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高校数学解説
文献あり

双曲線関数の無限積の高校範囲での証明(論文の要旨)

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以下の$\sinh$ の無限積は,以下のように高校範囲で証明することができる.

$$\frac{e^{\pi x}-e^{-\pi x}}{2} =\pi x \lim_{n \to \infty} \prod^{n}_{k=1} (1+\frac{x^2}{k^2})$$

詳しく書けば長くなるので,以下に証明のプロットのみを示す.興味のあるかたは実際に手を動かして計算してみてほしい.なお,以下の証明はDavid Salwinski氏が2018年にThe College Mathematics Journalに公開したものである.

(i)$\displaystyle a_n = \int^{\frac{\pi}{2}}_{0} \cos^n x dx $とおいたとき,漸化式$a_{n+2} = \dfrac{n+1}{n+2} a_n$が成り立つことを示す.

(ii)被積分関数に注目したときに導かれる漸化式$a_{n+1} a_n< a_n^2 < a_{n-1} a_n$と,$na_na_{n-1}$$n$によらない定数になるという事実および(i)の
漸化式を用いて.$\displaystyle \frac{\pi}{2n+2} < a_n^2 < \frac{\pi}{2n}$が成り立つことを示す

(iii)不等式$x < \tan x$および,等式$1+\tan^2t=\dfrac{1}{\cos^2 x}$$0 < x < \dfrac{\pi}{2}$で成り立つことから得られる,$t \in [0, \pi/2)$において成り立つ不等式$\cos t < (1+t^2)^{-\frac{1}{2}}$を示す.

(iv)$f$$[0, \pi/2]$上連続であり,「$[0, \pi/2]$上にある任意の実数$t$に対して$|f(t)-f(0)| \leq Mt$となる」ような正の実数$M$が存在するような関数とするとき,$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{1}{I_n} \int^{\frac{\pi}{2}}_{0} f(x) \cos^n xdx = f(0)$が成り立つことを示す.

注意:$0 \leqq \displaystyle \dfrac{1}{I_n} \left|\int^{\frac{\pi}{2}}_{0} f(x)\cos^n x dx-\int^{\frac{\pi}{2}}_{0} f(0)\cos^n x dx\right|=\dfrac{1}{I_n} \left|\int^{\frac{\pi}{2}}_{0} (f(x)-f(0))\cos^n x dx\right|$において(iii)と(iv)の不等式を用いて,積分可能な無理関数の積分に帰着したのち,(ii)の不等式を用いて上から評価すると,$\displaystyle \dfrac{1}{I_n} \left|\int^{\frac{\pi}{2}}_{0} f(x)\cos^n x dx-\int^{\frac{\pi}{2}}_{0} f(0)\cos^n x dx\right|$が0に収束することが分かる.

(v)$\cosh x =(e^x+e^{-x})/2, \sinh x =(e^x - e^{-x})/2$とおいて,固定された0でない実数$x$に対する数列

$$J_n = \int^{\frac{\pi}{2}}_{0} \cos^{2n}t \cosh(2xt)dt$$

についての漸化式

$$J_{2n} = \frac{2n-1}{2n} \Big( 1 + \frac{x^2}{n^2} \Big) J_{2n-2}$$

を導く.

(vi) (v)の漸化式を繰り返し適用してつぎの等式を導く.

$$\sinh (\pi x) =\pi x \lim_{n \to \infty} \frac{J_{2n}}{a_{2n}} \prod^{n}_{k=1} (1+\frac{x^2}{k^2}) $$

(vii) (iv)において,$f(t) = \cosh(2xt), M = (f(\pi/2) - 0)/(\pi/2)$とおいて,$I_{2n}/a_{2n}$$n \to \infty$における極限が1であることを示す.

ここから

$$\frac{e^{\pi x}-e^{-\pi x}}{2} =\pi x \lim_{n \to \infty} \prod^{n}_{k=1} (1+\frac{x^2}{k^2})$$

を導くことができる.

参考文献

[1]
David Salvinski, Euler's Sine Product Formula: An Elementary Proof, The College Mathematics Journal, 2018, 126-135
投稿日:2023421
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