f(S)
𝟛.{f(S)±g(S)}an=f(S)an±g(S)an
𝟜.f(S){g(S)an}={f(S)g(S)}anが成り立つ。

𝟙,𝟚,𝟛は省略。
𝟜はf(S)=i=0kCiSi(CiC(i=0,1,,k))として、{(Sλ)f(S)}an=(Sλ){f(S)an}(λC)を示せばよい。
{(Sλ)f(S)}an={(Sλ)i=0kCiSi}an=(i=0kCiSi+1λi=0kCiSi)an=i=0kCian+i+1λi=0kCian+i=(Sλ)(i=0kCian+i)=(Sλ){i=0kCiSian}=(Sλ){f(S)an}


Δ=S1と定義すると数列{Δan}は数列{an}の階差数列になります。

パスカルの三角形 パスカルの三角形

このように何回も階差を取り続けるとパスカルの三角形が現れますが、(S1)kを展開してるだけと思えば当たり前です。

定数係数同次線形漸化式の解法その1

漸化式f(S)an=g(n)が与えられたとき、g(n)=0なら同次漸化式、g(n)0なら非同次漸化式と呼ぶことにします。

ここで、fk次の多項式ならこの漸化式を満たす数列{an}0,1,2,ai(i=0,1,,k1)を与えれば一意に定まるのでこれらが各々実数値を動くときの漸化式f(S)an=g(n)を満たす数列{an}0,1,2,全体の集合を漸化式f(S)an=g(n)の解と呼ぶことにします。

そして、解が{h(n,C1,C2,,Ck)|CiC(i=1,2,,k)}であるとき、一般解はan=h(n,C1,C2,,Ck)(Ci(i=1,2,,k)は任意定数)であるともいうことにし、漸化式f(S)an=g(n)の解の要素を漸化式f(S)an=g(n)の特殊解と呼ぶことにします。

隣接2項間漸化式an+1=λan+f(n)(λC\{0})の解

f(n)=0のとき

an+1=λanなのでa0=C(Cは任意定数)とすると、一般解はan=Cλnになります。

λ=1のとき

an+1=an+f(n)なのでa0=C(Cは任意定数)とすると、一般解はan=C+k=0n1f(k)(n1)となります。

an+1=λan+f(n)の解

an+1=λan+f(n)an+1λn+1=anλn+f(n)λn+1Δanλn=f(n)λn+1anλn=C+k=0n1f(k)λk+1an=Cλn+k=0n1λnk1f(k)
よって

λ0とする。漸化式an+1=λan+f(n)の一般解は
 an=Cλn+k=0n1λnk1f(k)ただしCは任意定数で、n1とする。

が成り立ちます。

隣接3項間漸化式an+2+pan+1+qan=0(p,qC)の解

3項間漸化式なのでq0とします。
λ2+pλ+q=0の解をλ=α,βとすると、α0かつβ0であり、
(Sα)(Sβ)an=0(Sβ)an=1Sα0(Sβ)an=Cαnan=1Sβ(Cαn)an=Cβn+Cβn1k=0n1(αβ)nan={C0αn+C1βn(αβ)(C2+C3n)αn(α=β)
ただしC0=Cαβ,C1=CC0,C2=C,C3=Cαとおいた。

漸化式(Sα)(Sβ)an=0の一般解は
 an={C0αn+C1βn(αβ)(C2+C3n)αn(α=β)ただしC0,C1,C2,C3は任意定数

4項間以上のときも同様にすれば解を求めることができますが場合分けが少々面倒です。特殊解を使うともう少し簡単にできます。

特殊解を使った非同次線形漸化式の解法

漸化式an+1=pan+qを解くとき、x=px+qを満たすxを求めて辺々引いて(an+1x)=p(anx)としました。この操作の利点は邪魔な定数qが消えて等比数列に帰着することでした。

いま、非同次線形漸化式f(S)an=g(n)(1)が与えられていて、f(S)an=0の一般解Gn(これを同次解と呼ぶことにします)がわかっているとします。ただしf(S)は多項式です。特殊解をan=P(n)とおくとf(S)P(n)=g(n)(2)であるので、式(1),(2)で辺々引いてf(S)anf(S)P(n)=0すなわちf(S){anP(n)}=0となります。特殊解を用いることで邪魔だったg(n)が消えて非同次漸化式を同次漸化式に帰着させることができました。よって、漸化式f(S)an=g(n)の一般解は
anP(n)=Gnan=P(n)+Gn
となります。特殊解と同次解の和です。


隣接3項間漸化式

αβとする。(Sβ)an=Cαnの特殊解としてαnの定数倍が思いつくと思います。an=C0αnとしてみると(Sβ)an=(C0αC0β)αnとなるので、C0=Cαβとするとan=C0αnが特殊解になります。同次解はC1βnであるので解はan=C0αn+C1βnとなります。

命題2の別証明

an=k=0n1λnk1f(k)とすると
(Sλ)an=k=0nλnkf(k)λk=0n1λnk1f(k)=(f(n)+k=0n1λnkf(k))k=0n1λnkf(k)=f(n)
であるから、これは特殊解である。同次解はCλnであるから、
漸化式an+1=λan+f(n)の一般解は
an=Cλn+k=0n1λnk1f(k)

