はじめまして、高3のぱぺです。
これまでに幾つかの数学記事をNoteに掲載していました。TeXはこれまで触ったことがなく、NoteではTeXを使えないので、TeXに慣れるために今回初めてMathlogを使うことにしました。
今回は、二次曲線の極方程式を直交座標に関する方程式に直す際の答案を考えます。
これらを、同値性を重視してそれぞれ考えましょう。
問題を解く前に、同値性を保った式変形に重要なものをまとめておきましょう。
各座標系における点の座標の表記を
極座標系$(Polar$ $coordinates)$:$ \boldsymbol{[r,\theta]} $
直交座標系$(Cartesian$ $coordinates)$:$ \boldsymbol{(x,y)} $
とする。
まず、極座標の性質と、極座標系と直交座標系の関係を見ておきます。
点$ [r,\theta] $と点 $ (x,y) $が一致するとき、
$x,y$は$r,\theta$を用いて次のように表される。
\begin{cases}
\boldsymbol{x=r\cos\theta} \\
\boldsymbol{y=r\sin\theta}
\end{cases}
$($ ここから $x^2+y^2=r^2$ を導ける $)$
同じ点が同じ方程式によって描く図形は同じであることから、次のことが言えます。
点$ [r,\theta] $と点 $ (x,y) $が一致するとする。
また、$F,G$はともに$2$変数関数とする。
[1] 方程式$\boldsymbol{F(x,y)=0}$ と方程式$\boldsymbol{F(r\cos\theta,r\sin\theta)=0}$は同じ図形を表す。
[2] 方程式$\boldsymbol{G(r,\theta)=0}$ と方程式$\boldsymbol{G(-r,\theta+\pi)=0}$は同じ図形を表す。
また、以下のことを用いることで答案を作っていきます。
また、極方程式においては注意が必要なこともあります。
・極方程式においては$\boldsymbol{r<0}$となることもありうるため、
$\boldsymbol{r=\sqrt{x^2+y^2}}$とすることは禁物です。
・$r$,$\theta$と$x$,$y$は、基本は同時に変換することをお勧めします。
両辺に$r$をかけて$ r^2=4r\sin\theta $
整理して
$ x^2+y^2=4y $
$ x^2 +(y-2)^2=4 $
従って、求める方程式は $ \boldsymbol{x^2 +(y-2)^2=4} $
(なお補足で「$r=0$である$\theta$が存在するから両辺$r$倍できる」と記述のあるものもある)
この解答で気になるところは、補足にもあるとおり「$r=0$となる$\theta$が存在するかどうかを言っていない」ことですね。
たとえば、$\boldsymbol{r=4\sin\theta+10}-①$について考えましょう。
意味はないですが、仮にここで両辺$r$倍することを考えます。
$r^2=4r\sin\theta+10r -②$
ここで、$② \Leftrightarrow ① \lor r=0$ となります。
$①$で$r=0$とすると、$4\sin\theta+10=0$となり、これを満たす$\theta$は存在しません。そのためグラフ$①$は原点を含みません。
しかし$②$はグラフに$r=0$を満たす原点を含むため、何らかの方法で$②$のグラフを描けたとしても、このままでは$①$のグラフを描いたことになりません。
同じように、両辺に同じ式をかける操作には注意が必要となります。
ということで、以下ポイントです。
・具体的な$ \theta $の値を提示
※できない場合は両辺$r$倍しない
・$r=0$である場合と$r \neq 0$である場合で場合分け
のいずれかをすればよい。
まずは前者「具体的な$ \theta $の値を提示」で答案を作ります。
$r=0$とすると$\theta=n\pi$ $(n \in \mathbb{Z})$
従って、$r=0$となる実数$\theta$は存在するから、
\begin{aligned}
r=4\sin\theta &\Leftrightarrow r=4\sin\theta \lor r=0 \\
&\Leftrightarrow r^2=4r\sin\theta
\end{aligned}
したがって、$\boldsymbol{r=4\sin\theta -①}$と、$①$の両辺を$\boldsymbol{r}$倍した $\boldsymbol{r^2=4r\sin\theta -②}$ が表すグラフは同じである。
$②$のグラフについて整理すると
\begin{aligned}
r^2=4r\sin\theta \\
x^2+y^2=4y \\
x^2+(y-2)^2=4
\end{aligned}
よって、$②$が表すグラフは円$ x^2+(y-2)^2=4 $
また、$①$と$②$は同じグラフを表すから、
$①$が表すグラフは円$ \boldsymbol{x^2+(y-2)^2=4 }$
\begin{aligned} r=4\sin\theta &\Leftrightarrow r=4\sin\theta \lor r=0 \\ &\Leftrightarrow r^2=4r\sin\theta \end{aligned}
