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「実数全体の集合がコンパクト」から「0=1」を証明する

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$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

本記事では次のよく知られた(?)定理の1つの証明を与えます。

主定理

$\R$が(通常の位相で)コンパクトな位相空間ならば、$0=1$が成り立つ。

数学に詳しくない方向けに補足しますと、仮定が偽ならば命題は真が常に成り立ちます。なので$\R$がコンパクトでないことを知っている人は、上の定理は自明です。それを踏まえた上で、以下の証明は「仮定が偽ならば命題は真を直接的には用いないような方法で、どれほどもっとらしく面白い証明をつけることができるか」という遊びです。

  • 主定理の証明にはおそらく莫大な証明方法が存在すると思われます。みなさんも面白い証明方法を思いついたらMathlogで共有してください。
  • 筆者が学部時代にこの定理を仲間内で証明することが流行ったのですが、そのなかで筆者が一番面白いと思った同期によるもの(多分)です。
複素解析(リウヴィルの定理)を用いた証明

$\R$がコンパクトだと仮定する。また複素数全体のなす集合$\C$を考え、通常の位相を入れる。すると$\C$$\R \times \R$と同相なので、チコノフの定理より$\C$もコンパクトである。

ここで、写像$f \colon \C \to \C$$f(z) = z^2$で定めると、明らかにこれは$\C$上の正則関数である。このとき、写像$\C \to \R$$z \mapsto |f(z)|$で定めると、これは連続関数の合成なので連続関数である。一方$\C$はコンパクトであったので、位相空間の基本的命題である「コンパクトな位相空間上の実数値連続関数は必ず最大値と最小値を持つ」ことから、$f$は有界関数であることが分かる。

最後に、リウヴィルの定理$\C$上の正則関数が有界ならばそれは定数関数である)ことから、$f$は定数関数であることが分かる。つまりある複素数$a$を用いて$f(z) =a$が任意の$z \in \C$で成り立つ。ゆえに、
$$ 0 = f(0) = a = f(1) = 1 $$
が成り立つ、すなわち$0 = 1$である。

投稿日:20201113

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H.E.
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某大ポスドク、詳しくはtwitterまで。自分の分野(環の表現論)でよく使われるfolkloreの解説記事を主に書いています。

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