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同値性を重視した「極方程式→xy方程式」問題の答案作成

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はじめに

はじめまして、高3のぱぺです。
これまでに幾つかの数学記事をNoteに掲載していました。TeXはこれまで触ったことがなく、NoteではTeXを使えないので、TeXに慣れるために今回初めてMathlogを使うことにしました。

本題

今回は、二次曲線の極方程式を直交座標に関する方程式に直す際の答案を考えます。

問題

問:次の極方程式で表された曲線を、直交座標に関する方程式で表せ。
(1) r=4sinθ
(2) r=12+cosθ
(3) r=31+2cosθ

これらを、同値性を重視してそれぞれ考えましょう。

同値性を重視した解答を作るにあたって

問題を解く前に、同値性を保った式変形に重要なものをまとめておきましょう。

座標表記 (便宜上)

各座標系における点の座標の表記を
極座標系(Polar coordinates)[r,θ]
直交座標系(Cartesian coordinates)(x,y)
とする。

まず、極座標の性質と、極座標系と直交座標系の関係を見ておきます。

極座標系の性質・極座標系と直交座標系の関係

[r,θ]と点 (x,y)が一致するとき、
x,yr,θを用いて次のように表される。
{x=rcosθy=rsinθ
( ここから x2+y2=r2 を導ける )

点の一致
  1. [r,θ]と点(rcosθ,rsinθ)は一致する。
  2. [r,θ]と点[r,θ+π]は一致する。

同じ点が同じ方程式によって描く図形は同じであることから、次のことが言えます。

図形の一致

[r,θ]と点 (x,y)が一致するとする。
また、F,Gはともに2変数関数とする。
[1] 方程式F(x,y)=0 と方程式F(rcosθ,rsinθ)=0は同じ図形を表す。
[2] 方程式G(r,θ)=0 と方程式G(r,θ+π)=0は同じ図形を表す。

また、以下のことを用いることで答案を作っていきます。

有効な変形・論理展開
  1. 同値な式変形
  2. [図形の一致]
  3. (点の)集合P,Qについて
    1. QP ならば PQ=P
    2. P=Q ならば PQ=P
      – ともにグラフの合成に用いる

問題を解く際の注意

また、極方程式においては注意が必要なこともあります。

注意

極方程式においてはr<0となることもありうるため、
r=x2+y2とすることは禁物です。

r,θx,yは、基本は同時に変換することをお勧めします。

両辺をr倍すること ー問題1

次の極方程式で表された曲線を、直交座標に関する方程式で表せ。
(1) r=4sinθ

問題集などにある解答

問題集:
(1) r=4sinθ

両辺にrをかけてr2=4rsinθ
整理して
x2+y2=4y
x2+(y2)2=4
従って、求める方程式は x2+(y2)2=4

(なお補足で「r=0であるθが存在するから両辺r倍できる」と記述のあるものもある)

この解答で気になるところは、補足にもあるとおり「r=0となるθが存在するかどうかを言っていない」ことですね。

たとえば、r=4sinθ+10について考えましょう。
意味はないですが、仮にここで両辺r倍することを考えます。
r2=4rsinθ+10r
ここで、r=0 となります。
r=0とすると4sinθ+10=0となり、これを満たすθは存在しません。そのためグラフは原点を含みません
しかしはグラフにr=0を満たす原点を含むため、何らかの方法でのグラフを描けたとしても、このままではのグラフを描いたことになりません。
同じように、両辺に同じ式をかける操作には注意が必要となります。

ということで、以下ポイントです。

問題1の「両辺をr倍する」場合

・具体的なθの値を提示
  ※できない場合は両辺r倍しない

r=0である場合とr0である場合で場合分け

のいずれかをすればよい。

解答1-1

まずは前者「具体的なθの値を提示」で答案を作ります。

解答1-1
(1) r=4sinθ

r=0とするとθ=nπ (nZ)
従って、r=0となる実数θは存在するから、
r=4sinθr=4sinθr=0r2=4rsinθ
したがって、r=4sinθと、の両辺をr倍した r2=4rsinθ が表すグラフは同じである。

のグラフについて整理すると
r2=4rsinθx2+y2=4yx2+(y2)2=4
よって、が表すグラフは円x2+(y2)2=4
また、は同じグラフを表すから、
が表すグラフは円x2+(y2)2=4

補足

解答内引用

r=4sinθr=4sinθr=0r2=4rsinθ

において
r=4sinθは原点(グラフr=0)を含むため、
r=4sinθ」を「r=4sinθ(r4sinθ=0)」と「r=0」のグラフの合成と考えています。

補足

r=4sinθ のグラフは r=0r4sinθ=0 を合成したグラフより
r(r4sinθ)=0r2=4rsinθ

解答1-2

次に後者「r=0である場合とr0である場合で場合分け」で答案を作ります。

解答1-2
(1) r=4sinθ

(i) r=0θ=nπ (nZ)
r=0となる実数θは存在するため、のグラフは原点を含む。

(ii) r0 のとき、の両辺r倍して
r=4sinθr2=4rsinθx2+y2=4yx2+(y2)2=4
よって、(ii)で表される部分は、原点を除く円x2+(y2)2=4

