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三角関数を使いこなすために②|条件を読み、方法を選び、次へつなぐ

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三角関数を使いこなすために②|条件を読み、方法を選び、次へつなぐ

公式を知っていても、目の前の問題でどれを使うかは別の仕事です。
この回では、一つの問題を解く過程から判断を取り出し、見た目の違う問題で使い直します。
読むときは例題の解答を開く前に、求めるものと使える条件を一行ずつ書いてみてください。
「正接が欲しいから比だけを残す」「零点が欲しいから積を作る」のように、操作の目的を先に言葉にします。
方法の名前を覚えるのは、その後で構いません。
第1章から第4章は数学Ⅱの三角関数と既習の代数・平面図形で読めます。
数学Cや数学Ⅲは前提にしません。
第5章と第6章は追加の履修が必要な節を分けました。
同じ科目の数学Ⅱでも、微分積分は三角関数を学ぶ時点で未習のことがあるため、別に表示しています。
判断の根拠には二種類あります。置換の同値性や値域は数学的な条件です。
一方、合成の方が計算を短くしやすい、という比較は方法を選ぶ指針です。
合理的な方法が複数ある問題で、一本だけが論理的に強制されるとは考えません。

読み進め方

第1章〜第4章 基本体系
第5章・第6章 追加の単元への接続
学んだ後に使う判断表

各節に例題と、条件を変えた確認問題を置き、章をまたぐ比較練習へ進みます。最初に解答を眺めず、候補を自分で一つ挙げる練習に使ってください。

この記事で使う言葉

置換した量が実際に取る値の全体を、その置換の「像」と書くことがあります。単なる実数全体とは限りません。「枝」はグラフを増加・減少する範囲などへ分けた部分です。「極」は式が定義されず、その近くで値が限りなく大きくなる点です。約分後も値を持たない点が残るだけの場合は、穴と区別します。
式の中の$x,\theta$はその問題で動く変数、$a$などのパラメータはまず固定して考え、その後に値を変えて問題の変化を調べる文字です。$t=\sin\theta$の$t$は置換で導入した変数で、元の角の範囲に応じた像を渡します。座標を角から書く「パラメータ表示」は、角を動かして点を作る表示という意味です。同次式とは各項の次数が等しい式で、二次同次式なら$s^2,sc,c^2$を組み合わせた形です。初めて使う節で役割を確かめます。

解法を組み立てる練習の進め方

例題は、先に問題だけを読み、「欲しい情報」と「使える条件」を一行ずつ書きます。候補を一つ挙げたら、解答を開く前に、その操作で何が得られ、何が残るかを考えてください。例えば合成は振幅と位相を、正接への置換は比の方程式を出します。どちらも公式として正しく使えても、要求へ近い出力は違います。
変形の後は、元の問題へ直ちに戻るのでなく、できた式を読み直します。区間上の二次式なら軸と端、二次方程式なら次数と根の位置、商なら分母と符号、軌跡の必要条件なら逆構成が次の問いになります。ここが、三角関数の処理から他の知識へ仕事を渡す場所です。
うまく進まない候補を見切る目安もあります。一つの量へ置いたのに別の量が残る、次数を下げたのに根号と符号の場合分けが増える、欲しいのが個数なのに値域しか出ない場合は、目的へ届くまでの仕事を比べ直します。計算が必ず短くなる一つの尺度があるわけではありません。条件を管理する手間まで含めて比べます。

変換して得たもの次に問うこと元へ戻すときに保つもの
一つの量の式その量の像はどこか、何次の式か角の範囲と一値に対応する角数
積が零・商の不等式零点・符号・重なりはどうか割る前の零、分母の除外
消去した座標の関係その全点を元から作れるか符号・角度・図形の非退化
パラメータの条件端・軸・極がいつ入れ替わるか存在か全称か、同じ角・同じ配置か

章末の問いに答えられたら、方法名を付けない比較練習へ進みます。合理的な方法を二つ挙げても構いません。「なぜ今回はこれを先に試すか」「変えた条件で何が変わるか」まで説明してください。一般化の欄を暗記する前に、目の前の条件へ結び直すことが目標です。

学習の道筋

復習と転移を分けて練習する

例題を閉じて同じ問題を解けることは、判断の定着です。次は式の外形や要求を変えて、どの条件から同じ構造を疑えるかを試します。第3回ではAを定着・復習、Bを転移、Cを複数の構造を接続する総合として表示します。Aを解けたことだけで、初見の転移までできたとは判断しません。
追加履修の節は、三角関数からその単元へ情報を渡す判断を扱います。確率・数列・ベクトル・複素数平面・微積分そのものの全基礎を教える節ではありません。各節の履修表示を確認し、未習なら第1章〜第4章と基本体系の総合問題を先に学べます。

第1章 一つの量へまとめ、値と角を往復する

式を一つの量へまとめる候補を挙げ、その量の値域と、一つの値に対応する角の個数を区別できるようにします。

§1 求めるものが変わると、変換後の仕事も変わる

必要な履修:数学Ⅰ・二次関数、数学Ⅱ・三角関数

例題

$0\leq\theta\lt 2\pi$で$F(\theta)=\sin^2\theta-\cos\theta$とする。(1)最大値・最小値を求めよ。(2)$F(\theta)=1$となる角の個数を求めよ。

問題のどこを見るか

正弦は二乗だけ、余弦は一次で現れています。$\sin^2\theta=1-\cos^2\theta$なら一方を消せるので、余弦の値だけを追う候補が出ます。両小問は同じ変換から始められますが、(1)には値の範囲、(2)には値と角の対応が必要です。

何を先に試すか

正弦の二乗を余弦へ替えるだけで一変数になります。最初から合成しても二乗と一次が別々に残るので、まず未知の三角値の種類を減らします。二次式になったら、三角公式を探し続けず二次関数へ移ります。

例題の解答を開く

$t=\cos\theta$とおくと$t\in[-1,1]$で、$F=1-t-t^2=5/4-(t+1/2)^2$。

(1)最大値$5/4$は$t=-1/2$、最小値$-1$は$t=1$で取る。最大の角は$2\pi/3,4\pi/3$、最小の角は$0$。

(2)$1-t-t^2=1$は$t=0,-1$。$t=0$には$\pi/2,3\pi/2$、$t=-1$には$\pi$が対応するので三個。

方法を比べ、次の判断へ進む

最初の変形で、三角関数の問題は区間上の二次関数になりました。ただし「二次方程式の根が二つ」と「角が二つ」は違います。根ごとに単位円へ戻す作業が残っています。
ここで自分のつまずきを分けられます。正弦の二乗を消せなかったなら三角関数の処理、平方完成や端値比較で止まったなら二次関数、根が分かった後に角を数え違えたなら変数の対応が課題です。「三角関数が苦手」の一言では復習箇所を決められません。
置換から撤退する基準も持ちます。例えば$\sin\theta+\cos^2\theta$を$\cos\theta$だけで表そうとすると、$\theta=\pi/2,3\pi/2$で置換値はともに$0$なのに元の式は$1,-1$です。この一変数では情報が足りません。一方、$t=\sin\theta$なら$t+1-t^2$となります。根号が残ったら必ず撤退する、という規則ではなく、同じ置換値で必要な出力が一意に決まるか、残った符号を管理する費用が目的に見合うかを検査します。

別の問題でも使う判断

一方が偶数冪だけなら、二乗和の関係式で他方へまとめる候補を出す。置換は「式」と「その変数が実際に動く範囲」を対で作る。極値なら軸と端、角の解なら根の値から元の角へ戻す。この章で解の個数を詳しく扱うまで、この三つを区別しておく。


条件を変えて確かめる

$0\leq\theta\leq\pi/3$で$\sin^2\theta-2\cos\theta$の最大値・最小値を求めよ。全実数の角での正弦・余弦の範囲をそのまま使ってよいか。


確認問題の解答と比較を開く

$t=\cos\theta\in[1/2,1]$。式は$1-t^2-2t=2-(t+1)^2$で、この区間では減少する。最大値$-1/4$は$\theta=\pi/3$、最小値$-2$は$\theta=0$。全実数の角での範囲$[-1,1]$を使うと別の問題になる。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

定着・復習:第3回・問題(20)、第3回・問題(22)

転移:第3回・問題(37)

総合:第3回・問題(21)、第3回・問題(36)、第3回・問題(44)、第3回・問題(46)、第3回・問題(73)

§2 合成した後、山に届くかを調べる

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数

例題

$0\leq\theta\leq\pi/2$で、$3\sin\theta+4\cos\theta$の最大値・最小値を求めよ。

問題のどこを見るか

同位相の正弦と余弦の一次式です。二つの増減を別々に追うより、一つの波へまとめると山と端が比較できます。しかし角が一周しないので、振幅だけでは答えを決められません。

何を先に試すか

指定区間では正弦が増え、余弦が減るため、和がどちらへ動くかは各項の増減だけでは決まりません。合成で一つの波へする候補が出ます。逆に二項がともに増える・減る区間なら、端を直接調べて済むこともあります。

例題の解答を開く

$\cos\phi=3/5,\sin\phi=4/5$、$0\lt \phi\lt \pi/2$とすると式は$5\sin(\theta+\phi)$。位相の範囲$[\phi,\phi+\pi/2]$は$\pi/2$を含むので最大値$5$。端の値は$4,3$、途中は山を一つ通るだけなので最小値$3$。最大は$\sin\theta=3/5,\cos\theta=4/5$、最小は$\theta=\pi/2$。

方法を比べ、次の判断へ進む

合成の出力は振幅と位相です。次の問いは「指定された角が、その波のどの部分を通るか」です。基本グラフの増減、山・谷、端の順に確認すると、最大値と等号の角を同時に決められます。
狭い区間なら、合成を使えることと、先に使うことは別です。例えば$0\leq\theta\leq\pi/6$で$5\cos\theta-12\sin\theta$は両項が減少するので、端の比較だけで最大$5$、最小$5\sqrt3/2-6$と決まります。合成なら振幅$13$と位相を求めた後、山が区間内か調べる仕事が増えます。この場合は直接の増減を先に使えます。逆に二項の増減が逆向きなら、各項を別々に評価しても和の極値は決まらず、合成の利点が生まれます。

別の問題でも使う判断

一次式を合成→区間を位相へ移す→山・谷の所属と端を比較→元の角で等号を確認。係数がともに零なら定数なので、この手順を使わず分ける。


条件を変えて確かめる

同じ区間で$\cos\theta-\sin\theta$の最大値・最小値を求めよ。合成せずに判断する方法もあるか。


確認問題の解答と比較を開く

最大$1$は$\theta=0$、最小$-1$は$\theta=\pi/2$。余弦は減少、正弦の負も減少するので、その和は減少する。合成なら$\sqrt2\cos(\theta+\pi/4)$の区間を調べる。同じ答えへ自然な二候補があり、この区間では直接の増減が短い。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

定着・復習:第3回・問題(20)、第3回・問題(22)、第3回・問題(26)、第3回・問題(30)、第3回・問題(33)

転移:第3回・問題(27)、第3回・問題(28)、第3回・問題(37)、第3回・問題(39)

総合:第3回・問題(32)、第3回・問題(46)、第3回・問題(55)、第3回・問題(67)、第3回・問題(73)、第3回・問題(74)、第3回・問題(75)

§3 条件の和を保存し、隠れた共通の一次式も探す

必要な履修:数学Ⅰ・数と式、二次関数、数学Ⅱ・三角関数

例題

$\sin\theta+\cos\theta=\sqrt3/2$のとき、$\sin^3\theta+\cos^3\theta$と$\sin^3\theta-\cos^3\theta$を求めよ。

問題のどこを見るか

条件が与えるのは和です。$s=\sin\theta,c=\cos\theta$と書き、二つを交換してみると、和の方は変わらず、差の方は符号が反転します。和と積で足りるものと、差の符号が追加で必要なものを区別できます。

何を先に試すか

条件の和から積まで分かるので、対称な求値には個々の三角値を解く必要がありません。交換で変わる求値には同じ情報では足りず、差の符号を追加する仕事が必要です。
一次の角と倍角が混在すると、全てを一つの同じ周波数の波へ合成することはできません。二倍角の部分だけの極値を足しても、一次の部分と同じ角で実現する保証がありません。一次項に明確な係数比があるなら、倍角を$s^2,sc,c^2$へ戻す候補を比較します。次数を下げる方向だけが常に優先されるのではなく、式全体を同じ量へまとめられるかが目的です。候補の二乗を引いた残りが二乗和の定数になるかを検査してから、その量だけの問題へ進みます。

例題の解答を開く

$s=\sin\theta,c=\cos\theta$、$p=s+c=\sqrt3/2$とする。$sc=(p^2-1)/2=-1/8$。従って$s^3+c^3=p^3-3scp=9\sqrt3/16$。

$(s-c)^2=2-p^2=5/4$より、$s^3-c^3=(s-c)(1+sc)=\pm7\sqrt5/16$。$s=(\sqrt3\pm\sqrt5)/4,c=(\sqrt3\mp\sqrt5)/4$は二乗和が$1$となり、両符号とも単位円上で実現する。

方法を比べ、次の判断へ進む

先に$s,c$の二次方程式を解く方法もあります。ただし対称な式の値だけなら、どちらが$s$かを決める作業は不要です。差を問われたとき初めて、二つの割り当てが別の値を出すと分かります。

見た目を変えて、同じ判断を試す

もう一つの例題

全実数$\theta$について、次の式の最大値・最小値を求めよ。$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とする。

$\displaystyle 2s^2+4sc+5c^2-2s-4c.$

二次部分はそのまま完全平方ではない。最初にどの項から、残す量の候補を作れるか。

今回は「繰り返す式が見えたら置く」だけでは、まだ候補が見えません。一次部分は$-2(s+2c)$です。二次部分より係数が少ないので、ここから$q=s+2c$を候補にし、二次部分も$q$だけにできるかを試します。
$q^2=s^2+4sc+4c^2$を元の二次部分から引くと、残りは$s^2+c^2=1$です。完全平方が最初からある必要はありません。円の関係式で定数になる残りがあるなら、やはり一つの量へまとめられます。

もう一つの例題の解答を開く

$q=s+2c$とおくと、合成から$q\in[-\sqrt5,\sqrt5]$。与式は$q^2+1-2q=(q-1)^2$である。$1$は像内なので最小値は$0$。端を比べると最大値は$(-\sqrt5-1)^2=6+2\sqrt5$。いずれも対応する角が存在する。


この候補の作り方を一般化すると、一次部分が$us+vc$の倍数なら、二次部分を$\lambda(us+vc)^2+\mu(s^2+c^2)$へそろえられるかを調べます。$\lambda,\mu$は定数で、展開した$s^2,sc,c^2$の三係数が一致するかを確かめるだけです。そろえば円上では二次部分が$\lambda q^2+\mu$となります。一次項がない場合や、係数がそろわない場合に、この候補を強制する規則ではありません。
例えば元の一次部分だけを$-2s-3c$に変えると、同じ$q=s+2c$では式が$q^2+1-2q+c$となり、もう一つの量が残ります。$q=0$の二点$(s,c)=(2/\sqrt5,-1/\sqrt5),(-2/\sqrt5,1/\sqrt5)$で値は$1-1/\sqrt5,1+1/\sqrt5$と異なります。これで$q$だけでは情報が足りないと分かります。別の一次式を試すか、二倍角などへ候補を戻します。
一次項から候補を作る→二次の係数を合わせる→残りが円の定数かを確認→合成で像を渡す→区間上の二次関数へ移る。この順なら、答えの平方形を先に知る必要はありません。

別の問題でも使う判断

交換して変わらない式は和と積を候補にする。二乗和$1$があるので、和$p$から積も決まる。交換で符号が変わる式は差を残し、符号や実現性を追加確認する。対称性がなくても、反復する一次式が全項をまとめられるなら、それを残す候補がある。一次式の候補が見えないときは、一次項の係数の比から試す。二次部分に二乗和の定数を補えるかまで点検し、まとめた後に別の量が残るなら、その置換一つでは不足と判断する。


