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約数に関する研究2 負の約数を根にもつ多項式について

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記事が長すぎて,上手くまとまってない可能性が高いです.すみません.
また,これをテーマにした研究はまだ終わっていないので,これからもさらに記事が長くなると思われます.ご理解ください.

今回は自然数nの負の約数を根に持つ高次多項式を中心に記事を書いていこうと思います.

σk(n)=d|n,0<ddk

 fn(x)=d|n,0<d(x+d)

cn(k)を以下を満たすようにとる.
 fn(x)=k=0σ0(n)cn(k)xk

 k=0σ0(n)(1)kcn(k)σk(n)=0

定義2からdnの正の約数とすると fn(d)=0が成立する.よって,
d|n,0<dfn(d)=0
となり,

d|n,0<dfn(d)=d|n,0<dk=0σ0(n)cn(k)(d)k=k=0σ0(n)cn(k)(1)kd|n,0<ddk=k=0σ0(n)(1)kcn(k)σk(n)

より,
 k=0σ0(n)(1)kcn(k)σk(n)=0

 cn(k)=lcm(d1,d2,,dσ0(n)k)|n,0<d1<d2<<dσ0(n)kd1d2dσ0(n)k
ただし,cn(σ0(n))=1.

定義2において右辺の展開を考えると,cn(k)σ0(n)k個の互いに異なるnの正の約数の積の総和だとわかる.

cn(k)σ0(n)Cknσ0(n)k2

まず次の二つの値を求める.
(1)
lcm(d1,d2,,dσ0(n)k)|n,0<d1<d2<<dσ0(n)k1= ?
前で説明したように,cn(k)σ0(n)k個の互いに異なるnの正の約数の積の総和を計算しているため,σ0(n)個の中からσ0(n)k個を取る取り方に等しくなる.ゆえに
lcm(d1,d2,,dσ0(n)k)|n,0<d1<d2<<dσ0(n)k1=σ0(n)Cσ0(n)k=σ0(n)Ck
となる.

  1. lcm(d1,d2,,dσ0(n)k)|n,0<d1<d2<<dσ0(n)kd1d2dσ0(n)k= ?
    普通に式変形していく.
    lcm(d1,d2,,dσ0(n)k)|n,0<d1<d2<<dσ0(n)kd1d2dσ0(n)k=lcm(d1,d2,,dσ0(n)k)|n,0<d1<d2<<dσ0(n)knd1nd2  ndσ0(n)k=lcm(d1,d2,,dσ0(n)k)|n,0<d1<d2<<dσ0(n)knσ0(n)kd1d2dσ0(n)k=n(σ0(n)k)σ0(n)Ck(lcm(d1,d2,,dσ0(n)k)|n,0<d1<d2<<dσ0(n)kd1d2dσ0(n)k)1(lcm(d1,d2,,dσ0(n)k)|n,0<d1<d2<<dσ0(n)kd1d2dσ0(n)k)2=n(σ0(n)k)σ0(n)Ck lcm(d1,d2,,dσ0(n)k)|n,0<d1<d2<<dσ0(n)kd1d2dσ0(n)k=nσ0(n)k2σ0(n)Ck

これで準備が整った.
lcm(d1,d2,,dσ0(n)k)|n,0<d1<d2<<dσ0(n)k1=a , lcm(d1,d2,,dσ0(n)k)|n,0<d1<d2<<dσ0(n)kd1d2dσ0(n)k=b
とおけば相加相乗平均の関係から,

        cn(k)a ba=σ0(n)Ck nσ0(n)k2σ0(n)Ckσ0(n)Ck=σ0(n)Cknσ0(n)k2cn(k)σ0(n)Cknσ0(n)k2

をえる.

 a=1すなわち k=0,σ0(n)またはn=1のときのみ等号になることがすぐにわかるはずです.

x0のとき
 fn(x)(n+x)σ0(n)

定義3と定理3から,

 fn(x)=k=0σ0(n)cn(k)xkk=0σ0(n)σ0(n)Ck nσ0(n)k2xk=k=0σ0(n)σ0(n)Ck (n)σ0(n)kxk=(n+x)σ0(n)

cn(σ0(n)k)=nkσ0(n)2cn(k)

定理2から,dnの正の約数ならndnの正の約数であるから,

cn(k)=lcm(d1,d2,,dσ0(n)k)|n,0<d1<d2<<dσ0(n)kd1d2dσ0(n)k1 nσ0(n)kcn(k)=lcm(d1,d2,,dσ0(n)k)|n,0<d1<d2<<dσ0(n)k1d1d2dσ0(n)knσ0(n)2nσ0(n)kcn(k)=lcm(d1,d2,,dk)|n,0<d1<d2<<dkd1d2dknkσ0(n)2cn(k)=cn(σ0(n)k)

これはcn(k)が半分わかれば全てわかるということを意味していて驚異的です.とても美しい関係で個人的に気に入っています.

 fn(nx)=(nx)σ0(n)fn(x)
が成立する.