(i)(ii)より、が表すグラフは円x2+(y2)2=4

両辺を2乗すること -問題2,3

問題2

次の極方程式で表された曲線を、直交座標に関する方程式で表せ。
(2) r=12+cosθ

問題集などにある解答

問題集:

(2) r=12+cosθ
分母を払って整理して 2r=1rcosθ
x=rcosθ であるから、 2r=1x
両辺を2乗して 2r2=(1x)2
2(x2+y2)=(1x)2
(x+1)2+2y2=2
(x+1)22+y2=1
従って、求める方程式は (x+1)22+y2=1

ここで気になる部分はここでしょう。

2r=1x
両辺を2乗して 2r2=(1x)2

そう、両辺を2乗すること。

考察

2r=1rcosθ2r2=(1rcosθ)22r2=(1rcosθ)2{2r=1rcosθ2r=1rcosθ2r=1rcosθ2(r)=1(r)cos(θ+π)

どうにかして2r2=(1rcosθ)2の形にしたいので、必要十分になるように2r=1rcosθについて考えてみます。
すると、下段のようになります。
これは 2r=1rcosθrr,θθにしたものであるため、描く図形は2r=1rcosθと一致します。
なぜならば、2r=1rcosθ は「点 [r,θ+π] が曲線2r=1rcosθ 上を動いてできる図形2(r)=1(r)cos(θ+π)」であると考えられるからです。
[r,θ+π]は点[r,θ] に一致することを考えれば、この2つは同じ図形であると考えられるでしょう。(図形の一致[2])

これをもとにしてこのように書いてみます。

解答2

解答2

(2) r=12+cosθ
与えられた方程式を整理して
1rcosθ2r=0

ここで、rr,θθ+πとして整理した
1rcosθ+2r=0
と同じグラフである。

また、2つのグラフ,をあわせた
(1rcosθ2r)(1rcosθ+2r)=0
のグラフはと同じである。

ここで、を整理して
(1rcosθ)2(2r)2=02r2=(1rcosθ)22(x2+y2)=(1x)2(x+1)2+2y2=2(x+1)22+y2=1
したがって、が表すグラフは楕円 (x+1)22+y2=1

は同じグラフであるから、
,すなわち r=12+cosθが表すグラフは楕円(x+1)22+y2=1

,を「=0」の形に直せば、2つのグラフ a=0,b=0を合わせたグラフは
a=0orb=0ab=0 (数I,IIあたりより)
を用いてab=0と表されます。
これを使うことでより論理展開のわかりやすい答案になるでしょう。

問題3

次の極方程式で表された曲線を、直交座標に関する方程式で表せ。
(3) r=31+2cosθ

問題集などにある解答

問題集:

(3) r=31+2cosθ
分母を払って整理して
r=32rcosθ
x=rcosθ であるから r=32x
両辺を2乗して r2=(32x)2
x2+y2=(32x)2
3(x2)2y2=3
(x2)2y23=1
従って、求める方程式は (x2)2y23=1

これも(2)と同じようにすればよいでしょう。
ちなみに、この問題に関しては先述の[注意]にあったようにr=x2+y2として計算するのは禁物です。
なぜでしょうか。

(2)(3)の違い

(2) r=12+cosθ
すべてのθについて 0<2+cosθであるから、
r=12+cosθ>0

(3) r=31+2cosθ
1+2cosθ>0すなわち cosθ>12 のとき r>0
1+2cosθ<0すなわち cosθ<12 のとき r<0

そう、(3)ではr<0である場合があるためr=x2+y2とおいてはいけないのです。
まあ、そこは置いておきましょう。以下答案です。

解答3

解答3

(3) r=31+2cosθ
与えられた方程式を整理して
32rcosθr=0

ここで、rr,θθ+πとして整理した
32rcosθ+r=0
と同じグラフである。

また、2つのグラフ,をあわせた
(32rcosθr)(32rcosθ+r)=0
のグラフはと同じである。

ここで、を整理して
(32cosθ)2r2=0r2=(32rcosθ)2x2+y2=(32x)23(x2)2y2=3(x2)2y23=1
したがって、が表すグラフは双曲線 (x2)2y23=1

は同じグラフであるから、
,すなわち r=31+2cosθが表すグラフは双曲線(x2)2y23=1

あとがき

いかがでしたでしょうか。
(2)(3)の両辺二乗については学校の授業でちらっと言われていたような気がしなくもないのですけど。とりあえず、同値性云々は時々気になってしまうので、それを解決する答案を作れて今は満足しています。
またTeXを使うときはこちらに投稿していこうかと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
まあもう高3なので頻度はかなり低いと思いますが。
では、また次回。
※なおこれを書くのにほぼ丸一日ほどかかりました。

2025年5月25日(日) 22:00
最終編集:2025年5月27日(火) 17:00

投稿日:525
更新日:527
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投稿者

高校3年のぱぺです。 文章を作るのは苦手です。数学は好きで、かつ学年の中では数学が得意なほうです。 ここでは、①作問の投稿 ②高校数学のいろいろの投稿 ③「問題解いてみる」系投稿 を行います。

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