例2で急に特殊解を思いついていますが、次の事実によるものです。

f(S)は多項式で、f(λ)0とする。漸化式f(S)an=λnに対して、
an=1f(λ)λn
は特殊解である。

f(S)=i=0kciSiとおくと
f(S)λn=(i=0kciSi)λn=i=0kciλn+i=(i=0kciλi)λn=f(λ)λn
となるから、
f(S)(1f(λ)λn)=1f(λ)f(S)λn=1f(λ)f(λ)λn=λn

特殊解を分解して考えることもできます。

f(S)を多項式とし、Ci(i=1,2,,k)を定数とする。漸化式
f(S)an=C1g1(n)+C2g2(n)++Ckgk(n)の特殊解の1つP(n)は、f(S)an=gi(n)(i=1,2,,k)の特殊解をan=Pi(n)とすると
P(n)=C1P1(n)+C2P2(n)++CkPk(n)で与えられる。

f(S)Pi(n)=gi(n)(i=1,2,,k)
であるから、
f(S)(i=1kCiPi(n))=i=1kCif(S)Pi(n)=i=1kCigi(n)

漸化式(Sγ)an=C0αn+C1βn(αγ,βγ)の同次解はC2γnで、(Sγ)an=αn,(Sγ)an=βnの特殊解の1つとしてそれぞれ1αγαn,1βγβnが取れるので、一般解は an=C3αn+C4βn+C2γnである。ただしC3=C0αγ,C4=C1βγとおいた。

定数係数同次線形漸化式の解法その2

特性方程式

f(S)を多項式とする。漸化式
f(S)an=0
に対して、方程式
f(λ)=0
をこの漸化式の特性方程式という。

x=px+q

僕が持っている参考書の中には、an+1=pan+qに対してx=px+qを特性方程式という、と書かれているものがありましたが2項間のときだけ定義を変えるのも変なので、ここではx=px+qは特性方程式と呼ばないことにします。(高校の教科書を確認したところ、そもそも特性方程式という言葉は出てきていませんでした。)

特性方程式が重解を持たない場合

例4では特性方程式が重解を持たないような定数係数隣接4項間同次線形漸化式の一般解を求めています。

例4のように補題3と補題4を使うことで、特性方程式が重解を持たないようなような定数係数隣接k項間同次線形漸化式の一般解なら求めることができます。

f(S)は重根を持たないk次多項式とする。方程式f(λ)=0の異なるk個の解をλ=λi(i=1,2,,k)とすると、漸化式f(S)an=0の一般解は
an=C1λ1n+C2λ2n++Ckλkn
である。Ci(i=1,2,,k)は任意定数とする。

全ての自然数kで成り立つことを数学的帰納法で示す。
[1]k=1の場合は前に証明しているので省略します。
[2]k=m(m1)で成り立つと仮定すると、
 (Sλ1)(Sλ2)(Sλm)an=0の一般解は
an=C1λ1n+C2λ2n++Cmλmnであるから、
 (Sλ1)(Sλ2)(Sλm)(Sλm+1)an=0
(Sλm+1)an=C1λ1n+C2λ2n++Cmλmn(A)
と変形できる。同次解はCm+1λm+1nである。
補題3から、(Sλm+1)an=λin(i=1,2,,m)の特殊解は
 an=1λiλm+1λinで与えられるから、補題4より(A)の一般解は
an=C1λ1n+C2λ2n++Cmλmn+Cm+1λm+1n(Ci=Ciλiλm+1)
である。よってk=m+1でも成り立つ。
[1],[2]より、全ての自然数kで成り立つ。

途中で1λiλm+1が出てきているのでf(S)が重解を持つときは残念ながらこの方法は使えません。

特性方程式が重解を持つ場合

まずは次の等式を証明します。(Δ=S1です。)

kは自然数の定数とする。
(Sλ)kan=λn+kΔk(λnan)ただしλ0とする。

二項係数は(nk) (=nCk)で書きます。
(Sλ)kan=i=0k(ki)(λ)kiSian=i=0k(ki)(1)kiλkian+i=λn+ki=0k(ki)(1)kian+iλn+i=λn+ki=0k(ki)(1)kiSianλn=λn+k(S1)kanλn=λn+kΔk(λnan)

これを使って(Sλ)kan=0の一般解を求めると、
(Sλ)kan=0λn+kΔk(λnan)=0Δk(λnan)=0
であるので
Δk1(λnan)=C0Δk2(λnan)=C1+C2n
λnan=C0+C1n+C2n2++Ck1nk1)an=(C0+C1n+C2n2++Ck1nk1)λn

ここで、命題2とi=0niknk+1次式で表されることを用いています。また、その式はn=0を代入すると0になるので、n=0のときも成り立ちます。

よって、

kは自然数の定数とする。漸化式(Sλ)kan=0の一般解は
an=(C0+C1n+C2n2++Ck1nk1)λn
ただしλ0であり、Ci(i=0,1,,k1)は任意定数とする。


