唐突ですが, 先日の第26回近大数学コンテストにて, 最優秀賞を頂きました. やったね.
というわけで少し調子に乗って(?), 参加記とやらを書いてみます. どんな需要があるのかは定かではないですが, 興味のある方はご一読ください. (ところでMathlogって適切な媒体なんですかね?)
なお, 本記事の性質上, ネタバレが多く含まれます. 先に考えたい方は こちら から問題を参照してください.
以下常体です.
以下の小見出しは, コンテスト開始からの経過時間(分)を表す.
起床. 眠い.
長瀬駅から会場へ向かった. 「とりあえず配点が3番目に高いやつから考えるか」などと頭に浮かべて, 立ち回りがフラフラしないようある程度固めようとした.
封筒開封が解禁されたので, 見た. A,B問題の区分が復活していた. 大学数学の配点が高くても耐えられるはず(半分願望)なので, 気楽に待てた.
開始. とりあえず全問題について1~2分ずつくらい手を動かした.
C分野・高配点の2要素からとりあえずA5に手をつけた.
とりあえず$l+1$文字目は関係ないので, 長い文字列を1マスに縮約する作業だと思うことができるなと思った.
色々実験して眺めているうちに, (嘘)予想を立ててできた気になった.
しかし5分後くらいに気持ちを落ち着かせようとトイレに行ったら, 嘘であることに気づいて悲しい気持ちになった.
更に色々実験しているうちに正しい予想を立てられ, 更に帰納法も回って無事解決した. 40分で35ptを確保できたのはかなりアドなので, 喜びながら他の問題を考えることにした.
因みに, 実験に番外編も利用し解いたものの, 飴玉は受け取らなかった(余裕がなかった). ちょっと損した気分.
他の問題に手をつけたが, いまいち気分の良い進捗を埋めない. 安心したいので, まあまあ重そうなA5の記述を始めることにした.
A5の答案を書き終えた. 高校生解法をとってしまったため, かなり記述が重くなり, 手が疲れた. 裏面の上下が逆なことに気づき, ごめんなさい的なことを書いた.
A5を処理したためある程度冒険できる立場になり, ウロウロしたのちA3を考えることにした.
はじめガウスをただのカッコと思って無駄な時間を過ごしてしまった. ただ少し考えるとガウスの中身はあまり大きくならないので適当な場合分けで書き下すことができて, 更に$l$を固定した時の$\Sigma [\mathrm{ほげ}]$も$l$の式でかけることが分かった. となると, あとは適当に挟めば処理できるな, となりできた気になった(本日2度目).
とりあえず答案を書いてみて$\Sigma$1個まで落としたあたりで, 全然終わっていないことに気づいた. というのも, $N$個くらいの天井記号を足すので, 普通にやると$\pm{N}$程度のズレがあり, $\frac{1}{N}$倍したとしても$\pm1$のズレから挟み切れないのである. 単純に挟める形以外の経験が薄く, かなり手詰まりになってしまった.
A3が実は無理枠なのではないかと思い始めた. となると現状の進捗はただの1完である. かなりやばいと感じ, お腹も空いてきたので, 気分転換に昼餉を買いに出た. 行きに門付近のLawsonを確認していたので, ここでは迷わなかった.
帰り道に, 「$\sqrt{4n+2}$あたりで切ればどっちもいけるんじゃね」という典型に辿り着いた. 解いた人にしか伝わらなそうな説明をすると, 「$\pm1$ズレが生じる回数」と「ガウスが減る回数」がそれぞれ$\sqrt{n}$オーダーになるように切ってやることで, どっちも無視できるようにしよう, ということになった. 「$\left[\frac{N}{k}\right]>\left[\frac{N}{k+1}\right]$となる正整数$k$はいくつある?」という有名問題みたいなノリ.
上の発想を精査し, とりあえずざっくり解けていることを確認した. いつでも答案をかける状態にはなったので一安心した.
この辺りで, チーム参加されている方の声で「この道順対応天才でしょ」というようなものが聞こえてきてぐえーとなった. A2に天才対応があるのは賞を争う上でかなりまずいので, プレッシャーになった.
Leibniz級数の証明を残し, A3の答案を書いた. はさみうちを真面目にしようかと思ったが, 添字周りで変なミスを起こしそうだったので, オーダーの議論をして誤魔化した(と言いつつ嘘はついていない筈). 残り時間でA1,2,4のどれかを解けばかなり戦えるので, だいぶ気楽になった.
3問を考えつつ, Leibniz級数の証明を復元できたので, 書いておいた. 無くてもいいかなとは思ったが, 嘘はないので書いて損はないだろうと判断した.
A1,2の進捗が一向に産まれないので, とりあえず頑張ればできそうなA4の答案を書き始めてみた. 先が見えないまま条件を整理する答案を書きつつ, 別紙に天下り答案作成用の計算をしていたら, 思ったよりも簡単にできることがわかった.
(2)も考えるが, (1)が分かればなんとかなるだろうと思えていたこともあり気楽に考えられた. 実際正しく, 適切に文字を置いて代入していけば自ずと主張を示すことができた.
A4の記述が終了. 無事に3問解き切ることができて安堵した.
残りの時間は, 減点量を減らすことに注力した. どのくらい丁寧にみられるのかはわからないが, くだらない説明不足等で賞を逃す・下げるのは悲しいので, 少しでも不安があるところは補足を生やして記述を増やしておいた.
答案提出場所に移動. 引き続き細かい行間を埋めつつ, 大した生産性のないまま終わりを待った.