条件を変えて確かめる

全実数の角で$s^2+4sc+4c^2-2s-4c$($s=\sin\theta,c=\cos\theta$)の最大値・最小値を求めよ。交換対称性はあるか。


確認問題の解答と比較を開く

交換対称性はない。しかし二次部分は$(s+2c)^2$、一次部分は$-2(s+2c)$。$t=s+2c\in[-\sqrt5,\sqrt5]$とすると$t^2-2t=(t-1)^2-1$。最小$-1$、最大$5+2\sqrt5$。二倍角で二次部分だけを処理するより、全項で共通の式を残す方が短い。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

定着・復習:第3回・問題(22)、第3回・問題(23)

総合:第3回・問題(46)、第3回・問題(58)、第3回・問題(73)、第3回・問題(76)

§4 二次方程式の根を、角の個数へ戻す

必要な履修:数学Ⅰ・二次関数、数学Ⅱ・三角関数

例題

$0\leq\theta\lt 2\pi$で$2\sin^2\theta-\sin\theta=k$となる角の個数を、実数$k$によって求めよ。

問題のどこを見るか

式は正弦一つの二次式なので$t=\sin\theta$へ移れます。個数を答えるには、二次式の根が$[-1,1]$へ入るかと、その根に何角が対応するかの二つの仕事を分けます。

何を先に試すか

角の個数には、二次方程式の実根数だけでは足りません。先に正弦の像を作り、放物線の各部分の値域を出すと、根が区間へ入る境界を見つけやすくなります。根の公式も候補ですが、その後に同じ範囲・対応の検査が残ります。

例題の解答を開く

$k=2(t-1/4)^2-1/8$、$-1\leq t\leq1$。左枝$[-1,1/4]$の値域は$[-1/8,3]$、右枝$[1/4,1]$の値域は$[-1/8,1]$。各枝は単調で、頂点では二枝が同じ根を表す。

$-1\lt t\lt 1$の根には二角、$t=\pm1$には一角が対応する。従って個数は、範囲外で零、$k=-1/8$で二、$-1/8\lt k\lt 1$で四、$k=1$で三、$1\lt k\lt 3$で二、$k=3$で一。$k=1$の根は$1,-1/2$、$k=3$の像内の根は$-1$である。

2t²−t = 1 は二つの値
−1−1/201013
t₁
t₂
一つの値に対応する角を戻す
0π2π-101
1
2
3

上は置換値 t=−1/2,1 の二根。下は sin θ=t に戻した三つの角です。

方法を比べ、次の判断へ進む

境界は判別式が零のときだけではありません。頂点で重根が生まれる、端根が逆像の個数を変える、根が区間を出る、という別の構造変化があります。放物線の各枝の値域を作ると、どの境界を調べるかが問題文から決まります。
この問題の三角関数固有の仕事は$t$の範囲と角への対応です。二枝の配置は二次関数の仕事です。両方を接続する表を作ることが、解法全体の核心です。

別の問題でも使う判断

置換値の像→枝と端値→相異なる根→各根の対応角数→合計。重根を二つの値と数えず、二次方程式の代数的な重複と、元の角の重複を区別する。

対応数は区間ごとに作り直します。元の角を正弦・余弦が一対一に動く部分へ分け、その各部分で取る値と端の包含を記録すれば、一つの置換値が何角へ戻るかを数えられます。端の値に必ず一角、内点に必ず二角という規則は、一周の指定範囲での結論です。短い区間・複数周・開端を含む区間へ無条件に移しません。部分の共有端は同じ実数の角なので重複を除き、重根も一つの置換値として扱います。


条件を変えて確かめる

角の範囲を$0\leq\theta\leq\pi/2$へ変えると、$2\sin^2\theta-\sin\theta=0$の解数はいくつか。前例の重みをそのまま使えるか。


確認問題の解答と比較を開く

像は$[0,1]$で正弦は一対一。根$0,1/2$はそれぞれ一角なので二個。一周の「内点二角」を流用できない。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

定着・復習:第3回・問題(31)

転移:第3回・問題(24)、第3回・問題(29)、第3回・問題(37)

総合:第3回・問題(21)、第3回・問題(32)、第3回・問題(44)、第3回・問題(46)、第3回・問題(50)、第3回・問題(55)、第3回・問題(57)、第3回・問題(73)、第3回・問題(75)、第3回・問題(76)


章の終わりに確かめる

式の変換、二次関数の処理、元の角への対応のうち、自分がどこで止まったかを言えるか確認してください。

第2章 求める情報に合わせて、残す形を選ぶ

似た式でも、比・上下の限界・零点・商では欲しい出力が違います。方法を一つ思い出すだけでなく、変換後に何が残るかを比較します。

§5 比を答えたいから、定数を同じ次数へそろえる

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数

例題

$\sin^2\theta-\sin\theta\cos\theta=2/5$から、$\tan\theta$の取り得る値を求めよ。

問題のどこを見るか

欲しいのは角そのものではなく、$\sin\theta/\cos\theta$です。比だけを残すには、全項を$\cos^2\theta$で割れる形が有利です。障害は右辺の定数ですが、$1=\sin^2\theta+\cos^2\theta$で二次へ書き直せます。これが同次式を疑う理由です。

何を先に試すか

求めるのは比なので、その比を直接残せる操作を優先します。二倍角も可能ですが、得た角から比へ戻す仕事が加わります。割る前の余弦零だけは、計算の短さにかかわらず検査します。
同次式があっても、既に簡単な関係が読めるならそこから終えます。例えば$(\sin\theta-\cos\theta)^2=0$から正接を求めるなら、先に二値が等しいと読み、二乗和から余弦非零を確認すれば$\tan\theta=1$です。正接の二次方程式を作る方法も成立しますが、今見えている等式以上の情報は不要です。比を残す変換は、比が直接読めない障害を除くために選びます。

例題の解答を開く

$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とする。与式は$5s^2-5sc=2(s^2+c^2)$、すなわち$3s^2-5sc-2c^2=0$。$c=0$なら元の左辺は$1$で不適。従って$c^2$で割れて、$t=\tan\theta$について$(3t+1)(t-2)=0$。答えは$2,-1/3$。各実数の正接を取る角があり、変形は同値なので両方とも実現する。

方法を比べ、次の判断へ進む

「同次式だから割る」と覚える前に、比を得るという目的から逆算してください。同次式とは、各項の次数が同じ式です。$s^2,sc,c^2$はすべて二次なので、$c^2$で割ると$s/c$だけになります。
二倍角でも与式を変形できます。しかし今回は最終的に正接の値へ戻す仕事が増えます。求める比を直接未知数にできる方法を基本解法に選びました。

別の問題でも使う判断

比の要求→比だけの式が欲しい→同次数へそろえる→割る量の零を確認→比の方程式→元の条件の実現、という順です。偶数次なら定数$K$を$K(s^2+c^2)^{m}$として次数をそろえられる場合があります。奇数次へ無理に根号を導入する必要はありません。


条件を変えて確かめる

$\sin^2\theta+2\sin\theta\cos\theta=1/2$から$\tan\theta$を求めよ。


確認問題の解答と比較を開く

$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とする。$s^2+4sc-c^2=0$。$c=0$は不適なので、$t=\tan\theta$とおくと$t^2+4t-1=0$、従って$t=-2\pm\sqrt5$。両方の方向が実現する。係数が変わっても、比を残す目的と同次化の判断は同じ。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

転移:第3回・問題(24)

総合:第3回・問題(45)

§6 同じ二次式でも、極値なら除算を避けられる

必要な履修:数学Ⅰ・二次関数、数学Ⅱ・三角関数

例題

$Q=4\sin^2\theta+4\sin\theta\cos\theta+2\cos^2\theta$の最大値・最小値を、(1)全実数の角、(2)$0\leq\theta\leq\pi/4$で求めよ。

問題のどこを見るか

比を求めた例と同じ二次同次式ですが、欲しいのは方向比ではなく式の上下の限界です。二次の三種類を$1,\cos2\theta,\sin2\theta$へ移すと一次式になります。全実数の角でのまま扱え、割る量の例外も作りません。

何を先に試すか

全実数の角に対する極値なら、二倍角で一つの波にすれば上下の限界へ直結します。正接へ移すと有理式の値域と欠落方向を調べる仕事が増えます。ただし短い区間なら、二項の増減から端を直接比べる方が短い場合もあります。

例題の解答を開く

$Q=3-\cos2\theta+2\sin2\theta$。$\cos\phi=2/\sqrt5,\sin\phi=1/\sqrt5$を満たす$0\lt \phi\lt \pi/2$を選ぶと、$Q=3+\sqrt5\sin(2\theta-\phi)$。

(1)最大値$3+\sqrt5$、最小値$3-\sqrt5$。位相がそれぞれ$\pi/2,3\pi/2$になる角で実現する。

(2)$u=2\theta\in[0,\pi/2]$では$-\cos u,\sin u$がともに増加する。従って最小値$2$は$\theta=0$、最大値$5$は$\theta=\pi/4$。

方法を比べ、次の判断へ進む

正接で表すと$Q=(4t^2+4t+2)/(1+t^2)$となり、分数の極値を調べる必要があります。間違いではありませんが、一次の波へ移す方が今の目的に短く届きます。
単位円上の二次式として平方を作る方法もあります。例えば二乗和の関係式から、上界と下界との差を非負の平方へ表せれば、等号の方向も読めます。計算を短くできる平方が見つかる場合の候補であり、毎回その形が最初から明らかとは限りません。
平方の候補をどう作るかも確認します。$u^2+v^2=1$で$au+bv$の大きさを押さえたいとき、逆符号の交差項を持つ$bu-av$を併せると、展開から

$\displaystyle (au+bv)^2+(bu-av)^2=(a^2+b^2)(u^2+v^2)=a^2+b^2.$


が得られます。左の第二項が非負なので、第一項の上界と等号条件が出ます。この例は$a=-1,b=2$なので、補う式は$2u+v$です。この手順で$u=\cos2\theta,v=\sin2\theta$、$u^2+v^2=1$から$5-(Q-3)^2=(2u+v)^2\geq0$となります。従って$3-\sqrt5\leq Q\leq3+\sqrt5$。$(u,v)=(\mp1/\sqrt5,\pm2/\sqrt5)$は単位円上で両端を実現します。合成と同じ範囲を、非負の平方と等号の方向から示す候補です。短い弧では、この方向がその弧に入るかを別に確認します。

別の問題でも使う判断

二次同次式の候補は、比を求めるなら正接、全実数の角での極値なら二倍角と合成、簡単な非負の平方が見えるなら円上の平方。指定区間があれば、どの方法でも等号の方向が区間にあるかを確かめる。


条件を変えて確かめる

同じ$Q$について、$Q=2$から$\tan\theta$を求めよ。前の二小問と、何を残すと便利かが変わるか。


確認問題の解答と比較を開く

$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とする。$Q=2$を同次化すると$2s^2+4sc=0$。$c=0$では$Q=4$なので不適。$t=\tan\theta$とおくと$t^2+2t=0$より$\tan\theta=0,-2$。今度は比の要求があるので、正接への置換が結論へ直結する。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

定着・復習:第3回・問題(26)

転移:第3回・問題(28)

総合:第3回・問題(74)

§7 角の差だけでなく、和・積・商を読む

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数

例題

全実数の角での$F=\sin(\theta+\pi/6)+\sin(\theta-\pi/6)$と$G=\sin(\theta+\pi/6)\sin(\theta-\pi/6)$の値域を求めよ。

問題のどこを見るか

二角の差は一定です。和なら同じ角の一次結合、積なら積和で角の差を定数にする、という二候補を比べます。「角を統一する」こと自体を目標にせず、一変数の波へまとめることを目標にします。

何を先に試すか

和は角をそろえて一次式、積は積和で定数の角差を残すと、未知の角が一つになります。商では分母零を先に保ち、値が指定された方程式なら分母を払う候補を比較します。「角差が定数」という観察だけで操作は決まりません。

例題の解答を開く

和積から$F=\sqrt3\sin\theta$なので$[-\sqrt3,\sqrt3]$。積和から$G=\{\cos(\pi/3)-\cos2\theta\}/2=1/4-\cos2\theta/2$なので$[-1/4,3/4]$。いずれも両端と中間値が実現する。

方法を比べ、次の判断へ進む

積を加法定理で全面展開すると$s^2,c^2,sc$の整理が必要です。積和なら「差の角が定数」という情報が一段で残ります。逆に一次の和を積へするか展開するかは、係数の簡単さと、零点・値域のどちらを求めるかで比べられます。
同じ$\sin(\theta+\pi/4)\sin(\theta-\pi/4)$でも、零点の要求なら既にある二因子を零にすれば終わります。全実数での値域なら、そのまま各因子の範囲を掛けると二値の依存を失うので、積和で$-\cos2\theta/2$へします。積和は「積だから使う」操作ではなく、原始関数や値域を一つの角へ渡すための候補です。零点と範囲では欲しい情報が違います。

別の問題でも使う判断

定数差は候補を出す情報で、方法を一意に決める条件ではない。和・積・商と要求を組にして、一次結合、積和、分母を伴う比へ選び分ける。高次の積なら、変形で次数や周波数が減る部分から処理する。


条件を変えて確かめる

$\sin(\theta+\pi/4)/\cos(\theta+\pi/4)=2$から$\tan\theta$を求めよ。


確認問題の解答と比較を開く

$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とする。分母が非零で、$s+c=2(c-s)$より$3s=c$。$c=0$はこの等式と$s^2+c^2=1$に矛盾する。従って$\tan\theta=1/3$。この比なら元の分母$(c-s)/\sqrt2=2c/(3\sqrt2)$も非零。分母を払う操作の条件を最後にも保持する。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

転移:第3回・問題(27)

総合:第3回・問題(25)、第3回・問題(40)、第3回・問題(45)、第3回・問題(55)、第3回・問題(58)

§8 商へ移ったら、像・極・増減を別々に渡す

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅰ・二次方程式、式の計算

例題

$0\leq\theta\leq\pi/2$で$F(\theta)=(1+\sin2\theta)/(1+\sin\theta+\cos\theta)$の最大値・最小値と等号の角を求めよ。微分は用いない。

問題のどこを見るか

分子の$1+\sin2\theta$は二乗和と倍角から$(\sin\theta+\cos\theta)^2$です。分母にも同じ一次式が現れています。個々の正弦・余弦を消すより、この反復する量を保存すれば一変数の商へ移れます。ここで目的は極値なので、置換の像と商の増減までを一緒に調べます。

何を先に試すか

分子と分母に反復する量があります。個々の上下限の比では同じ角の依存を失うため、反復量を残します。この範囲では商の二値の差の符号が読めるので、微分を準備しなくても増減へ移れます。

例題の解答を開く

$p=\sin\theta+\cos\theta\in[1,\sqrt2]$とおく。分母$1+p$は正で、$F=p^2/(1+p)$。$1\leq u\lt v\leq\sqrt2$に対して

$\displaystyle \frac{v^2}{1+v}-\frac{u^2}{1+u}=\frac{(v-u)(u+v+uv)}{(1+u)(1+v)}\gt 0.$

従って最小値$1/2$は$p=1$、すなわち$\theta=0,\pi/2$で取る。最大値$2/(1+\sqrt2)$は$p=\sqrt2$、すなわち$\theta=\pi/4$で取る。

方法を比べ、次の判断へ進む

分子と分母の最大値を別々に求め、その比を取る方法は一般に極値を与えません。両方が同じ角に依存するためです。今回の置換はその依存関係を保存します。
一変数になってからも、分母の正負と零を確認します。指定区間では分母が正で、二つの値の差を取ると全因子の符号が分かるので、微分を使わず増加を示せます。最後は$p$の端を何角が取るかへ戻ります。三角関数の変換、実数の商の増減、元の角への対応はそれぞれ別の仕事です。

別の問題でも使う判断

反復する量を残す→正確な像と元の分母の非零を渡す→商の枝を分ける→差の符号や二次方程式で値・根を調べる→像内の採用値に角を対応させる。約分は入力の除外を取り消さない。

境界を探すときは、結論の分類表を先に覚えません。$a\geq0,t\in[-R,R]$($R\gt 0$)の商$t^2/(a+t)$なら、$a=0$で約分後にも穴が残り、$a=R/2$で増減の境目$-2a$が左端へ達し、$a=R$で分母零$-a$が左端へ達します。端が含まれるので、到達時その点を使えるかは分母の条件で再確認します。分母零・増減の境目・固定された区間の端という三つの位置を比較することが、パラメータ境界の発見になります。


