読めばわかると思いますがこの記事は微分演算子を参考にして自分なりにまとめたものです。参考程度にお読みください。
演算子の導入
やとなるように、演算子を次のように定義します。
の多項式に対して次の性質が成り立ちます。
と定義すると数列は数列の階差数列になります。
パスカルの三角形
このように何回も階差を取り続けるとパスカルの三角形が現れますが、を展開してるだけと思えば当たり前です。
定数係数同次線形漸化式の解法その1
漸化式が与えられたとき、なら同次漸化式、なら非同次漸化式と呼ぶことにします。
ここで、が次の多項式ならこの漸化式を満たす数列はを与えれば一意に定まるのでこれらが各々実数値を動くときの漸化式を満たす数列全体の集合を漸化式の解と呼ぶことにします。
そして、解がであるとき、一般解は(は任意定数)であるともいうことにし、漸化式の解の要素を漸化式の特殊解と呼ぶことにします。
隣接2項間漸化式の解
のとき
なので(は任意定数)とすると、一般解はになります。
のとき
なので(は任意定数)とすると、一般解はとなります。
の解
よって
とする。漸化式の一般解は
ただしは任意定数で、とする。
が成り立ちます。
隣接3項間漸化式の解
3項間漸化式なのでとします。
の解をとすると、かつであり、
ただしとおいた。
4項間以上のときも同様にすれば解を求めることができますが場合分けが少々面倒です。特殊解を使うともう少し簡単にできます。
特殊解を使った非同次線形漸化式の解法
漸化式を解くとき、を満たすを求めて辺々引いてとしました。この操作の利点は邪魔な定数が消えて等比数列に帰着することでした。
いま、非同次線形漸化式が与えられていて、の一般解(これを同次解と呼ぶことにします)がわかっているとします。ただしは多項式です。特殊解をとおくとであるので、式(1),(2)で辺々引いてすなわちとなります。特殊解を用いることで邪魔だったが消えて非同次漸化式を同次漸化式に帰着させることができました。よって、漸化式の一般解は
となります。特殊解と同次解の和です。
隣接3項間漸化式
とする。の特殊解としての定数倍が思いつくと思います。としてみるととなるので、とするとが特殊解になります。同次解はであるので解はとなります。
命題2の別証明
とすると
であるから、これは特殊解である。同次解はであるから、
漸化式の一般解は
例2で急に特殊解を思いついていますが、次の事実によるものです。
は多項式で、とする。漸化式に対して、
は特殊解である。
特殊解を分解して考えることもできます。
を多項式とし、を定数とする。漸化式
の特殊解の1つは、の特殊解をとすると
で与えられる。
漸化式の同次解はで、の特殊解の1つとしてそれぞれが取れるので、一般解はである。ただしとおいた。
定数係数同次線形漸化式の解法その2
特性方程式
を多項式とする。漸化式
に対して、方程式
をこの漸化式の特性方程式という。
僕が持っている参考書の中には、に対してを特性方程式という、と書かれているものがありましたが2項間のときだけ定義を変えるのも変なので、ここではは特性方程式と呼ばないことにします。(高校の教科書を確認したところ、そもそも特性方程式という言葉は出てきていませんでした。)
特性方程式が重解を持たない場合
例4では特性方程式が重解を持たないような定数係数隣接4項間同次線形漸化式の一般解を求めています。
例4のように補題3と補題4を使うことで、特性方程式が重解を持たないようなような定数係数隣接項間同次線形漸化式の一般解なら求めることができます。
は重根を持たない次多項式とする。方程式の異なる個の解をとすると、漸化式の一般解は
である。は任意定数とする。
全ての自然数で成り立つことを数学的帰納法で示す。
[1]の場合は前に証明しているので省略します。
[2]で成り立つと仮定すると、
の一般解は
であるから、
は
と変形できる。同次解はである。
補題3から、の特殊解は
で与えられるから、補題4よりの一般解は
である。よってでも成り立つ。
[1],[2]より、全ての自然数で成り立つ。
途中でが出てきているのでが重解を持つときは残念ながらこの方法は使えません。
特性方程式が重解を持つ場合
まずは次の等式を証明します。(です。)
これを使っての一般解を求めると、
であるので
ここで、命題2とはの次式で表されることを用いています。また、その式はを代入すると0になるので、のときも成り立ちます。
よって、
は自然数の定数とする。漸化式の一般解は
ただしであり、は任意定数とする。
そして、次が成り立ちます。
とし、漸化式の解をとする。任意のに対して、漸化式の特殊解であってに属するものがただ1つ存在し、逆に、任意のに対してとなる。
ならばとおけて、
であるので、常に
また、次の係数はで表されるので、任意のでとなるような定数は一意に決定される。
これを回繰り返せば、題意が従う。
これで準備は整いました。
は自然数の定数とする。漸化式
の一般解は
である。ただしは0でない相異なる実数であり、は正の整数であり、は任意定数とする。
全ての自然数で成り立つことを数学的帰納法で示す。
[1]のときは補題7より成立する。
[2]で成り立つと仮定すると、
の一般解はであるから、はと変形できる。これの同次解はである。
ここで、は補題6よりと変形でき、補題7より、漸化式の一般解をとすると、であるので、
よって補題8より、の特殊解であってに属するものが存在するから、適切に定数を取って、とすれば、これは(E)を満たす。また、補題8より、は任意定数としてよい。
ゆえに、が(C)の特殊解となるので、補題4より、は(B)の特殊解となるから、(B)の一般解は、である。
とおけば、よってでも成り立つ。
[1],[2]より、全ての自然数で成り立つ。
これですべての定数係数隣接項間同次線形漸化式の一般解を求めることができるようになりました!
命題9でとすると、
の一般解は
となり、これは命題5の結果と一致する。
2005年の東京医科歯科大学の数学入試問題の第1問(2)です。
まず一般解を求めます。
ここでは定数とする。
次に初期条件から一般項を求めます。
より、
これを解いて、
よって、
非同次の線形漸化式を解くには特殊解を1つ見つける必要がありますが、その詳しい求め方に関しては、また時間のあるときに調べてみようと思います。