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東大寺学園数学研究部 懸賞問題解説 その2 問13,15,17

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はじめに

皆さん初めまして yyaaと申します.
この記事では,東大寺学園で2023年9月9日,10日に開催した文化祭において,数学研究部が企画した懸賞問題のうち,私が作ったものの解説をします.
問題は,以下の3つです.

問13

$O$を中心とする円に外接する四角形$ABCD$において,$AB$$CD$の交点を$X$,$BC$$DA$の交点を$Y$,$AC$$BD$の交点を$Z$とする.$XY\perp OZ$であることを示せ.

問15

円に内接する四角形$ABCD$において,三角形$ACD$の内心を$I_1$,三角形$BCD$の内心を$I_2$とする.二点$A,I_2$を通り直線$BI_2$に接する円と,二点$B,I_1$を通り直線$AI_1$に接する円の共通外接線の交点を$X$とするとき,三点$X,I_{1},I_{2}$は一直線上にあることを示せ.

問17

正三角形でない三角形$ABC$があり,内心を$I$,外心を$O$とする.$\angle A$の外角の二等分線と直線$BC$の交点を$D$,$\angle B$の外角の二等分線と直線$CA$の交点を$E$とする.$OI\perp DE$であることを示せ.

それでは早速解説をはじめていきます.

問13

問題

$O$を中心とする円に外接する四角形$ABCD$において,$AB$$CD$の交点を$X$,$BC$$DA$の交点を$Y$,$AC$$BD$の交点を$Z$とする.$XY\perp OZ$であることを示せ.

$O$を中心とし,四角形$ABCD$に内接する円を$\omega$とする.
直線$AB,BC,CD,DA$$\omega$の接点をそれぞれ$P,Q,R,S$とする.$\angle XPO=\angle XRO=90°$より,四角形$XPOR$は円に内接する.この円を$\Gamma_{1}$とする.$\Gamma_{1}$と直線$XY$の交点を$H(\neq X)$とすれば,$\angle YQO=\angle YSO=\angle YHO=90°$なので,四角形$YQOS$は円に内接し,かつ,この円を$\Gamma_{2}$とすれば,$\Gamma_{2}$$H$を通る.
さて,$PR$$QS$の交点を$Z'$とすれば,$Z'$$\omega ,\Gamma_{1},\Gamma_{2}$の根心なので,$OH$$Z'$を通る.よって,$XY\perp OZ'$である.そこで,$Z'=Z$であることを示せばよいが,これはブリアンションの定理を六点$A,P,B,C,R,D$,六点$A,B,Q,C,D,S$にそれぞれ適用することで得られる.

最後の行について,ブリアンションの定理を知らない場合は,メネラウスの定理を三角形$XAC$と直線$PR$,三角形$YAC$と直線$QS$にそれぞれ適用すれば,直線$PR$,直線$QS$は線分$AC$をそれぞれ同じ比で内分することから証明できます.

余談

問題文は,「外接」と「内接」を入れ替えると,次のようになります:

$O$を中心とする円に内接する四角形$ABCD$において,$AB$$CD$の交点を$X$,$BC$$DA$の交点を$Y$,$AC$$BD$の交点を$Z$とする.

実は,こちらの問題文においても$XY\perp OZ$が成り立ちます.
それだけでなく,より強い,「$O$は三角形$XYZ$の垂心である」という主張が成り立ちます.これは,ブロカールの定理と呼ばれます.
そのせいもあってか,この問題において,「外接」を「内接」と読み間違えた答案が多くありました.(ちなみに,これは偶然ではなく,問13とブロカールの定理の双対性からくる必然です.詳しくは,射影幾何学を学ぶと面白いと思います.)

問15

問題

円に内接する四角形$ABCD$において,三角形$ACD$の内心を$I_1$,三角形$BCD$の内心を$I_2$とする.二点$A,I_2$を通り直線$BI_2$に接する円と,二点$B,I_1$を通り直線$AI_1$に接する円の共通外接線の交点を$X$とするとき,三点$X,I_{1},I_{2}$は一直線上にあることを示せ.

二点$A,I_2$を通り直線$BI_2$に接する円を$\omega_1$,二点$B,I_1$を通り直線$AI_1$に接する円を$\omega_2$とする.
$CD$のうち点$A$を含まない方の中点を$M$とする.明らかに三点$A,I_{1},M$,三点$B,I_{2},M$はそれぞれ一直線上にある.また,
$\angle MI_{1}D=\angle I_{1}AD+\angle I_{1}DA=\angle I_{1}AC+\angle I_{1}DC=\angle MDC+\angle I_{1}DC=\angle MDI_{1}$
より$MI_{1}=MD$.同様にすれば$MI_{2}=MC$.さらに,明らかに$MD=MC$であるから$MI_{1}=MI_{2}$.
よって,直線$MI_{1},MI_{2}$にそれぞれ点$I_{1},I_{2}$で接する円をとることができる.すると,この円と$\omega_1$$\omega_2$$monge$の定理を適用することで,三点$X,I_{1},I_{2}$が一直線上にあることが得られる.

