自然数の逆数を、符号を正負交互にして和を取ることにより得られる級数
$$ 1- \frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\frac{1}{4}+ \cdots =\log2$$
初項が1の数列が次を満たすとき、以下の問いに答えよ。
$$ \space \space \space \space \space \space \space \space \space \space a_{n}+a_{n+1}=\frac{1}{n} $$
$(1)a_{n+2}$を$n$と$a_{n}$を用いて表せ。また、以下の極限を求めよ。
$$ \space \space \space \space \space \space \space \lim_{n\to\infty}\left|na_{n}\right|$$
$(2)$次の等式を証明せよ。
$$ \space \space \space \space \space \space \space \sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k-1}}{k}=\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{n+k}$$
$(3)b_{n}=(-1)^na_{n}$とする。$b_{n+1}$を$n$と$b_{n}$を用いて表せ。また、以下の極限を求めよ。
$$ \space \space \space \space \space \space \space \lim_{n\to\infty}\left|a_{n}\right|$$
$$(1)$$
$$a_{2}=0,\space a_{3}=\frac{1}{2},\space a_{4}=-\frac{1}{6}$$
である。
$$a_{n+1}+a_{n+2}=\frac{1}{n+1} $$
であるから、与えられた漸化式との差をとって、
$$a_{n+2}-a_{n}=-\frac{1}{n(n+1)}$$
$$\therefore a_{n+2}=a_{n}-\frac{1}{n(n+1)}$$
(i)$n$が十分大きい奇数のとき、
$$a_{n}=a_{n-2}-\frac{1}{(n-2)(n-1)}=a_{n-4}-\frac{1}{(n-4)(n-3)}-\frac{1}{(n-2)(n-1)}=\cdots=a_{3}-\frac{1}{3\cdot4}-\cdots-\frac{1}{(n-4)(n-3)}-\frac{1}{(n-2)(n-1)}$$
$$\gt\frac{1}{2}-\sum_{k=3}^{n-2}\frac{1}{k(k+1)}=\frac{1}{2}+\frac{1}{1\cdot2}+\frac{1}{2\cdot3}-\sum_{k=1}^{n-2}\frac{1}{k(k+1)}=\frac{7}{6}-1+\frac{1}{n+1}\gt\frac{1}{6}$$
(ii)$n$が十分大きい偶数のとき、
$$a_{n}=a_{n-2}-\frac{1}{(n-2)(n-1)}=a_{n-4}-\frac{1}{(n-4)(n-3)}-\frac{1}{(n-2)(n-1)}=\cdots=a_{4}-\frac{1}{4\cdot5}-\cdots-\frac{1}{(n-4)(n-3)}-\frac{1}{(n-2)(n-1)}\lt-\frac{1}{6}$$
以上(i),(ii)より、十分大きい$n$について、
$$\left|a_{n}\right|\gt \frac{1}{6} \space\space\space \therefore \left|na_{n}\right|=n\left|a_{n}\right|\gt\frac{n}{6}\to\infty \space (n\to\infty)$$
したがって
$$ \lim_{n \to \infty}\left|na_{n}\right|=\infty $$
$$(2)$$
$$\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k-1}}{k}$$
$$=\left(\sum_{k=1}^{2n}\frac{(-1)^{k-1}}{k}+2\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{2k}\right)-2\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{2k}$$
$$=\sum_{k=1}^{2n}\frac{1}{k}-\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k}=\left(\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k}+\sum_{k=n+1}^{2n}\frac{1}{k}\right)-\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k}$$
$$=\sum_{k=n+1}^{2n}\frac{1}{k}=\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{n+k}$$
$(3)$
与えられた漸化式の両辺に$(-1)^{n+1}$をかけると
$$-(-1)^na_{n}+(-1)^{n+1}a_{n+1}=\frac{(-1)^2(-1)^{n-1}}{n}$$
$$\therefore b_{n+1}-b_{n}=\frac{(-1)^{n-1}}{n}$$
よって$n\geq2$のとき
$$b_{n}=b_{1}+\sum_{k=1}^{n-1}\frac{(-1)^{k-1}}{k}=\sum_{k=1}^{n-1}\frac{(-1)^{k-1}}{k}-1$$
ここで
$$S_{n}=\sum_{k=1}^{n-1}\frac{(-1)^{k-1}}{k} \space\space (n\geq 2)$$
とすると、自然数$m$について
$$S_{2m+1}-S_{2m}=-\frac{1}{2m}\to 0 \space (m\to\infty)$$
$$\therefore \lim_{m\to\infty}S_{2m+1}=\lim_{m\to\infty}S_{2m}$$
であり、これより
$$\lim_{n\to\infty}S_{n}=\lim_{m\to\infty}S_{2m+1}=\lim_{m\to\infty}\sum_{k=1}^{2m}\frac{(-1)^{k-1}}{k}=\lim_{m\to\infty}\sum_{k=1}^{m}\frac{1}{m+k}$$
$$=\lim_{m\to\infty}\frac{1}{m}\sum_{k=1}^{m}\frac{1}{1+\frac{k}{m}}=\int_{0}^{1}\frac{1}{1+x}dx=\left[ \log\left|x+1\right|\right]_{0}^{1}=\log2$$
$$\therefore \lim_{n\to\infty}\left|a_{n}\right|=\lim_{n\to\infty}\left|b_{n}\right|=\lim_{n\to\infty}\left|S_{n}-1\right|=\left|\log2-1\right|=1-\log2$$
メルカトル級数を題材にした問題を探しましたが、漸化式の形になっている問題は見つかりませんでした。もしかしたら既出かもしれませんが、今後どこかの大学で出題されてもおかしくないと思います。
(1)と(2)・(3)で問題の流れが分かれています。
(2)から解くと、(1)が解けなくても正の無限大に発散することが(3)の結果からわかるので、あまりよろしくないかもしれません。
(1)は階差数列の考え方を問う問題となっています。簡単な大小評価で$a_n$の絶対値はある値より大きくなることがわかります。$\frac{1}{6}$である必要はありません。
(2)は有名な等式です。解答のように式変形でも解けますし、置換積分と同じ要領でも解けます(そもそも積分は総和の極限なので云うなら逆)。あるいは数学的帰納法を使ってしまうというのも手ですね。総和記号はわかりにくかったら書き下すことをしてみるとすぐわかることが多いですね。
(3)は、求める極限は絶対値がついているので「$a_n$の代わりに$b_n$の極限を求めればよい」ということですね。
誘導を手厚くしてるので、「2次試験の過去問を解くぞ」という段階の上位大理系受験生は全員解けてほしい問題です。
・1997東京工業大学(前期)第3問
本問題の一部を抜粋してシンプルな形にした問題です。
・2015山形大学工学部系(前期)第3問
定積分で定義された数列とその階差数列を利用して級数を求める問題です。
・2018名古屋大学理系(前期)第1問
2015山形大学と同じ定積分を大小評価して極限を求める問題です。
・2023大阪大学理系(前期)第1問
与えられた不等式を示して、積分した結果の大小関係を利用して極限を求める問題です。
せっかくなので
・2009北海道大学理系(前期)第5問
こちらは似た級数のライプニッツ級数の問題です。