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ちょいムズ漸化式を解く

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初めまして.Devil_Ansonyです.
この記事では私流のちょいムズな漸化式の考え方を紹介します.
難しいものや高尚なものがないことをお許しください.

この記事に載っている解法の再現性は保証しかねます.
また,分母が$0$にならないことなどの証明は省略します.

結構シンプルながらに面白い(個人の感想)問題が揃っていると思うので一旦問題下の解説・解法・講評を見ずに挑戦してみることをお勧めします.
まずは簡単なものから行きます.

考え1 次数

数列$\lbrace a_n\rbrace$を次のように定める.

  • $a_1=1,a_2=2$
  • $a_{n+1}a_n-a_{n+2}a_n+a_{n+1}^2=0$
    このとき,$a_n$を求めよ.
解説与えられた漸化式の各項を構成するものの次数に注目します.
$a_{n+1}a_n$$a_{n+1}$$a_n$の次数が$1$$a_{n+2}$の次数が$0$
$-a_{n+2}a_n$$a_{n+2}$$a_n$の次数が$1$$a_{n+1}$の次数が$0$
$a_{n+1}^2$$a_{n+1}$の次数が$2$$a_{n+2}$$a_n$の次数が$0$
こういう形の漸化式は$a_n$とかで割ると解けたりしますよね.
割ったら同じ形のものが出てくるようにしたいので,項$a_{n+1}^2$は割った後$b_n^2$みたいな形に帰着できたら嬉しいです.即ち,$a_n^2$みたいな形で割りたいと考えます.
そこで,先程の各項を構成するものの次数に着目すると,両辺を$a_n^2$で割ることで項$a_{n+1}^2$の次数を$2$に保ち,かつ他$2$項の次数も$1$に保つことができると気づけます.
解法与えられた漸化式の両辺を$a_n^2$で割り$b_n=\dfrac{a_{n+1}}{a_n}$とすると漸化式は以下に変形できる.
$$b_n-b_{n+1}b_n+b_n^2=0$$
両辺を$b_n$で割ることで$b_n=n+1$を得る.
したがって,$a_n=n!$

このくらいならできる人も多いでしょう.次の考えに進みます.

考え2 不変量

数列$\lbrace a_n\rbrace$を次のように定める.

  • $a_1=1,a_2=2$
  • $a_{n+2}a_n=a_{n+1}^2+1$
    このとき,$a_n$を求めよ.

見たことのある方も多いかと思いますが,東京大学の$2015$年の入試問題に出題されたものです.この問題は私が過去に自作したものなのですが,本当にたまたまかぶってしまいました。私は不変量を見つけるのに苦戦したのですが,東大の問題はがっつり誘導がついているようですね.ずるい.

解説タイトルの通りこの漸化式では不変量を探していきます.不変量とは,単純に$n$に影響されないずっと一定の値を取り続けるものです.ここで,エスパーにより不変量が$\dfrac{a_{n+2}+a_n}{a_{n+1}}$であることを疑います.
解法与えられた漸化式より$$\dfrac{a_{n+2}+a_n}{a_{n+1}}=\dfrac{\dfrac{a_{n+1}^2+1}{a_n}+a_n}{a_{n+1}}=\dfrac{a_{n+1}^2+1+a_n^2}{a_{n+1}a_n}=\dfrac{a_{n+1}+\dfrac{1+a_n^2}{a_{n+1}}}{a_n}=\dfrac{a_{n+1}+a_{n-1}}{a_n}$$
$X_n=\dfrac{a_{n+2}+a_n}{a_{n+1}}$とすると上の式変形により$X_n=X_{n-1}$であるので$X_n$は不変量であり,$X_1$に等しい.
$a_1=1,a_2=2,a_3=5$より$X_1=3$を得るので$\dfrac{a_{n+2}+a_n}{a_{n+1}}=3$を用いて三項間漸化式を解けば$a_n=\dfrac{1}{\sqrt{5}}\bigg\lbrace\bigg(\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}\bigg)^{2n-1}-\bigg(\dfrac{1-\sqrt{5}}{2}\bigg)^{2n-1}\bigg\rbrace$を得る.
ちなみに,与えられた漸化式の$n$$n+1$にずらしたものと比較して頑張れば不変量を機械的に発見することも可能です(この記事では作業は省略します).
これ結構好きです.不変量エスパー楽しかった.
不変量は当てたときの脳汁が凄まじいのでとりあえず軽い気持ちで探すことを強く推奨します.

考え3 比

数列$\lbrace a_n\rbrace$を次のように定める.

  • $a_1=2$
  • $2a_{n+1}a_n=a_n^2+1$
    このとき,$a_n$を求めよ.

これも私の愛している問題の一つです.