定義3から

1xσ0(n)fn(x)=1xσ0(n)k=0σ0(n)cn(k)xk=k=0σ0(n)cn(k)xkσ0(n)=k=0σ0(n)cn(σ0(n)k)xk=k=0σ0(n)nkσ0(n)2cn(k)xk=nσ0(n)2k=0σ0(n)cn(k)(nx)k=nσ0(n)2fn(nx)fn(nx)=(nx)σ0(n)fn(x)

こちらもかなり直観に反する結果です.xnの約数のときに特に威力を発揮するでしょう.

cn(k)=1k!fn(k)(0)

定義3から
cn(0)=fn(0)cn(1)=fn(0)cn(2)=12fn(0)           cn(k)=1k!fn(k)(0)
と書ける.

新しく関数を定義します.

 Sn(N)=k=1Nfn(k)

Dirichletの畳み込み積

fg(n)=d|n,0<df(d)g(nd)

g(n)=1のときは関数fを変換しているとみなしてDfと書くことにします.

Df(n)=f1(n)=d|n,0<df(d)

(このときの変換Dをメビウス変換というらしいです.)

いくつか例を出しましょう.

f(n)=1のとき
Df(n)=d|n,0<d1=σ0(n)

f(n)=nkのとき
Df(n)=d|n,0<ddk=σk(n)

f(n)=φ(n)のとき(φはオイラー関数)
Df(n)=d|n,0<dφ(d)=n

fg(n)=gf(n)

fg(n)=d|n,0<df(d)g(nd)=d|n,0<df(nd)g(d)=gf(n)

f(n)=μ(Df)(n)
ここで関数μはメビウス関数.

メビウス反転公式から明らか.

φ(n)=μId
ここでIdは恒等写像Id(n)=n

定理8f(n)=φ(n)とおけば,例3から導出できる.

 Sn(N)N fn(N!N)

 Sn(N)=k=1Nfn(k)=k=1Ni=0σ0(n)cn(i)ki=i=0σ0(n)cn(i)k=1Nkii=0σ0(n)cn(i)N k=1NkiN=Ni=0σ0(n)cn(i)(N!N)i=N fn(N!N)

よって
 Sn(N)N fn(N!N)
をえる.

Dfn(n)(n+n)σ0(n)+(n+1)σ0(n)+2σ0(n)(σ0(n)2)nσ0(n)2

Dfn(n)=d|n,0<dfn(d)=d|n,0<dk=0σ0(n)cn(k)dk=k=0σ0(n)cn(k)d|n,0<ddk=k=0σ0(n)cn(k)σk(n)k=0σ0(n)σ0(n)Cknσ0(n)k2(nk+1+(σ0(n)2)nk2)=nσ0(n)2k=0σ0(n)σ0(n)Cknk2+nσ0(n)2k=0σ0(n)σ0(n)Cknk2+(σ0(n)2)nσ0(n)2k=0σ0(n)σ0(n)Ck=(n+n)σ0(n)+(n+1)σ0(n)+2σ0(n)(σ0(n)2)nσ0(n)2

fの添え字のnと引数のnは指している箇所が違う.

Dfn(n)fn(nn)+nσ0(n)2(σ0(n)1)nσ0(n)2σ1(n)(nσ1(n))

途中までは命題11の証明と同じ.
Dfn(n)=d|n,0<dfn(d)=d|n,0<dk=0σ0(n)cn(k)dk=k=0σ0(n)cn(k)d|n,0<ddk=k=0σ0(n)cn(k)σk(n)=cn(0)σ0(n)+cn(1)σ1(n)+k=2σ0(n)cn(k)σk(n)cn(0)σ0(n)+cn(1)σ1(n)+k=2σ0(n)cn(k)n32k=cn(0)(σ0(n)1)+cn(1)(σ1(n)nn)+k=0σ0(n)cn(k)n32k=cn(0)(σ0(n)1)+cn(1)(σ1(n)nn)+fn(nn)
ここで,定理2と定理5から
cn(0)=nσ0(n)2 , cn(1)=nσ0(n)21cn(σ0(n)1)=nσ0(n)2σ1(n)
であるから
Dfn(n)fn(nn)+nσ0(n)2(σ0(n)1)nσ0(n)2σ1(n)(nσ1(n))
となる.

Sn(n)Dfn(n)

命題11の証明から,
Dfn(n)=k=0σ0(n)cn(k)σk(n)
また,命題10の証明から
Sn(n)=i=0σ0(n)cn(i)k=1nkik=0σ0(n)cn(k)d|n,0<ddk=k=0σ0(n)cn(k)σk(n)
であるから,
Sn(n)Dfn(n)
をえる.

fn1fn(n)=nσ0(n)2σσ0(n)(n)

定理6から
fn1fn(n)=d|n,0<dfn(d)fn(nd)=d|n,0<d(dn)σ0(n)=nσ0(n)2σσ0(n)(n)=nσ0(n)2σσ0(n)(n)

ここまで読んでいただきありがとうございます.

投稿日:202349
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約数関数、数列関係の記事を中心に書いていきます。 記事の内容に間違いがあれば教えてくれるとありがたいです。

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