条件を変えて確かめる

角を$0\leq\theta\lt 2\pi$へ広げ、同じ式が$2$となる角の個数を求めよ。また、分母を$\sin\theta+\cos\theta$に変えた式の値域を求めよ。


確認問題の解答と比較を開く

前者は$p\in[-\sqrt2,\sqrt2]$、$p\ne-1$。$p^2/(1+p)=2$から$p=1\pm\sqrt3$で、像内なのは$1-\sqrt3$だけ。分母も非零なので二角。後者は$p\ne0$で値が$p$となり、値域は$[-\sqrt2,0)\cup(0,\sqrt2]$。像を広げたことと、約分後にも除外値が残ることを別々に確認する。

パラメータの商で、分岐点をどう発見するか

$a\gt 0$に対して$f_a(t)=t^2/(a+t)$を考えます。これは三角関数から渡された後の代数の仕事です。分母から$t=-a$は除外します。商を割り算すると$f_a(t)=t-a+a^2/(a+t)$なので、同じ枝の$u\lt v$について

$\displaystyle f_a(v)-f_a(u)=(v-u)\left(1-\frac{a^2}{(a+u)(a+v)}\right).$


$u,v\geq0$なら分母の積が$a^2$以上で増加、$-a\lt u\lt v\leq0$なら$a^2$未満で減少です。$u,v\leq-2a$なら両分母の絶対値が$a$以上で増加、$-2a\leq u\lt v\lt -a$なら両絶対値が$a$以下で減少です。異なる二点ではいずれも必要な厳密な不等号になります。従って分岐点は、極$-a$と増減の境目$-2a,0$です。
これらの点が置換の像へ入るかを比べれば、パラメータの境界を見つけられます。等式$f_a(t)=k$は二次式$t^2-kt-ak=0$に移りますが、根の判別だけでなく像と$t\ne-a$を確認します。$a\gt 0$なら$t=-a$を代入した左辺は$a^2\gt 0$で、二次式の根に混ざりません。$a=0$ではこの検査が変わり、約分前の$t=0$の除外が残ります。
この方法は、分母が一次で分子が二次という構造から出る候補です。任意の複雑な商も同じ数の枝へ分けられるとは限りません。微分を履修した後は$f_a'(t)=t(t+2a)/(a+t)^2$を使う別の候補もありますが、上の基本解法には不要です。
実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

総合:第3回・問題(76)


章の終わりに確かめる

同じ二次式で「正接の値」と「最大値」が問われたら、第一候補と、その後に必要な仕事を変えられるか確認してください。

第3章 零・符号・欠落点を、変形の前後で保つ

積を作る、割る、二乗する、半角へ置く操作が、どの点を残し、どの情報を失うかを確かめます。計算の短さと条件を管理する手間を一緒に比べます。

§9 割る前に、符号と零点を扱う手間を比べる

必要な履修:数学Ⅰ・不等式、数学Ⅱ・三角関数

例題

$0\leq\theta\lt 2\pi$で$\sin\theta\cos^2\theta\geq\cos^3\theta$を解け。

問題のどこを見るか

同次式なので正接への置換が浮かびます。ただし三次の$\cos^3\theta$で割ると、正負で不等号の向きを分けます。その前に共通因子を見ると、非負の$\cos^2\theta$を残せます。方程式・不等式では、除算が失う情報の少なさも比較材料です。

何を先に試すか

方程式と違い、不等式で割る操作には向きの管理が加わります。零因子を残した積の形で符号を読む方と、零・正・負へ分けて割る方を比較します。平方の因子が非負なら、積の形を保つ方が場合分けを減らせます。

例題の解答を開く

$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とする。$c^2(s-c)\geq0$。$c\ne0$なら$s-c=\sqrt2\sin(\theta-\pi/4)\geq0$で、$\theta\in[\pi/4,5\pi/4]$。$c=0$の$\pi/2,3\pi/2$も元の式を満たす。従って$[\pi/4,5\pi/4]\cup\{3\pi/2\}$。

方法を比べ、次の判断へ進む

正接への置換を選んでも解けます。$c\gt 0$では$\tan\theta\geq1$、$c\lt 0$では$\tan\theta\leq1$となり、各枝へ戻します。共通因子を残す解法は、符号場合分けを一つ減らせます。一方、求めるものが正接の範囲なら、その分岐を引き受ける意味があります。

別の問題でも使う判断

零因子は先に分ける。不等式で割るなら符号を保持する。非負因子や簡単な因数分解が、正接への置換より安く必要な情報を出す場合がある。


条件を変えて確かめる

同じ範囲で、等号$\sin\theta\cos^2\theta=\cos^3\theta$だけを解け。


確認問題の解答と比較を開く

$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とすると、$c=0$または$s=c$なので、$\theta=\pi/4,\pi/2,5\pi/4,3\pi/2$。不等式の弧をそのまま答えず、零になる因子の解集合へ要求を読み替える。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

定着・復習:第3回・問題(38)

転移:第3回・問題(24)

総合:第3回・問題(25)、第3回・問題(48)、第3回・問題(67)

§10 高倍角でも、零点だけなら積を作る

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数

例題

$0\leq\theta\lt 2\pi$で$\cos5\theta=\cos\theta$を解き、解の個数を求めよ。

問題のどこを見るか

欲しいのは零点です。二つの余弦の差なので、和積で二つの正弦の積へできます。五倍角を五次多項式へ展開する前に、零点を角の一次条件で出せないかを比べます。

何を先に試すか

欲しいのは高倍角の全値でなく、二つが等しい角です。差を積へすると単純な角の零点に分かれるので、高次数の多項式展開を避けられます。値そのものや多項式の関係が欲しい場合は、この優先順位が変わります。

例題の解答を開く

$-2\sin3\theta\sin2\theta=0$より、$\theta=k\pi/3$($k=0,\ldots,5$)または$\theta=k\pi/2$($k=0,\ldots,3$)。共通の解は$0,\pi$なので、相異なる解は八個。

方法を比べ、次の判断へ進む

因子を割ると、その因子が零である解を落とします。積が零なら各因子の解を合併し、重なる角は一回だけ数えます。ここで次数を下げる目的は計算量だけでなく、解と角の対応を直接見える形にすることです。

別の問題でも使う判断

方程式の和・差→零因子。積分の積→項ごとの和。等差の角の和→隣接差。公式の向きは、取り出したい情報で選ぶ。最後の二つは追加履修後に例題で扱う。


条件を変えて確かめる

$0\leq\theta\leq\pi$で$\sin(\theta+\alpha)+\sin(\theta-\alpha)=0$を解け。ただし$0\leq\alpha\leq\pi/2$。


確認問題の解答と比較を開く

式は$2\sin\theta\cos\alpha=0$。$0\leq\alpha\lt \pi/2$なら$\theta=0,\pi$。$\alpha=\pi/2$なら恒等的に零なので範囲内の全ての角。係数零では、有限の解数を数える処理自体が変わる。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

転移:第3回・問題(29)

総合:第3回・問題(48)

§11 半角正接は、角の和へ近付くために選ぶ

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、いろいろな式

例題

$-\pi\lt x\lt \pi$で$a\sin x+b\cos x=1$が二解$x_1,x_2$を持つ条件と、$\tan((x_1+x_2)/2)$の値を調べよ。

問題のどこを見るか

解の個数だけなら合成が短い候補です。しかし今回は二解の半和が欲しいので、$t_j=\tan(x_j/2)$の和と積が、正接の加法定理へ直結します。一般的な置換を選ぶ理由を、この要求から出せます。

何を先に試すか

個数だけなら合成が直接的です。二解の半和の正接も欲しいので、二根の和と積を残す方法が有利になります。開区間が半角正接と一対一となる条件を提供していることも、候補を選ぶ根拠です。

例題の解答を開く

$t=\tan(x/2)$は$(-\pi,\pi)$と実数全体を一対一に対応させる。半角公式から$\sin x=2t/(1+t^2),\cos x=(1-t^2)/(1+t^2)$で、方程式は$(b+1)t^2-2at+1-b=0$。

$b=-1$なら$a\ne0$で一次の一根、$a=0$で根なし。$b\ne-1$なら二根の条件は判別式$4(a^2+b^2-1)\gt 0$。二根の和は$2a/(b+1)$、積は$(1-b)/(b+1)$だから、$b\ne0$なら求める値は$a/b$。$b=0$なら$1-t_1t_2=0$で、$x_j/2$の余弦は正なので半和の余弦は零となり、正接は未定義。

方法を比べ、次の判断へ進む

二解があることは、求める正接が定義される保証ではありません。また、この置換では$x=\pm\pi$を表せません。区間を閉じたときには、元の式に両端を入れる仕事が追加されます。
半角正接は三角有理式を代数化する強い方法ですが、次数、分母、欠落点の費用があります。一次式の値域だけなら合成、一つの正弦の二次式なら直接その正弦へ置く方法が、通常は短くなります。

別の問題でも使う判断

根の和・積や三角有理式の代数化に利点があるとき半角を候補にする。置換区間の一対一性、最高次係数の零、欠落角、最後の要求値の定義を別々に確認する。


条件を変えて確かめる

$2\sin x-\cos x=1$について、開区間$(-\pi,\pi)$と閉区間$[-\pi,\pi]$の解の個数を比べよ。


確認問題の解答と比較を開く

半角の式は$-4t+2=0$なので、開区間には一解。閉区間では$x=\pm\pi$も元の式を満たすので三解。終辺が同じでも、角$-\pi$と$\pi$は相異なる二つの実数である。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

定着・復習:第3回・問題(31)、第3回・問題(59)

総合:第3回・問題(54)

§12 符号を失う変形では、同値の条件を残す

必要な履修:数学Ⅰ・方程式、不等式、数学Ⅱ・三角関数

例題

$0\leq\theta\lt 2\pi$で$\sqrt{1-\sin^2\theta}=\sin\theta$を解け。また$(\sin\theta-1/2)/\cos\theta\geq0$は、分母をそのまま掛けてよいか。

問題のどこを見るか

平方根の左辺は非負なので、右辺の符号が最初の情報です。二乗はその情報を消します。商の不等式では、分母の正負によって不等号が変わり、零ではそもそも式がありません。

何を先に試すか

平方根の方程式は、二乗前の符号を残せば代数化できます。分母を払う等式も非零を残せば同値です。不等式では符号による向きまで必要なので、零点と符号の区間を直接読む方法も比較します。

例題の解答を開く

根号の方程式は$\sin\theta\geq0$を残して二乗すれば、$\sin^2\theta=1/2$。四つの角の候補のうち$\pi/4,3\pi/4$が適する。

商は分子の零点$\pi/6,5\pi/6$と分母の零点$\pi/2,3\pi/2$で分ける。符号は順に負、正、負、正、負となり、解は$[\pi/6,\pi/2)\cup[5\pi/6,3\pi/2)$。分子の零は含め、分母の零は除く。

方法を比べ、次の判断へ進む

操作の目的は代数的な形へ移すことですが、その操作が消す情報も同時に記録します。符号を先に条件へしておけば、最後に元の式へ戻す判断が短くなります。

別の問題でも使う判断

二乗→非負条件、分母を払う→零の除外、不等式の除算→符号枝。候補の根を得た後、変形前の条件をすべて満たすか照合する。


条件を変えて確かめる

$0\leq\theta\lt 2\pi$で$\sqrt{1-\cos^2\theta}=\cos\theta$を解け。


確認問題の解答と比較を開く

$\cos\theta\geq0$と$\cos^2\theta=1/2$が必要十分なので、$\pi/4,7\pi/4$。二乗後の方程式は前例と似ていても、保存する符号条件が異なる。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

定着・復習:第3回・問題(31)、第3回・問題(34)、第3回・問題(38)

転移:第3回・問題(35)、第3回・問題(39)、第3回・問題(47)、第3回・問題(62)

総合:第3回・問題(25)、第3回・問題(40)、第3回・問題(42)、第3回・問題(44)、第3回・問題(45)、第3回・問題(54)、第3回・問題(64)、第3回・問題(67)、第3回・問題(74)、第3回・問題(75)、第3回・問題(76)


章の終わりに確かめる

割る式の零点と、二乗で失う符号を、候補が出た後で思い出すのでなく変形前に記録できるか確認してください。

比較練習 章をまたいで、目的と方法を比べる

方法名を見ずに、最初に使う条件と、操作後に残る仕事を述べてから計算してください。

比較問題 (1)

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数

比較問題

(1)$\sin^2\theta-\sin\theta\cos\theta=2/5$から$\tan\theta$を求めよ。(2)同じ左辺について、全実数$\theta$での最大値・最小値を求めよ。計算の前に、それぞれで欲しい情報を一つ述べよ。


比較問題の解答を開く

(1)欲しいのは比。$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とすると$3s^2-5sc-2c^2=0$。$c=0$は元の式に適さない。$c^2$で割れば$(3t+1)(t-2)=0$、$t=\tan\theta$なので$2,-1/3$。どちらも実現する。

(2)欲しいのは全実数の角での値域。二倍角から$(1-\cos2\theta-\sin2\theta)/2$。一次結合の振幅は$\sqrt2$なので、最大$(1+\sqrt2)/2$、最小$(1-\sqrt2)/2$。位相は全実数を動くので両端を取る。


選択理由と条件の違いを開く

同じ二次式でも、(1)では二つの三角値の比、(2)では円を一周したときの高さが欲しい情報です。前者は定数を二次式へそろえて比を残し、後者は次数を下げて波を残します。正接で(2)を処理すると、全実数の有理式の値域と欠落方向を調べる仕事が増えます。二倍角で(1)を処理しても正しいですが、最後に比を復元する仕事が残ります。形だけで方法を固定しない対照です。

比較問題 (2)

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数

比較問題

全実数$\theta$について、$F=\sin(\theta+\pi/4)+\cos(\theta-\pi/4)$、$G=\sin(\theta+\pi/4)\cos(\theta-\pi/4)$の値域を求めよ。また、$H=\sin(\theta+\pi/4)/\cos(\theta-\pi/4)$の定義域と値域を求めよ。


比較問題の解答を開く

二つの三角関数はどちらも$\sin(\theta+\pi/4)$に等しい。従って$F=2\sin(\theta+\pi/4)$で値域は$[-2,2]$、$G=\sin^2(\theta+\pi/4)$で$[0,1]$。

$H$は$\theta\ne3\pi/4+n\pi$($n$は整数)で定義され、その範囲では$1$。値域は$\{1\}$である。


選択理由と条件の違いを開く

異なる角に見えますが、加法定理や余角の関係で同じ値かを先に確かめられます。同じ二量と分かると、和・積・商がそれぞれ二倍・二乗・比へ変わります。一般の積和や合成も使えますが、この退化を見つければ計算が短くなります。商を$1$へ約分しても、元の分母が零の角には値を作れません。式の値と、入力してよい角の情報を別々に保存します。

比較問題 (3)

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅰ・二次関数

比較問題

$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とする。(1)全実数で$s^2+2sc+c^2-4s-4c$の最大値・最小値を求めよ。(2)$s^2-c^2+2sc$も$s+c$だけで一意に表せるか。理由を示せ。


比較問題の解答を開く

(1)$t=s+c\in[-\sqrt2,\sqrt2]$とおくと$t^2-4t=(t-2)^2-4$。軸$2$は区間の右外にあるので、区間内では減少する。最大値$2+4\sqrt2$、最小値$2-4\sqrt2$で、いずれも像の端で取る。

(2)$\theta=0,\pi/2$ではどちらも$s+c=1$だが、求める式は順に$-1,1$。従って$s+c$だけでは一意に決まらない。


選択理由と条件の違いを開く

(1)は全ての項が反復する一次式へまとまるので、その量を保存します。平方完成後の最小値$-4$をそのまま答えると、許されない$t=2$を採用してしまいます。(2)は二次式という見た目が似ていても、交換$s\leftrightarrow c$で値が変わります。同じ$s+c$で違う値が出る二角を探すことは、この置換で情報が足りるかの検査です。全実数の角での極値なら二倍角で$-\cos2\theta+\sin2\theta$へ移す方が適しています。