解説以下の様に左辺を$(a_n+1)^2$になるようにするなど同じ形を作ることは割と容易なのですが,邪魔なもの$(2a_n)$が残ってしまいます.
$$2a_n(a_{n+1}+1)=(a_n+1)^2$$
そこで,$2a_n(a_{n+1}-1)=(a_n-1)^2$というもう一つ同じ形のものが作れることを利用して$2$つの式の両辺の比を取ることで邪魔なものを消します.
解法与えられた漸化式を変形して以下の$2$つの式を得る.
$2a_n(a_{n+1}+1)=(a_n+1)^2$
$2a_n(a_{n+1}-1)=(a_n-1)^2$
これらの両辺の比を取ると$\dfrac{a_{n+1}+1}{a_{n+1}-1}=\dfrac{(a_n+1)^2}{(a_n-1)^2}$となり,$b_n=\dfrac{a_n+1}{a_n-1}$を考えることで$b_{n+1}=b_n^2$を得る.以降計算により$a_n=\dfrac{1+\bigg(\dfrac{1}{3}\bigg)^{2^{n-1}}}{1-\bigg(\dfrac{1}{3}\bigg)^{2^{n-1}}}=\dfrac{3^{2^{n-1}}+1}{3^{2^{n-1}}-1}$を得る.
比を考えるというのは邪魔な項やその一部を消す手段について非常に有効です.

考え4 臨機応変な消去

$n=1,2,\dots$について
$S_n=\dfrac{1}{2}\bigg(a_n+\dfrac{1}{a_n}\bigg)$,$a_n\gt0$
が成り立つとき$a_n$を求めよ.ただし,$S_n=a_1+a_2+\dots+a_n$である.
(『大学への数学』第三巻 作問コンクールにおける鹿野健さんの作問)

Rio Lucaさん( @osakanaalgebra )に紹介していただいた問題になります.この記事のために問題を共有してくださりありがとうございます.
この問題,好きです.

解説とりあえず$S_1=a_1$より$a_1=1$ですが,安直に「はいはい,$S_n$のある式だから$S_n-S_{n-1}=a_n$$S_n$消去して$a_n$の漸化式ね」としてはいけません.割と見た目でわかると思いますが,汚くなります.
ここで,無理矢理これを解くのではなく綺麗な形を模索します.思考ロックを外すことで$a_n$を消去すればよいという考えに至ります.
解法与えられた漸化式から$a_n=S_n-S_{n-1}$を用いて$a_n$を消去して,
$2S_n=S_n-S_{n-1}+\dfrac{1}{S_n-S_{n-1}}$
整理して,$S_n+S_{n-1}=\dfrac{1}{S_n-S_{n-1}}$から$S_n^2-S_{n-1}^2=1$を得る.
$S_1=1$より$S_n^2=n$,また$a_n\gt0$より$S_n\gt0$なので$S_n=\sqrt{n}$
したがって,$a_n=S_n-S_{n-1}$より$a_n=\sqrt{n}-\sqrt{n-1}$である.

再現性の高い解法ではありませんが,試されてる気がして楽しいですね.$S_n$$1$つの数列として捉えることを頭の隅に置きたいです.

考え5 邪魔者は全員消す😡

数列$\lbrace a_n\rbrace$を以下の条件によって定める.$$a_1=1,a_{n+1}=2a_n\sqrt{a_n^2+1}$$このとき,$\lbrace a_n\rbrace$の一般項を求めよ.

こちらの問題はrin_(アザラシ)さん( @rin_mnkn )が自作された問題です.この記事に掲載することを許可してくださりありがとうございます.
この問題,結構歯ごたえがあって推しです.

解説問題3の解説で軽く言及した平方完成的考えの応用ver.です.
$2a_n\sqrt{a_n^2+1}$,邪魔ですよね?(特に根号)
係数が$2$なのが大ヒントとなっていて,$(a_n+\sqrt{a_n^2+1})^2$を展開すると$2a_n\sqrt{a_n^2+1}=a_{n+1}$が出てきます.
とりあえず,$b_n=a_n+\sqrt{a_n^2+1}$とおけば$b_n^2=a_{n+1}+2a_n^2+1$ですが,今度は$2a_n^2+1$が邪魔です(右辺も$b_n$を作りたいのに添え字が揃ってない).
なので,添え字を揃えるために与えられた漸化式を眺めます.
眺めることで,両辺を$2$乗したときの右辺を平方完成したくなります.
$$RHS^2=4a_n^4+4a_n^2=(2a_n^2+1)^2-1$$
都合のいい形が出てきました.
解法$b_n=a_n+\sqrt{a_n^2+1}$とおくと,与えられた漸化式より$b_n^2=a_{n+1}+2a_n^2+1$
また,$a_{n+1}^2+1=4a_n^4+4a_n^2+1=(2a_n^2+1)^2$より$b_n^2=a_{n+1}+\sqrt{a_{n+1}^2+1}=b_{n+1}$を得る.
以降計算により$a_n=\dfrac{(\sqrt{2}+1)^{2^{n-1}}-(\sqrt{2}-1)^{2^{n-1}}}{2}$である.


最後まで記事を見てくださりありがとうございました.この記事では三角関数に置換する問題はわざと扱いませんでした(問題5はさておき).
私が嫌いだからです.あれずるくない?


改めて,この記事の問題の一部を提供してくださったRio Lucaさん( @osakanaalgebra ),rin_(アザラシ)さん( @rin_mnkn ),そして間接的に問題を提供してくださった鹿野健さんへの感謝をここに記します.

投稿日:2日前
更新日:2日前
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がちこいansony

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