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Krull-Schmidtな体上の線形圏でHom-finiteでないもの

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多元環の表現論界隈では、よく体k上の線形圏でHom-finiteなKrull-Schmidt圏ものを考えますが、よく知られている通り、次が成り立ちます。

Cを体k上の線形圏とする。もしCがHom-finiteで冪等完備ならばKrull-Schmidt圏である。

Krull-Schmidt圏は常に冪等完備です。

たまに上の命題の逆は成り立つのか、つまりHom-finiteでないKS圏があるのか何となくぼんやり疑問に思っていました。が普通にあったのでここにメモすることにします。

Krull-Schmidtな線形圏でHom-finiteでない例
  • Λを局所k代数でベクトル空間として無限次元なものとします(非可換でも可換でもよい)(たとえばk上の形式的べき級数環)。すると有限生成射影加群のなす圏projΛは線形圏です。がいまΛは局所環なのでsemiperfectであり、よってprojΛはKrull-Schmidtです(もしくは有限生成射影加群が自由なことからKSの定義がすぐ満たされる)。しかしHomΛ(Λ,Λ)=Λは無限次元ベクトル空間なので、この圏はHom-finiteではありません。
  • 上の議論のように、より一般に「ベクトル空間として無限次元であるsemiperfect k代数Λ」を取ればprojΛはKSだがHom-finiteではないです。
  • またmodΛについても同じく、Rを可換完備ネーター(半)局所k代数でベクトル空間として無限次元なもの(例えばべき級数環)、ΛR加群として有限生成なR代数とすれば、modΛはKSな線形圏ですが、上と同じ理由から全然Hom-finiteじゃないです。

Krull次元1以上の可換環の表現論でめっちゃよく出てくる例ですね。いつも有限次元多元環の世界に住んでいるので感覚が麻痺していましたが、このようにいくらでもあります。

風のうわさで、とある本で線形圏について「Hom-finiteで冪等完備なこと」をKrull-Schmidtの定義として採用しているものがあると聞いたのですが、この例のようによく出てくる圏で反例が普通にあるという話でした。

投稿日:20201114
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H.E.
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某大ポスドク、詳しくはtwitterまで。自分の分野(環の表現論)でよく使われるfolkloreの解説記事を主に書いています。

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