この問題の難易度ってどれくらいなんでしょう?わからないです.
mongeの定理を知らない場合の証明方法も用意してありますが,長くなるので,方針だけ書いておきます.
step1.共通外接線の一方と二円の接点を$P,Q$とおく.共通外接線のもう片方と二円の接点を$R,S$とおく.
step2.四角形$PQI_{1}I_{2}$,四角形$RSI_{1}I_{2}$が円に内接することを示す.
step3.根心

問17

問題

正三角形でない三角形$ABC$があり,内心を$I$,外心を$O$とする.$\angle A$の外角の二等分線と直線$BC$の交点を$D$,$\angle B$の外角の二等分線と直線$CA$の交点を$E$とする.$OI\perp DE$であることを示せ.

この問題,非常にたくさんの解き方があります.私自身,様々な答案をみて,楽しませていただきました.そこで,いくつかの証明方法を紹介しようと思います.

想定解1

三角形$ABC$の接触三角形を$PQR$とする.
$\angle C$の外角の二等分線と$AB$の交点を$F$とする.角の二等分線の性質とメネラウスの定理の逆から,三点$D,E,F$が一直線上にあることがわかる.また,角度計算により四角形$ADPI$が円に内接することが分かる.この円を$\Gamma_{A}$とおく.同様にして$\Gamma_{B},\Gamma_{C}$を定める.$\Gamma_{A}$$DE$交点を$H$とすれば,$\angle DHI=90°$より,$\Gamma_{B},\Gamma_{C}$$H$を通る.
ここで,三角形$ABC$の内接円について反転する.
$\Omega$が反転して移った先を$\Omega'$と表すこととする.
$A',B',C'$はそれぞれ$QR,RP,PQ$の中点である.よって,$H'$は三角形$PQR$の重心である.さて,三点$H,H',I$は一直線上にあるので,示したいことは三点$H',I,O$が一直線上にあることである.ここで,$I$は三角形$PQR$の外心であることに注意すれば,三角形$PQR$のオイラー線上に三角形$ABC$の外心があることを示せばよい.そこで,三角形$PQR$の垂心を$K$,九点円の中心を$L$とする.
$PK$$QR$の交点を$S$,$QK$$RP$の交点を$T$,$RK$$PQ$の交点を$R$とする.
角度計算により,$ST\parallel AB$が分かる.同様に,$TR\parallel BC$,$RS\parallel CA$である.すると,三角形$ABC$と三角形$STU$の相似の中心$X$をとることができる.角度計算により,$K$は三角形$STU$の内心であることがわかるので,$X$を中心とした相似拡大を考えることにより,三点$X,K,I$が一直線上にあることがわかる.すなわち,$X$は三角形$PQR$のオイラー線上にある.また,$L$は三角形$STU$の外心であるから,再度$X$を中心とした相似拡大を考えることにより,三点$X,L,O$が一直線上にあることがわかる.よって,三角形$PQR$のオイラー線上に$O$があることが示された.

➁想定解2

$\Gamma_{B},\Gamma_{C}$$H$を通ることを示すまでは同様.
$\Gamma_{A}$と円$ABC$の交点を$S(\neq A)$とする.同様にして,$T,U$を定める.角度計算により,四角形$PQTS$が円に内接することがわかる.同様にすれば,四角形$QRUT$,四角形$RPSU$はそれぞれ円に内接する.円$PQTS$,円$QRUT$,円$RPSU$,$\Gamma_{A}$,$\Gamma_{B}$,$\Gamma_{C}$の六円のうち任意の二円の根軸は一点で交わるので,この点を$X$とする.$X$を中心とする,半径$\sqrt{XI\times XH}$の反転によって,点$P,Q,R$はそれぞれ点$S,T,U$にうつる.すなわち,この反転によって,三角形$ABC$の内接円と外接円は互いに移りあう.よって,三点$I,X,O$は一直線上にある.これと三点$H,I,X$が一直線上にあることをあわせて,三点$H,I,O$が一直線上にあることがわかる.よって,$OI\perp DE$である.

➂kさんの解法

三角形$ABC$の傍心を$I_{A},I_{B},I_{C}$とおく.$I$,は三角形$I_{A}I_{B}I_{C}$の垂心,$O$は三角形$I_{A}I_{B}I_{C}$の九点円の中心なので,直線$OI$は三角形$I_{A}I_{B}I_{C}$のオイラー線である.よって,三角形$I_{A}I_{B}I_{C}$の外心を$O'$とすれば,$OO'\perp DE$であることを示せばよい.そこで,円$ABC$,円$I_{A}I_{B}I_{C}$の根軸$l$$DE$と一致することを示す.
四角形$BCI_{B}I_{C}$は円に内接するので,$DI_{C}\times DI_{B}=DB\times DC$,すなわち,$D$における円$ABC$と円$I_{A}I_{B}I_{C}$への方べきが一致するので,$D$は直線$l$上にある.同様にすれば,$E$が直線$l$上にあることが示されるので,$DE=l$.よって示された.

掲載を快諾いただいたkさん,ご協力ありがとうございました.

この他,重心座標を用いる解答もありました.

おわりに

自作問題を他人に解いてもらうのは今回の文化祭が初めてで,不安も大きかったのですが,想像以上にたくさんの方に解いていただくことができました.ありがとうございました.

投稿日:2023918

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投稿者

yyaa
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競技数学 幾何が好き

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