そして、次が成り立ちます。

λ0,1とし、漸化式(Sλ)man=0の解をG(λ,m)とする。任意のf(n)G(λ,m)に対して、漸化式Δkan=f(n)の特殊解であってG(λ,m)に属するものがただ1つ存在し、逆に、任意のg(n)G(λ,m)に対してΔkg(n)G(λ,m)となる。

g(n)G(λ,m)ならばg(n)=(C0+C1n+C2n2++Cm1nm1)λnとおけて、
 Δg(n)=(C0+C1(n+1)+C2(n+1)2++Cm1(n+1)m1)λn+1(C0+C1n+C2n2++Cm1nm1)λn=(C0λC0+C1λ(n+1)C1n+C2λ(n+1)2C2n2++Cm1λ(n+1)m1Cm1(n+1)m1)λn
であるので、常にΔg(n)G(λ,m)
また、i次の係数はCj(j=i,i+1,,m1)で表されるので、任意のf(n)G(λ,m)Δg(n)=f(n)となるような定数Ci(i=0,1,,k1)は一意に決定される。
これをk回繰り返せば、題意が従う。

これで準備は整いました。

kは自然数の定数とする。漸化式
(Sλ1)m1(Sλ2)m2(Sλk)mkan=0の一般解は
an=i=1k(λinj=0mi1Ci,jnj)
である。ただしλi(i=1,2,,k)は0でない相異なる実数であり、mi(i=1,2,,k)は正の整数であり、Ci,jは任意定数とする。

全ての自然数kで成り立つことを数学的帰納法で示す。
[1]k=1のときは補題7より成立する。
[2]k=N(1)で成り立つと仮定すると、
(Sλ1)m1(Sλ2)m2(SλN)mNan=0の一般解はan=i=1N(λinj=0mi1Ci,jnj)であるから、(Sλ1)m1(Sλ2)m2(SλN)mN(SλN+1)mN+1an=0(B)(SλN+1)mN+1an=i=1N(λinj=0mi1Ci,jnj)と変形できる。これの同次解はλN+1nj=0mN+11CN+1,jnjである。
ここで、(SλN+1)mN+1an=λinj=0mi1Ci,jnj(i=1,2,,m)(C)は補題6よりλN+1n+mN+1ΔmN+1(λN+1nan)=λinj=0mi1Ci,jnjΔmN+1(λN+1nan)=λN+1mN+1(λiλN+1)nj=0mi1Ci,jnj(D)と変形でき、補題7より、漸化式(Sλ)man=0の一般解をan=g(λ,m)とすると、g(λiλN+1,mi)=(λiλN+1)nj=0mi1Ci,jnjであるので、ΔmN+1(λN+1nan)=g(λiλN+1,mi)(E)
よって補題8より、(E)の特殊解であってG(λiλN+1,mi)に属するものが存在するから、適切に定数Ci,jを取って、λN+1nan=(λiλN+1)nj=0mi1Ci,jnjとすれば、これは(E)を満たす。また、補題8より、Ci,jは任意定数としてよい。
ゆえに、λinj=0mi1Ci,jnjが(C)の特殊解となるので、補題4より、i=1N(λinj=0mi1Ci,jnj)は(B)の特殊解となるから、(B)の一般解は、an=λN+1nj=0mN+11CN+1,jnj+i=1N(λinj=0mi1Ci,jnj)である。
CN+1,j=CN+1,jとおけば、an=i=1N+1(λinj=0mi1Ci,jnj)よってk=N+1でも成り立つ。
[1],[2]より、全ての自然数kで成り立つ。

これですべての定数係数隣接k項間同次線形漸化式の一般解を求めることができるようになりました!

命題9でmi=1(i=1,2,,k)とすると、
(Sλ1)(Sλ2)(Sλk)an=0の一般解は
an=i=1kCiλin
となり、これは命題5の結果と一致する。

漸化式(Sα)p(Sβ)qan=0(αβp,qは正の整数)の一般解は
an=(C1,0+C1,1n++C1,p1np1)αn+(C2,0+C2,1n++C2,q1nq1)βnである。


2005年の東京医科歯科大学の数学入試問題の第1問(2)です。

(2)次のように定義される数列{bn}の一般項を求めよ。
b1=2,b2=52,b3=174
bn=72bn172bn2+bn3(n=4,5,6,)

まず一般解を求めます。

bn=72bn172bn2+bn3bn+372bn+2+72bn+1bn=0(S372S2+72S1)bn=0(S12)(S1)(S2)bn=0bn=C1(12)n+C2+C32n
ここでC1,C2,C3は定数とする。

次に初期条件から一般項を求めます。

b1=2,b2=52,b3=174より、
{12C1+C2+2C3=214C1+C2+4C3=5218C1+C2+8C3=174 
これを解いて、C1=2,C2=0,C3=12
よって、bn=(12)n1+2n1


非同次の線形漸化式を解くには特殊解を1つ見つける必要がありますが、その詳しい求め方に関しては、また時間のあるときに調べてみようと思います。

投稿日:2023315
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オミクロン株出てくる前からこの名前でした。

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  7. 特性方程式が重解を持たない場合
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