において
$r=4\sin\theta$は原点$($グラフ$r=0)$を含むため、
「$r=4\sin\theta$」を「$r=4\sin\theta \:(r-4\sin\theta=0)$」と「$r=0$」のグラフの合成と考えています。
$r=4\sin\theta$ のグラフは $r=0$ と $r-4\sin\theta=0$ を合成したグラフより
\begin{aligned}
r(r-4\sin\theta)&=0 \\
r^2&=4r\sin\theta
\end{aligned}
次に後者「$r=0$である場合と$r \neq 0$である場合で場合分け」で答案を作ります。
$\text{(i)}$ $r=0\quad \Rightarrow \quad \theta=n\pi$ $(n \in \mathbb{Z})$
$\quad$$r=0$となる実数$\theta$は存在するため、$①$のグラフは原点を含む。
$\text{(ii)}$ $r\neq 0$ のとき、$ ① $の両辺$r$倍して
\begin{aligned}
\qquad r&=4\sin\theta \\
r^2&=4r\sin\theta \\
x^2+y^2&=4y \\
\qquad x^2+(y-2)^2&=4
\end{aligned}
$\quad$ よって、$\text{(ii)}$で表される部分は、原点を除く円$ x^2+(y-2)^2=4 $
$\text{(i)(ii)}$より、$①$が表すグラフは円$ \boldsymbol{x^2+(y-2)^2=4 }$
$\text{(2)}$ $ \boldsymbol{r=\frac{1}{\sqrt{2}+\cos\theta} }$
分母を払って整理して $\sqrt{2}\,r=1-r\cos\theta$
$ x=r\cos\theta $ であるから、 $ \sqrt{2}\,r=1-x $
両辺を2乗して $ 2r^2=(1-x)^2 $
$ 2(x^2+y^2)=(1-x)^2 $
$ (x+1)^2+2y^2=2 $
$ \frac{(x+1)^2}{2}+y^2=1 $
従って、求める方程式は $ \boldsymbol{\frac{(x+1)^2}{2}+y^2=1} $
ここで気になる部分はここでしょう。
$ \sqrt{2}r=1-x $
両辺を2乗して $ 2r^2=(1-x)^2 $
そう、両辺を2乗すること。
\begin{aligned} \sqrt{2}r=1-r\cos\theta &\Rightarrow 2r^2=(1-r\cos\theta)^2 \\ 2r^2=(1-r\cos\theta)^2 &\Leftrightarrow \begin{cases} \sqrt{2}\,r=1-r\cos\theta \\ -\sqrt{2}\,r=1-r\cos\theta \end{cases} \\ -\sqrt{2}\,r=1-r\cos\theta &\Leftrightarrow \sqrt{2}\,(-r)=1-(-r)cos(\theta+\pi) \end{aligned}
どうにかして$2r^2=(1-r\cos\theta)^2$の形にしたいので、必要十分になるように$-\sqrt{2}\,r=1-r\cos\theta$について考えてみます。
すると、下段のようになります。
これは $\sqrt{2}\,r=1-r\cos\theta$ で $r$ を$-r$,$\theta$を$-\theta$にしたものであるため、描く図形は$\sqrt{2}\,r=1-r\cos\theta$と一致します。
なぜならば、$\boldsymbol{-\sqrt{2}\,r=1-r\cos\theta}$ は「点 $ \boldsymbol{[-r,\theta+\pi]}$ が曲線$ \boldsymbol{\sqrt{2}\,r=1-r\cos\theta} $ 上を動いてできる図形$\boldsymbol{\sqrt{2}\,(-r)=1-(-r)\cos(\theta+\pi)}$」であると考えられるからです。
点$\boldsymbol{[-r,\theta+\pi]}$は点$ \boldsymbol{[r,\theta]} $ に一致することを考えれば、この$2$つは同じ図形であると考えられるでしょう。(図形の一致[2])
これをもとにしてこのように書いてみます。
$\text{(2)}$ $ \boldsymbol{r=\frac{1}{\sqrt{2}+\cos\theta} }$
与えられた方程式を整理して
$1-r\cos\theta-\sqrt{2}\,r=0 -①$
ここで、$①$で$\boldsymbol{r}$を$\boldsymbol{-r}$,$\boldsymbol{\theta}$を$\boldsymbol{\theta+\pi}$として整理した
$1-r\cos\theta+\sqrt{2}\,r=0 -②$
は$①$と同じグラフである。
また、$\boldsymbol{2}$つのグラフ$①$,$②$をあわせた
$ \boldsymbol{(1-r\cos\theta-\sqrt{2}\,r)(1-r\cos\theta+\sqrt{2}\,r)=0} -③ $
のグラフは$①$と同じである。