比較問題 (4)

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数

比較問題

$0\leq\theta\lt 2\pi$で、(1)$\cos\theta(\sin\theta-1/2)=0$、(2)$\cos\theta(\sin\theta-1/2)\gt 0$を解け。


比較問題の解答を開く

(1)零になる因子を分けると$\theta=\pi/2,3\pi/2,\pi/6,5\pi/6$。

(2)四境界で区間を分ける。積は$(\pi/6,\pi/2)$では正・正、$(5\pi/6,3\pi/2)$では負・負となり正。それ以外は負または零。解は$(\pi/6,\pi/2)\cup(5\pi/6,3\pi/2)$で、四境界は全て除く。


選択理由と条件の違いを開く

等号なら「いずれかの因子が零」という情報が欲しいので、分けた因子を保持します。不等式なら欲しいのは積の符号で、各因子の零点を境界にして符号を合わせます。初めに余弦で割ると、(1)では二解を失い、(2)では不等号の向きの分岐が必要になります。式が既に持つ積の構造が、要求する情報を最も直接に与えます。

第4章 角の条件を、図形・存在・同時実現へ渡す

角の和、円の座標、回転、存在条件を、使いやすい式や配置へ翻訳します。必要な関係式を得た後、同じ角・同じ点・同じ中心で実現するかを戻って確かめます。

§13 固定された角の和を、定数として残す

必要な履修:数学Ⅰ・図形と計量、数学Ⅱ・三角関数

例題

三角形の二角$B,C$が$B+C=\pi/2$を満たす。$\sin B+\sin C$、$\sin B\sin C$の値域を求めよ。

問題のどこを見るか

二角を独立に動かす問題ではありません。和が定数なので、和積・積和に現れる平均を固定し、半差だけを変数にすると制約を保存できます。
固定和が直接書かれていない場合もあります。例えば$0\lt B,C\lt \pi/2$で$\tan B\tan C=1$なら、$\tan C=1/\tan B=\tan(\pi/2-B)$。正接がこの区間で一対一なので、$B+C=\pi/2$と分かります。積を見てすぐ展開する前に、角の範囲と逆数の関係から自由度が一つに減るかを調べます。角の範囲が違えば同じ結論をそのまま使えません。

何を先に試すか

二角の和が定数なら、和積・積和の平均角を定数にでき、半差一つへ移れます。角を独立な変数として扱うと、この条件を失います。半差の範囲には正の内角という条件も一緒に渡します。

例題の解答を開く

$d=(B-C)/2$とすると$B,C\gt 0$から$-\pi/4\lt d\lt \pi/4$。和は$\sqrt2\cos d\in(1,\sqrt2]$、積は$\cos2d/2\in(0,1/2]$。最大は$B=C=\pi/4$。小さい端は一角が零になる退化に対応して取らない。

方法を比べ、次の判断へ進む

角の和が固定なら、未知量は実質一つです。平均と差への変換は、二つの独立な未知角を勝手に一つへ置く操作ではなく、既にある関係を式へ反映する操作です。

別の問題でも使う判断

固定和→平均・半差→正の内角を差の開区間へ→一つの余弦の像。端が取れないなら「最小値」と「下限」を区別する。下限は値をいくらでも近付けられる下側の境界で、実際に取る最小値とは限らない。


条件を変えて確かめる

$B,C$がそれぞれ独立に$0\lt B,C\lt \pi/2$を動く場合、和と積の値域はどうなるか。同じ半差だけで処理してよいか。


確認問題の解答と比較を開く

和は$(0,2)$、積は$(0,1)$。各値は$B=C$とするだけでも実現する。平均も動くので、前例のように定数として固定できない。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

定着・復習:第3回・問題(30)

§14 距離や軌跡を、円の座標へ翻訳する

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、図形と方程式

例題

$P=(\cos\theta,\sin\theta)$、$0\leq\theta\leq\pi/2$、$A=(2,1)$とする。$AP$の最大値・最小値を求めよ。

問題のどこを見るか

動点は円上なので、距離の二乗の二次部分が定数になります。距離をそのまま根号で扱うより、二乗して一次式の範囲へ移す候補が出ます。全円での近点・遠点と、指定弧に入る点を区別します。

何を先に試すか

距離を二乗すると円の二乗和が定数になり、残る一次式の値域へ進めます。全円なら図形の近点・遠点でも直接処理できますが、弧が制限される場合はその方向を取れるかが残ります。軌跡は消去式に加え、逆向きの実現が必要です。

例題の解答を開く

$s=\sin\theta,c=\cos\theta$とする。$AP^2=6-2(2\cos\theta+\sin\theta)$。一次式の最大値$\sqrt5$は$P=(2/\sqrt5,1/\sqrt5)$で達成する。従って最短距離は$\sqrt5-1$。一方、第一象限では$c+s\geq1$で$2c+s\geq1$、等号は$c=0,s=1$だけ。従って最長距離は$2$、点は$(0,1)$。

方法を比べ、次の判断へ進む

距離の二乗は非負なので、最後に平方根へ戻しても大小は保たれます。最長側で全円の反対向きの点を使うと、第一象限という条件を失います。
円上の一次式なら合成と図形、円上の二次式なら二倍角や平方、円と直線の交点なら原点と直線の距離が候補です。$Ax+By=d$は$(A,B)\ne(0,0)$で距離$|d|/\sqrt{A^2+B^2}$を半径と比較できますが、円弧なら交点の所属をさらに確かめます。傾きを使う角の問題では鉛直線を別にします。

別の問題でも使う判断

図形の制約を利用して二次部分を消せるか調べる。軌跡では消去式が必要条件を与えるだけなので、候補点から三角値を逆算し、元の角の範囲まで実現する。


条件を変えて確かめる

$-\pi/2\leq\theta\leq\pi/2$で$x=2\cos\theta+\sin\theta,y=\cos\theta-2\sin\theta$とする。軌跡を求め、逆向きも示せ。


確認問題の解答と比較を開く

$x^2+y^2=5$、$2x+y=5\cos\theta\geq0$。逆にこの二条件を満たす点で$c=(2x+y)/5,s=(x-2y)/5$とおけば$c^2+s^2=1,c\geq0$なので、指定区間の角で実現する。従ってその閉じた半円周。

面積を積の最大値へ移す場合

三点$A=(0,0),P=(u,v),Q=(p,q)$の面積は$|uq-vp|/2$です。$r=\sqrt{u^2+v^2}\gt 0$なら$\cos\gamma=u/r,\sin\gamma=v/r$として、角$\gamma$を引いた座標で$AP$は横向きになり、$Q$の高さは$|q\cos\gamma-p\sin\gamma|=|uq-vp|/r$。底辺$r$を掛けて二で割ると導けます。$P=A$なら面積零で式も同じです。原点でない$A$には、他二点から$A$の座標を引いて使います。ベクトルの知識は要りません。
円上の三点なら、座標の面積公式から正弦や余弦の積が現れます。ここでは二倍角で全部を和へする以外に、非負の積の上界を作る候補もあります。例えば$-1\leq t\leq1$で$(1-t)^3(1+t)$を最大にしたいとき、二つの因子の重複度が$3:1$なので、三つの$(1-t)/3$と一つの$1+t$を考えると和が定数$2$になります。
非負の四数$u,v,w,z$について、二数の相加相乗平均を二回使えば$uv wz\leq\{(u+v)/2\}^2\{(w+z)/2\}^2\leq\{(u+v+w+z)/4\}^4$。従って上の積は$27/16$以下で、等号は$(1-t)/3=1+t$、すなわち$t=-1/2$です。「積を小さくする」ために次数を下げるのではなく、「和が定数になるよう因子を割り当てる」ことで、最大値へつなげています。等号の値が元の像内にあることも確認しました。微分を学んだ後は増減を調べる別解もあります。

固定角は、円周角か余弦定理へ

$A=(-1,0),B=(1,0)$を$P=(x,y)$、$y\gt 0$から見込む角が$\pi/4$なら、円周角の定理で円弧を疑うか、余弦定理で角を距離へ移す候補があります。後者は円の中心がまだ見えない段階でも使えます。$r^2=x^2+y^2$と書くと$AP^2+BP^2=2(r^2+1)$で、余弦定理から$\cos\angle APB=(r^2-1)/(AP\,BP)$。また$(AP\,BP)^2=(r^2-1)^2+4y^2$です。
角が鋭角なので$r^2-1\gt 0$を残し、二乗すると$(r^2-1)^2=4y^2$。$y\gt 0$から$r^2-1=2y$、従って$x^2+(y-1)^2=2$、$y\gt 0$。逆にこの円弧の点は$r^2-1=2y\gt 0$で、余弦定理の余弦値が$1/\sqrt2$となるから元の角を満たします。符号を捨てたもう一つの円弧は補角$3\pi/4$に対応します。正弦や二乗だけでは補角を区別できないため、指定角の符号を保持します。
この方法には数学Ⅰの余弦定理を使います。円周角の別解には数学A・図形の性質があると便利ですが、必須ではありません。

直線のなす角は、方向の正接へ

有限な傾きが$m_1,m_2$なら、各直線の方向角を$\alpha,\beta$として$\tan\alpha=m_1,\tan\beta=m_2$です。方向の差の正接は、分母が非零なら$\tan(\beta-\alpha)=(m_2-m_1)/(1+m_1m_2)$。求めるのが鋭角なら、二直線の向きの取り方による符号を消して絶対値を取ります。$1+m_1m_2=0$なら余弦の差の加法定理から直角となり、正接は定義されません。
最初から角そのものを求める必要はありません。傾きが既に正接の情報を与えているため、角差の正接へ直接渡せるのが、この候補を選ぶ理由です。鉛直線には有限な傾きがないので、方向角$\pi/2$ともう一方の方向から読むか、垂直な方向の座標を使います。傾きの式へ無限大を数として代入しません。

実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

定着・復習:第3回・問題(23)、第3回・問題(33)、第3回・問題(34)

転移:第3回・問題(35)、第3回・問題(47)

総合:第3回・問題(40)、第3回・問題(43)、第3回・問題(46)、第3回・問題(54)、第3回・問題(63)、第3回・問題(74)、第3回・問題(75)

§15 座標の交換と回転を、鏡映へまとめる

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、図形と方程式、いろいろな式

例題

曲線$C:y=x^3+2x$と$D:x=y^3+2y$を考える。$D$を原点の周りに角$\alpha$だけ回した曲線と$C$の交点を調べたい。ただし$0\leq\alpha\leq\pi/2$。どんな固定条件へ移せるか。

問題のどこを見るか

二式の$x,y$が交換されています。逆の式を直接回転して連立すると三次式が混ざりますが、座標の交換は直線$y=x$での鏡映です。「鏡映してから回転」を一つの鏡映へまとめられれば、交点の位置を先に絞れます。

何を先に試すか

座標交換は鏡映です。回転と合成した鏡映軸を作れば、二つの三次式の連立より低い計算で済む可能性があります。ただし軸を作るだけでは交点を軸上に絞れず、増加曲線の弦の方向との比較を次に使います。

例題の解答を開く

偏角$t$の点は、$y=x$で鏡映して$\pi/2-t$、さらに回転して$\alpha+\pi/2-t$へ移る。これは角$\psi=\pi/4+\alpha/2$の軸での鏡映である。

交点$P$の鏡映像$Q$も$C$上にある。$x^3+2x$は、$u\gt v$で差が$(u-v)(u^2+uv+v^2+2)\gt 0$なので狭義増加。$P\ne Q$なら弦$PQ$は鏡映軸に垂直で、傾きは負または水平となるが、増加曲線の相異なる二点の弦は正の傾きなので矛盾。従って交点は鏡映軸上に限られる。軸上の$C$の点は逆に全て交点になる。

$\alpha\lt \pi/2$なら$m=\tan\psi$として$x(x^2+2-m)=0$へ移る。$m\leq2$では原点だけ、$m\gt 2$では原点と$(\pm\sqrt{m-2},\pm m\sqrt{m-2})$。$\alpha=\pi/2$の軸は$x=0$なので原点だけ。

方法を比べ、次の判断へ進む

「回転するから複素数を使う」と決める必要はありません。ここでは偏角の変化と、増加曲線の弦の向きだけで、高次の連立を避けられました。狭義増加とは$u\gt v$なら$f(u)\gt f(v)$、非減少とは$f(u)\geq f(v)$のことです。弦の正の傾きには前者を使います。
基本の座標回転も加法定理から作れます。点$(x,y)=(r\cos t,r\sin t)$を角$\alpha$だけ回すと$(x\cos\alpha-y\sin\alpha,x\sin\alpha+y\cos\alpha)$です。原点では$r=0$で同じ式となります。中心が$(p,q)$なら、先に$(p,q)$を引いて回し、最後に足して戻します。短い一回の変換ならこの座標式で十分で、未習の複素数平面を導入する必要はありません。

別の問題でも使う判断

座標交換→鏡映、回転との合成→固定軸。曲線の単調性が鏡映された二点の存在を妨げるとき、交点を軸へ絞れる。どんな曲線にも適用できる規則ではなく、弦の向きが衝突する条件が必要。

鏡映の交点を軸上へ絞るには、軸の発見だけでは足りません。例えば原点中心の円をある直径に関して鏡映すると同じ円になり、軸外の点も全て交点です。今回は「異なる二点の弦の方向」と「軸に垂直な方向」が両立しないことを使っています。この矛盾が失われる曲線や軸の角へ変わったら、通常の連立や別の交点判定へ切り替えます。


条件を変えて確かめる

この例で$\alpha=\pi/6$と$\pi/3$の交点数を求めよ。


確認問題の解答と比較を開く

前者は$m=\tan(\pi/3)=\sqrt3\lt 2$なので一個。後者は$m=\tan(5\pi/12)=2+\sqrt3\gt 2$なので三個。端の鉛直軸へ、そのまま正接を代入してはいけない。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

総合:第3回・問題(42)

§16 「存在」と「全て」を読み、選ぶ順序を保つ

必要な履修:数学Ⅰ・集合と命題、二次関数、数学Ⅱ・三角関数

例題

$F(\theta)=\sin^2\theta-\cos\theta$について、(1)全ての角で$F(\theta)\geq d$、(2)$F(\theta)=d$となる角がある、という二条件を$d$の範囲へ直せ。さらに、全ての実数$a$で$a\sin\theta+\cos\theta=0$となる角が、それぞれ存在するか。一つの共通の角はあるか。

問題のどこを見るか

「全て」は最も不利な値、「ある」は実際に取る値への所属です。また、角を$a$ごとに選び直せるか、一角を先に固定するかでも条件が変わります。式変形より先に、誰が何の後で選ばれるかを読みます。

何を先に試すか

「全て」なら最小値、「存在」なら値域への所属という別の情報が必要です。この翻訳を先にすれば、不要な根の列挙を減らせます。「各パラメータで角を選べる」と「同じ角が全パラメータに通用する」は別に検査します。

例題の解答を開く

前節までの平方完成から$F$の値域は$[-1,5/4]$。(1)$d\leq-1$、(2)$-1\leq d\leq5/4$。

$a\sin\theta+\cos\theta$は振幅$\sqrt{a^2+1}\gt 0$で、各$a$ごとに零点がある。共通の角があるなら$a=0$から$\cos\theta=0$、$a=1$から$\sin\theta=0$も必要となり、二乗和$1$に矛盾する。

方法を比べ、次の判断へ進む

最小値と最大値があることだけでは、一般の関数が中間の全値を取るとは限りません。ここでは区間上の二次関数なので、その枝の像から全ての中間値が実現すると分かります。開区間なら、端の値が存在条件に含まれるかも確かめます。
合成関数へ条件を移す場合も、入力の像が仮定の範囲に入ることが必要です。$f$が$[-1,1]$上の非減少な奇関数なら$f(0)=0$で$t f(t)\geq0$。さらに$|f(t)|\leq1$なら$0\leq\cos\theta f(\cos\theta)\leq|\cos\theta|$です。上界だけから非負性まで推論せず、奇性と単調性を別の役割として使います。
端を取らない値域でも「全て」の条件は判断できます。$0\lt \theta\lt \pi/2$の正弦の値域は$(0,1)$で、最大値はありません。それでも全ての角で$\sin\theta\leq k$となる条件は$k\geq1$です。$k\lt 1$ならそれより大きい正弦値が実現するからです。一方、$\sin\theta=k$となる角の存在条件は$0\lt k\lt 1$。上界を使う要求と、値そのものの実現を使う要求を区別し、未実現の端を「最大」と呼ばないようにします。

