なんと1章がおわり、しれっと2章なんですが、本文の注意の通り2章以降では、多様体といえば、Hausdorff第二可算多様体の事を指す事とします。
また、チャートによる表現が本質的な問題でない限りは、微分の行列$D^k(\psi f \phi^{-1})(\phi(x))$を$f^{(k)}(x)$や$f^{(k)}_x$などと略記する事とします。略記で使っているチャートは、もちろん$x$が定義される任意のチャートです。
$C^r$級submersion(沈め込み)の集合$\mathrm{Sub}^r(M,N)$は、強位相の入った$C^r$級写像の空間$C^r_S(M,N)$の中で開集合である。$(1\leq r\leq \infty)$
はめ込みの開性の証明と同様に示せるとのことで「読者の演習」になっていたので、自分の理解のためにもsubmersion版を示そうと思います。
$\mathrm{Sub}^r(M,N)=\mathrm{Sub}^1(M,N)\cap C^r(M,N)$であるから、$r=1$の場合を示せば良い。
いま、$f:M\to N$を$C^1$級Submersionとする。ここで、この$f$の近傍$\mathcal N(f;\Phi,\Psi,K,\varepsilon)$を次で定める:
$N$のアトラス$\Psi^0=\{(\psi_\beta,V_\beta)\}_{\beta\in B}$に対して、$M$のアトラス$\Phi=\{(\phi_i,U_i)\}_{i\in \Lambda}$を、各$U_i$は閉包がコンパクトで、各$i\in \Lambda$に対して、$f(U_i)\subset V_{\beta(i)}$を満たす$\beta(i)\in B$が存在するようにとる。
ここで記号を$V_{\beta(i)}=V_i,\psi_{\beta(i)}=\psi_i,\Psi=\{(\psi_i,V_i)\}_{i\in \Lambda}$と取り直し、$K=\{K_i\}$を$M$の$K_i\subset U_i$であるコンパクト集合族による被覆とする。
すると、集合$A_i=\{D(\psi_if\phi_i^{-1})(x)|x\in \phi_i(K_i)\}$は、$K_i$がコンパクトかつ$\phi_i$が連続かつ$f$が$C^1$級より、$\mathbb R^m$から$\mathbb R^n$への全射線形写像のコンパクト部分集合であることがわかる。
全射線形写像すべてからなる集合は全ての線型写像からなる線形空間$L(\mathbb R^m,\mathbb R^n)$の開集合であるので、一様半径の存在性から、$S\in A_i$かつ$\left\| T-S \right\|<\varepsilon_i$ならば$T\in L(\mathbb R^m,\mathbb R^n)$は全射であるような$\varepsilon_i>0$が存在する。
$\varepsilon=\{\varepsilon_i\}$とおくと、$\mathcal N^1(f;\Phi,\Psi,K,\varepsilon)$の元はどれもはめ込みである事が従う。すなわち、$f\in\mathcal N^1(f;\Phi,\Psi,K,\varepsilon)\subset\mathrm{Sub}^1(M,N)$である。
$f$は任意だったので、$\mathrm{Sub}^1(M,N)$は開集合である。
空間$C^r_S(\mathbb R,\mathbb R)$はどの点でも可算基を持たない($r\geq 0$)。従って距離付け不可能である。また、位相群であるが、位相線形空間ではない。
前提として、$\mathbb R$のチャートとして自明な大域チャートがあるので、近傍$\mathcal N(f;\Phi,\Psi,K,\varepsilon)$を考える時に、先にコンパクト集合の集まり$K$を指定しても、添え字だけ適合している大域チャートの集まり$\Phi,\Psi$を取れます。
つまり、近傍のデータとして実は$\Phi,\Psi$は考慮不要で、$K$と$\varepsilon$の取り方のみに注力できることに注意します。
(もちろん、わざわざ小さいチャートや変な座標変換を考えてもいいですが、ここでは不要です。また、各コンパクト集合を“十分小さく”取れば、大域チャートが存在しないどんな多様体であっても、その添え字に適合するコンパクト集合を覆うチャートを取れるので、同様にチャートの構成を“忘却”できます。)
前半部分については、本文中に以下の事実があるのでそれをそのまま使います。
定義域の多様体$M$がコンパクトではなく、値域の多様体$N$が$1$次元以上であれば、$C^r_S(M,N)$は距離付け不可能であり、どの点でも可算基を持たず、非可算無限個の成分をもつ。
なお、後半の和の連続性については分かりにくいので先に述べておくと、$\phi:X×X\to X$について、任意の点$(f,g) \in X \times X $と、任意の基底元$ W \in \mathcal{B} $で$ \phi(f,g) \in W $を満たすものに対し、
$X $の基底元$ U \in \mathcal{B}(f \in U) $と$ V \in \mathcal{B}(g \in V) $が存在して$
\phi(U \times V) \subset W $が成り立つことと、$\phi$が連続であることは同値である、という事実を使っています。(より一般のバージョンも今後よく使用するので、この基本形だけ覚えておいて、必要に応じて各々確認いただければと思います。)
マイナスの方の連続性は、ノルムで符号を逆にして良いので自明ですね。
定理1より、前半の主張は成立。よって後半部分について示せばよい。
任意の点$(f_0,g_0)\in C^r_S(\mathbb R,\mathbb R)×C^r_S(\mathbb R,\mathbb R)$と、任意の$f_0+g_0$を含む基底$W$をとる。特にその構成から、$\mathcal N(f_0+g_0,\Phi,\Psi,K,\varepsilon)\subset W$なる基底を取れる。
いま、$f_0,g_0$を含む基底として、$\mathcal N(f_0,\Phi,\Psi,K,\varepsilon/2)(=U)$、$\mathcal N(g_0,\Phi,\Psi,K,\varepsilon/2)(=V)$を取る。このとき、各$K_i\in K$上で、任意の$(f,g)\in U×V$に対して$ \left\| (f+ g)^{(k)}(x)-(f_0+g_0)^{(k)}(x)
\right\|<\varepsilon_i$なので、$+(U×V)\subset W$である。
故に、和は連続である。
同様にして、マイナスを取る操作も連続である事がわかり、よって位相群である。
位相線形空間にならないことは、例えば定数写像がスカラー倍で連続にならない事からわかる。
実際、この操作を$\lambda$、$1$への定値写像を$1$とし、各$n\in \mathbb Z$に対して$K_n=[n,n+1],\varepsilon_n=2^{-|n|}$で$K,\varepsilon$を定めた近傍$\mathcal N(1;\Phi,\Psi,K,\varepsilon)(=U)$を考えれば、どんな$(0,1)$近傍$I×V\subset \mathbb R×C^r_S(\mathbb R,\mathbb R)$をとっても、$\lambda(I×V)\not\subset U$となってしまうことから点$(0,1)\in \mathbb R×C^r_S(\mathbb R,\mathbb R)$で少なくとも$\lambda$は不連続である事がわかる。
いちおう前半部分についても、各$m\in \mathbb N$について$K_m=[-m,m],E_m=C^r(K_m,\mathbb R)$とおいて($E_m$には弱位相(定義域がコンパクトなので強位相でも同じ)を入れる)、$E=C^r_S(\mathbb R,\mathbb R)$から$E_m$への各制限写像$\rho_m:E\to E_m,f\mapsto f|_{K_m}$が連続になるような最終位相が強位相と一致する事を用いると、良い感じに示せるようです。あまりよく分かってないですが…。