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Crazy Ant Problem

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Crazy Ant Problem とは

THE CRAZY ANT PROBLEM

Crazy Ant Problem とは座標平面の原点にいるアリがx軸方向に1進んで反時計回りに60度回転し、次に$\frac{1}{2}$進んで同じだけ回転し、同様に$\frac{1}{3}$進んで回転、$\frac{1}{4}$進んで回転……と無限に続けたときのゴールの座標を求める問題です。

CrazyAnt CrazyAnt

 複素数平面と、複素数版の対数関数のマクローリン展開(下記)を使うことでこの問題を解くことができます。しかも、回転角度が何度であっても計算できます。以下では回転角度を $\theta$ としてゴールの座標を求めます。複素数の対数関数は多価関数になりますが、ここでは主値のみを考えればよいので以下では主値を用います。

対数関数のマクローリン展開

${\displaystyle -\log(1-x)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{x^n}{n} }$

複素数平面上で考えた場合のアリのゴールの位置を $P$ とすると、$(P\in\mathbb{C})$
    ${\displaystyle \begin{align} P&=\sum_{n=1}^{\infty} \frac{e^{i(n-1)\theta}}{n}\\ &=e^{-i\theta}\sum_{n=1}^{\infty} \frac{e^{in\theta}}{n}\\ &=-e^{-i\theta}\log\left( 1-e^{i\theta} \right)\\ &=-e^{-i\theta}\left( \log\left|1-e^{i\theta}\right| +i\arg \left(1-e^{i\theta}\right) \right)\\ &=-(\cos \theta-i\sin \theta) \left( \log2+\log\left|\sin\frac{\theta}{2}\right| +i\left(\frac{\theta-\pi}{2}\right) \right)\\ &=\left(\frac{\pi-\theta}{2}\sin\theta-\cos \theta \left( \log2+\log\left|\sin\frac{\theta}{2}\right|\right) \right) +i\left( \left(\log2+\log\left|\sin\frac{\theta}{2}\right|\right)\sin \theta +\frac{\pi-\theta}{2} \cos \theta\right)\\ \end{align} }$

したがって、x,y座標平面上で表すとアリのゴールは
        ${\displaystyle \left(\left(\frac{\pi-\theta}{2}\sin\theta-\cos \theta \left( \log2+\log\left|\sin\frac{\theta}{2}\right|\right) \right) , \left( \left(\log2+\log\left|\sin\frac{\theta}{2}\right|\right)\sin \theta +\frac{\pi-\theta}{2} \cos \theta\right) \right) }$
となります。

たとえば、${\displaystyle \theta=\frac{\pi}{3}}$ のときはアリのゴールは ${\displaystyle \left(\frac{\sqrt{3}\pi}{6},\frac{\pi}{6}\right)}$ となります。

Crazy Ant Problem の答え

つまり、最初の Crazy Ant Problem の答えは ${\displaystyle \left(\frac{\sqrt{3}\pi}{6},\frac{\pi}{6}\right)}$ということです。

また、回転する角度が90度、つまり ${\displaystyle \theta=\frac{\pi}{2}}$ のときは、 ${\displaystyle \left(\frac{\pi}{4},\frac{\ln 2}{2}\right)}$ に、回転する角度が180度、つまり ${\displaystyle \theta=\pi}$ のときは、 ${\displaystyle \left(\ln 2,0\right)}$ にそれぞれ収束することがわかります。なんだか神秘的ですね!

CrazyAntAns CrazyAntAns

フーリエ級数との関係

ところで、フーリエ級数というものがあります。簡単に言うと、関数をサイン波とコサイン波の和として表すというものです。こんな感じです。($f(x)$は周期$2\pi$の周期関数)

${\displaystyle f(x)=\frac{a_0}{2} + \sum_{k=1}^\infty (a_k\cos kx+b_k\sin kx)}$

ここであらためて、Crazy Ant Problem の収束先の$x$座標と$y$座標を表す式を級数の形に書き直してみましょう。

$x$座標
        ${\displaystyle \left(\frac{\pi-\theta}{2}\sin\theta- \left( \log2+\log\left|\sin\frac{\theta}{2}\right|\right)\cos \theta \right) =1+\sum_{k=1}^{\infty}\frac{\cos k\theta}{k+1} }$

$y$座標
        ${\displaystyle \left(\frac{\pi-\theta}{2} \cos \theta +\left(\log2+\log\left|\sin\frac{\theta}{2}\right|\right)\sin \theta \right) =0+\sum_{k=1}^{\infty}\frac{\sin k\theta}{k+1} }$

おや?なんだかフーリエ級数の式とそっくりですね!実際、左辺をフーリエ級数展開したものが右辺だと解釈することが可能です。
$x$座標の方は$\{a_0,a_1,a_2,\cdots\}=\left\{2,\frac{1}{2},\frac{1}{3},\frac{1}{4},\cdots\right\}$,$\{b_1,b_2,b_3\cdots\}=\left\{0,0,0,\cdots\right\}$としてやればいいですし、$y$座標の方は$\{a_0,a_1,a_2,\cdots\}=\left\{0,0,0,0,\cdots\right\}$,$\{b_1,b_2,b_3,\cdots\}=\left\{\frac{1}{2},\frac{1}{3},\frac{1}{4},\cdots\right\}$としてやればいいですね。

フーリエ級数の係数を求める式で積分を作る

フーリエ級数の係数はこんな式で計算することができます。

${\displaystyle \begin{align} a_n &= {1 \over \pi} \int_{0}^{2\pi} f\left(t \right) \cos nt\,dt, \left(n = 0,1,2,3,\cdots \right) \\ b_n &= {1 \over \pi} \int_{0}^{2\pi} f\left(t \right) \sin nt\,dt, \left(n = 1,2,3,\cdots \right) \end{align} }$

先ほどの級数にこの式を適用することで、こんな式が得られます。

        ${\displaystyle \frac{1}{\pi}\int_0^{2\pi}\left(\frac{\pi-\theta}{2}\sin\theta- \left( \log2+\log\left|\sin\frac{\theta}{2}\right|\right)\cos \theta \right)\cos(n\theta)d\theta=\frac{1}{n+1}\qquad(n=1,2,3,\cdots) }$

        ${\displaystyle \frac{1}{\pi}\int_0^{2\pi}\left(\frac{\pi-\theta}{2}\cos \theta +\left(\log2+\log\left|\sin\frac{\theta}{2}\right|\right)\sin \theta \right)\sin(n\theta)d\theta=\frac{1}{n+1}\qquad(n=1,2,3,\cdots) }$

こんな複雑な積分の計算結果が、(マジメに計算することなく)求めることができてしまいました!面白いですね!

投稿日:20201115

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