別の問題でも使う判断

全称→最小・最大、存在→像への所属、共通実現→同じ変数で同時に条件を満たすこと。条件を関数へ代入するときは入力範囲と掛ける係数の符号を確認する。


条件を変えて確かめる

$|f(t)|\leq1$だけでは$t f(t)\geq0$を言えない反例を一つ挙げよ。また、全実数の角で$\sin\theta+\cos\theta\leq k$となる条件を求めよ。


確認問題の解答と比較を開く

例えば$f(t)=-t$は絶対値の上界を満たすが、$tf(t)=-t^2\lt 0$となる。後者は最大値$\sqrt2$を使い$k\geq\sqrt2$。存在条件$\sin\theta+\cos\theta=k$なら、代わりに$-\sqrt2\leq k\leq\sqrt2$となる。

回転する領域の「どれか」と「全部」

楕円盤$x^2/4+y^2\leq1$を全ての角だけ回すとき、どれかに入る点全体は半径$2$の円盤、全てに入る点全体は半径$1$の円盤です。前者は長軸を点の方向にそろえれば十分、後者は短軸を点の方向にそろえた場合まで耐えることが必要で、半径$1$以内なら全方向で十分です。
境界の楕円だけを回すと、どれかに乗る点は半径$1$から$2$までの円環ですが、全ての境界に乗る点はありません。点の方向を長軸にそろえると半径$2$、短軸なら半径$1$が必要になり、同時には満たせないからです。「どれか」は和集合、「全部」は共通部分と呼びます。領域と境界線の取り違えも、存在と全ての読み違えと同じように結論を変えます。

実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

転移:第3回・問題(39)

総合:第3回・問題(36)、第3回・問題(43)、第3回・問題(67)、第3回・問題(73)、第3回・問題(75)

§17 一つの配置で、複数の境界を同時に満たす

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、図形と方程式、数学Ⅰ・不等式

例題

三角形$x\leq1,y\leq1,-x-y\leq1$へ、横の辺$2a$、縦の辺$2b$($a,b\gt 0$)の長方形を、向きを保って平行移動して入れたい。可能な条件を求めよ。

問題のどこを見るか

四頂点と三辺を個別に調べると条件が十二個になります。境界は一次式なので、各境界方向に最も出る頂点を先に選べば三条件へまとめられます。それぞれの条件に適する中心が別々にあるだけでは不十分で、同じ中心を選ぶ必要があります。

何を先に試すか

一次の境界は図形上の最大値で全頂点を一度に検査できます。共通の中心の未知数を残した三不等式を作り、係数の関係で消します。必要条件が短く出ても、実際の一中心を作る仕事は省けません。

例題の解答を開く

中心を$(u,v)$とすると、必要十分条件は$u+a\leq1,v+b\leq1,-u-v+a+b\leq1$。足すと$2(a+b)\leq3$が必要。

逆にこの条件があれば$\delta=\{3-2(a+b)\}/3\geq0$とし、$u=1-a-\delta,v=1-b-\delta$を選ぶ。このとき三つの左辺は全て$1-\delta$なので、長方形全体が入る。従って条件は$a+b\leq3/2$。三辺全てに接する条件は$\delta=0$、すなわち$a+b=3/2$である。

方法を比べ、次の判断へ進む

三辺の一次式の和が零であるため、中心の二変数を足し算で消せました。さらに、残った余裕を三方向へ均等に配って、一つの中心を構成しました。必要条件を足しただけで十分と結論するのは危険です。
長方形の半辺を$a,b$、第一の辺の方向を$\theta$とします。中心を原点に置いた各点の座標は

$\displaystyle x=\xi\cos\theta-\eta\sin\theta,\quad y=\xi\sin\theta+\eta\cos\theta,\quad -a\leq\xi\leq a, -b\leq\eta\leq b.$


境界が$Ax+By\leq d$($(A,B)\ne(0,0)$)なら、左辺の最大値は

$\displaystyle h=a|A\cos\theta+B\sin\theta|+b|-A\sin\theta+B\cos\theta|.$


$\xi,\eta$の係数の符号に合わせ、それぞれ$\pm a,\pm b$の大きい側を選べば出ます。中心を$(u,v)$へ動かすと、条件は$Au+Bv+h\leq d$です。
直線に垂直な方向を法線方向といいます。$\rho=\sqrt{A^2+B^2}$、$A/\rho=\cos\beta,B/\rho=\sin\beta$と書けば、$h=\rho\{a|\cos(\theta-\beta)|+b|\sin(\theta-\beta)|\}$。よく使う$a|\cos\gamma|+b|\sin\gamma|$は、係数の二乗和が$1$となるようにそろえた境界での半幅です。係数を$\rho$で割るなら、右辺$d$も同時に割ります。
例題の境界$-x-y\leq1$は係数の長さが$\sqrt2$です。横・縦の長方形で左辺の最大増分は$a+b$であり、勝手に$(a+b)/\sqrt2$へ変えません。単位方向を使うなら$(-x-y)/\sqrt2\leq1/\sqrt2$と、条件全体をそろえる必要があります。ここで三角関数は、向きを境界の一次式の最大値へ翻訳します。

見た目を変えて、同じ判断を試す

もう一つの例題

中心が原点、半辺が$1,2$、第一の辺の方向が$\pi/6$である長方形を考える。(1)長方形上の$-x-y$の最大値を求めよ。(2)境界を$(-x-y)/\sqrt2\leq1/\sqrt2$と書き直すと、包含条件は変わるか。

(1)は距離を求めているのではなく、境界の左辺という一次式の最大値を求めています。係数$A=B=-1$をそのまま入れる候補と、左右両辺を単位方向へそろえる候補があり、同じ条件を出すか比較します。

もう一つの例題の解答を開く

(1)$h=|-(\sqrt3+1)/2|+2|(1-\sqrt3)/2|=(3\sqrt3-1)/2$。

(2)左辺の最大値は$h/\sqrt2$。条件$h/\sqrt2\leq1/\sqrt2$は$h\leq1$と同じなので、包含条件は変わらない。この長方形は$h\gt 1$なので、指定された中心ではどちらの表示でも境界を越える。


係数の長さをそろえる操作は、同じ直線を別の式で書く操作です。左辺だけの倍率を変えると直線が移動し、別の配置条件になります。複数の境界を足す段階でも、何倍した式を使っているかを保ってください。

別の問題でも使う判断

境界の一次式→図形全体での最大値→共通中心の不等式→係数の関係で消去→逆に配置を構成。三つの方向が和零で二方向が独立という構造を使ったので、任意の多角形へ「足せば十分」と一般化しない。境界が$Ax+By\leq d$なら、その係数で最大値を出す。単位方向の半幅を使う際は、右辺まで同じ倍率でそろえる。

三辺で使った逆構成では、二つの独立な方向の一次式の値を指定して一つの中心を決め、三つ目を三式の和の関係で確かめています。独立とは二方向が平行でなく、二本の連立一次方程式が一つの解を持つことです。四辺以上では残る条件を同じ中心が満たすかを別に検査しなければなりません。円・帯・四角形でも、各境界での最大を作る入口は使えますが、中心を消した和が十分条件かは図形ごとの仕事です。


条件を変えて確かめる

長方形を正方形$[-1,1]\times[-1,1]$へ同様に入れる条件は何か。$a+b\leq2$だけで足りるか。

さらに、半辺長が$r\gt 0$の正方形の一辺の方向を$\theta$とする。これを平行移動して$[-1,1]^2$へ入れられるための$r,\theta$の必要十分条件を求めよ。先の三角形の場合と同じ一つの中心消去条件で終えてよいかも説明せよ。


確認問題の解答と比較を開く

必要十分条件は$a\leq1,b\leq1$。例えば$a=3/2,b=1/2$は和の条件を満たすが横幅が入りきらない。四つの境界では、反対向きの二条件も別に比較する必要がある。

この違いを中心$(u,v)$の条件で確かめると、$u+a\leq1,-u+a\leq1,v+b\leq1,-v+b\leq1$です。四式の和は$a+b\leq2$を与えますが、最初の二式から$a\leq1$、後の二式から$b\leq1$も必要です。逆にその二条件なら$u=v=0$で全式が成立します。足し合わせた一条件より、対になった二方向の条件の方が強い反例です。

回転した正方形の$x,y$方向の半幅はともに$r(|\cos\theta|+|\sin\theta|)$である。中心$(u,v)$の四条件から、必要条件は$r(|\cos\theta|+|\sin\theta|)\leq1$。逆にこの条件なら$u=v=0$で全体が入るから十分。ここでは対向する辺の条件を対にして中心を除き、同じ中心を構成する。三角形の三法線の和を使った理由をそのまま四辺へ流用したのではない。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

総合:第3回・問題(75)

§18 有理・無理では、有限回の公式が橋になる

必要な履修:数学Ⅰ・数と式、数学Ⅱ・三角関数

例題

$\tan(\pi/8)$が無理数であることを示せ。

問題のどこを見るか

小数の様子では無理数を証明できません。角を二倍すると既知の正接$1$になるので、倍角を使えば、未知の値の四則演算と既知の無理数が結び付きます。

何を先に試すか

数値近似では有理性を判定できません。倍角を有理式にすれば、有理数だという仮定を保ったまま既知値へ渡せます。分母の条件を確保し、有限回の式から矛盾が出る角を選ぶのが目的です。

例題の解答を開く

$t=\tan(\pi/8)$は$0\lt t\lt 1$。倍角から$2t/(1-t^2)=1$、従って$(t+1)^2=2$。$t+1\gt 0$なので$t+1=\sqrt2$。$t$が有理なら$\sqrt2$も有理となり矛盾する。

方法を比べ、次の判断へ進む

「角が$\pi$の有理数倍」と「三角値が有理」は別の情報です。正接の倍角を何回も使う場合、各回の分母が零でないことを確認します。動く指数をまとめて扱いたいときは、後半の多項式漸化式が次の候補になります。

別の問題でも使う判断

倍角・加法で既知の値へ届くなら、仮定した有理性が四則演算で保たれることを使う。分母や平方根の符号まで確認してから背理法へ接続する。


条件を変えて確かめる

$\sin(\pi/4)$と$\cos(\pi/3)$では、有理・無理の結論は同じか。


確認問題の解答と比較を開く

前者は$\sqrt2/2$で無理、後者は$1/2$で有理。同じく$\pi$の有理数倍の角でも、三角値の有理性は異なる。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

総合:第3回・問題(40)


章の終わりに確かめる

別々の角や中心で条件を満たしただけでは答えにならない場合と、条件から逆に元の配置を作る段階を区別できるか確認してください。

比較練習 式から条件と対応を戻す

方法名を見ずに、最初に使う条件と、操作後に残る仕事を述べてから計算してください。

比較問題 (5)

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅰ・二次方程式

比較問題

$(\sin\theta-1/2)^2=1/4$の相異なる解の個数を、(1)$0\leq\theta\lt 2\pi$、(2)$0\leq\theta\leq2\pi$、(3)$0\leq\theta\leq\pi/2$でそれぞれ求めよ。


比較問題の解答を開く

$t=\sin\theta$とすると根は$t=0,1$。

(1)$0$に$0,\pi$、$1$に$\pi/2$が対応するので三個。(2)$0$には$2\pi$も加わり四個。(3)$0,1$に一角ずつで二個。


選択理由と条件の違いを開く

三つとも二次式の根は同じです。変わるのは、各値を元の区間で何回取るかです。従って二次方程式を三回解き直す必要はなく、区間ごとの対応表を作り替えます。閉端を加えた(2)では、同じ終辺の$0,2\pi$も異なる実数です。このような誤りなら、二次方程式の公式を復習するより、角と置換値の対応を復習します。

比較問題 (6)

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、図形と方程式

比較問題

$x=\cos\theta+\sin\theta,y=\cos\theta-\sin\theta$とする。軌跡を(1)$0\leq\theta\leq\pi/2$、(2)$0\leq\theta\leq\pi$で求めよ。円の方程式だけで足りるかも述べよ。


比較問題の解答を開く

二乗和から$x^2+y^2=2$。逆に$\cos\theta=(x+y)/2,\sin\theta=(x-y)/2$。

(1)両三角値が非負なので、条件は$x^2+y^2=2,x\geq|y|$。逆にこの条件から二乗和$1$の非負の二値ができ、第一象限の角で実現する。

(2)正弦だけが非負なので、条件は$x^2+y^2=2,x-y\geq0$。逆にこの条件から単位円の上半円の点を作れ、指定角で実現する。円全体ではどちらも広すぎる。


選択理由と条件の違いを開く

座標を消去すると角の範囲を失います。円の式が出た時点では、まだ必要条件しか出ていません。残すべき符号を角の区間から読み、座標の逆算でその符号へ戻します。最後の「その角を実際に選べるか」が十分性です。基本的な連立と単位円で完結し、軌跡だからといってベクトルを必須にする必要はありません。

比較問題 (7)

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅰ・集合と命題

比較問題

$p(\theta)=\sin\theta+\cos\theta$とする。(1)$p(\theta)=a$となる角がある条件、(2)全ての角で$p(\theta)\leq a$となる条件を求めよ。(3)各$a\in[-\sqrt2,\sqrt2]$に対して角を選べることと、一つの角が全ての$a$に対して$p(\theta)=a$を満たすことは同じか。


比較問題の解答を開く

$p$の値域は$[-\sqrt2,\sqrt2]$なので、(1)$-\sqrt2\leq a\leq\sqrt2$、(2)$a\geq\sqrt2$。

(3)前者は正しい。後者なら同じ値$p(\theta)$が例えば$a=0$と$a=1$に等しくなり矛盾するため、正しくない。


選択理由と条件の違いを開く

存在には取り得る値の全部、全称の上界には最も大きい値が必要です。三角関数の合成は両方へ同じ値域を渡しますが、渡した後の判断が違います。(3)では、角を$a$ごとに選び直してよいかが核心です。一つ一つの条件を実現できることは、一つの共通の配置を作れることを保証しません。図形の包含や複数条件の同時実現でも同じ読み方を使います。

比較問題 (8)

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅰ・二次方程式

比較問題

$p=\sin\theta+\cos\theta$とする。(1)$p^2/(1+p)=2$となる$0\leq\theta\lt 2\pi$の角の個数を求めよ。(2)$(1+\sin2\theta)/(\sin\theta+\cos\theta)$の全実数での値域を求めよ。


比較問題の解答を開く

(1)まず$p\ne-1$。分母を払うと$p^2-2p-2=0$で、$p=1\pm\sqrt3$。像$[-\sqrt2,\sqrt2]$にあるのは$1-\sqrt3$だけで、$-1$でもない。像の内点なので二角が対応する。

(2)元の分母は$p\ne0$。分子は$p^2$だから式の値は$p$だが、$p=0$は除く。従って値域は$[-\sqrt2,0)\cup(0,\sqrt2]$。


選択理由と条件の違いを開く

繰り返す一次式を残せば、二つとも三角関数から実数の商へ移ります。その後は三つを別々に確認します。実数の方程式の根、置換の像への所属、元の分母の非零です。(2)では約分後の式だけを見て全像を採用すると、元の式が値を持たない$0$を入れてしまいます。この条件を保持する仕組みが、より複雑なパラメータの商でも同じように働きます。

第5章 周期・回転・角度を、別の単元へ記録する

方向別の回数、倍角の多項式、回転する座標、内積へ三角関数の情報を渡します。各節の追加履修を確認し、未習の節は後へ回せます。
ここからは追加の履修を使います。第1章から第4章の基本体系は、ベクトル・複素数平面・数学Ⅲを前提にしません。未習の節は後へ回して構いません。

§19 周期を見たら、方向別の回数と時系列を区別する

必要な履修:数学A・場合の数と確率、数学B・数列、数学Ⅱ・三角関数

例題

原点から、毎回独立に角$0,2\pi/3,4\pi/3$の三方向から一つを等確率で選び、距離$1$進む。$n$回後に原点にいる確率を求めよ。

問題のどこを見るか

方向は無限の角ではなく三種類です。各歩の順序は位置の和に影響しないので、方向別の回数を導入すると終点条件を圧縮できます。三角関数の仕事は、方向を座標へ翻訳するところです。