終了. A3,4,5を提出した.
談笑タイム. 前回より解いた集合がバラけていて興味深かった. お会いするのが2度目以降の方が増えてきて, 世界は狭いなと思い始めた.
解説タイム. A2, B1, B2と解いていない3問を解説されてよかった. 解いていない問題は解いた問題に比べて5~10ptくらい高く感じてしまったが, 人の性というものだろうか.
表彰式. 流石に賞には入れるだろうと思いつつ, 人数が少なかったこともあって名前が呼ばれた時はほっとした.
OMCerの方々と食事をした. sqrt_3さん, J_Koizumi_144さんと同じテーブルで, ある初等的な問題を考えていたのだが, お二方から賢い解法が飛んできて圧倒されてしまった.
pomodor_apさんとはコンテスト後に色々お話しできて良かった. 目で解く幾何が速くかつ強すぎてびっくりした. OMCでの様子から分かってはいたものの, 改めて眼前にするとより凄かった. これは敵わないなぁと思ってしまったが, 才能で片付けるのも良くないので, 少しでも近づきたい.
zplcさんとはあまり数学の話はできなかったが, とにかく良い方だなと感じた. 競技数学も純粋数学もしっかりできるのにあそこまで謙虚なのは, 見習うところがあるなと思った. 応援してます(何様).
観光した. 千石堀城, 古墳群などをのんびりと巡った. 正直大阪で好みのものは見尽くした感があるので, 今後参加機会があったら関西のひらがな二文字都道府県に行ってみようかな.
実験して1だなぁと思ったあと, Fibonacciの時の周期の議論を思い出した. $m^2+4$が$\bmod p$で平方剰余な場合は片付くのだが, 平方非剰余な場合がパッとせず困ってしまった.
終了後, OMCerの集団から(だけでもないが)「A1, X, Yを解いた」という声が複数聞こえて少し嫌な気持ちになった. 「一般項を普通に書けばできました」と聞いたが, 確かに二項定理とかで片付きそうではある. A4は愚直にやったのに, なぜA1でやろうとしないのか…
A問題なので賢い道順に期待をかけてあれこれ実験したが, 沼ったまま終わってしまった.
事実上形式的冪級数しか解法がないものをA問題に出すのは正直微妙だと思った. とはいえ, 去年過去問を解いて「形式的冪級数が大好きな出題者の方がいそうだから十分に対策をしておこう」という気持ちを抱いており, さらに最近OMC等で対応できるようになっていた中で, その引き出しを十分に検討しなかったのは反省点. 来年度以降参加する際はしっかり準備をせねば.
ちなみにこの数列は OEIS に掲載があり, $\{A_n\}$, $\{B_n\}$(と自然に同一視される道順数)と, 正答を容易に導ける表示(目次の文)が同一であることが明示されている. 形式的冪級数で確かめられるのでそれはそうだが, 組み合わせ的議論は既出なのだろうか?
見た目の割にはかなりやりやすい問題だった. Gauss記号の中身をしっかり評価し, 丁寧に変形していけばできるので, 「見た目に怯えずやることをやりましょう」という教育的な面を感じる. 数コンの無限和系は総じて複素解析高等テクなどを要求されヤバ目な印象があったので, 普通な部類のものをしっかりできて良かった.
最後Leibniz級数が出てきて, 本当に高校数学か?と少し不安になった. まあ証明はその範疇に収まるし, 参加するような人(で40ptに挑もうとする人)ならかなり知っていそうなので, あまり問題にはならなそう.
計算したらできてしまったのでなんとも言えない気持ちになった. 2次元のときどうなんだ?と考えてみてもいまいちパッとせず, 背景がよくわからなかった.
正直今回のセットで一番やりやすかった. OMCerの解答率はかなり高そうだが, サンプルが偏っているので35ptが不適当とまでは言えないかもしれない.
終わった後話した感じ+Xをみている感じ, $\mathbb{F}_2[X]$上の話に帰着させている人が多そうだった. やっている時は(あまり真剣な感じではなく)「背景なんなんだろうな〜」と思っていたが, 大体わかってすっきりした.
線形性からとりあえず単項式を考えれば良いことはわかったが, それ以上は考えられなかった. $m$が1以下のときの挙動がちゃんとわかるか・収束条件を過不足なく議論できるかの2点に自信を持てず, 時間をかける決断をしきれなかった. 解説を聞く感じ不可能ではなかったが, 5時間コンで勝負すべきかと言われるとボーダーくらいに感じる.
「数コンの幾何は地雷」という認識を持っており, 更に立体だったこともあって, 適当に予想したのみでほとんど触らなかった. 解説を聞いたら思ったよりなんとかなりそうな感じだったが, 切り口の分類・六角形の評価などをちゃんとやるのはまだまだ大変そうだと思った.
(去年が異質だった気もするが)簡単枠が少なく, 3問取り切るのにかなり手こずってしまった. 一方で最難問が40ptと現実的に解ける範囲で, 最優秀賞ボーダーが110ptになってもおかしくないセットだったように感じる. (自称)100ptで最優秀賞を頂けたのは色々と恵まれていた.
あまりにも尻切蜻蛉で何か忘れていないか不安ですが, とりあえず〆ます. お読み頂きありがとうございました.
上で挙げた サイト に私の名前が載っているわけですが, 実は氏名に誤字があることが先日発覚しました. 電話以外の連絡手段がなく, わざわざ言うほどでもないかな〜と現状なっているので供養しておきます.