ここで、$③$を整理して
\begin{aligned}
(1-r\cos\theta)^2-(\sqrt{2}\,r)^2&=0 \\
2r^2&=(1-r\cos\theta)^2 \\
2(x^2+y^2)&=(1-x)^2 \\
(x+1)^2+2y^2&=2 \\
\frac{(x+1)^2}{2}+y^2&=1
\end{aligned}
したがって、$③$が表すグラフは楕円 $ \frac{(x+1)^2}{2}+y^2=1 $
$①$と$③$は同じグラフであるから、
$①$,$\:$すなわち $r=\frac{1}{\sqrt{2}+\cos\theta}$が表すグラフは楕円$ \boldsymbol{\frac{(x+1)^2}{2}+y^2=1} $
$①$,$②$を「$=0$」の形に直せば、$2$つのグラフ $a=0, b=0$を合わせたグラフは
$\boldsymbol{a=0 \quad \textbf{or} \quad b=0 \quad \Leftrightarrow \quad ab=0}$ (数I,IIあたりより)
を用いて$ab=0$と表されます。
これを使うことでより論理展開のわかりやすい答案になるでしょう。
$\text{(3)}$ $ \boldsymbol{ r=\frac{3}{1+2\cos\theta} } $
分母を払って整理して
$ r=3-2r\cos\theta $
$ x=r\cos\theta $ であるから $ r=3-2x $
両辺を2乗して $ r^2=(3-2x)^2 $
$ x^2+y^2=(3-2x)^2 $
$ 3(x-2)^2-y^2=3 $
$ (x-2)^2-\frac{y^2}{3}=1 $
従って、求める方程式は $ \boldsymbol{ (x-2)^2-\frac{y^2}{3}=1 } $
これも(2)と同じようにすればよいでしょう。
ちなみに、この問題に関しては先述の[注意]にあったように$\boldsymbol{r=\sqrt{x^2+y^2}}$として計算するのは禁物です。
なぜでしょうか。
$\text{(2)}$ $r=\frac{1}{\sqrt{2}+\cos\theta}$
$\quad$ すべての$ \theta $について $0 < \sqrt{2}+\cos\theta$であるから、
$\qquad r=\frac{1}{\sqrt{2}+\cos\theta}>0$
$\text{(3)}$ $r=\frac{3}{1+2\cos\theta}$
$\quad$ $1+2\cos\theta>0 \,$すなわち $\cos\theta>-\frac{1}{2}$ のとき $r>0$
$\quad$ $\boldsymbol{1+2\cos\theta<0} \,$すなわち $\boldsymbol{\cos\theta<-\frac{1}{2}}$ のとき $\boldsymbol{r<0}$
そう、$\text{(3)}$では$r<0$である場合があるため$r=\sqrt{x^2+y^2}$とおいてはいけないのです。
まあ、そこは置いておきましょう。以下答案です。
$(3)$ $ \boldsymbol{r=\frac{3}{1+2\cos\theta} }$
与えられた方程式を整理して
$3-2r\cos\theta-r=0 -①$
ここで、$①$で$\boldsymbol{r}$を$\boldsymbol{-r}$,$\boldsymbol{\theta}$を$\boldsymbol{\theta+\pi}$として整理した
$3-2r\cos\theta+r=0 -②$
は$①$と同じグラフである。
また、$\boldsymbol{2}$つのグラフ$①$,$②$をあわせた
$ \boldsymbol{(3-2r\cos\theta-r)(3-2r\cos\theta+r)=0} -③ $
のグラフは$①$と同じである。
ここで、$③$を整理して
\begin{aligned}
(3-2\cos\theta)^2-r^2&=0 \\
r^2&=(3-2r\cos\theta)^2 \\
x^2+y^2&=(3-2x)^2 \\
3(x-2)^2-y^2&=3 \\
(x-2)^2-\frac{y^2}{3}&=1
\end{aligned}
したがって、$③$が表すグラフは双曲線 $ (x-2)^2-\frac{y^2}{3}=1 $
$①$と$③$は同じグラフであるから、
$①$,$\:$すなわち $r=\frac{3}{1+2\cos\theta}$が表すグラフは双曲線$ \boldsymbol{(x-2)^2-\frac{y^2}{3}=1} $
いかがでしたでしょうか。
(2)(3)の両辺二乗については学校の授業でちらっと言われていたような気がしなくもないのですけど。とりあえず、同値性云々は時々気になってしまうので、それを解決する答案を作れて今は満足しています。
またTeXを使うときはこちらに投稿していこうかと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
まあもう高3なので頻度はかなり低いと思いますが。
では、また次回。
※なおこれを書くのにほぼ丸一日ほどかかりました。
2025年5月25日(日) 22:00
最終編集:2025年5月27日(火) 17:00