何を先に試すか

独立に方向を選ぶなら終点には方向別の回数だけで足ります。回転と前進を選ぶなら、歩ける方向が時系列に依存し、同じ回数でも全列を許せません。一回の操作の意味が、記録する情報の量を決めます。

例題の解答を開く

方向別の回数を$a,b,c$とすると、終点は$(a-(b+c)/2,\sqrt3(b-c)/2)$。原点の条件は$a=b=c$である。従って $n$が$3$の倍数でないなら確率$0$。$n=3m$なら、各方向$m$回となる列は${}_{3m}C_m\,{}_{2m}C_m=(3m)!/(m!)^3$通りなので、確率は$\displaystyle(3m)!/(3^{3m}(m!)^3)$。

方法を比べ、次の判断へ進む

終点条件を得た後は整数と場合の数です。一方、「進むか向きを変えるか」を選ぶ問題では、進んだ方向がそれ以前の回転に依存します。最初から三方向を独立に選んだ列として数えると、許されない列が混ざります。
終点の位置に加えて最後の向きも指定されたら、まず回転回数を一周の周期で分類します。その条件と、方向別の移動回数の座標条件を別々に作り、同じ操作列で同時に満たします。回転の間の移動数をブロックで書けば、零回の移動も含めて履歴を保持できます。独立なのが操作の選択なのか移動方向なのかを、出題文へ戻って確かめます。

別の問題でも使う判断

角が$\pi$の有理数倍なら有限回転周期を持ち、無理数倍なら有限個の方向へまとめられるとは限らない。まず一操作が位置と向きのどちらを変えるかを記録する。方向が有限なら状態を有限個へ分ける。独立な方向選択は回数の組、逐次回転は進む位置や回転の間の区間、状態の遷移は確率の漸化式へ渡す。零歩の経路や零回の操作も条件に応じて含める。


条件を変えて確かめる

右向きから出発し、「距離$1$進む」「その場で$2\pi/3$回す」を独立に等確率で六回選ぶ。原点へ戻る確率を求めよ。


確認問題の解答と比較を開く

進む回数は三の倍数。零回なら全部回転の一列。六回なら回転がなく不可能。三回なら回転も三回で、各方向へ一回ずつ進む必要がある。三つの回転で区切られた四区間の方向は$0,1,2,0$。中央二区間には一歩ずつ、最初と最後の区間の合計に一歩なので二列。従って$3/2^6=3/64$。回転回数だけでは各方向の歩数を確定できない。

位置の三状態から、確率の漸化式へ

円上で毎回$\pm2\pi/3$回転するなら、位置は角$0,2\pi/3,4\pi/3$の三状態に限られます。方向別の歩数を全て数える代わりに、欲しい状態へ次に戻れる確率を記録できます。角$0$から一回では戻れず、他二状態からはそれぞれ確率$1/2$で戻るので、帰還確率は$p_{n+1}=(1-p_n)/2$。数学Bの一次漸化式へ渡した後、一定値$1/3$を引けば等比数列になります。状態を少数へまとめられる周期と、次の操作の依存関係が、この方法の利用条件です。

実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

定着・復習:第3回・問題(51)、第3回・問題(70)

総合:第3回・問題(52)

§20 高倍角は、固定次数・変動次数・有理性で選び分ける

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、いろいろな式、数学B・数列(漸化式)、数学A・数学と人間の活動(整数の議論)

例題

$[-1,1]$内の方程式$16x^5-20x^3+5x=0$の実数解を求めよ。まず単なる求根に適した方法を選び、その後、解を角の余弦で表す方法と比べよ。

問題のどこを見るか

全て奇数冪で定数項がないため、まず$x$をくくれます。残りは$x^2$の二次式です。「実数解を求める」という要求だけなら、この見えている代数構造で直接終えられそうです。一方、係数は五倍角の多項式とも一致します。角による表示や次数を動かす規則まで欲しいかによって、この候補の価値が変わります。

何を先に試すか

単に根が欲しいときは、共通因子と$x^2$の二次方程式を先に試します。低次数で閉じ、余弦への置換の範囲や角から根への戻しを増やさないためです。角で解を整理したい、一般の$n$倍角へ広げたい、根の配置を一つの波で見たいときには、$x=\cos\theta$と多項式の漸化式が候補になります。係数の一致はその方法が使える根拠であり、常に最優先にする根拠ではありません。

例題の解答を開く

$x(16x^4-20x^2+5)=0$より、$x=0$または$y=x^2$が$16y^2-20y+5=0$を満たす。従って$y=(5\pm\sqrt5)/8$。両方とも$(0,1)$内だから、解は

$\displaystyle 0,\quad\pm\sqrt{\frac{5+\sqrt5}{8}},\quad\pm\sqrt{\frac{5-\sqrt5}{8}}.$

いずれも$[-1,1]$にあり、元の式を満たす。


角で表す別解を開く

$x\in[-1,1]$に対して一意な$\theta\in[0,\pi]$を$x=\cos\theta$で選ぶ。加法定理を繰り返して$\cos5\theta=16\cos^5\theta-20\cos^3\theta+5\cos\theta$だから、方程式は$\cos5\theta=0$。従って$\theta=(2j+1)\pi/10$($j=0,1,2,3,4$)で、解はその余弦である。$[0,\pi]$で余弦が一対一なので五つは相異なり、主解答の五根と一致する。

方法を比べ、次の判断へ進む

この例では、求根だけなら代数法が短く、角表示には五倍角法が適しています。変換後の出力を比べることが方法の優先順位です。高倍角の構造を知る意味は、一つの低次式を必ず遠回りに解くことではありません。
高倍角を作り直すには、加法定理の二式を足した

$\displaystyle \cos((n+1)\theta)+\cos((n-1)\theta)=2\cos\theta\cos n\theta$


を使います。$T_0(x)=1,T_1(x)=x$から、$n=1,2,\ldots$について$T_{n+1}(x)=2xT_n(x)-T_{n-1}(x)$と定めると、順に$T_2=2x^2-1,T_3=4x^3-3x,T_4=8x^4-8x^2+1,T_5=16x^5-20x^3+5x$となり、帰納的に$T_n(\cos\theta)=\cos n\theta$です。各$T_n$は$x$の多項式で、第一種チェビシェフ多項式と呼ばれます。
この規則は、次数$n$を動かす数列や全ての根の角表示、合成の関係$T_m(T_n(x))=T_{mn}(x)$($-1\leq x\leq1$)などへつながります。固定した二倍角・三倍角の問題なら既知の公式で十分です。添字が動くなら周期へ縮められるかを先に検査し、縮められない場合にもこの漸化式は使えます。

別の問題でも使う判断

低次数の求根には因数・偶奇の冪・二次式をまず検査します。高倍角の多項式化は、角の表示や一般次数の構造という出力が欲しいときに選べる候補です。周期を使うには角が$\pi$の有理数倍であるかを調べ、余弦値の有理性から角の有理性を決め付けません。


条件を変えて確かめる

(1)$T_4(x)=1/2$の$[-1,1]$内の解を表せ。(2)$T_m(T_n(x))=T_{mn}(x)$が成り立つ理由を説明せよ。


確認問題の解答と比較を開く

(1)$x=\cos\theta$、$0\leq\theta\leq\pi$とすると$\cos4\theta=1/2$。角は$\pi/12,5\pi/12,7\pi/12,11\pi/12$で、解はその余弦。(2)$x=\cos\theta$なら左辺も右辺も$\cos mn\theta$。二つの多項式の差が$[-1,1]$の無限個の点で零になるため恒等的に零で、実数全体でも一致する。ここでは「次数を超える個数の異なる根を持つ零でない多項式はない」という性質を使った。

有理性・相反式・余りへ渡した後の判断

$\theta/\pi$と$q=2\cos\theta$が有理なら、ある正整数$m$で$m\theta$は$2\pi$の整数倍になります。$C_0=2,C_1=q,C_{n+1}=qC_n-C_{n-1}$から、$n\geq1$で$C_n$は$q$の整数係数、最高次係数$1$の多項式です。従って$C_m(q)-2=0$。$q=p/r$を既約、$r\gt 0$として$r^m$を掛けると、最高次以外の項は$r$で割れるので$r$は$p^m$を割ります。既約性から$r=1$。三角関数は整数係数の式と有限の周期を用意し、最後は整数の割り切りです。$q\in[-2,2]$から候補は$-2,-1,0,1,2$で、各値は実現します。
次の相反式と単位円上の複素数の議論には、数学C・複素数平面を追加で使います。
相反四次式$z^4-az^3+bz^2-az+1$は、定数項から$z\ne0$なので$z^2$で割れます。$t=z+1/z$なら$t^2-at+b-2=0$。二根$t_1,t_2$が$[-2,2]$へ入る条件を調べれば、$(z^2-t_1z+1)(z^2-t_2z+1)$の全根が単位円上になる条件が出ます。逆向きは$t_j=2\cos\theta_j$と書けば$z=\cos\theta_j\pm i\sin\theta_j$で確かめられます。$t_j=\pm2$の重根を除く必要はありません。ただし単位円上にあることは有限回の乗法で$1$へ戻る保証ではありません。
多項式の余りでは、$1+x+\cdots+x^{m-1}$を法として$(x-1)(1+x+\cdots+x^{m-1})=x^m-1$から$x^m$を$1$へ置き換えられます。最後は次数$m-1$未満へさらに落とします。これは特定角の周期と似た構造ですが、数値を一つ代入しただけで余り全体が決まるわけではありません。
等差の角の和なら、例えば$2\sin x\sin((2k+1)x)=\cos2kx-\cos(2k+2)x$を足すと中間項が消えます。この形を候補にする根拠は、隣接する添字で同じ項が逆符号になることです。最後に$\sin x=0$を別に調べます。因子を掛けて消去を作ることと、その因子で割れることを分けてください。

実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

定着・復習:第3回・問題(49)

総合:第3回・問題(41)、第3回・問題(48)、第3回・問題(50)

§21 動く軸を固定するが、定数化を計算で確かめる

必要な履修:数学C・複素数平面、数学B・数列、数学Ⅱ・三角関数

例題

$z_{n+1}$は$z_n$を、原点を通り角$n\delta$の直線に関して鏡映した点とする。動く軸を固定するには、何を掛ければよいか。

問題のどこを見るか

鏡映軸が毎回同じ角だけ回るので、軸と一緒に座標を回す候補が出ます。複素数$q=\cos\delta+i\sin\delta$なら、$q^{-n}$を掛けて角$n\delta$を引けます。原点を通るかどうかは、変換の定数項に影響します。

何を先に試すか

軸の角が等差で動くなら、その回転を引く座標を試せます。係数が一定になるかを計算し、原点を通らない軸なら定数項も確認します。向きが周期的でも位置が周期的とは限らないため、最後は静止座標へ戻します。
回転座標の文字を先に教えられていなくても、更新式の係数に$n$倍の角が毎回同じ割合で増える形を探せます。点をその角だけ逆回転して比べると、係数の$n$依存を消せるか試せます。係数が定数になっても定数項が残る場合には平行移動が蓄積するので、周期を結論せず二回の更新を観察します。

例題の解答を開く

角$\beta$の直線に関する鏡映を導く。$p=\cos\beta+i\sin\beta$とすると、軸を実軸へ戻す回転は$p^{-1}$倍、実軸での鏡映は共役、元へ戻す回転は$p$倍である。従って$z$は$p\overline{p^{-1}z}=p^2\overline z$へ移る。$|p|=1$なので$\overline{p^{-1}}=p$を使った。

$q=\cos\delta+i\sin\delta$に対して、$z_{n+1}=q^{2n}\overline{z_n}$。$w_n=q^{-n}z_n$とおくと$w_{n+1}=q^{-1}\overline{w_n}$。二回作用させれば$w_{n+2}=w_n$なので、$w_{2m}=z_0,w_{2m+1}=q^{-1}\overline{z_0}$。従って$z_n=q^nw_n$。ただし$w_n$の周期と$z_n$の周期は別で、$q^n$まで調べる必要がある。

方法を比べ、次の判断へ進む

回転する法線と同じ角を引くことで係数が定数になりました。軸が原点を通らず、例えば回した座標で$x=1$なら鏡映は$w\mapsto2-\overline w$です。回転だけでなく平行移動の項も残ります。任意に動く軸でいつも定数化する、と一般化してはいけません。
垂線の足なら、軸を固定した後に実部を取る操作です。前の点と軸の角の差が一定なら、長さは一定の余弦倍、方向は一定回転となって等比数列へ渡せます。
例えば確認問題の軸の右辺$1$を$n$へ変えると、同じ回転座標でも$w_n=2n-q\overline{w_{n-1}}$で定数項が動きます。共役の係数が一定になったことだけでは、更新全体を定数化したとはいえません。残る項が周期的なら一周期分を合成する、一次的に動くなら原点を移す候補を比べ、計算で消えるかを確かめます。

別の問題でも使う判断

共通の回転が式の係数に現れる→同じ回転を引く→残る係数と定数項を実際に計算→定数係数なら数列へ。静止座標へ戻したときの周期・大きさ・出発点を再確認する。


条件を変えて確かめる

$q=\cos(\pi/3)+i\sin(\pi/3)$とする。$P_0$は原点。$P_n$は$P_{n-1}$を$x\cos(n\pi/3)+y\sin(n\pi/3)=1$に鏡映した点である。$w_n=q^{-n}z_n$の関係式を求め、$w_n$が周期二といえるか。


確認問題の解答と比較を開く

新座標の軸は$x=1$、前の点は$q^{-1}w_{n-1}$なので$w_n=2-q\overline{w_{n-1}}$。二回なら$w_n=w_{n-2}+2(1-q)$。$q\ne1$なので周期二ではなく、偶数項は等差になる。角が六回で一周しても、点の位置が周期六とは限らない。

投影では、長さと向きを別々に記録する

前の点の方向が$(n-1)\alpha$で、次の投影軸が$n\alpha$なら、長さは$\cos\alpha$倍です。$0\lt \alpha\lt \pi/2$ならこの係数は正なので、向きも$n\alpha$となります。出発点$(1,0)$からは$P_n=((\cos\alpha)^n\cos n\alpha,(\cos\alpha)^n\sin n\alpha)$。複素数で記録すれば公比$\cos\alpha(\cos\alpha+i\sin\alpha)$の等比和へ移ります。係数が負になる角では方向に$\pi$のずれが生じるため、同じ説明をそのまま使えません。

実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

転移:第3回・問題(53)

総合:第3回・問題(54)、第3回・問題(56)、第3回・問題(69)、第3回・問題(72)

§22 角度条件は、長さで割った内積へ移す

必要な履修:数学C・ベクトル、数学Ⅱ・三角関数

例題

$\vec u=(\cos\theta,\sin\theta,1)$、$\vec v=(\sin\theta,\cos\theta,-1)$のなす角$\varphi$の値域を求めよ。

問題のどこを見るか

欲しいのは二方向の角です。ベクトルの座標には正弦と余弦が入っていますが、二乗和から長さが一定と分かります。内積を長さで割れば、角を一つの三角値へ翻訳できます。

何を先に試すか

なす角は内積を二長さで割った余弦です。二乗和で長さを固定できれば、積の二倍角一つへ直ちに移れます。座標の傾きを使う方法では空間の角をそのまま扱えず、非零長さの確認も必要です。

例題の解答を開く

両ベクトルの長さは$\sqrt2$で非零。内積は$2\sin\theta\cos\theta-1=\sin2\theta-1$なので、$\cos\varphi=(\sin2\theta-1)/2\in[-1,0]$。なす角は$0\leq\varphi\leq\pi$で余弦は一対一に減少するから、値域は$[\pi/2,\pi]$。全実数の角での正弦が全ての中間値を取るので、候補の全実数の角度が実現する。

方法を比べ、次の判断へ進む

内積に三角関数の値域を適用するだけでは、角の値域にはまだ戻っていません。なす角の範囲を決め、余弦がそこで一対一であることを使います。零ベクトルなら角が定義されないので、長さで割る前に確認が必要です。
角を求める以外にも、垂直という条件なら内積零、距離の二乗ならベクトルの差の二乗へ移ります。例えば$|\vec u|=|\vec v|$の二点の中点は、位置ベクトル$(\vec u+\vec v)/2$を持ち、直線の方向$\vec v-\vec u$との内積が$(|\vec v|^2-|\vec u|^2)/2=0$です。等距離なら中点が垂線の足の候補になることを、この一般式から認識できます。求める図形条件に合わせて内積を作る入口を選びます。

別の問題でも使う判断

長さと内積→一つの三角値→正確な像→角の単調枝へ戻す。方向・角度の条件で内積を選ぶのは、二乗和や倍角が長さと内積を簡単にする場合に特に有利。平面の二直線だけなら傾きと加法定理で自然に処理でき、ベクトルを必須にする必要はない。


条件を変えて確かめる

同じ設定で$\varphi=2\pi/3$となる$0\leq\theta\lt 2\pi$の角を全て求めよ。


確認問題の解答と比較を開く

$\cos\varphi=-1/2$なので$\sin2\theta=0$。$2\theta\in[0,4\pi)$から$\theta=0,\pi/2,\pi,3\pi/2$。角度条件から倍角の方程式へ移り、最後に元の角の範囲へ戻す。

複素数平面・ベクトルを使わない投影の和

追加の履修:数学B・数列、数学Ⅲ・極限。$c=\cos\alpha,s=\sin\alpha$、$0\lt \alpha\lt \pi/2$とする。上の一定角の投影で得られる点$P_n=(c^n\cos n\alpha,c^n\sin n\alpha)$の座標を足したいとき、回転を二つの実数の式のまま記録できます。有限和の座標を$(U_N,V_N)$とし、一項ずらした和へ加法定理を適用すると、$s^2U_N+csV_N=1-c^{N+1}\cos((N+1)\alpha)$、$-csU_N+s^2V_N=-c^{N+1}\sin((N+1)\alpha)$です。二つの一次連立を解いてから$N\to\infty$とすれば、右辺の最後の項が零へ近付くため、極限座標は$(1,c/s)$となります。収束前に無限和の式を仮定する必要はありません。
一項ずらしても同じ回転・縮小が全項に働くことが、この連立を作る認識条件です。複素数の公比にすると計算を圧縮できますが、この座標の方法に複素数平面・ベクトルの履修は不要です。

実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

総合:第3回・問題(55)、第3回・問題(69)


章の終わりに確かめる

三角関数がどんな情報を提供し、数列・整数・確率・複素数・ベクトルが何を処理するかを分けて説明してください。

第6章 関数・積分・極限へ渡し、必要な条件を選び直す

三角関数だけでは消えない変数、積分の微分因子、断面の集合、極限の変化幅を読みます。公式を追加する前に、現在の式をどの単元の問題として扱うかを選びます。

§23 通常の変数が残るなら、関数の増減へ渡す

必要な履修:数学Ⅲ・微分法と極限、数学Ⅱ・三角関数

例題

$0\lt x\lt \pi$で$x=a\sin x$が正の解を持つ条件と、その個数を調べよ。

問題のどこを見るか

$x$と$\sin x$が混在し、三角関数だけの多項式へはまとまりません。正の区間では$\sin x\gt 0$なので、パラメータを$a=x/\sin x$へ分離すると、水平線との交点数に変換できます。

何を先に試すか

通常の変数$x$が残るため、正弦だけへの置換では$x$を失います。正の範囲でパラメータを分離すれば、単調な関数と水平線の交点へ移れます。先に零の解と除算の端を残します。

例題の解答を開く

$g(x)=x/\sin x$とすると$g'(x)=(\sin x-x\cos x)/\sin^2x$。分子$h(x)=\sin x-x\cos x$は$h(0)=0,h'(x)=x\sin x\gt 0$なので$h(x)\gt 0$。従って$g$は狭義増加。$\lim_{x\to0+0}g(x)=1$、$\lim_{x\to\pi-0}g(x)=+\infty$から、$a\gt 1$のときだけ正の解を一個持つ。

方法を比べ、次の判断へ進む

最初の微分に三角関数の符号だけでは決められない分子が残りました。その分子をもう一度関数として分類し、導関数と端の値へ渡しています。微分したから終了ではありません。
増加と導関数が常に正とは同じ条件ではありません。導関数が非負で、零になる点が孤立していれば、区間のどこかでは増えているので狭義増加になれます。一方、合成関数の導関数では外側と内側の両方を微分し、片方の符号だけで結論を出さないようにします。

別の問題でも使う判断

パラメータを分離→定義域と端の極限→微分→符号が未決定の部分を再分類→水平線との交点数。分離で割る量が零になる解は最初に別に扱う。微分は目的を増減・極値・解の個数へ絞って選ぶ。


条件を変えて確かめる

$F_a(x)=x-a\sin x$は$[-\pi,\pi]$でいつ狭義増加か。単に$F_a'(x)\gt 0$を要求すると境界を落とさないか。


確認問題の解答と比較を開く

$F_a'(x)=1-a\cos x$なので$|a|\leq1$なら非負。零は$a=1$の$x=0$、$a=-1$の$x=\pm\pi$に限られ、どの非自明な区間でも正の部分があるので狭義増加。$a\gt 1$なら零の近傍、$a\lt -1$なら端に近い開区間で導関数が負なので不適。答えは$-1\leq a\leq1$。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

総合:第3回・問題(57)

§24 積分の公式は、残る微分と積の形で選ぶ

必要な履修:数学Ⅲ・積分法、数学Ⅱ・三角関数

例題

(1)$\int_0^{\pi/2}\sin^3x\cos^2x\,dx$。(2)$\int_0^{\pi/2}\sin^2x\cos^2x\,dx$。(3)$\int_0^\pi\sin3x\cos2x\,dx$を求めよ。

問題のどこを見るか

(1)は奇数冪から正弦を一つ残すと$\cos x$の微分が付く。(2)は両方偶数で、この処理では根号を残すので、次数を下げる候補へ。(3)は異なる角の積で、積和なら項ごとに積分できます。目的は角を統一することではなく、既知の原始関数へ移すことです。

何を先に試すか

積の一因子を微分として残せる奇数冪なら置換を先に試します。偶数冪や角の異なる積なら、倍角・積和で原始関数の分かる和へします。半角正接は広く使えますが、簡単な微分因子があるときには計算を増やすことがあります。

例題の解答を開く

(1)$u=\cos x$、$du=-\sin x\,dx$として$\int_0^1(u^2-u^4)\,du=2/15$。

(2)$\sin^2x\cos^2x=(1-\cos4x)/8$より$\pi/16$。

(3)$\sin3x\cos2x=(\sin5x+\sin x)/2$より$(2/5+2)/2=6/5$。

方法を比べ、次の判断へ進む

置換では式だけでなく微分$dx$と両端を一緒に変えます。根号$\sqrt{1-x^2}$なら$x=\sin t$も候補ですが、$\sqrt{\cos^2t}=|\cos t|$です。余弦が非負となる角の区間を選んで符号を確定させます。
正弦・余弦の有理式が他の処理で閉じなければ半角正接で有理化できます。ただし角が$\pi$に届く端なら置換値は無限大なので、有限な端$b\lt \pi$で計算して$b\to\pi-0$とします。元の被積分関数が連続なら、置換で現れた無限端は元の特異点とは限りません。

別の問題でも使う判断

奇数冪→一因子を微分に残す、偶数冪→倍角、異角の積→積和、円型根号→符号を確定した三角置換、一般有理式→半角と欠落点。変換後の積分が低次数になるかを比較する。

微分因子を残す置換は奇数冪に限りません。$\sin x\,H(\cos x)$のように、内側の余弦とその微分因子がそろうなら$u=\cos x$を試せます。ここで$H$は内側の量に適用する関数です。一方、二つの異なる角の積は、零点なら因子を残す方が直接ですが、積分なら積和で原始関数を作る利点があります。積の見た目だけで手順を固定せず、置換後に$dx$を含めて一変数へ閉じるかを検査します。


条件を変えて確かめる

$\int_0^\pi dx/(2+\cos x)$を求めよ。


確認問題の解答と比較を開く

$t=\tan(x/2)$では$dx=2dt/(1+t^2)$、$2+\cos x=(3+t^2)/(1+t^2)$。従って有限端からの極限として$\int_0^\infty2dt/(3+t^2)$。さらに$t=\sqrt3\tan u$、$0\leq u\lt \pi/2$とすると$2\pi/(2\sqrt3)=\pi/\sqrt3$。分母は全区間で正。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

定着・復習:第3回・問題(59)

転移:第3回・問題(61)、第3回・問題(62)

総合:第3回・問題(58)、第3回・問題(64)、第3回・問題(67)、第3回・問題(77)

§25 対称性と積分で定義された関数を、式の形から使う

必要な履修:数学Ⅲ・微分法と積分法、数学Ⅱ・三角関数

例題

$I=\int_0^\pi x\sin x\,dx$を、部分積分とは異なる方法でも求めよ。

問題のどこを見るか

区間の中点に関する置換$x\mapsto\pi-x$で正弦が変わらず、係数$x$だけが補い合います。重み付きの積分なら、対称な二式を足して重みを定数へできないかが候補になります。

何を先に試すか

通常の変数の重みには部分積分、対称な区間なら同じ積分を反転して重みを消す方法が候補です。核の角にも変数があれば加法定理で内部と外部を分け、可変端だけの公式を流用しません。
未知の$f$へ入れる量が正弦・余弦の一次式なら、その量の像を先に確かめます。像が仮定の区間をはみ出せば、奇性や上界の仮定をそこへ使えません。像が収まると分かってから、区間の反転で外の因子と内の入力がどう変わるか、外の因子が内側の微分になっているかを比較します。零という厳密値を欲しい要求と、上下から評価したい要求でも優先する入口は変わります。

例題の解答を開く

$u=\pi-x$で$I=\int_0^\pi(\pi-u)\sin u\,du$。元の式と足して$2I=\pi\int_0^\pi\sin u\,du=2\pi$、従って$I=\pi$。部分積分でも$[-x\cos x+\sin x]_0^\pi=\pi$。

方法を比べ、次の判断へ進む

対称性は値を平均したのではなく、等しい積分を二つ作って係数を消した操作です。対称性がない区間や関数では部分積分の方が安定します。
$F(x)=\int_0^x\sin(x-t)\cos t\,dt$のようにパラメータが中にもある場合、加法定理で$t$の積分と$x$の係数を分けるか、積和で先に計算します。積和から$F(x)=x\sin x/2$となり、通常の積の微分で$F''+F=\cos x$。また可変端の$\int_{\sin x}^{\cos x}t^2dt$は、まず$(\cos^3x-\sin^3x)/3$にしてもよい。上端・下端の両方が動くことを失わない方法を選びます。

別の問題でも使う判断

積分区間の鏡映で関数が不変→重みを補い合せる。パラメータが核にもある→加法・積和で分離。上下端が動く→原始関数へ入れるか、両端の微分を含める。既習の数学Ⅱの積分でも多項式に帰着した後は処理できるが、三角関数の微分積分自体には数学Ⅲが必要。


条件を変えて確かめる

$f$は奇関数で$[-1,1]$上で増加し、$|f(t)|\leq1$を満たす実数係数の多項式とする。$\int_0^{2\pi}\sin x f(\cos x)dx$を求め、$\int_0^{2\pi}\cos x f(\cos x)dx$を評価せよ。


確認問題の解答と比較を開く

前者は$x\mapsto2\pi-x$で符号が反転するので零。後者の被積分関数は$0\leq\cos x f(\cos x)\leq|\cos x|$。従って積分は$0$以上$4$以下。$f$の奇性と増加は積の符号を与え、絶対値の上界は大きさを与える。同じ「評価」でも役割が違う。

未知の多項式は、展開せず性質を使う

$f$の具体的な係数が与えられず、奇性・増加性・上界だけが分かるときは、値を計算するよりその性質を出力する候補を考えます。$\sin x f(\cos x)$は余弦の微分因子があるので、$H(t)=\int_0^t f(u)du$を使えば$\{H(\cos x)\}'=-\sin x f(\cos x)$です。両端の余弦が同じなら、原始関数の差は零になります。
一方、$\cos x f(\cos x)$には同じ微分因子がありません。奇性から$f(0)=0$、増加性から$tf(t)\geq0$、$|f(t)|\leq1$から$tf(t)\leq|t|$です。積の上下界を積分へ渡す方法へ切り替えます。「同じ$f$が入る」という見た目より、要求が等式か上下界か、どの因子が微分と合うかを先に比べます。

実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

定着・復習:第3回・問題(60)、第3回・問題(65)、第3回・問題(68)、第3回・問題(71)

転移:第3回・問題(61)

総合:第3回・問題(67)、第3回・問題(77)

§26 空間では、積分より先に断面の集合を決める

必要な履修:数学C・ベクトル(または空間座標)、数学Ⅲ・積分法、数学Ⅱ・三角関数

例題

$A=(\cos\theta,\sin\theta,0)$、$B=(\cos\varphi,\sin\varphi,2)$を結ぶ線分が通る領域の体積を求めよ。二角は独立に動く。

問題のどこを見るか

高さ$z=2\lambda$を固定すると、線分上の点の水平座標は$(1-\lambda)(\cos\theta,\sin\theta)+\lambda(\cos\varphi,\sin\varphi)$。長さが固定された二方向の和へ翻訳できます。体積を積分する前に、断面が円盤か、穴のある円環かを決める必要があります。

何を先に試すか

体積の積分式を作る前に、断面の全点がどの線分から実現するかを決めます。角の差は半径を、同時回転は方位を与えます。円周を動くか円盤を動くかで穴の有無が変わり、外半径だけでは断面が決まりません。

例題の解答を開く

固定した$0\leq\lambda\leq1$で、水平距離$r$は$|1-2\lambda|\leq r\leq1$。実際、二方向の差$\varphi-\theta$を変えると$r^2=(1-\lambda)^2+\lambda^2+2\lambda(1-\lambda)\cos(\varphi-\theta)$が両端間を連続に動き、共通回転で全方向が得られる。断面はこの円環なので、体積は$\int_0^1\pi\{1-(1-2\lambda)^2\}\,2d\lambda=4\pi/3$。

方法を比べ、次の判断へ進む

三角不等式だけでは半径の必要条件しか出ません。差の角で全中間半径、共通回転で全偏角を作ることで十分性を示しました。両端の点が円周ではなく円盤を動くなら、短いベクトルも選べるので穴がなくなります。差の角を制限するなら内半径が変わり、共通回転が許されるかも確認します。
線分と円盤の和では、断面が長方形と両端の半円からなる形になることがあります。すべてを円環の公式へ押し込めず、固定した高さで何が動くかから集合を作り直します。

別の問題でも使う判断

高さ固定→線分内分の式→三角関数で距離の範囲→全方向と全中間値の実現→断面積→積分。円周と円盤、独立な二角と固定差、境界と内部を区別する。


条件を変えて確かめる

二点がそれぞれ高さ$0,2$の単位円盤内を独立に動くなら、同じ体積になるか。


確認問題の解答と比較を開く

断面は半径$1$の円盤。必要性は三角不等式、十分性は両点の水平座標を同じ任意の円盤内の点に取ればよい。従って体積$2\pi$。円周の問題では中間の穴があるため、同じ外半径でも体積が異なる。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

総合:第3回・問題(63)

§27 発散する二量は、有限な端で一つの式へまとめる

必要な履修:数学Ⅲ・微分法、積分法と極限、数学Ⅱ・三角関数

例題

$y=\log\cos x$の$0\leq x\leq b\lt \pi/2$での長さを$L(b)$とする。$\lim_{b\to\pi/2-0}\{L(b)+\log\cos b\}$を求めよ。$\log$は自然対数。

問題のどこを見るか

弧長の積分は$\sqrt{1+(y')^2}$です。$y'=-\tan x$なので基本関係式を使うと余弦の逆数へ移せます。二つの量が別々に発散する可能性があるので、極限を分けず、有限な$b$で和を整理します。

何を先に試すか

二つの量が別々に発散するなら、個々の極限を足す規則は使えません。有限な端で和を一つの式にまとめ、消える部分を確かめてから片側極限へ進みます。

例題の解答を開く

$\cos x\gt 0$より$L(b)=\int_0^b dx/\cos x=\log\{(1+\sin b)/\cos b\}$。最後の原始関数は微分で確かめられる。従って$L(b)+\log\cos b=\log(1+\sin b)$となり、極限は$\log2$。

方法を比べ、次の判断へ進む

平方根を外すときの符号は指定された区間が与えています。$\sqrt{1+\tan^2x}=1/|\cos x|$を常に$1/\cos x$としてはいけません。また$+\infty+(-\infty)$という計算に意味はありません。有限端での恒等式が相殺を正当化します。
弧長の根号に$1\pm\sin x$や$1\pm\cos x$が残るなら、半角で平方へする候補があります。その後に平方根を外すときは絶対値が必要なので、新しい角の範囲で符号を確認します。半角自体が目的ではなく、根号を積分できる形へするための操作です。相殺される対数も同じ角で書いてから、有限な端でまとめます。

別の問題でも使う判断

微分→弧長の根号→関係式と符号→有限端の原始関数→結合・相殺→片側極限。発散する積分では端を先に有限に置く。


条件を変えて確かめる

$L(b)$そのものは有限な極限を持つか。


確認問題の解答と比較を開く

$\log\{(1+\sin b)/\cos b\}\to+\infty$。和の極限が有限であることは、各項の極限が有限であることを意味しない。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

定着・復習:第3回・問題(59)、第3回・問題(66)

総合:第3回・問題(64)

§28 速い振動と高冪の集中は、別の極限である

必要な履修:数学Ⅲ・積分法と極限、数学Ⅱ・三角関数

例題

(1)$\lim_{n\to\infty}\int_0^1(1+x)\sin^2(nx)dx$。(2)区間$[0,1]$で連続な関数$h$について$\lim_{n\to\infty}n\int_0^1x^{n-1}h(x)dx$を求めよ。

問題のどこを見るか

(1)は角が速く回り、(2)は重みが端へ寄ります。前者は一周期の平均、後者は端の値が候補です。どちらも点ごとの極限を積分へ機械的に入れる操作ではありません。

何を先に試すか

重みが固定で角だけ速く回るなら一周期平均、高冪の重みで固定関数を積分するなら端の集中を候補にします。どちらも誤差が消える証明が要り、点ごとの極限や見た目の振動だけでは代用できません。

例題の解答を開く

(1)$\sin^2(nx)=(1-\cos2nx)/2$。部分積分から$|\int_0^1(1+x)\cos2nx\,dx|\leq3/(2n)$なので振動部分は零へ収束し、答えは$\frac12\int_0^1(1+x)dx=3/4$。

(2)重みの全積分は$n\int_0^1x^{n-1}dx=1$。任意の$\varepsilon\gt 0$に対し、連続性から$1-\delta\leq x\leq1$では$|h(x)-h(1)|\leq\varepsilon$とできる。連続関数は閉区間で有界なので$|h(x)-h(1)|\leq M$となる定数$M$を取れる。残りの区間の寄与は$M(1-\delta)^n$以下。従って差は$\varepsilon+M(1-\delta)^n$以下で、極限は$h(1)$。

方法を比べ、次の判断へ進む

三角関数の二乗なら定数成分と振動成分を分けられます。連続な周期関数でも、平均を引いた関数の原始関数は周期的で有界なので、積分区間が長くなったときの残差を評価できます。位相が$x^2$のように変数の一次式でない形なら、変数を位相へ移したときの重みも残ります。位相の導関数が零になる端を切り離してから有界な原始関数を使う、という順です。
例えば$h(x)=(1-x)^{-1/2}$では有界性と有限な端点値を失うため、(2)は適用できません。高冪の端点値が零なら、最初の極限だけでは高次の残差は分かりません。部分積分をして$n$をずらした同じ積分へ戻すなど、次の次数を取り出す操作が必要です。

別の問題でも使う判断

振動→平均成分と有界な原始関数、集中→重みの全量と端以外の減衰。角が変数の一次式でない場合は重みと特異端、集中の次の次数は部分積分。$h$が$n$に依存する場合には(2)をそのまま使えない。


条件を変えて確かめる

$I_n=\int_0^1x^{n-1}\cos\pi x\,dx$とする。$nI_n\to-1$に加え、$n^2(nI_n+1)$を求めるには何を追加するか。


確認問題の解答と比較を開く

二回の部分積分で$nI_n+1=-\pi^2I_{n+2}/(n+1)$。従って$n^2(nI_n+1)=-\pi^2\{n^2/((n+1)(n+2))\}(n+2)I_{n+2}\to\pi^2$。端点値だけの説明から、残差の恒等式へ進む必要がある。

角が変数の一次式でない場合で「平均」を証明する一例

$g(u)=|\sin u|-2/\pi$は周期$\pi$で、その一周期積分は零です。$G(u)=\int_0^ug(v)dv$は周期的で有界、例えば$|G(u)|\leq\pi$。$\int_0^T g(x^2)dx$を評価する際、$u=x^2$で全区間を替えると$1/(2\sqrt u)$が零で特異になります。そこで$[0,1]$は絶対値を直接$1$以下とし、残りだけを置換します。

$\displaystyle \int_1^{T^2}\frac{g(u)}{2\sqrt u}du=\left[\frac{G(u)}{2\sqrt u}\right]_1^{T^2}+\int_1^{T^2}\frac{G(u)}{4u^{3/2}}du.$


右辺は$T\geq1$で絶対値が$\pi$以下。従って$T$で割った誤差は$(1+\pi)/T$以下で零へ収束し、$T^{-1}\int_0^T|\sin(x^2)|dx\to2/\pi$です。角が速く動くという印象だけでなく、平均を引き、残差の原始関数を有界にして証明しました。
実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

定着・復習:第3回・問題(65)、第3回・問題(66)、第3回・問題(68)

総合:第3回・問題(77)

§29 集中の幅と振動の幅が同じなら、端を拡大する

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、指数・対数関数、数学Ⅲ・微分法、積分法と極限

例題

$J_n=n\int_0^1x^{n-1}\cos(n(1-x))dx$の極限を求めよ。前節の端点値を代入するだけでよいか。

問題のどこを見るか

端点で余弦は$1$ですが、$h_n(x)=\cos(n(1-x))$は$n$で変化します。重みが大きいのは$1-x$が$1/n$程度の部分で、その幅の中でも角が定数程度変わります。両者を同時に見える大きさへするため$t=n(1-x)$を候補にします。

何を先に試すか

高冪の集中する幅と角が変わる幅が同じ程度なら、端の値だけでは情報が足りません。端からの距離を$n$倍して変化を残します。有限区間の極限と、その外の寄与を分けて評価する必要があります。

例題の解答を開く

置換により$J_n=\int_0^n(1-t/n)^{n-1}\cos t\,dt$。固定した$A\gt 0$について、$0\leq t\leq A$では$(1-t/n)^{n-1}\to e^{-t}$が一様に成り立つ。ここで一様とは、区間$[0,A]$内の全ての$t$に同じ誤差の上界を使え、その上界を$n$と共に零へ送れる、という意味である。実際、$0\leq u\lt 1$で$-u/(1-u)\leq\log(1-u)\leq-u$だから、$u=t/n$を入れると指数が$-t$へ一様に近づく。

また$n\geq2$、$0\leq t\lt n$で$(1-t/n)^{n-1}\leq e^{-t(n-1)/n}\leq e^{-t/2}$。従って$A$以降の積分の絶対値は$2e^{-A/2}$以下。先に有限区間で極限を取り、次に$A\to\infty$とすれば、$J_n\to\int_0^\infty e^{-t}\cos t\,dt=1/2$。最後の値は有限端で二回部分積分し、指数減衰する端の項を零へ送れば得られる。

方法を比べ、次の判断へ進む

端点への集中は正しい観察ですが、その幅の中で被積分関数がほぼ一定かどうかが追加の判断です。振動の速さも$n$なので一定とはいえず、拡大した座標で余弦が残りました。これは「端点値を使う」という規則の適用条件を検査した結果です。
ここでは高度な積分と極限の交換定理を仮定せず、有限区間の誤差と無限側の上界を別々に示しています。

別の問題でも使う判断

重みの幅を推定→その幅で三角関数が変わるか比較→同じなら拡大置換→有限部分の極限→尾部の上界。固定関数の集中定理の条件が崩れたときに再分類する。


条件を変えて確かめる

余弦を$\cos(\lambda n(1-x))$、実数$\lambda$に変えると、同じ議論のどこが変わるか。


確認問題の解答と比較を開く

拡大後の$\cos t$が$\cos\lambda t$になるだけで、絶対値の上界は同じ。有限端の部分積分から$\int_0^\infty e^{-t}\cos\lambda t\,dt=1/(1+\lambda^2)$。$\lambda=0$は$1$で、固定の端点値の場合へ戻る。


実践編で確かめる

同じ計算の復習と、条件を変えて判断を作り直す練習を分けます。各問の役割の詳しい説明は、問題を解いた後に読めます。

総合:第3回・問題(77)


章の終わりに確かめる

速い振動の平均と、高冪の端への集中を区別し、集中する幅の中でも角が動くときは方法を変えられるか確認してください。

比較練習 三角関数から別の単元へ仕事を渡す

方法名を見ずに、最初に使う条件と、操作後に残る仕事を述べてから計算してください。

比較問題 (9)

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学A・場合の数と確率

比較問題

原点から右向きに出発する。(1)毎回独立に角$0,2\pi/3,4\pi/3$の一方向を等確率で選び、距離$1$進む。(2)毎回独立に等確率で「現在の向きに距離$1$進む」か「その場で$2\pi/3$回す」を選ぶ。それぞれ三回の操作後に原点にいる確率を求めよ。


比較問題の解答を開く

三方向の移動回数が等しいことが原点へ戻る条件。

(1)三方向へ一回ずつ進む順序は$3!=6$通りで、確率$6/3^3=2/9$。

(2)進む回数は$0$か$3$。$3$なら回転がなく全て右へ進み不適。$0$なら全て回転の一列で、確率$1/2^3=1/8$。


選択理由と条件の違いを開く

方向が三種類という情報は共通ですが、何を一回の選択として数えるかが違います。(1)は選ぶ方向そのものが独立です。(2)では進む方向が過去の回転に依存します。終点の座標を方向別の回数へ圧縮するのは共通、その回数を実現する操作列の数え方は別、と分けてください。三角関数の仕事と、その後の場合の数の仕事がここで切り替わります。

比較問題 (10)

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学B・数列、整数の割り切りの知識

比較問題

$\cos\theta=3/5$とする。(1)$\cos3\theta$を求めよ。(2)$\theta/\pi$は有理数になれるか。数列$\cos n\theta$($n=0,1,2,\ldots$)を有限の周期へまとめてよいかも述べよ。


比較問題の解答を開く

(1)$4(3/5)^3-3(3/5)=-117/125$。

(2)もし$\theta/\pi$が有理なら、例題で示した整数係数の漸化式と既約分数の分母の議論から$2\cos\theta$は整数になる。しかし$2\cos\theta=6/5$なので矛盾。従って$\theta/\pi$は無理数である。

もし数列に正整数の周期$N$があれば、$n=0$の値から$\cos N\theta=1$となり、$N\theta=2m\pi$。これは$\theta/\pi$の無理性に矛盾する。


選択理由と条件の違いを開く

小さい固定倍角は既知の公式で十分です。一方、添字を動かす問題では、角が一周へ戻る条件を先に検査します。余弦の値が有理であることは角が$\pi$の有理数倍であることを意味しません。周期を使えない場合にも、多項式の漸化式は使えるので、二つの方法を同一視しないでください。

比較問題 (11)

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学Ⅲ・極限・微分積分

比較問題

次の極限を求めよ。(1)$\int_0^1\sin^2(nx)dx$。(2)$n\int_0^1x^{n-1}\sin^2x\,dx$。(3)$n\int_0^1x^{n-1}\sin^2(n(1-x))dx$。いずれも$n\to\infty$で、$n$は正整数。


比較問題の解答を開く

(1)二倍角を積分すると$1/2-\sin2n/(4n)$なので$1/2$。

(2)$h(x)=\sin^2x$は固定した連続関数なので、端点集中の評価から$\sin^21$。

(3)$t=n(1-x)$へ替えると$\int_0^n(1-t/n)^{n-1}\sin^2t\,dt$。有限区間では重みが$e^{-t}$へ一様に近付き、尾部は$2e^{-A/2}$以下。前の例題と同じ二段階の評価から、極限は$\int_0^\infty e^{-t}\sin^2t\,dt=\{1-1/(1+4)\}/2=2/5$。


選択理由と条件の違いを開く

正弦の二乗という見た目だけでは極限は決まりません。(1)は一定幅の区間に速い振動があり平均へ、(2)は固定関数に対して端へ寄る重みがあり端点値へ、(3)は集中する幅の中でも正弦が動くので拡大した積分へ進みます。「重みがどこに集中するか」「その幅で角がどれだけ変わるか」を先に比べると、誤った端点代入を防げます。

比較問題 (12)

必要な履修:数学Ⅱ・三角関数、数学B・数列、数学C・複素数平面

比較問題

$q=\cos(\pi/3)+i\sin(\pi/3)$とする。回転する座標へ移した結果、(1)$w_n=-q\overline{w_{n-1}}$、(2)$w_n=2-q\overline{w_{n-1}}$という二つの漸化式を得た。どちらも$w_0=0$とする。静止座標の点を$z_n=q^nw_n$で表すとき、各点列は周期的か。


比較問題の解答を開く

(1)全ての$w_n,z_n$は$0$で周期的である。

(2)二回代入すると$w_n=w_{n-2}+2(1-q)$。従って$w_{2m}=2m(1-q)$で、$z_{6m}=6m(1-q)$。$q\ne1$なので絶対値は無限に大きくなり、周期的でない。


選択理由と条件の違いを開く

共役の係数と回転の周期は二式で同じですが、定数項が違います。原点を通る鏡映と、原点から離れた鏡映を固定座標へ移すと、この違いが現れます。二回の更新で共役を消し、残る平行移動を検査すれば、係数が定数になったことと点が戻ることを区別できます。初期点が零以外なら(1)の点列も改めて計算する必要があり、この零の初期値の結論を無条件に流用しません。

学んだ後に使う判断表

最初から全ての行を順番に試す表ではありません。具体例で理解した判断へ戻るための索引です。式だけでなく、問題が何を答えさせたいかを右側と照らしてください。

観察できる情報まず候補にする処理処理後に必要な仕事
一方の三角関数が偶数冪だけ二乗和で一関数へ置換値の像、二次関数、角への対応
比や正接の値を求める同次化して比を残す割る量の零、元の分母
二次同次式の全実数の角での極値二倍角で一次へ、合成指定区間での達成、等号の方向
反復する量を含む商同じ量へ置き、分母の非零を残す像・極・増減・係数零・角への復元
同じ定数差の二角和・積・商を区別零点なら因子、値域なら波、商なら除外値
和が条件にあり、交換対称な式和と積へ交代式の符号、二つの割り当ての実現
角の和が固定平均と差を残す正の内角からの開区間、退化端
解の個数やパラメータ単調枝の像と対応数頂点、端根、係数零、重複
円上の距離・直線・動点座標条件へ翻訳指定弧、鉛直方向、逆構成
回る方向・軸・曲線有限状態、鏡映、回転座標依存関係、定数項、戻した周期
通常変数が残る増減・微積分へ定義域、導関数の符号、端の極限
高速振動・高冪平均か端点集中かを分ける誤差評価、集中幅の中の変化

行き詰まったら、「何の情報がまだ足りないか」を一つに絞ります。値域を得たのに角を数えられないなら対応の表、必要条件は出たのに存在を示せないなら逆向きの構成、微分したのに符号が不明なら分子の増減、と再分類します。計算をやり直す前に、その計算が欲しい情報へ届くかを確かめてください。
三角関数の変形、二次関数や整数などの処理、その二つを結ぶ対応。この三部分を分けると、復習する場所を決められます。第3回では、問題の前に方法名を置かず、ここで学んだ判断を自分で選ぶ練習へ進みます。

投稿日:2日前
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